「パンにはバターをたっぷり塗ったほうがいい」血糖値の上昇を緩やかにする"太りにくい炭水化物の食べ方"
プレジデントオンライン / 2024年7月3日 9時15分
※本稿は、牧田善二『疲れない体をつくる最高の食事術』(小学館)の一部を再編集したものです。
■「噛むこと」は体も心も疲れ知らずにするための基本動作
【基本1】丼ものより定食。早食いをしない
「なにを食べるか」によって、体に取り入れる栄養分が変わってくるのは当然のことです。さらに、疲労回復や健康維持には、それらを「どう食べるか」も非常に重要です。
食事の習慣としてまず大事なのは、ゆっくり「よく噛む」ことです。
食事内容は同じであっても、落ち着いた気分で食べれば心身の安らぎを得られます。それによって副交感神経が優位になり、リラックスできます。幸せホルモンであるセロトニンも放出されます。
そしてなにより、時間をかけることで血糖値の乱高下を防ぎます。
たとえば、茶碗1膳の米飯には、約50グラムの糖質が含まれます。この茶碗1膳の米飯を、早く食べればそれだけ一気に血糖値が上がります。
急激に上がった血糖値は、急激に下がってさまざまな不快症状をもたらし、慢性疲労を呼びます。
でも、ゆっくり食べれば、血糖値の上がり方が緩やかになります。
加えて、時間をかけてよく噛むことには、さまざまなメリットがあります。
そもそも、顎(あご)を動かす「噛む」という行為は、唾液を分泌させることはもちろん、胃腸の作動スイッチを入れてくれます。
脳の血流も良くなり、視床下部にも刺激を与えます。
つまり、噛めばそれだけ消化も良くなり、脳細胞の働きも活発になります。よく噛む食事こそ、体も心も疲れ知らずにするための基本動作とも言えるのです。
■「太る食生活」は「疲れる食生活」とイコール
また、噛めば噛むほど、脳に「食べているよ」というシグナルが届き、ほどほどの量で満腹感が得られます。
早食いしていると、シグナルが届かないうちにたくさんの量を食べてしまい、満腹を求めてさらに食べる量を重ね、肥満に繫がります。
本書の1章でも述べたように、太る食生活は、疲れる食生活とイコールです。
ただ、長年の習慣で身についた癖はなかなか抜けません。そこで、意識的に噛む回数を増やし、時間をかけましょう。
できれば、一口20回噛むとか、食べ始めて30分は食事を終えないようにするとか、具体的な数値を決めて測ってみましょう。
一口ごとに箸はしを置くというのもいいでしょう。
ランチで外食するときは、丼ものではなく定食を選びましょう。どこかで購入するなら、簡単につまめるおにぎりやサンドイッチよりも、食べるのに時間がかかりそうな弁当を選びましょう。
忙しい状況にあると、つい、「さっさとかきこんで、おしまい」という食事スタイルになりがちです。
しかし、そこで食べているものが自分の体をつくっているのだということを忘れず、気がせいているときほど「ゆっくり」を心掛けてください。
■同じものでも「食べ方」で血糖値は変わる
【基本2】主食は最後。食べる順番を工夫する
糖質(炭水化物)、タンパク質、脂質という三大栄養素のうち、血糖値を上げるのは糖質だけです。
タンパク質や脂質は、血糖値を上げません。
糖質の中でも、液体のものは消化の時間がかからないので、とくに急激に血糖値を上げてしまいます。ですから、糖質を摂るにしても、少しでも消化に時間がかかるように工夫すればいいわけです。
たとえば、ランチで注文した定食が、おかず、味噌汁、米飯という内容だったとしましょう。このとき、最初に米飯を食べると、早いタイミングで血糖値が上がります。
液体の糖質ほどではないにしても、多糖類の炭水化物がどんどんブドウ糖に分解され、血液中に吸収されるからです。ところが、最初におかずの肉や魚などを食べると、胃は、そのタンパク質をアミノ酸に、脂質を脂肪酸に分解する作業に入ります。
そこで、その後に米飯を食べれば、ブドウ糖がつくられるまでに時間がかかり、血糖値の上昇が緩やかになるわけです。
最終的には、おかず、味噌汁、米飯という、まったく同じ内容のものを食べたとしても、食べる順番によって、血糖値の変化に違いが出ます。
つまり、疲れるか疲れないか、太るか太らないか、体を壊すか壊さないかというところまで影響するわけです。
定食に、野菜の小鉢やサラダがついていたら、それを最初に食べるのもおすすめです。野菜の繊維質を消化するのに時間がかかるからです。
こうして、米飯やパンなどの主食を最後に回し、かつ、よく噛む食べ方をしていると、だんだんと主食(糖質)を残すことができるようになります。
そうなれば、完全に糖質中毒から脱出したと考えていいでしょう。
■炭水化物を「単体」で食べてはいけない
【基本3】具をたっぷり。炭水化物だけを避ける
米飯やパン、麺類などの炭水化物を食べるときは、「単体」にしない心掛けも大事です。
炭水化物だけだと、どんどんブドウ糖に分解され血糖値がみるみる上がります。しかし、そこにタンパク質や脂質が加われば、その消化に時間がかかり、血糖値の上昇が緩やかになるからです。
こうした研究は世界中で行われていますが、なかでも非常に興味深いものを紹介しましょう。『European Journal of Clinical Nutrition』に論文が掲載された研究では、健常者を対象に、「パンだけを食べた場合」「バターと一緒にパンを食べた場合」「オリーブオイルと一緒にパンを食べた場合」「コーンオイルと一緒にパンを食べた場合」の4つのパターンについて、血糖値の変化を調べています。
図表1を見てもらえば一目瞭然、「パンだけ」の血糖値が急激に上がっているのがわかるでしょう。
![【図表1】パンを食べたときの血糖値の変化](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/8/1200wm/img_2815702be08810a1e5ce55282958da9f272913.jpg)
■バターをたっぷり塗る、オリーブオイルに浸すのが正解
カロリーで考えれば、パンだけのケースが一番低くなります。
ところが、脂質を分解するという手間が入らない分、血糖値が上がりやすく太りやすいのです。
食パンブームは幾度もあり、数年前にも高級食パンブームが起きました。まずは「そのまま食べるのが一番」という売り文句をずいぶん耳にしました。
しかし、パンを食べるなら、バターをたっぷり塗ったり、オリーブオイルに浸して食べたりするのが健康上は正解です。
![トースト](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/e/1200wm/img_7ecea3859c8c3d80aaf0089d26f983e6390628.jpg)
あるいは、卵や野菜など、具をたっぷり挟んだサンドイッチもいいですね。ただし、ハムやベーコンなどの加工肉は添加物が多いので、あまり食べないほうが無難です。
■ごはんは「五目チャーハン」、そばは「山菜そば」に
米飯も同様です。
明太子や佃煮など少量の「ご飯のお友」で食べるより、五目チャーハンにしたほうがいいのです。
肉や卵のタンパク質、炒めるための脂質によって、米飯の糖質の分解・吸収が遅れるからです。
![牧田善二『疲れない体をつくる最高の食事術』(小学館)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/c/1200wm/img_ecf0a90dbe30ea087923766d649dccd5338849.jpg)
おそば屋さんに入ったときには、かけそばや素うどんではなく、山菜そばや月見そばなど、少しでも具の多いものを頼みましょう。
繰り返しになりますが、みなさんの血糖値を乱高下させ、みなさんを疲れさせ、みなさんを太らせるのは、カロリーの高いものではなく、糖質が多いものです。
しかも、その分解・吸収が早いほど悪い作用が起きます。
大事なのは、糖質を単独で活動させないこと。
単独で暴れ回ることがないよう、できるだけ、脂質やタンパク質というお目付役と一緒に食べましょう。
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AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。 2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。 著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。
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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)
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