1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 政治

たばこが世界一高い国は1箱いくらか? …日本600円との格差を見て内閣参与が思いついた「儲かるビジネス」

プレジデントオンライン / 2024年6月24日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Petra Richli

■現在の逆風は現政権への試練

4月の衆議院補欠選挙での自民党が3戦全敗という結果から、岸田政権は厳しい状況だとマスコミが報じているが、私はそれほど心配していない。3戦全敗といっても、2つの選挙区では候補者を立てていない不戦敗だし、直接対決で敗れた島根1区で当選した立憲民主党の亀井亜紀子氏は、元自民党の亀井久興元国土庁長官の娘であり、支援者には自民党支持者も多いとみられる。今回は、政治資金パーティー問題などでお灸を据えたいという有権者にとってちょうどよい候補者だったといえる。つまり、今回の選挙結果から、自民党支持層に大きなダメージがあったとはいえないだろう。

政治資金パーティーの問題では、政治資金規正法違反(虚偽記入など)で、安倍派と二階派と岸田派の会計責任者や秘書が在宅起訴、略式起訴となったものの、幹部は不起訴となった。政治資金収支報告書の扱いには問題があったといえるが、議員本人の私腹を肥やすような問題はないと検察が判断したといえる。たしかに裏金やキックバックといった悪いイメージが広まってしまったし、それを払しょくできない岸田政権にも課題はある。しかし、だからといって解散ができないほど追い込まれているわけでもない。いま、自民党の顔として選挙ができるのは岸田首相ただ一人である。これも一つの試練ととらえて思い切って解散したら、議席を多少減らしたとしても、政権は十分に維持できると考えている。

■喫煙者消滅で消費税が上がる

正直にいえば、私はいま政局以上に心配なことがある。というのも、私がよく利用していた喫煙所が閉鎖されたのである。妻の意向で自宅も禁煙。ベランダでの喫煙もマンションの管理組合で禁止となった。いったい私はどこでたばこを吸えばいいのだろう。

2020年の改正健康増進法の施行により、屋内の原則禁煙が義務付けられた。「分煙」といいながら、世間は「禁煙」を求めているように感じる毎日だ。安心してたばこが吸える場所だった喫煙所も日に日に減っていく。

今年3月、東海道、山陽、九州新幹線の車内に設けられた喫煙ルームが廃止されて全面禁煙となった。JR東日本の管轄の新幹線ではすでに全面禁煙だから、日本中の新幹線で、完全にたばこが吸えなくなってしまった。だが、旧国鉄の債務は、1本につき約1円の「たばこ特別税」で返済している。旧国鉄の債務を返済している愛煙家に対して、JRの仕打ちはひどいと思う。

紙巻たばこ1箱580円のうち約6割が税金だ。JTの発表によると、内訳は国たばこ税が136.04円、地方たばこ税が152.44円、たばこ特別税が16.40円、消費税が52.72円。これらのたばこ税全体の税収は年間2兆円にのぼる。2兆円という金額は、消費税収の1%分相当だ。ちなみに、ビールの税率が約4割、ウイスキーの税率が2〜3割だから、われわれ愛煙家がどれほど国や地方に貢献しているかをもっと多くの人に知ってもらいたいものだ。最近、ある経済学者が「たばこを吸う人がゼロになったら、2兆円の税収がなくなり、消費税を1%上げることになる」と話している記事を読んだ。国民の大多数から「消費税率が上がってもいいから全国民が禁煙」という声が上がるのであれば、私も禁煙にチャレンジしてみてもよいが、おそらく、消費税率を上げないことを選ぶ人がほとんどだろう。

この莫大な税収があるから、東京都をはじめ、独自の禁煙条例を定めている自治体でも、たばこ販売を禁止していないのだと思う。本気ですべての国民に禁煙させたいなら、売らなければいいだけの話である。

■日本の状態は中途半端

以前、厚生労働省が発表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」について触れた。これは飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を推進するため、飲酒による身体への影響や疾病・行動に関するリスクなどを伝えるとともに、健康に配慮した飲酒の仕方や量についてまとめたものだ。

このガイドラインでは、生活習慣病のリスクが高まる1日の飲酒量は男性が40グラム以上、女性は20グラム以上とされている。これはあくまでもガイドラインで罰則などはないが、国民の酒量が減少すれば、単に酒造メーカーだけではなく、飲食店やその周辺産業で働く人にとっても、ダメージは大きいうえ、他産業にこの流れが波及すれば、多くの嗜好品が消滅しかねない。嗜好品の選択に国が口出しをするためには、慎重な議論が必要だと思っている。

ちなみにイギリスでは今年4月に、2009年以降に生まれた人は生涯にわたってたばこを買えないという法案が可決された。子どもたちにたばこを販売した店舗には罰金も科される。米国では若者に人気の果物などのフレーバーつき電子たばこ「ジュール」の発売が禁止になったという過去もある。いずれも、若年層へのたばこの健康被害を防ぐとともに、将来の喫煙者を増やさないための措置だ。

実際にたばこが買えなくなれば、愛煙家もあきらめがつくだろうが、日本の状態は中途半端だ。「健康のため禁煙推進」といいながら、「税収のため、たばこは地元で買ってください」という。勘弁してほしい。

それでも、世界にはもっとたばこが高い国がある。2021年に世界中で売られているマルボロの価格を比較したデータがある。1位のオーストラリア26.50ドル。1ドル150円で計算すると、3975円である。ほぼ4000円だ。とても高い。その後、2位ニュージーランド24.26ドル、3位アイルランド16.20ドル、4位ノルウェー15.81ドル、5位イギリス15.52ドルと続く。アイルランド、ノルウェー、イギリスの税率は約8割に達している。日本の600円は43位と比較的吸いやすい価格だったのだと思い知らされる。

WHOの「世界保健統計2023」によると、国別喫煙率ランキングの1位は、南太平洋の島国ナウル48.5%、2位がミャンマーで44.1%、3位がこちらも南太平洋のキリバス40.6%だった。上位3位のうち2カ国が南太平洋の島国というのは何か理由があるのだろうか。詳しい人がいたら、ぜひ教えてほしい。日本は20.1%でWHO加盟国194カ国中89位だった。喫煙にうるさい欧州で、たばこの価格も日本より高いフランスの喫煙率は33.4%と高めだった。

■海外からの旅行客向けビジネスはどうか

先ほど紹介したマルボロの国別価格比較と、国別喫煙率の表を並べてみると、日本よりたばこの価格が高いにもかかわらず、喫煙率が高い国が結構あることに気づく。みんな頑張って吸っているなあと共感を覚えると同時に、新たなビジネスの可能性も感じる。

規制前のイギリスの様子
世界では:イギリスでは、たばこを棚に陳列して販売することが禁止されている(写真は規制前のイギリスの様子)。そして1箱あたりの価格は日本より数倍高いにもかかわらず、喫煙者の割合は高い。このギャップは、大きなビジネスチャンスになる可能性を秘めている。

最近の円安で海外からの旅行客がさらに増加しているが、たばこが土産物として注目されているようだ。日本のたばこは美味しいし、外国人なら円安のうえに免税だから格安だ。日本にたばこを吸いに来る外国人もいるという。

そこで、海外からの旅行者向けに、外国人でも気軽に利用できる喫煙所や喫煙者向けカフェを整備してはどうだろうか。江戸切子の灰皿や昔ながらのキセル、浮世絵が描かれたマッチなど、たばこと同時に売れそうなものをたくさん思いつく。儲かりそうな気配がしたのだが、妻にバレたらどうなるか。恐ろしくて起業はできずにいる。

----------

飯島 勲(いいじま・いさお)
内閣参与(特命担当)
1945年、長野県辰野町生まれ。小泉純一郎元総理首席秘書官。現在、内閣参与(特命担当)、松本歯科大学特命教授、ウガンダ共和国政府顧問、シエラレオネ共和国名誉総領事、コソボ共和国名誉総領事。

----------

(内閣参与(特命担当) 飯島 勲)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください