デートでも婚約でも結婚でもない…恋愛過程の「初期」に最も分泌される物質が不足すると不眠症になりやすい
プレジデントオンライン / 2024年6月25日 6時15分
■科学的に効果証明。マインドフルネスで不安から解放
「頑張っても仕事の成果が出ない」「職場の人間関係がうまくいかない」など悩みは人それぞれだが、不安に支配され眠れなくなってしまう。
「心の中で不安を手放すことが、睡眠改善のカギとなります。そのために最適なのがマインドフルネスです」(川野氏)
初心者でも取り組みやすいのが呼吸瞑想とボディスキャン瞑想だ。呼吸瞑想は椅子や床に座って背筋を伸ばし、鼻や口を出入りする空気の流れに注意を向ける。呼吸によって体が膨らんだりしぼんだりする感覚を意識する。
ただ、やってみるとさまざまな雑念が出てきて、なかなか集中できない。「それはそれで構いません。最初から無の境地にはなれないものです。雑念が出てきたことに気づくことが大事です」(川野氏)。雑念を消そうとするのは逆効果。雑念を感じたうえで呼吸に伴う鼻の感覚や体が膨らむ感覚に戻っていけばいい。雑念と集中の間を何度でも行ったり来たりすればいいという。
「重要なのは、1回での効果を期待しないことです」と川野先生は強く語る。「2〜3カ月以上継続することでだんだんと心が癒やされ、いつの間にか不安を手放すことができるのです」。
■男も女もパートナーとの“向き合い方”を見直す
眠っている間に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」や脚がむずむずする「レストレスレッグス症候群」など、身体的な異常が眠りを妨げることが知られている。こうした不調は、適切な治療を受ける必要があるが、それ以外にも身体的な原因で不眠気味になることも。
順天堂大学泌尿器科の井手久満教授は「不眠症の人は男性ホルモンであるテストステロンが低いことがわかっています」と言う。男性の更年期障害で井手氏の元を訪れる患者の悩みで最も多いのが「睡眠の質の低下」だという。
![パートナーと手をつないで男性ホルモンを増加させる](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/1/1200wm/img_e1ff4e38d55072234922bedd8c474c32484716.jpg)
テストステロンは20歳を過ぎると、ゆっくりと下がっていく。テストステロンの低下が不眠をもたらすとのエビデンスはないが、不眠と何らかが関係していることは確かなようだ。また、テストステロンが低くなると、疲れやすくなり、やる気が出ないなど、さまざまな不調が現れる。そんな場合は筋トレや運動をして活動的に過ごすとテストステロンが上がる。
「女性と接するとテストステロンが上がるとの論文もありますね」(井手氏)
女性の場合は冷えによる不眠も考えられる。自分に合った睡眠環境を整えることを心がけたい。
![パートナーとベッドを分けて寝てみる](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/f/1200wm/img_2f793273c31a87a9f182e02646966986476218.jpg)
■寝具と照明の工夫で快眠へのベストな部屋づくりを
「最近は枕にこだわる人も増えましたが、実は枕だけ工夫しても意味はありません」(三橋氏)
枕を買うときには店舗で高さなどを計測して自分に合ったものを探すが、そのときに利用したマットレスと自宅のマットレスは違う。家のマットレスがへたっていれば、枕を変えても意味がない。マットレスの寿命は使う人の体重や製品によっても変わるが、20cm程度の厚いマットレスの場合、7〜10年で交換が必要になるという。朝起きたときに腰がだるい、痛い場合にはマットレスがへたっている可能性が高い。枕とマットレスをセットで選ぶのが理想という。また、年齢によっても最適な枕の高さは変わる。
![ベストな枕の高さは毎年変わる](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/e/1200wm/img_ae6be3d305634d363995868619af7870517301.jpg)
「枕の高さといびきは大きく関わっていますが、いびきをかきにくい枕の高さの許容範囲が年齢とともに狭くなっていくのです」(同)
室内の明るさも睡眠に影響を及ぼす。三橋氏によると「『夜中トイレに行ったあと寝れないんです』と相談しにくる人がいるのですが、電気をつけないようにアドバイスした途端に眠れるようになったという声もよく聞きます」と言う。自分に合った環境を整えるのも、快適な睡眠への大事な一手だ。
![寝具と照明の工夫](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/f/1200wm/img_1f7062f1205b10fa6e9a8e7f14d98af5476534.jpg)
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月5日号)の一部を再編集したものです。
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林香寺住職、精神科医
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。禅修行の後、2014年臨済宗建長寺派林香寺(横浜市)住職。寺務の傍ら都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたる。『人生がうまくいく人の自己肯定感』(三笠書房)、『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。
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レム睡眠研究者
東京大学理学部卒業。2022年より東京大学大学院理学系研究科教授、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構客員教授を兼務。睡眠を研究し、認知症や精神疾患などに対する予防治療にも挑む。
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快眠セラピスト
睡眠環境プランナー。寝具メーカーの研究開発部長を経て、2003年に独立。個人相談のほか、企業の睡眠関連事業にも広く携わる。今まで枕のフィッティングは1万人以上に。著書に『驚くほど眠りの質がよくなる 睡眠メソッド100』。
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(林香寺住職、精神科医 川野 泰周、レム睡眠研究者 林 悠、快眠セラピスト 三橋 美穂 文=向山 勇 図版作成=大橋昭一)
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