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「羊が1匹、羊が2匹…と足してはいけない」むしろ雑念が増える…簡単に寝落ちできる画期的な"羊の扱い方"

プレジデントオンライン / 2024年7月21日 16時15分

■午前中の活動が狂った体内時計を戻すカギ

「体内時計を戻すには、寝起きの時間を整えることが重要です」(川野氏)

具体的には、①少しずつ起きる時間を早くする方法と②一晩眠らずに一気に逆転する方法があるという。

夜更かしが習慣になっていると、いきなり「明日は朝6時に起きよう」としても難しい。その場合には、いったん6時に起きて10分ぐらい朝日を浴びてから二度寝する。それでも早朝の朝日を浴びていることから、体内時計を整える効果がある。「二度寝してもいい」と思えば、早起きも苦にならないだろう。

それほど眠くなければ、そのまま起きてしまい、昼寝をしてもいい。ただし、昼寝は15時までに1時間以内に抑えたほうがいい。そうしないと、夜の睡眠を妨げてしまい逆効果になる。

ひどい夜型になっていて、昼夜が逆転するような生活をしている人の場合には、一晩眠らずに我慢して、翌日にきちんとした時間に眠る方法も効果的という。これで一気に生活リズムが戻る可能性がある。

「1日くらい眠らなくても健康を大きく害することはありませんし、仕事のパフォーマンスもそれほど変わりませんから、安心してチャレンジしてください」(同)。眠さにまかせて日中に毎日眠っていては、いつまで経っても生活リズムは改善できない。思い切って試してみる必要がある。

川野氏は「モメンタム」にも注目しているという。これは自律神経を整える方法にもつながるが、日中は自分自身の心を活性化させてアクティブにしておくことで、夜にはそのギャップで眠りやすくする方法だ。

「眠れない患者さんに勧めているのは、午前中にドラムやパーカッションを叩くことです」(同)

【図表2】朝に“勢い”をつけることで夜になるほど疲れるリズムをつくる

楽器をやらない人には難しいだろうから、アップテンポの音楽を聴くだけでも効果があるという。音楽に合わせて体を動かせば、モメンタムハイの状態になる。これなら、出かける支度をしながらでも実践できそうだ。

東京大学の林悠教授は「日中の活動量を増やすことで、夜に深い眠りを誘導する可能性がある」と指摘する。脳にしても体にしても、活動するために細胞がたえず新しいたんぱく質をつくっている。ただ、つくればつくるほど不良品が発生する確率が高まる。その不良品が疲労として蓄積して、深い眠りに誘導するというわけだ。日中に活発に活動し、夜にしっかり睡眠ができれば、体内時計の狂いも調整されてさらに質のよい睡眠をとれる好循環が得られそうだ。

【図表3】あえて起き続けて自然に眠くなるのを待つ

■心や体の緊張をゆるめる動きを取り入れる

ストレスでバランスが崩れた自律神経を整えるために最も効果的なのは、「オン」と「オフ」の切り替えをはっきりさせること。行動にメリハリをつけることで、交感神経と副交感神経のスイッチが切り替わりやすくなる。

【図表4】「足す」より「引く」ほうが退屈して寝落ちしやすくなる

「仕事柄、経営者に接することが多いのですが、常に会社のことを考えていてオン、オフがはっきりしないために夜でも交感神経が優位な状態が続いて眠れない、夜中に目が覚めてしまうという人も多いですね」と話すのは、快眠セラピストの三橋美穂氏だ。年齢を重ねた人ほどその傾向が強く、「若いときのようにスイッチがパチンと切り替わりにくくなっている」という。

【図表5】飲む前に一切れチーズを食べる

日中に多くのストレスを抱え、夜になっても気が抜けずにギアがオンに入り続け、リラックスできずに布団の中でも気持ちが昂り眠れないという人も多いのではないだろうか。

ホッと心を落ち着けるのに、氷を握ってリラックスを感じる「手のひらサウナ」というメソッドがある。「急激な冷感刺激と、その後次第に手の温かさが回復していく過程との落差によって、緊張からリラクセーションへと向かう心理的な調整効果が期待されます」と川野氏は話す。

【図表6】冷たくなった手を温める瞬間に緊張が解ける
【図表7】力を入れるときは手のひらをギュッと握り、脚にもグッと力を入れる

■自律神経を整える

また、実際のサウナには自律神経を整える作用もあるという。

「最近は正しい方法でサウナに入ることで自律神経の活動性を高める効果があるとのエビデンスが日本サウナ学会などで発表されています」(川野氏)

サウナに入って「熱い」、水風呂に入って「冷たい」と感じるとアドレナリンが出て交感神経が優位になる。その後に休息をとると、危機を脱した安心感から、副交感神経が優位になるという。いわゆる「ととのった」状態だ。

■副交感神経を調整する

また、呼吸自体にも自律神経を整える効果がある。鼻から息を吸うと鼻の中に冷たい空気が入ってきて、鼻の奥のほうがツーンと冷たくなっていく感じがある。そうした体の感覚に意識を向けてみる。吐くときも鼻の中を息が通って出ていくことを意識する。それで緊張がほぐれるという。片鼻ずつ試すのもいい。

【図表8】指で片鼻を押さえて、ゆっくり息を吸う

「右鼻が交感神経、左鼻が副交感神経を調整する役割があるとされます」(三橋氏)

その説では右鼻が詰まっているときは副交感神経が優位、左鼻が詰まっていれば交感神経が優位と考える。また、鼻の通りが左右均等なら自律神経のバランスが取れていると判断する。

【図表9】目元を温めるだけでも効果が期待できる
【図表10】ストレスに感じることを3段階に分けて書き出す

いつまでもエンジンがかかりっぱなしでは身も心も壊れてしまう。ほどよくゆるめ、眠りに導こう。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月5日号)の一部を再編集したものです。

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川野 泰周(かわの・たいしゅう)
林香寺住職、精神科医
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。禅修行の後、2014年臨済宗建長寺派林香寺(横浜市)住職。寺務の傍ら都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたる。『人生がうまくいく人の自己肯定感』(三笠書房)、『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

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林 悠(はやし・ゆう)
レム睡眠研究者
東京大学理学部卒業。2022年より東京大学大学院理学系研究科教授、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構客員教授を兼務。睡眠を研究し、認知症や精神疾患などに対する予防治療にも挑む。

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三橋 美穂(みはし・みほ)
快眠セラピスト
睡眠環境プランナー。寝具メーカーの研究開発部長を経て、2003年に独立。個人相談のほか、企業の睡眠関連事業にも広く携わる。今まで枕のフィッティングは1万人以上に。著書に『驚くほど眠りの質がよくなる 睡眠メソッド100』。

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井手 久満(いで・ひさみつ)
男性更年期 専門家
順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科特任教授。国立がんセンター研究所やUCLAハワードヒューズ研究所を経て、現職。男性更年期をはじめ前立腺癌の診断と治療を専門とする。日本メンズヘルス医学会理事。

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(林香寺住職、精神科医 川野 泰周、レム睡眠研究者 林 悠、快眠セラピスト 三橋 美穂、男性更年期 専門家 井手 久満 文=向山 勇 図版作成=大橋昭一)

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