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どれだけ対策しても盗まれ、警察は頼りにならない…「外国人窃盗団」に狙われやすい日本車トップ10

プレジデントオンライン / 2024年6月23日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Phira Phonruewiangphing

アルファードやランドクルーザー、レクサスLXといった高級国産車が盗まれ、行方不明になる被害が相次いでいる。犯行にかかる時間はわずか数分と、手口は年々巧妙化しており警察も手を焼いている。マイカーを守るにはどうすればいいのか。フリーライターの一木悠造さんが取材した――。

■キーがなくても10分足らずで盗み出せる

帽子にマスク姿の3人組が深夜の住宅街に現れた。3人は駐車してある高級車に狙いを定め手際よく作業に取り掛かる。1人は防犯カメラ位置を確認しレンズに目張り。1人は電子機器のようなもので運転席ドア近くで何かをしている。

もう1人は辺りを見回し監視。ドアを開けた犯人は素早く乗り込み、キーがないのになぜかエンジンを始動させ他の2人も乗り込み立ち去っていった。10分もかからない手慣れた犯行だった――。

こうした自動車盗難が日本各地で発生している。警察庁によれば、日本の自動車盗難台数は2000年前後の6万台前後を記録して以降激減、ここ数年は年間で5000台前半で推移しているものの、2021年を底に増加傾向にある。

■盗難ランキング上位5位は常連

台数はピーク時の10分の1ほどになった自動車盗難だが、盗まれる車の種類は限定されている。自動車盗難を取材し続けている、自動車生活ジャーナリストの加藤久美子さんは、2023年の警察庁発表のデータと損保協会のデータを組み合わせてランキングし、最近はどの国産車が盗まれているのかを明らかにした。

【図表1】国産車盗難ランキング(2023年)

なお、損保協会のデータは「車両保険を支払った台数」、警察庁のデータは車両本体盗難で被害届が出された件数(=認知件数)。未遂は含まれていない。

トップ5は最近の自動車盗難では必ずランク入りする窃盗犯が最も好む車種だ。いわゆる軽トラックも上位に含まれているのは意外な気がする。なぜこうした車が狙われるのか。加藤さんが説明する。

「ランクルとかの盗難がすごく増えているという印象がある。ミニバンのアルファード、ランクルは非常に走破性能も耐久性も高くて紛争地域での活躍が期待される車なんですよね。モンゴル経由とかUAE経由でロシアに輸出されているだろうなとみています」

■日本車が格好の標的になってしまう理由

元警視庁外事課の勝丸円覚さんも国産車盗難の実態について自身の経験を基にこう話す。

「2000年代に私が外務省在外公館警備対策官の身分で赴任したアフリカ某国は、日本で盗難に遭った自動車の受け入れ地になっていました。日本で盗んだ車をヤードでばらして、部品の状態で中東のドバイを経由してアフリカのモザンビークとかケニアに揚げて部品の状態から組み立てるという流れをつかんだんです」

勝丸さんは収集した情報について警察庁を通じて各県警に通報。その結果、自動車盗難に関与したとして東海地方のヤードが摘発されたという。勝丸さんは盗難後の巧妙な隠蔽工作について明かす。

「日本から盗んだランドクルーザーを3台、同じ車種のものを用意して全部部品にするんですよ。組み立てる時に、この3台からばらした部品を混ぜて組み立てると被害車両が特定できなくなってしまいます。アフリカの一部の国々は車両盗難天国なんで、ひとつひとつの部品がどの車のどこの部品かがわかるようになっていました。日本の車はそこまでやっていないので格好の標的です」

ダーバン港、南アフリカの上空からの景色
写真=iStock.com/michaeljung
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/michaeljung

■「実行犯は外国人、首謀者は日本人」

先ほど紹介した加藤さんは、自動車盗難の背景について、ロシアのウクライナ侵攻も影響しているのではないかと推測する。

「ロシアへの経済制裁で西側の自動車メーカーが一挙にロシアからいなくなり、部品メーカーも撤退したので部品の流通もストップしているのでしょう。ロシアでは、現代的な新しい車を作ることができなくなってしまったのです」

実際に自動車盗難に関わるのはどのような集団なのか。勝丸さんは捜査経験を基にこう話す。

「関東近郊などに多く点在する、ヤードと呼ばれる自動車解体場が自動車盗難の拠点、隠れみのになっているのは間違いありません。首魁は日本人、盗む車の情報を集める情報屋も日本人、盗んだ車のナンバーをつけ替えるのも日本人、盗みの実行犯も日本人で、解体はアジア系外国人が多く関与している印象です。

日本人じゃないと、住宅街の下見もそうですし、実行も手先が器用な自動車整備の知識か経験がないとできません。一方で、ヤードに出入りする外国人などが盗んだ車を部品として解体しています。役割分担がなされた日本と海外の混成犯罪グループという意味では、一連の広域強盗『ルフィ事件』と構図が非常によく似ています」

■警察組織だけでは被害を止められない

ルフィ事件に関して警察庁は匿名・流動型犯罪グループ、通称「トクリュウ」と名付けて取り締まりを強化し、全国の警察にトクリュウの動向をウォッチする捜査班を設置している。勝丸さんは、昨今の自動車盗難のようなトクリュウが関与する可能性が高い組織犯罪には、警察組織のみによる対策では限界があると話す。

「盗難車の輸出や実行犯の不法滞在にしても、税関や入管との連携が欠かせません。しかしながら、情報共有が迅速化されているかと言われれば、私は疑問が残ると考えています。統一の情報共有システムが未だ存在していないために、各当局と警察との情報共有に時間がかかる現状があります」

一連の自動車盗難の拠点になっているとされる「ヤード」。このヤードは古物営業法にもとづいて各エリアの管轄の警察に営業届が出されている。基本的には警察の許可を受けている業者が営業しているということになるが、勝丸さんは「警察はもう一歩踏み出すべき」と強調する。

■「CANインベーダー」による盗難が主流に

「解体した車の部品などは、輸出する際には国内の自動車整備工場などを通過しないといけないんですね。盗難の多い自治体などでは『ヤード条例』もあるし、ヤードの営業は警察の許可が要りますから、警察は立ち入り検査を定期的に行っているんです。この検査を抜き打ちで頻繁に行うべきで、とにかく疑わしきヤードを叩くことが肝心」

いまや大規模な国際組織犯罪の様相を呈している自動車盗難。盗難の手口は年々巧妙化し、電子技術を悪用した手口が横行している。その代表格が「CANインベーダー」と呼ばれる器具を使った盗難だ。加藤さんはこのように解説する。

「CANインベーダーは車のネットワークの中心になる部分『CAN-バス』に特殊な機械を接続することで、鍵は開くしエンジンもかかるし全部使えるようになってしまう、いま一番多い自動車盗難の手口です」

■メーカーが導入した指紋認証も意味がない

加藤さんによれば、車種によっては鍵がなくても手を伸ばすだけでCAN-バスに届いてしまうものもあるという。こうした特定車種の盗難に自動車メーカーも本格的な予防策に乗り出し、指紋認証による開錠システムを導入。しかし、加藤さんによればそうしたシステムも役に立たない厳しい現状があるという。

「大手自動車メーカーがエンジンをかけるプッシュボタンに指紋認証システムを導入しました。しかしCANインベーダーは指紋認証をすっ飛ばしてエンジンをかけることができてしまうシステムなので、残念ながら指紋認証システムは意味がないんです」

加藤さんは「そのCANインベーダーに輪をかけて手ごわいツールが登場し始めている」と指摘する。そのツールは「GAMEBOY(ゲームボーイ)」と呼ばれるもので、まさにその名の通りゲーム機のような端末を使って窃盗犯は犯行に及ぶのだという。

■窃盗ツール「ゲームボーイ」のこわい機能

「ゲームボーイはスマートキーから出る電波を使うのではなく車から出る信号を使うんですね。車からどの時点で信号が出るかというと、犯人はまずドアハンドルを掴んでガチャガチャってやるんですよ。その時点で信号が出ているんです。それをゲームボーイがキャッチして、その信号の情報を解析する。数分から40分程度で解析が完了すれば、もう鍵として使えるということですね。1台のゲームボーイで20台分の鍵データをメモリーできるとされています」

加藤さんによれば、ゲームボーイでは最大50メートル離れた場所でも鍵データの解析ができるのだという。つまり、犯人が車から出る信号をドアノブを操作してキャッチしたら、すぐさまその場から立ち去れるという窃盗犯にとっては嬉しいアイテムとなってしまっているのだ。

こうしたゲームボーイなどを悪用する自動車盗難に私たちはどう立ち向かえば良いのか? 加藤さんは「やはり最新のツールでセキュリティを強化すること」の大切さを強調する。

■30万~40万円をかけても万全とは言えない

「現在、最強と言われているセキュリティシステムが存在しています。このシステムはCANインベーダーやリレーアタックと呼ばれる手法にはほぼ対応できるのですが、ゲームボーイだと破られてしまうこともあります」

加藤さんによれば、オーナーが使い方を熟知していなかったことで有名社外セキュリティを付けていて盗まれた例もあるという。効果が高いセキュリティシステムの多くは30万~40万円前後と高額だが、取り付ける店の技術や使い方の説明がしっかりされていないと宝の持ち腐れだという。

「セキュリティ対策として防犯カメラを何台も取り付けている方もいますが、犯人は狙いをつけて下見を繰り返し、カメラ位置など確実に把握して犯行に及んでいるのであまり効果はありません。一方、最新セキュリティシステムが付いていると犯人側が認識した時点で、犯行を見送るケースも多いようなので、防犯カメラにお金をかけるならセキュリティシステムにかけたほうが良い」

駐車場のポールに取り付けられたCCTVカメラ
写真=iStock.com/witsawat sananrum
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/witsawat sananrum

■マイカーを守るには自己防衛が重要

元警視庁外事課の勝丸さんも、防犯対策の組み合わせが有効と主張する。

「警察も昨今の自動車盗難には一筋縄ではいかないと手を焼いています。だからこそ自分たちで愛車を守るしかありません。家の囲いの塀を高くする。自分の車の、犯人が探し出せないようなところにGPSを設置するなど、デジタル・アナログ両面での防犯対策を組み合わせることが大事です」

卑劣かつ巧妙化する自動車盗難。愛するマイカーを守るには自己防衛が重要だ。予算の許す限りのセキュリティ対策で備えることをおすすめしたい。

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一木 悠造(いちき・ゆうぞう)
フリーライター
テレビ報道の現場で記者として主に事件取材を重ねてきたフリーライター。

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(フリーライター 一木 悠造)

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