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投資詐欺の平均被害額は540万円でほとんどが取り戻せない…SNS投資詐欺に抗う最後のチェックポイント

プレジデントオンライン / 2024年6月25日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

SNS広告などをきっかけとした投資詐欺の被害が増えている。ライターの高橋ホイコさんは「SNSを使ったFX投資詐欺に加え、著名人本人や関係者を名乗って勧誘するパターンが急増している。しかも、投資詐欺で失ったお金は取り返すことがほとんどできない」という――。

■SNSなどをきっかけとした投資詐欺が横行

SNSで「株で勝ちたい人必見」「FX自動売買で不労所得」といった投資に関する広告を目にしている人も多いと思います。経済アナリストの森永康平さんが、父親の森永卓郎さんや自身になりすました投資詐欺が増えていると警告したことも記憶に新しいところです(参考:プレジデントオンライン「森永卓郎&康平親子をかたった投資詐欺で約9億円被害…康平氏自ら解説『手口を知っていても引っかかる』ワケ」2024年4月22日)。

国民生活センターでも、こうした問題に対して危機感を持っています。全国の消費生活センターに寄せられたFX取引に関する2023年度の相談件数は4309件と、前年度の2536件より大幅に増加しました。ここで目立っているのも、SNS広告などインターネットをきっかけにした詐欺被害なのです。

被害者は広告を見たあと、LINEのグループチャットなどに誘われて、そして金銭を奪われていきます。“絶対儲かる話などない”と誰もがわかっているのに、なぜ引っかかってしまうのか。国民生活センターに取材して、その背景を聞きました。

※消費生活センターは、商品の購入やサービスの利用に関する契約トラブルの相談を受け付ける都道府県・市区町村の機関。国民生活センターは、これらの機関に寄せられた苦情相談情報を収集し、情報提供を行っています。

国民生活センターではリーフレットを制作するなどして注意を呼びかけています(国民生活センター「SNS上の投資グループ内で勧誘されるFX取引に注意」リーフレットより
国民生活センターではリーフレットを制作するなどして注意を呼びかけています(国民生活センター「SNS上の投資グループ内で勧誘されるFX取引に注意」リーフレット板より

■LINEで「儲かった話」を見聞きするうちにその気に

SNSの広告をクリックすると、そこからLINEなどのグループチャットに誘導されます。名目は、投資セミナーグループだったり、株の情報を交換するグループだったりさまざまです。

そこには複数の人がいて、投資について話をしています。例えば、こんな事例がありました。グループに“先生”と呼ばれる人物がいて、ふだんは株など投資の指南をしています。あるとき「今月はFXが稼ぎやすい」と発言したことで、グループみんなでやることになったそうです。

この流れで「先生が言ったとおりにやったら儲かった!」と発言するメンバーがいたらどうでしょう。他人の成功体験を見聞きするうちに、自分もやってみようという気になるわけです。

こうして興味を持ったころ、FXの口座開設を持ちかけられます。

■気がつくと大金をつぎ込み、出金できない状況に

グループ内の“FX取引所担当者”がコンタクトを取ってきて、FX取引アプリを使うよう促されるケースが多いようです。

もちろん最初は半信半疑です。ですので、少額で取引を始めます。指示通りに口座を開設し操作をするといきなり利益が出てしまいます。50万円が倍になったと話す相談者もいました。こんなことが起こったら興奮するでしょう。そして出金をしてみると、自分の口座にちゃんと振り込まれます。これなら信用できると確信して、大金をつぎ込んでしまうのです。

ここからは大変です。たとえ画面上に残高1000万円と表示されていても現金にできません。出金しようとすると「税金として160万円を振り込まないと出金できない」「口座残高50%の証拠金が必要」など、いろんな言いがかりをつけられます。残高があるから大丈夫と思って払ってしまったりするのですが、結局また何か理由をつけられて出金できません。

そして最後には、相手と連絡が取れなくなってしまいます。SNSでしかつながっていませんので、姿を消すのは簡単です。グループチャットから退出されただけでどうしようもなくなる、なんてことも起こるのです。

スマートフォンを使用している人の手元
写真=iStock.com/loveshiba
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/loveshiba

■「個人名義の口座」に振り込んではいけない

この手口ですが、あらゆることが“ウソ”な可能性があります。まずは、グループチャットで「儲かった」と発言していた人たちです。被害者は自分と同じように投資に興味を持った仲間だと感じているかもしれません。ですが、サクラである可能性があります。また、使用していたFX取引アプリもウソかもしれません。本当の取引はしておらず、画面上だけで利益が出たように見せかけているだけの可能性が高いのです。

アプリがフェイクだと見抜ければいいのですが、投資初心者には至難の業でしょう。FX取引は金融商品取引業の登録が必要です。登録業者かどうかは金融庁のホームページで調べることができます。ここに名前がなければもちろん怪しいと断言できます。ですが、名前があったとしても、本物をかたったニセモノということがあるのです。

では、どうやって身を守ったらよいのでしょうか。覚えてほしいワードは「個人名義の口座には振り込むな」です。

■共通点は「振込先の名義」がおかしいこと

この手の投資詐欺にはよく見られる共通点があります。それはFXの口座に入金する際の、振込先の名義がおかしいことです。個人名義だったり、FX取引している会社とは別の業者名だったりします。

普通に考えたら不審に思うはずなのですが、「海外だから」とか「いったん自分が預かって投資するから」など違和感を持たせないような口実を作ってきます。被害者の方も「大儲けする方法見つけた!」と興奮しているタイミングですので、お金を振り込みたい気持ちが勝ってしまうのかもしれません。

チャートと積み上げたコイン
写真=iStock.com/ipopba
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ipopba

ですが、ここで踏みとどまってほしいのです。ここで気づいて被害を免れた人ももちろんいます。「個人名義だったら振り込まない」。このキーワードを肝に銘じておいてほしいのです。

■著名人やその関係者を名乗る投資詐欺が急増中

投資詐欺については、著名人本人や関係者を名乗って勧誘するパターンが、このところ急増しています。相談件数で言えば2023年度は前年度の約10倍にせまる勢いです(参考:国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」2024年5月29日公表)。

例えばこんな相談です。前述のFX投資詐欺と多くの共通点があります。

SNSに海外の女性からメッセージが届いた。女性は有名投資家のめいで自身も会社を経営しているとのことだった。その女性から「絶対に負けない投資家を知っていて自分も投資で儲かったので、あなたも儲けてほしい」と言われFX投資のアプリをダウンロードした。FX投資の売買タイミングを教えてくれるアプリで、1回につき10万円から15万円程の金額をアプリ内に作った口座に振り込んだ。総額200万円程を投資したところで残高が1300万円になった。

利益が出て喜んでいたら、「不正な行為があった可能性がある」と言われ、口座が凍結され、その解除に270万円が必要と言われた。残高が1300万円あると思っていたので、カードローンで借り入れをして270万円を振り込んだが、その後、女性とも連絡が取れなくなり、アプリも開かなくなった。詐欺ではないか。どうすればいいか。
(2023 年3月受付 50歳代 男性)

森永さんのような有名人を広告で無断使用した投資詐欺は、一部にすぎないことがおわかりいただけるのではないでしょうか。“先生”や“師匠”と名乗ったり、有名人の親戚やアシスタントを装ったり、そのバリエーションは幅広く存在します。

■支払ったお金は取り戻せないことがほとんど

国民生活センターによると、2023年度に寄せられたFX取引に関する相談で、すでに支払ってしまったお金の平均額は540万円にのぼっています。悲しいことに、この手の投資詐欺は取り返すことがほとんどできません。

投資において最も重要なことは詐欺に遭わないことです。利益をあげる方法を知ることが一番ではありません。現状のSNS広告は、審査が十分に機能しているとは評価できない状況です。さまざまな情報源があるなかで、詐欺との距離感が近いことは否定できないでしょう。

筆者も新NISAをやっていますが、始める前には図書館で10冊程度の本を借りて読みました。安くすませたいからではなく、選書されている分、詐欺に遭いにくいだろうと考えたからです。この方法なら絶対安心というわけではありませんが、投資に興味が湧いたとき、どう行動したら詐欺に遭う可能性が下がるのか、そういう視点を持つことも大事かなと思います。

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高橋 ホイコ(たかはし・ほいこ)
ライター
元国民生活センター職員。在職中は商品テスト、相談情報データベース(PIO-NET)、ホームページを通じた広報活動の業務に従事。現在はフリーライターとしてウェブメディアを中心に活動中。

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(ライター 高橋 ホイコ)

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