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睡眠6時間では認知症診断率3割増…日光浴、朝食、コーヒー、就寝前読書ほか「ボケない眠り方10の鉄則」

プレジデントオンライン / 2024年7月9日 7時15分

■睡眠の質をよくするための10のポイント

認知機能の低下を防ぐには睡眠時間はどれぐらい必要でしょうか。英国で行われた大規模疫学調査で睡眠時間が一日6時間以下の人は7時間の人より約30年後に認知症と診断される率が30%高いことがわかりました。個人差、年齢差はありますが、認知症を防ぐためには7時間睡眠は一つの目安と考えてよいでしょう。

現在62歳の私自身は、毎日午後10時頃から睡眠の準備を始め11時には床に入ります。翌朝は5~6時頃に目が覚めますが、夜中にトイレに起きるなど、中途覚醒することもあります。そのようなときは布団から出て何かほかのことをしているうちに自然に眠気が戻ってきます。睡眠時間が足りなければ、昼寝でその分を補うようにしています。

また、認知症と睡眠は相互に関係しており、睡眠の質が変われば、認知機能はそれに反応します。睡眠の質を良くするためには、日常生活を見直して、問題があれば改善すべきです。それにはいくつかポイントがあります。

1 朝、太陽の光を浴びる

睡眠ホルモンのメラトニンの分泌量は夜増え、日中は少なくなります。朝目覚めたら、太陽の光を5~10分間浴びることでメラトニンの産生が減り、同時に翌日のメラトニンを作るための準備が始まります。朝日や日中に光を浴びることで体内時計のずれをリセットすることができます。

2 朝食抜きはNG

メラトニンは脳内の神経伝達物質のセロトニンによって作られます。セロトニンの生成には炭水化物、ビタミンB6、トリプトファンが必要です。セロトニンが十分に生成されるためにはしっかり朝食を取ることが必要です。炭水化物はご飯やパンなどの穀物類、ビタミンB6は鮭や豚肉などの動物性タンパク質、トリプトファンは納豆や味噌などの大豆製品、チーズや牛乳などの乳製品、フルーツならバナナに多く含まれています。朝食を抜くと睡眠に影響します。

■昼寝が認知機能低下を防ぐ

3 昼食後30分程度の昼寝

午前中の活動で疲れた脳に食事で糖分を補います。昼食を取ると血糖値が上がって、眠気が起こります。30分程度の昼寝で副交感神経を刺激し体を休めます。目が覚めたら、交感神経の働きで活動的になります。

昭和の価値観を持つ日本人にとっては、「怠け者のすること」に見えるようですが、昼寝は認知機能低下を防ぐ効果があります。職場の机でうつ伏せになるのもいいですし、公園のベンチで目を閉じて少しの時間でも意識が遠ざかれば十分です。

できれば昼寝は午後3時ごろまでに取るようにします。体内時計が午後3時ごろに昼と夜が切り替わるからです。午後3時を過ぎてから昼寝をすると、夜の睡眠に影響します。

日中は適度な運動などで体を動かすことも大切です。

4 昼寝の前にコーヒーやお茶を飲む

コーヒーやお茶などに含まれるカフェインは脳を覚醒する効果があります。覚醒作用が現れるまでに30分ほどかかるため、その間に睡眠を取るのが効率的です。コーヒーやお茶の香りで気持ちが落ち着くのは副交感神経が刺激されるからです。そして、30分の昼寝が終わるころには覚醒作用ですっきりと仕事に戻ることができます。

5 夕食は就寝の3時間前までに

日が沈むころになったら質のよい睡眠を取るように意識することが大切です。1日3回の食事量は、朝:大、昼:中、晩:小の配分を心がけてください。食品によって消化時間は異なりますが、3時間は見ておく必要があります。夕食は、寝る3時間前までにすませておく必要があります。

とはいえ、仕事が忙しくて帰宅が遅くなれば、晩ご飯も遅くなります。就寝直前に食事を取ることもあるでしょう。その結果、眠りが浅くなり、朝も胃もたれで目覚めが悪くなります。こんな日が続けば睡眠の質はさらに低下し、睡眠負債が嵩(かさ)みます。それなら、夕方の休憩や残業の前に晩ご飯の時間を設ければいいのです。いまはコンビニに行けば栄養に配慮した弁当やサンドイッチなどの軽食がたくさん並んでいます。

6 「寝落ち」を防ぐには食後の散歩

午後3時ごろからメラトニンの分泌が亢進し、夕食後には血糖値が上昇、さらに日中の疲れや前日の睡眠不足があると、強烈な眠気に襲われます。シニア世代には、テレビを見ながら意識が飛ぶ、いわゆる「寝落ち」の状態に陥る人が多いのです。そうなると、メラトニンの産生が一気に進み、脳は一晩経過したものと勘違いします。寝落ちから目覚めたあとは、就寝時間になっても眠くならず、眠ったあとも頻繁に中途覚醒して睡眠の質は低下します。

不眠の治療で睡眠薬が効かないケースでは「寝落ち」という重要な情報が医師に伝わっていない可能性があります。寝落ちを防ぐには食後に散歩すればいいのです。ところが、睡眠専門医でないと寝落ちは見逃されやすく、睡眠薬が処方されることになるのですが、寝落ちが原因の不眠は睡眠薬では解決しません。患者は相変わらず夕食後の寝落ちを繰り返し、睡眠薬が効かないと訴え、医師は別の睡眠薬を処方します。脳が麻痺するほどの精神安定剤を投与され、薬漬けの状態で当クリニックに辿り着く患者は少なくありません。

睡眠薬の前に睡眠日誌で実態を把握する

■入浴の1時間後くらいに眠気が生じる

7 入浴で睡眠の質をよくする

湯船に浸かった瞬間、あまりの気持ちよさにため息が漏れるのは、交感神経の刺激で長時間興奮していた体が、副交感神経に切り替わったことで急速にリラックスするからです。ただ、お風呂に入ると必ず体温がいったん上がります。そして、入浴後約30分以降から1時間ほど経って体温が下がると眠気が生じます。この生理現象を有効に利用して、入浴で上昇した体温が下がるタイミングで床に入れば自然な入眠が可能です。

8 就寝前の読書で眠りを誘発

就寝前に読書をすると気持ちが落ち着きます。ただし、布団に入って横になって本を読んではいけません。ベッドなら背板にもたれた姿勢で、畳なら布団の横に座椅子を置いて座って本を読み、眠気が出たらすぐ布団に入ります。この行動を毎晩繰り返すと、やがて本を開いただけで眠くなります。

9 寝室の温度と明るさ

医療機関の睡眠検査室はたいてい温度22~24度、湿度50~60%、照度3ルクス以下に設定されています。高温多湿の部屋ではレム睡眠が減って、覚醒が増えることが報告されています。寝室の照明はできるだけ暗くしたほうが安眠しやすくなります。常夜灯を点けて就寝する人がいますが、薄暗い光でもまぶたを通して目に入ってくるので消灯したほうがいいでしょう。

[怖い実例]レム睡眠の不足が認知症につながる
10 寝る姿勢は側臥位

就寝中に適度に寝返りをうち、できるだけ側臥位(そくがい)(横向き)になることをお勧めします。その理由は、仰臥位(ぎょうがい)(仰向け)は睡眠時無呼吸を生じやすいからです。医学的には10秒以上息が止まる状態を無呼吸といいます。1時間あたり5回以上の無呼吸があると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

■認知行動療法で頭を柔らかくする

電車で立っている高齢者を前にして優先シートに座ってスマホを見たり、音楽を聴いたり、おしゃべりに夢中になっている若者がいます。彼らを見て、あなたはどのような感情を持ちますか。見て見ぬふりをする態度に怒りを感じますか。席を譲るように注意したくなりますか。

こうしたネガティブな感情が自分の身体にどのように影響するかというと、怒りに対して脳の扁桃体が自分への脅威と察知し、ストレス反応としてアドレナリンを分泌します。その作用で心拍数と呼吸数の増加、血圧の上昇、発汗などが起こります。

この状態が長く続くと自律神経のバランスが崩れ、睡眠の質が低下するなど、健康への影響が出てきます。気づかないうちに認知機能が低下する可能性があるのです。

こういうときに役立つのが認知行動療法です。認知行動療法とは認知に働きかけて気持ちを楽にする心理療法です。物事の捉え方を変えて、感情がポジティブな方向に変わるように自分をコントロールするのです。

たとえば、優先席の若者の小学校低学年のころを想像するというのはどうでしょう。祖父母と一緒に電車で楽しそうにしている姿を思い浮かべてみると微笑ましい気持ちになりませんか。「楽しそうなゲームだね」「これ、いま流行ってるんですよ」と若者とひとときの会話を楽しむ場面を想像したらどうですか。まったく違う行動となって、幸せな気分になると思いませんか。まずポジティブな結果を想定し、そのためにはどのような感情を持つべきか、さらにそのような感情になるにはどうすればよいのか、と逆に辿っていくのです。

いやな場面に出くわす→ネガティブな感情になる→その状態が長時間続く→自律神経失調症になる→不眠になる→認知機能が低下する→認知症になる、という連鎖を断ち切るには、認知行動療法で認知機能を改善することです。それが認知症にならない眠り方につながります。認知行動療法で重要なのはアウトプットを意識することです。

健康な人でも脳にはアミロイドβが溜まっています。それを意識して生活を改善することによってMCIを食い止めることができます。できれば50代から、MCIになる前の段階で睡眠と認知機能を意識し、生活習慣を整えることです。それによって、認知症を予防することは可能なのです。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月5日号)の一部を再編集したものです。

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中山 明峰(なかやま・めいほう)
めいほう睡眠めまいクリニック院長
1988年愛知医科大学大学院卒業・医学博士修得。92年米国イリノイ大学耳鼻咽喉科留学。2000年愛知医科大学睡眠障害センター副部長。11年名古屋市立大学病院睡眠医療センター長。21年より現職。著作に『60歳からの認知症にならない眠り方』など。

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(めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山 明峰 構成=宇佐美拓憲 図版作成=大橋昭一)

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