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価値観を押しつけて「怒り」をばらまいている…周囲と衝突を繰り返す人がよく使う「2文字の言葉」

プレジデントオンライン / 2024年6月26日 16時15分

戸田久実さんと澤円さん - 写真=石塚雅人

怒りに任せて不本意な言動を取ってしまい、後悔したことはないだろうか。日本アンガーマネジメント協会代表理事の戸田久実さんは「自分が何に対してどれくらい怒るかという記録をつけるといい。数値化することで怒りをコントロールしやすくなる」という――。

※本稿は、YouTubeチャンネル「Bring.」の動画「『怒り』とはなにか? 自分のなかにある『~べき』思考が怒りを生み出す」の内容を再編集したものです。

■「怒り」は必要不可欠な感情

【澤円】戸田さんのご著者などを読むと、「怒りと上手につき合うには、怒りとはなにかを知ること」が重要だと書かれています。ストレートにお聞きしますが、「怒り」とはなんなのでしょう?

【戸田久実】もちろん、怒りとは感情のひとつです。喜怒哀楽という言葉があるように、嬉しい、楽しい、悲しいなどと同様に自然な感情ですから、消し去ることはできません。

【澤円】つまり、もともと人間にプリインストールされているものということですよね。なんらかの役に立つからこそ、怒りという感情が備わっているということなのでしょうか。

【戸田久実】怒りは、「防衛感情」と呼ばれることもあります。つまり、自分の安心・安全を守るために備わっている必要な感情です。澤さんが階段を下りている最中に、後ろから走ってきた人にぶつかられて危うく転げ落ちそうになったとしたら、「なんだよ、危ないな!」と怒りの感情が湧いてきますよね。

■「怒り」は使い方次第でプラスに働く

あるいは、誰かの攻撃的な言葉で自尊心を傷つけられたり、自分が大切に思っている人やものに危害が及びそうになったりしたときにも怒りが湧いてくるはずです。そうして、自分の心や体、大切なものを守ろうとしているのです。

その他にも、怒りは感情表現のひとつでもあり、怒りをもってなにかを表現することで、自分の本気度や真剣さが相手に伝わることもあるでしょう。ただ、怒りは感情のなかでもエネルギーが強い感情のため、振り回されないようにすることが注意点です。

また、怒りの強いエネルギーが行動を起こすモチベーションになってくれることもあります。誰かにばかにされるなどして怒りを覚え、「いまに見てろよ!」と奮起して行動し、好結果に結びつくようなケースですね。

■「べき」は怒りの原因になる言葉

【澤円】なるほど、扱い方さえ間違わなければ、怒りにも大きなメリットがあるということですね。少し話題を変えて、怒りの原因について考えていきたいと思います。僕は以前からあるゲームをやっているのです。それは「べき」という言葉を使わないというものです。「『べき』に縛られると思考が停止する」と考えているからなのですが、この「べき」は、怒りの原因にもなり得ると考えています。

【戸田久実】まさしくおっしゃるとおりです。「べき」とは、自分の理想や願望、期待、譲れない価値観などを象徴する言葉です。「約束の期限は守るべき」「トラブルがあったら報告をするべき」など、さまざまな「べき」があります。そういった「べき」が破られると、怒りが生まれるのです。

注意が必要なのは、「べき」は人によって違うということです。これだけ価値観が多様化しているなかで、「わたしの『べき』があたりまえだ」「これが常識でありふつうだ」と思い込むと、相手にその価値観を押しつけることになります。そうなると、周囲の価値観と衝突して怒りが生まれやすくなって当然です。

口論している男女のシルエット
写真=iStock.com/XiXinXing
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/XiXinXing

■「わたしはこう思う」と言い換える

【澤円】これだけコンプライアンスに対して敏感な時代ですから、「べき」の押しつけによってハラスメントにつながることにもなりかねませんよね?

【戸田久実】このことについては、特に世代間の違いに注意が必要だと思います。ハラスメントの多くは、「自分たちの世代ではこうだった」「こうあるべきだった」という意識から生まれます。でも、世代が違えばいまに至るまでに育ってきた環境も違いますから、それぞれの「べき」も異なります。

【澤円】僕の場合、「べき」を使う代わりに、「わたしはこう思う」「わたしはあなたにこうしてほしい」といった言い方をするように意識しています。

【戸田久実】それはすごくいい表現だと思います。「わたしはこう思う」「わたしはこうしてほしい」ということであれば、あくまでも自分の考えを述べているだけですから、押しつけにはならないでしょう。でも、「ふつうはさ」というように、自分の考えがあたかも常識であるように伝えはじめた途端に相手の反感を買ってしまう可能性があります。

■自分の「怒り」に点数を付ける

【澤円】先に「怒りは消し去ることができない」という話がありました。つまり、うまくつき合っていくしかないということですよね。

【戸田久実】そのつき合い方でも大事なのが、「怒りで後悔しない」ことではないでしょうか。「あんなふうに怒らなければよかった……」「あのとききちんと怒ればよかった……」と後悔すると、精神的なストレスを抱え込んでしまいます。ですから、怒る必要がある場面では適切な表現で上手に怒る、怒る必要がないのなら怒らなくて済むようにすることが大切です。

【澤円】そう考えると、怒りに関して自分がどういうタイプなのかを知っておくことも重要なポイントになりそうです。そのあたりはいかがですか?

【戸田久実】アンガーマネジメントのスタートは「自己認識」です。そこで取り組んでほしいのが「アンガーログ」という怒りの記録です。怒りを感じたとき、どのようなことがあってどのような怒りを感じたのかを記録するものです。

このとき、怒りのレベルを数値化するのもおすすめです。怒りに10段階で点数をつけるのです。0点がまったく怒りを感じていない状態として、10点は全身が震えるくらいの人生最大の怒りです。

そうして怒りを感じた場面や出来事と怒りのレベルを記録していくと、「自分はこういうときにこの程度の怒りを感じることがある」といったパターンが見えてきます。すると、同じようなことが起きたとき、「前に○点の怒りを感じたことだ」と客観的に自分の怒りを把握できるようになりますから、怒りにのみ込まれてしまうことがなくなっていくのです。

■「6秒待つ」と組み合わせると効果的

【澤円】よく見聞きする手法だと、「6秒待つ」というものもありますよね。

【戸田久実】ただこれは、怒りが生じても6秒も経てば理性が働くということであり、6秒経てば怒りが消えるわけではありません。「理性が働くまでの6秒間をやり過ごせるようになりましょう」ということです。そうするためにも、先に紹介した、怒りに10段階で点数をつける手法が有効です。6秒のあいだに、「この怒りは何点くらいだろう?」と考えることに意識が向き、怒りに任せた行動に走ることを回避することができます。

■「他人の怒り」からは距離を置く

【澤円】ここまでは自分の怒りについてお聞きしてきましたが、会社で誰かが怒られているのを目にしたり、悪口を聞いて嫌な気持ちになったりするなど、他人の怒りに巻き込まれてしまうケースもあります。そういう状況にはどう対処するのがいいでしょう?

【戸田久実】物理的距離を取るということですね。「この空間にいたら、自分もイライラしてしまう」「ストレスを感じてしまう」ということなら、コーヒーを淹れてくるとかトイレに行くなどしてその場を離れるのです。そうすれば、自分のなかで膨らみかけていたイライラやストレスをリセットすることができます。わたしの場合、心のなかで「実況中継」をしますね。

【澤円】怒っている人の状況を? 「徐々に顔が赤くなってまいりました!」といった感じですか?

【戸田久実】そうです。その状況から心理的に距離を取ることができて、他人の怒りに巻き込まれなくなります。あたりまえの話ですが、他人の言動や思考は絶対にコントロールできませんから、物理的であれ心理的であれ、距離を取るという考え方が有効です。

【澤円】自分の怒りについては点数をつけて6秒やり過ごし、他人の怒りとは距離を取る――。怒りとうまくつき合っていける気がしてきました。

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戸田 久実(とだ・くみ)
アドット・コミュニケーション代表
日本アンガーマネジメント協会理事。立教大学文学部卒業後、服部セイコー(現 セイコーホールディングス株式会社)にて営業、その後音楽業界企業にて社長秘書を経て2008年にアドット・コミュニケーションを設立。研修講師として民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任する。著書に『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』など。

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澤 円(さわ・まどか)
圓窓 代表取締役
1969年生まれ。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報共有系コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任。2019年より現職。著書に、『外資系エリートのシンプルな伝え方』(KADOKAWA)、『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1 プレゼン術』(ダイヤモンド社)、伊藤羊一氏との共著『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)などがある。 Twitter:madoka510 Facebook:Madoka Sawa

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(アドット・コミュニケーション代表 戸田 久実、圓窓 代表取締役 澤 円 構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=清家茂樹)

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