1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「5円で買った家」が毎月4万円の利益を生む…元サラリーマン投資家が「空き家投資は儲かる」と説くワケ

プレジデントオンライン / 2024年6月19日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tsubasa Henmi

■毎年10万戸ペースで急増する「空き家」問題

いま、空き家が増えています。総務省統計局が4月に公表した速報値では、全国に900万戸もの空き家があり、その数は毎年10万戸ずつ増えていることがわかっています。また空き家の割合は13.8%、まさに日本は空き家大国といえます。

空き家の中でも、特に所有者すらわからない空き家もあったり、なかには長年放置された管理不全空き家など、倒壊の危険性があったりする空き家も増えており、地方自治体も空き家問題には頭を抱えています。

そんな空き家が社会問題化している中で、空き家を使ってビジネスをする「空き家ビジネス」が静かなブームになっています。引き取った空き家を賃貸で貸す大家業、大きな古民家をシェアハウスとして活用する例もあります。また、インバウンド需要が戻り、地方でも外国人観光客が押し寄せるスポットもあり、民泊で運営する宿泊業なども空き家ビジネスの一例です。

■「タダでももらいたくない」空き家がなぜ投資に?

通常、不動産投資を行う場合、銀行から多額の融資を受けて、アパートやマンションを購入します。家賃が入ってきても、銀行への返済や管理コストなどがかさみ、手残りは大幅に減ってしまいます。しかし空き家、それも所有者が「要らない」というお困り空き家を活用した投資手法では、物件取得費が0円またはそれに近い額で引き取れるため、初期費用が少なくて済みます。

もちろん、土地と建物が0円であっても購入にかかる諸経費、例えば登録免許税や不動産取得税、火災保険料、不動産会社への仲介手数料などが家一軒当たり30~50万円程度かかります。それでも一般的な不動産投資と比較すると初期費用は抑えられるため利益率が非常に高い投資となります。総投資額が数十万円程度となるため、銀行からの融資に頼る必要もなく、そのため元本の返済や金利負担すら必要な低コストで安全です。

一方で激安の空き家を取得すると、内装や外装がボロボロの場合もあり、リフォーム等の修繕が必要となるケースもあります。また引き取った空き家の室内には旧所有者や古い住人の荷物などが残っている場合もあります。これを残置物といいます。

不動産の本体(土地や建物)を0円でもらったとしても、こうしたリフォームや修繕、残置物の撤去などに多額の費用がかかるようでは意味がないと思われることでしょう。

私の投資手法では、リフォーム費用はほとんど使いません。どうするかというと、入居者さんにDIYでリフォームしてもらうことを選択するのです。この方法であれば、残置物の撤去すら必要なく、入居者さんに修繕や処分はすべておまかせしています。そんなことが可能なのか? と思われることでしょう。実際の事例で説明します。

■「5円」で引き取った家が月4万円の家賃収入に

私が初めて0円で空き家を取得したのは、山形県に建つ平屋の木造住宅でした。所有者が相続で山形県の実家を引き継ぎましたが、関東にお住まいだった所有者は東北地方の実家は要らないと思っていました。

なぜなら、所有しているだけで毎年固定資産税が4万円ほど発生していたからです。家の中には遺品があり、これを片付けるだけでも数十万円の処分費用が必要となります。売却したくても田舎なので売れず、建物解体の見積もりをとると100万円以上かかることがわかったそうです。

そこで私がその住宅をタダで引き取ることにしました。契約の形態として無償譲渡であれば贈与税が発生するため不動産仲介会社の取り計らいで売買金額5円での不動産売買契約によって購入することになったのです。5円という数字は「良いご縁になりますように」という不動産会社の担当者のシャレでした。この物件の取得諸費用は30万円程度でした。

ただし注意しておきたい点もあります。それはリスクの話です。5円で取得した物件のリスクは5円だけかというと、そうではありません。例えば、多額の修繕をしなければ住めない物件では修繕費用も含めた額が、リスクの範囲となりますし、修繕をしても復旧できないような更地になるボロ物件なら、解体費用も負担しなければなりません。

安さにつられて失敗しないためにも、その物件が最低限の修繕費で誰かに安全に住んでもらえるのか、投資する側も目利きが必要ということです。

■一般的な不動産投資と比べ利回りがメチャクチャ良い

私はこの物件を取得した後、室内を少し片付けたり汚れている箇所を掃除したりする程度で賃貸募集し、ほどなく入居希望者が現れ、月額家賃4万円でこの物件を借りてもらえることになりました。修繕費用は、10万円ほどでした。

整理すると、本体代0円+購入諸費用30万円+修繕費10万円=40万円の総支出で、月額家賃4万円つまり年間48万円の家賃収入を得ることができたのです。年間にかかる経費は固定資産税4万円程度でしたので、それを引いても年間44万円もの利益が生み出される計算です。それも毎年です。

利回りを計算すると、年間利益44万円÷総支出40万円×100=利回り110%となります。一般的な不動産投資であれば、年間利回り10%もあれば優良とされていますが、私の投資手法ではその11倍もの収益率を生むことになります。

ただし、お気づきのように、この利回り110%は、たしかに「率」としてはすごい数字ですが、利益の「絶対額」としては決して大きな数字ではありません。私の上記の事例では、たかだか年間44万円の利益をうむという小さな話に過ぎません。

不動産投資の醍醐味は、銀行から融資を受けることで少ない元手でも大きな額を運用し、受取家賃から返済や経費を引いて毎年の多額の不労所得を手にすることにあります。例えば5億円を銀行から借り入れ、利回り10%の不動産に投資することで、年間5000万円の家賃収入が得られます。元本返済や金利、その他管理コストや固定資産税などを引いて手に残るのは700万円ほどになります。

■手堅くいきたい人ほど「0円空き家投資」が向いている

年間700万円の利益というと、平均的なサラリーマンより良い年収といえます。倍の10億円を買えば年間の収益も2倍ですし、3倍の15億円分の不動産を買えば、年間2000万円以上の不労所得も夢ではありません。

いかがでしょうか? だから、どんどん借り入れができる人はレバレッジを効かせた不動産投資がオススメになります。ただし、円安から金利上昇などの局面では、キャッシュフロー率1.5%程度の投資では最悪破綻するリスクも念頭に置かなければなりません。

一方で私がやっている0円空き家投資は、あくまで手堅い弱者の戦略です。プレイヤーはお金をほとんど投下しない代わりに、多少の労力を伴う“ビジネス”といえます。高属性サラリーマン大家がやるレバレッジ不動産投資とは違い、お金を投資するのではなく時間や労力を投下する、つまり不動産投資よりも事業に近い手法なのです。

だからこの手法に向くのは、忙しい高年収・高属性サラリーマンではなく、比較的時間を自由にできる個人事業主やフリーランス、主婦のような属性の方です。処分にお困りの不要な空き家を安く引き取り、生活に困っている生活弱者に安い家賃で貸す「お困りのマッチング」といえるのです。

また、この空き家投資は、1人で何軒でも並行して行うことができます。家1軒あたり年間44万円の利益と書きましたが、これを10軒所有すれば年間440万円になりますし、20軒投資すれば年間880万円の利益を毎年手にできるのです。

ある人から別の人に家の鍵を渡す場面
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

■まずは不動産会社に空き家があるか聞いてみる

さて、こうした魅力いっぱいの0円空き家投資ですが、では0円物件はどこでどのようにして入手するのでしょうか? 入手ルートは大きく分けて3つあります。①不動産会社経由、②空き家バンク経由、③マッチングサイト経由、です。順に説明します。

①不動産会社経由

不動産を売りたい、処分したい、と思った時にどこに相談するか? を思えば真っ先にたどり着くのがこの不動産屋さんではないでしょうか? 地元の不動産屋さんにまずは相談、というケースがやはり多いです。

一方で、要らない空き家の売却相談を受け付けた不動産会社からすると、どう思うでしょうか? 売買金額が数千万円にもなる価値のある物件ならば、よろこんで仲介業務を受託してくれるのですが、取引額で数十万円程度にしかならない地方の古い空き家は、不動産会社にとってもお荷物でしかありません。

■「空き家バンク」もおススメ

表向きは「もちろん、誠心誠意、売却活動をがんばりますよ」なんて、ていよく言ってくれますが、本心では「あー、また面倒な物件を引き受けてしまった」と残念がっているのです。だから私は、地方の不動産会社を回り、「お荷物で要らない、どうしようもない空き家があったら安く買います。御社に手数料や紹介料を支払います」などと声をかけることで、売り空き家情報を入手しています。

②空き家バンク経由

2つ目が「空き家バンク」です。空き家バンクとは「空き家を売りたい人」と「空き家を買いたい人」あるいは「空き家を貸したい人」と「空き家を借りたい人」を結びつける行政サービスです。地方自治体が直接運営している場合もありますし、自治体から委託された民間団体が運営を代行しているケースもあります。

地方でかつ空き家の所有者が高齢者の場合、空き家の売却を不動産会社ではなく地元の自治体の空き家バンクに相談する人も多いです。空き家バンクは行政サービスなのできちんと運営していると思われるかもしれませんが、担当者のやる気次第でしっかり運営してる場合もあればずさんな管理体制である場合も見受けられます。

またいわゆる“お役所仕事”になっていて、物件をただポータルサイトに掲載するだけで積極的に売買に結びつけようとしていないケースも散見されます。民間の不動産会社と違って売買の仲介を成約しても仲介手数料等の利益につながらないからです。

■売りたい・買いたい人のマッチングサイトも増えている

③マッチングサイト経由

最近では、空き家を手放したい所有者と、それを買いたい・もらいたい購入希望者をマッチングする民間のWEBサイトも複数存在します。なかには、「みんなの0円物件」など0円物件に特化したマッチングサイトも出てきています。

そのほかにも、「家いちば」「家フリマ」「空き家のURI・KAI」「空き家バイバイ」など、多くのマッチングサイトがあります。マッチングサイトの特徴は、不動産仲介会社を経由することなく、売主と買主が直接取引することができる点にありますが、なかには不動産会社自身がこうしたマッチングサイトを運営しているケースもあり、その場合は運営の仲介会社へ仲介手数料を支払うこともあります。

またこれらのほかに、便利屋さん、親戚や知り合い経由で相談が来るケースも増えています。

■むしろ汚れた部屋を借りたいという人もいる

0円空き家を貸す相手は、「とにかく安く住みたい」という生活弱者です。とくに生活保護受給者や高齢者、ひとり親世帯のような収入の少ない世帯も多く、これらは専門用語で「住宅確保要配慮者居住支援法人」と総称されます。こうした生活にお困りの方に安い賃料で貸すことが多く、入居者からも自治体からも喜ばれています。

そのほかにも、住居費にお金をかけたくない人や、DIYをして自分好みの部屋作りをしたい人にも借りてもらっています。また、ペット飼育などでどのみち汚れたり破損したりしてしまうので、はじめからキレイな部屋ではなくすでに汚れた部屋、損傷のある部屋をむしろ借りたいという人もいます。

※住宅確保要配慮者居住支援法人:国土交通省が主導する住宅あっせん事業のひとつで、住宅確保要配慮者(低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子供を養育する者、その他住宅の確保に特に配慮を要する者)の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進を図るために生活支援等を実施する都道府県の認可する団体・法人です。

DIY
写真=iStock.com/janiecbros
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/janiecbros

■どんな人が「ボロボロの空き家」を借りるのか

また、自分で修繕や手直しができる、日曜大工が得意だ、趣味だ、という人に安く貸しています。これを「DIY型賃貸借」といいます。DIY型賃貸者とは、国土交通省が推奨している契約形態のことで、あらかじめ賃貸人(大家さん)が、入居者によるDIYを許可する契約です。賃貸人と賃借人の間でのトラブルを未然に防ぎながら、入居者が安心してDIYを楽しむことができます。

入居者のメリットとしては、自分好みの改修ができ、持ち家感覚で居住できる点、賃貸住宅なのに自由にリフォームできる点、そして、退去時に原則原状回復しなくても良い点です。

一方で大家さんのメリットとしては、入居者が好みの部屋を作るため、入居期間が長くなる可能性がある点と、現在の状態で賃貸でき、修繕の費用や手間がかからない点、そして、退居時に設備・内装等がグレードアップしている可能性が期待できる点です。

具体的な手続きとしては、通常の賃貸借契約書のほかに、「申請書兼承諾書」「合意書」をあらかじめ締結して、借主がDIYすることを事前に許可します。こうした取り組みによって、ボロボロの家でも、DIYしたい入居者に安く貸すことで賃貸人・賃借人ともにWIN-WINとなります。

また、DIYが趣味でなくても、「お金がないのでできるだけ安い賃料の家に住みたい、そのためには多少ボロくても自分で修繕しながら住みます」という困窮者がDIY型賃貸借で借りたいと言ってこられる場合もあります。その場合、私はせめて修繕に必要な材料費だけは支給・補助することで、入居者のDIYを金銭面でサポートする場合もあります。

■「困りごとを解決」するほうがビジネスは長続きする

このように、私は不要なお困り空き家を安く引き取り、それを「生活に困っている」という生活弱者に安く貸すビジネスをしています。そもそも私は、「ビジネスとはお困りごとの解決である」と考えています。そしてそのお困りが強いほどビジネスは儲(もう)かり、お困りが多いほどビジネスは長続きします。

住居として普通賃貸することもありますが、それ以外にも障害者グループホームとして賃貸するケースもあります。現在、心身に障害のある障害者は1000万人いて、年々増加傾向にあります。障害の度合いに応じて、日常の社会生活を送る準備をするための障害者グループホームがまだまだ足りない現状があります。

不要な空き家を安く買い取り、こちらの場合はリフォームを施したうえで、こうした社会福祉系の団体や法人に貸すことも収益性の高い賃貸事業として魅力的なものになります。とくに収益面だけでなく、障害者の自立支援を助ける社会貢献度の高いビジネスでもあるためです。

多くの人にとっては面倒なお荷物となる空き家をうまく活用することで、社会的意義の大きなビジネスにつなげることができ、社会や地域に貢献することも可能であると考えます。

----------

椙田 拓也(すぎた・たくや)
空き家起業家/滑川市まちづくりワーキンググループ委員/マネー総研 所長
1974年生まれ、兵庫県出身。北九州市立大学経済学部卒。大和ハウスから転職したオリンパス時代に不動産投資を開始。5000万円の家賃収入を得てリタイア。自身での空き家引き取り件数は年間50件を超える。空き家問題に対して、地方自治体での講演、自治体と提携して空き家活用やまちづくりを行う。不動産投資のほか建設業、二級建築士事務所、宅建業など複数の会社を経営する事業家でもある。空き家ビジネスのスクールやコミュニティを運営。近年は上場企業や金融機関などからマネー・リテラシー教育に関する社内研修や講演などの依頼も多数。1万部を突破した『「空き家」で儲ける! 驚異の利回り100%不動産投資術』(宝島社、共著)など著書多数。 ・椙田拓也 不動産投資で成功するための公式ブログ ・YouTube:椙田拓也 空き家起業家のビジネス大学

----------

(空き家起業家/滑川市まちづくりワーキンググループ委員/マネー総研 所長 椙田 拓也)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください