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透析を始めたら二度とやめられず、4割が5年以内に死に至る…静かに進行する"沈黙の臓器"腎臓の危険な病

プレジデントオンライン / 2024年6月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/peterschreiber.media

胃腸の疲れは自覚しやすい。一方で、自覚症状がなく疲労を蓄積させていく臓器もある。糖尿病専門医の牧田善二さんは「内臓の疲れのなかでも、最も注意が必要なのが腎臓だ。腎臓は“沈黙の臓器”とも言われる。慢性腎臓病は静かに進行していき、気づいた時には手遅れになりがちだ」という――。

※本稿は、牧田善二『疲れない体をつくる最高の食事術』(小学館)の一部を再編集したものです。

■疲れには大きく3つの種類がある

一口に「疲れ」と言っても、さまざまな種類があります。

スタンフォード大学でアスレチックトレーナーを務める山田知生氏は、著書『スタンフォード式疲れない体』の中で、疲れには大きく3つの種類、すなわち「脳神経系由来の疲れ」「筋肉の疲れ」「内臓の疲れ」があると区分けしています。

たとえば、難しい問題について考えたり、長時間の会議に参加したり、あるいは、ストレスが溜まっているときなども、「あー、頭が疲れた」と感じるはずです。

激しい運動をすれば、筋肉が疲れます。逆に、デスクワークばかりで運動不足の状態が続くと、首や肩、背中がこります。これもまた、一種の筋肉の疲れです。

一方、内臓の疲れで自覚しやすいのが胃腸です。食べすぎたり、消化の悪いものや傷んだものを口にしたりすれば、胃もたれ、吐き気、腹痛、下痢などの胃腸症状がてきめんに現れます。

これら3つの疲れは、お互いさまざまにリンクしています。

適度な運動をしたことで「筋肉の心地よい疲労感」に包まれていれば、思考も前向きになり、内臓も活発に働きます。

■「腎臓」の疲労は全身の疲労を呼ぶ

でも、内臓が疲れていて体調が悪ければ、いいアイデアも浮かばないし、運動をする気にもなりません。頭も筋肉もネガティブな状態にし、悪い慢性疲労を蓄積させるという点で、内臓の疲れはタチが悪いのです。

内臓の疲れのなかでも、最も注意が必要なのが「腎臓」です。

腎臓は、胃腸のようにすぐに悲鳴を上げないけれど、とても疲れやすい臓器です。そして、腎臓の疲労は全身の疲労を呼びます。

みなさんが慢性疲労を蓄積させている裏には、腎臓の劣化があるかもしれません。

腎臓は空豆のような形をしており、背中側の左右に2つあります。

ストレスで胃がキリキリ痛んだり、緊張して心臓がドキドキしたりすれば、いやでもそれら臓器の存在を意識しますが、腎臓は「沈黙の臓器」と言われるくらいおとなしいので、どうしても軽視されがちです。

しかし、腎臓は非常に大事な「解毒」という役割を担っています。

私たちの体には、ただ生きて呼吸をしているだけで老廃物や毒素が溜まります。それらを体の外に出さなければ、疲れるどころか命を失ってしまいます。

その老廃物や毒素はどうやって体外に出ていくのかといったら、腎臓で濾過(ろか)されて「尿」として排泄(はいせつ)されるのです。

■「便」の排泄システムは案外単純

意外に思うかもしれませんが、私たちの健康を守るための、老廃物や毒素の最も代表的な排出ルートは「便」ではありません。便に含まれるのは、食べ物のカスと腸内細菌の死骸(しがい)、消化酵素などにすぎません。

専門的には、口から肛門までを「消化管」と呼びます。そして、この一続きの管は「体外」と捉えられています。食べ物のちくわの穴は外界に接しており、決してちくわの中身ではありません。それと同じようなものです。

食べ物、水、空気、消化液などがその管の中を通り過ぎ、途中で必要な栄養素や水分が「体内」に取り込まれ、残りの不要物が便として排泄されるだけ。便の排泄システムは、案外単純なのです(図表1参照)。

【図表1】消化管の仕組み
画像=『疲れない体をつくる最高の食事術』

■慢性腎臓病は静かに進行し手遅れになりがち

一方、尿は便よりもずっと神秘的で複雑です。体内で発生している老廃物や毒素を腎臓が濾過し、それら不要物だけを尿として体外に出しているのですから。

「すっきり快便」は気持ちのいいものですが、消化管の働きが悪くて便が排泄されなくてもお腹が張るくらいの話です。ところが、腎臓の働きが悪くて老廃物や毒素を尿に出せなくなったら即、命に関わります。

このように、腎臓は最強かつ究極のデトックス(体内に蓄積した有害物質を排出すること)機能を有しており、毎日せっせと働いてくれています。しかし、おとなしい働き者ゆえに、疲れていてもなかなか弱音を吐きません。

文句を言い出したときには相当に弱っており、回復不可能なことも多いのです。

腎臓病には大きく、急性と慢性があります。急性腎臓病は、急激に症状が現れる反面、適切な治療を行うことで多くが治癒します。一方、慢性腎臓病は、静かに進行していき、気づいたときには手遅れになりがちです。

まずは腎臓が大事な臓器だということを覚えておいてください。

■糖尿病が怖いのは糖尿病自体ではなく合併症

糖質過多の食生活を送っていれば、血糖値が上がり「糖尿病」になりやすいというのは想像がつくでしょう。現在、日本には約1000万人の糖尿病患者がおり、その予備群も含めると2000万人を突破すると言われています。

予備群の段階で適切な手を打てば健康体に戻ることも可能ですが、多くの人が「血糖値が高い」と指摘されても放置します。

日本の健康診断用紙の接写
写真=iStock.com/masamasa3
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/masamasa3

それどころか、明らかな糖尿病で「今すぐ治療が必要ですよ」と言われても、病院に行かない人がたくさんいるのです。

というのも、糖尿病自体は痛くも痒(かゆ)くもないからです。血糖値が300を超えるくらいから喉の渇きなどを感じ、500を超えてしまうと意識障害などを起こして命に関わります。しかし、200くらいまでならなんの自覚症状もありません。

だからといって治療しないでいると、糖尿病は確実に進行し、やがて合併症を起こします。糖尿病が怖いのは、糖尿病自体ではなく合併症です。

主な糖尿病合併症として、網膜症、神経障害、腎症などがあります。

網膜症がひどくなれば失明してしまいます。

神経障害によって痛みを感じなくなれば、壊疽(えそ)や心筋梗塞などが起きていても気づかず悪化させてしまいます。

■透析を必要とする慢性腎臓病患者は30万人を超える

しかし、それらに増して腎症は深刻です。網膜症や神経障害は予防対策も進んでいて、重症になる患者さんは減っていますが、逆に腎症は重症者が激増しています。

今、日本では透析を必要とする慢性腎臓病の患者さんが30万人を超えていて、そのうち約4割が糖尿病の合併症によるものです。

透析とは、腎臓がまったく働かなくなってしまった患者さんの血液を専門の器機に通すことで、老廃物や毒素を排出する治療です。糖尿病の合併症などで慢性腎臓病が進行すると、透析が不可欠となります。さもなければ、老廃物や毒素が溜まって、即、命に関わるからです。しかしながら、透析はとても過酷な治療です。1回5時間ほどかかり、その間ずっと腕に針を刺し、横になっていなくてはなりません。以前は1回4時間ほどで終えていたものの、少しでも長く時間をかけたほうが患者さんの体にとっていいことがわかり、今は5時間がスタンダードになっています。

■透析に入った患者の約4割は5年以内に亡くなっている

しかも、そうした治療を1日おきに週に3回受けねばなりません。かつ、この治療は、一度始めたらやめることはできません。

当然、仕事や家事を今までのようにやるのは不可能だし、旅行にもほとんど行けません。それほど大変な思いをしても、透析に入ると4割くらいの患者さんが5年以内に亡くなってしまいます。

こうした事態に繫がりかねない糖尿病は、みなさんが想像しているよりもずっとやっかいな病気です。

糖尿病をひとたび発症すると、糖質への感受性コントロールがきかなくなります。少し糖質を摂っただけで血糖値が急激に上がってしまい、もう健康な状態には戻りません。

糖質制限をすれば、そのときの血糖値は正常に保たれますが、それは糖尿病が治ったのではありません。糖尿病は一度罹ったら、ずっとつきあっていかなければなりません。

■がんや心筋梗塞のリスクも上がる

また、前述した3つの合併症だけでなく、糖尿病があるとがんや心筋梗塞、脳卒中、認知症、骨粗鬆症、歯周病などのリスクが上がることがわかっています。

牧田善二『疲れない体をつくる最高の食事術』(小学館)
牧田善二『疲れない体をつくる最高の食事術』(小学館)

ですから、糖尿病には罹らないのが一番。そのために、自分の血糖値の状態と、そこからくる疲労について無関心でいてはなりません。

血糖値の乱高下が理由の慢性疲労があるのに、その根本原因に気づかずにいたらどうでしょう。「疲れを取るため」と、さらに甘い物を食べたり、エナジードリンクを飲んだりすることでしょう。

その結果、本格的な糖尿病になり、やがてそれをひどくして腎臓をダメにしかねません。

慢性疲労の原因を正しく理解し、対処することが絶対に必要なのです。

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牧田 善二(まきた・ぜんじ)
AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。 2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。 著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。

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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)

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