1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

実は睡眠時間はもっと削れる→自由時間めちゃ増える…"5時間快眠"推奨の医師「即寝・即起き」の技術大公開

プレジデントオンライン / 2024年7月2日 17時15分

坪田聡 日本睡眠学会所属医師、雨晴クリニック院長。2006年から睡眠コーチングを創始。著書に『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」 睡眠専門医が教えるショートスリーパー入門』(ダイヤモンド社)など多数。

■睡眠時間を健康的に削減する方法とは

厚生労働省が推奨する成人の睡眠時間は6時間以上。しかし、「毎日6時間寝ている」という人でも、脳波を測ってみると「実際の睡眠時間は5時間」ということもしばしば。布団に入っても寝つけない時間も睡眠時間に換算してしまっていることが原因です。私が推奨する「5時間快眠法」では、「布団にいる時間はきっちり眠る」のが大原則。また、睡眠自体の質を高めることにより、日中のパフォーマンスを上げていこうとする考え方です。

遺伝的な「ロングスリーパー」はむやみに睡眠時間を減らすと健康に影響が出る恐れがあるので要注意。しかし、現状6〜10時間寝ている人のうち8〜9割は「バリアブルスリーパー」と呼ばれる体質で、健康的に睡眠時間を削れる可能性があるといわれています。

5時間快眠法には、3つのポイントがあります。①即寝・即起き、②睡眠の質向上、③仮眠の上手な活用です。順に解説していきましょう。

■「生活習慣」「寝室環境」「ストレス緩和」がカギ

「即寝・即起き」とは、睡眠に付随する無駄な時間をそぎ落とすこと。「布団に入ってから眠るまで」「目が覚めてから布団を出るまで」の時間をできるだけ短くしようというものです。特に、「寝ようと思うほどに目がさえてしまう」など、「即寝」に関する悩みをもつ方は多いのではないでしょうか。

健やかに眠りにつくためには、大きく3つの要素が関係しています。ひとつめは「生活習慣」。中でも睡眠への影響が大きいのが電子メディアの利用です。パソコンやスマホのブルーライトは文字通り青い光であり、人間はこれを見ると「日中の空の色」だと勘違い。睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌が減少し、寝つきが悪くなってしまうのです。就寝の1時間前にはやめるのが理想ですが、まずは30分から始めましょう。ただやめるのでは手持ち無沙汰になってしまうので、ストレッチや読書など、代替アクションを決めておくのがおすすめです。

次に重要な要素が「寝室の環境」。照明は真っ暗か、豆電球にしましょう。音は一般的に40デシベルを超えると睡眠に悪影響があるとされています。家電の稼働音だけでもこの基準を超える場合があるので、かなり静かな環境が求められます。手軽な対策としては、遮音カーテンや耳栓。逆に、「マスキング」といって、好きな音楽などをかけることで、騒音を気にならないようにするという方法もあります。さらに、「温度と湿度」も重要。温度は、冬は15〜16度、夏は26度程度、湿度は年間を通して50〜60%が理想。これからの時期は特に、就寝中も上手にエアコンを活用して夜間熱中症を防ぎましょう。

【図表】「5時間快眠法」3つのポイント

「即寝」のため、忘れてはならないのが「ストレスの緩和」です。人はリラックス状態でないと健やかに眠れないので、寝る前に極力ストレスを取り除いておく必要があります。おすすめは、ノートを活用したメソッド。今日あった嫌なことを書き出して、ノートを閉じたら「今日はもうおしまい」と言って、引き出しにしまう。簡単なことですが、気持ちを切り替える効果が期待できます。逆に、「3 good things」という今日あった良かったことを3つ書き出す方法もあります。

軽めのストレッチもいいでしょう。硬くなった筋肉をほぐすと、心もリラックスできます。また呼吸法もストレスの緩和に非常に効果的。できれば腹式呼吸、難しければ胸式呼吸でも構いません。ポイントは、吸う時間に対して倍の時間をかけて息を吐くこと。これにより交感神経から、リラックスのための副交感神経優位の状態に切り替わり、スムーズな入眠を促します。

「即起き」については、「即寝」のパートで解説した光の覚醒効果を逆手にとって活用するといいでしょう。防犯上の問題がなければ、カーテンを少し開けておいて、朝日が入ってくるようにしておくのも手。照明にタイマー機能があればぜひ活用しましょう。

さらに、「即起き」で重要なのは、「目が覚めたらすっきりと起きられるんだ」と信じる「気持ち」です。私たちの半数近くには、実は「自己覚醒能力」というものが備わっています。これは、「何時に起きる」と強く思うことにより、それに近い時間に起きることができるという能力。練習すると磨けるスキルでもあるので、アラームで保険をかけつつ、チャレンジしてみる価値は大いにあると思います。

【図表】「5時間快眠法」の全体イメージ

■「睡眠の質」を左右する食事・飲酒・入浴

「即寝・即起き」で、布団の中での無駄な時間を省いたら、次は「睡眠の質向上」。即寝のメソッドのほとんどが、そのままよりよい睡眠につながりますが、ほかにも実効性の高い方法がいくつかあるのでご紹介します。

まず非常に重要なのが、「食事の規則性」。食事をとると血糖値が上昇し、その後インシュリンが出て血糖値が低下。これによって体内時計が整うと考えられています。そのため、朝昼晩の3食を決まった時間に食べ、体内時計を正しい時間に“同期”することが大切です。また食後3時間は消化で胃腸が働いているので、このタイミングで寝ようとしても深く眠れません。仮に深夜0時に就寝するならば、午後9時までには夕食をすませるようにしましょう。帰宅時間が遅くなる場合は「分食」といって、午後7時前後に軽食、帰宅後にカロリーの低いスープなどをとると胃腸の負担を軽減できます。

また、食事に関連してもう一点気をつけたいのが、お酒です。アルコールが分解されるときに体内で発生するのがアセトアルデヒド。この物質は睡眠を妨げるため、翌日に眠気や疲労が残ることが多いのです。食事と同様、飲酒も就寝の3時間前までには終えることが理想です。さらに覚えておきたいのは、食事をとると体温が上がるということ。人間は体温が下がってくると眠くなるので、その点からも食べてすぐに寝るのは得策とは言えません。

しかし、この「体温と眠気」の関係性を逆に利用するならば、眠りたい1〜2時間前に、一度体温を上げておくというのもひとつの方法です。そうすれば、その後徐々に体温が下がり、自然に眠気がやってくるというわけです。体温を上げるために有効なのは入浴。内臓まで温まり、その熱が徐々にゆっくりと手足から放出されていきます。深部体温が低下し、これに伴い眠気がやってくるという仕組みです。

■上手な「仮眠」で夜間睡眠効率をアップ

さらに快適に眠るために心がけてほしいのが、「仮眠」。夜の睡眠を妨げると思うかもしれませんが、上手に取り入れることでパフォーマンスを上げることができます。その大きな理由が、人間に訪れる眠気のピーク。このタイミングは1日に2回あり、午前2〜4時と、午後2〜4時といわれています。前者は多くの方が眠っている時間帯ですが、問題は後者。これを先取りして、午前12〜午後1時のランチタイムに仮眠をとると、頭がすっきりとして午後も精力的に活動を継続。結果、夜間ぐっすり眠れるというわけです。

私がおすすめする仮眠は、①ナノ・ナップ(一瞬〜数秒)、②マイクロ・ナップ(1分)、③ミニ・ナップ(10分)、④パワー・ナップ(20分)、⑤ホリデー・ナップ(90分)の5種類。①と②は椅子に座ったまま、③④は同様でもいいですし、机に突っ伏してもOKです。この4つは仕事中でも取り入れやすく、脳をすっきりとさせて、その後の生産効率アップが望めます。20分より長く寝てしまうと、眠りが深くなり起きられなくなる恐れがあるのでNG。おすすめは、眠る前にコーヒーなどを飲んでおくことです。カフェインの覚醒効果のタイムラグで、仮眠から起きるころに目が覚めやすくなります。

最後の⑤ホリデー・ナップは、その名の通り休日にとることを想定したもので、この仮眠のみ横になってもOKです。睡眠不足を解消しようと、「休日は昼まで寝ている」という話をよく聞きますが、これは推奨できません。というのも、起床時間を平日から2時間以上ずらすと体内時計が狂い、月曜の朝が一層辛くなってしまうから。これは、「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)」と呼ばれ、近年社会問題にもなっています。起きる時間のずれは2時間までにとどめ、ホリデー・ナップをとるほうが効率的なのです。

平日も休日も、注意したいのは仮眠をとる時間帯。午後3時までにとらないとその夜の睡眠に影響するので、それまでに済ませておくのが鉄則です。

【図表】坪田先生がすすめる5つの仮眠とその効果

■成功の秘訣は目的の明確化と具体化

ここまで読んで「実際に5時間快眠法に挑戦したい」と思ってくださった方もいるかもしれません。でも、いくらやる気があっても、急に睡眠時間を削るのはNG。人間の体は急な変化には対応できません。週に15分を目安に、少しずつ睡眠時間を短くしていくのがポイント。実践中は「起きているときの自分の健康状態のチェック」も忘れずに。睡眠を削ったことで昼間ずっと眠気が取れない場合は、減らす睡眠時間をさらに少しずつにするなど、体と対話しながら進めましょう。

体質的に続けられそうなら、もっとも重要なのは「目的の設定」です。5時間快眠法はあくまでメソッドでしかないので、削った時間で「自分が何を成し遂げたいか」というゴールがなければ、長続きしません。私の場合は、本業以外に原稿執筆する時間を確保したくて、この睡眠法の実践を始めました。今も仮眠は日常的に取り入れています。ほかには、就寝前のストレッチ。スマホ、パソコンは、寝る30分前までと決めています。「理想は1時間前まで」と皆さんにお伝えしているんですが、これがなかなか難しい。

でも、すべてのメソッドを完璧に実行できる人はいません。優先順位をつけて、できることから楽しく続けることが何よりも大切です。睡眠は、非常に個性的なもの。まずは自分の生活スタイルを観察しつつ、最適な睡眠法を見つけていただきたいと思います。

起床してストレッチをする男性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo
プレジデントオンラインアカデミーはこちらから
動画でも学ぶ「実践! 元気が出る睡眠革命」
プレジデントオンラインアカデミーでは、坪田聡さんによる「元気がいいショートスリーパーのすごい眠り方」のレッスンをご覧いただけます

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月5日号)の一部を再編集したものです。

----------

坪田 聡(つぼた・さとる)
日本睡眠学会所属医師、雨晴クリニック院長
日本睡眠学会所属医師、雨晴クリニック院長。2006年から睡眠コーチングを創始。著書に『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」 睡眠専門医が教えるショートスリーパー入門』(ダイヤモンド社)など多数。

----------

(日本睡眠学会所属医師、雨晴クリニック院長 坪田 聡 構成=中村真紀)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください