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「ニンニクマシマシは正しい」スタミナ疲労回復効果プラス脳機能・抗がん・動脈硬化・高血圧に役立つ研究報告

プレジデントオンライン / 2024年6月28日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/photosimysia

■代謝を高めるダイエット効果も

今、旬の時期を迎えているニンニクは、料理のスパイスとして親しまれているが、古くは貴重な薬として用いられてきた。エジプトでは紀元前からピラミッド建設に従事した労働者のスタミナ源として配られ、怪我をしたときにはそのしぼり汁を消毒にも使っていたといわれる。日本でも抗菌作用、抗感染症などの働きが注目され、かつては赤痢の特効薬としてもニンニクが利用されていたようだ。古来、強壮剤としても使われている。

そして今も、日本医師会らが監修する『健康食品・サプリ「成分」のすべて ナチュラルメディシン・データベース』(同文書院)では、「広範囲な病気および疾患の予防や治療のための『くすり』として用いられている」とある。膨大にある研究報告の中で、有効性レベルが最も高いものは「動脈硬化」に対するものだ。「特定のニンニク粉末サプリメントを一日2回、24カ月にわたり摂取すると、動脈硬化の進行が抑制される」などと報告され、実際にヨーロッパの医療現場では動脈硬化薬として使用されている。そのほか高脂血症や高血圧症の改善、抗がん作用、脳機能維持など数多くの研究が発表されている。

「ドイツではメディカルハーブとして登録されており、健康維持増進や疾病予防、また治療において機能性があると認められています」

と、健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏が説明する。

「がんのリスク低下については諸説ありますが、『結腸がん、直腸がんの発がんリスク低下にほぼ確実』と、WCRF(世界がん研究基金)とAICR(米国がん研究財団)が発表しています。ただ、その効果が得られる摂取量、摂取頻度を明らかにしにくいところが、ニンニク研究の難点ですね。品種ごとに栄養価が異なることもあります」

ニンニクを生のまま、あるいは加熱して食品として取る場合と、ガーリックオイルやガーリックパウダーとして料理に取り入れる、抽出液を含むサプリメントとして取る場合などでも違いがあるが、いずれも古くから知られる機能成分は、臭い成分のもとになる「アリイン」だ。切ったりすりつぶしたりすると、アリインが酵素の作用によってアリシンという強力な臭い物質に変化する。アリシンは不安定な物質であるため、いろいろな物質に変化し、さまざまな働きをする。

「例えばアリシンがビタミンB1と結合するとアリチアミンという物質になって、ビタミンB1の吸収を促進し、その働きを持続させます。本来ビタミンB1は水溶性なので体内に長く蓄えられませんが、アリシンと結合することで吸収が良くなり、体内に蓄えられやすくなって、疲労回復効果が長続きします。ニンニクにスタミナ効果があるといわれる所以ですね」(望月氏)

加えてニンニクはエネルギー代謝を高め、ダイエット効果もある。ただし、エネルギーの源自体ではないため、タンパク質とセットで取ったほうがいい。車にたとえると、エネルギーのもととなるガソリンは、糖質や脂質、タンパク質で、ニンニクはあくまでエンジンの回転を良くするエンジンオイルなのだ。マウスの研究では高タンパク質の食事とセットにすることで、男性ホルモンのテストステロンや筋肉形成が促される結果も出ている。次項(画像)で包丁を使わずにニンニクとタンパク質をセットで取れるレシピを紹介するので参照してほしい。このレシピでは、鶏肉に含まれるビタミンB1とニンニクのアリシンが結合し、望月氏が解説するアリチアミンを生み出せる(しかも鶏肉にも抗疲労成分が含まれるので効果倍増だ)。

■食前の乳製品で口臭を和らげられる

漢方で考える薬膳としても、ニンニクには疲労回復・強壮・免疫力を高める作用があるので、これから夏に向けて心身がバテたときにお勧め。日本漢方連盟理事長で漢方平和堂薬局店主、横浜薬科大学客員教授の根本幸夫氏がこう話す。

「体を温める作用が強く、気管支の粘膜を強化して、虚弱体質の改善もはかれます。また消化促進効果があるので、風邪などで弱った胃腸を整えるのに良いですが、生での多食は逆に胃腸に負担をかけるので控えましょう」

生食は、ニンニクに含まれる硫化アリル(アリシンが変化したもの)などが粘膜への刺激になるため、弱ったときは特に加熱していただきたい。

【図表】健康への近道! ニンニクが持つ5つの効果

さてニンニクを摂取すると、気になるのがやはり口臭。歯磨きでは消すことができず、食べたものが体から排出されるまで続く。完全に消失するまでは2日ほどかかるという。

「ただスパイスに使う程度の中華料理やイタリアンなどであれば、食後3時間くらいでほとんど気にならないレベルになると思います。またニンニクによる口臭を和らげるには、食前に牛乳やヨーグルトなどの乳製品を、あるいは食事中や食後に防臭作用のあるポリフェノールを含むものを取るといいでしょう。チョコレートやりんごでもいいですし、烏龍茶や緑茶などの飲みものも手軽ですね」(望月氏)

一般的な白いニンニクを高温高湿という一定の環境に置くことで熟成して黒くなる「黒ニンニク」では臭いがマイルドになって食べやすいという。

「熟成ニンニクとも呼ばれ、白ニンニクにはわずかしか含まれない、抗酸化作用や抗炎症作用をもつS-アリルシステインなどが熟成することで豊富になります。国産では青森県産が有名ですね」(同)

ニンニクをタンクに漬け込み、約2年の時間をかけて成分変化を待ち、熟成ニンニク抽出液を作っている湧永製薬は5月、熟成ニンニク抽出液の服用による運動能力の向上や認知機能の改善、歯周炎の改善効果を発表している。

食材としてのニンニクは食べた後の口臭が気になるが、逆にいえばそれこそが風味豊かで味わい深いともいえる。おいしいものを選ぶコツは「ハリがあってずっしりとし、りん片が隙間なく茎についているもの」(望月氏)だという。食べきれないときは薄皮をむいて1片ずつ丸ごとか、薄切りにしてラップに包み、保存袋に入れて冷凍すれば、2〜3週間はもつ。

最近は白や黒ニンニクだけでなく、目に良い作用のあるアントシアニン(ポリフェノール)を含む紫ニンニクや、ニンニクスプラウトも販売されている。新芽(スプラウト)には天然アミノ酸の一つであるGABA(ギャバ)も含まれ、通常のニンニクと同様に、血管に良い働きが期待できる。

一日の摂取量としては、生の状態で1片、加熱した状態で2〜3片程度が一般的だ。世界中で人々の健康を支えてきたニンニクを、自分に合った形で取り入れてみては。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月5日号)の一部を再編集したものです。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。本名・梨本恵里子。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)など。新著に、『野良猫たちの命をつなぐ 獣医モコ先生の決意』(金の星社)と『老けない最強食』(文春新書)がある。ニッポン放送「ドクターズボイス 根拠ある健康医療情報に迫る」でパーソナリティを務める。 過去放送分は、番組HPより聴取可能。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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