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「コミュニケーションが苦手」は練習次第で必ず克服できる…「苦手」と「できない」の決定的な違い

プレジデントオンライン / 2024年6月27日 16時15分

戸田久実さんと澤円さん - 写真=石塚雅人

仕事のできる人のコミュニケーションにはどんな特徴があるのか。日本アンガーマネジメント協会代表理事の戸田久実さんと元日本マイクロソフト業務執行役員の澤円さんの対談をお届けする――。(第2回)

※本稿は、YouTubeチャンネル「Bring.」の動画「仕事の生産性を最大化するコミュニケーション術。『アサーティブ・コミュニケーション』の神髄に迫る」の内容を再編集したものです。

■水泳が苦手な人を「水泳障害」とはいわない

【澤円】仕事柄、僕は多くのビジネスパーソンに会いますが、「コミュニケーションが苦手」という人は驚くほどたくさんいます。日本人から見るとコミュニケーションが得意に思えるアメリカ人でさえ、あるアンケートでは7割の人が「コミュニケーションが苦手」と回答しているのだそうです。多くの人がコミュニケーションに苦手意識を持っている理由はどのような点にあると見ていますか?

【戸田久実】過去のコミュニケーションに関する失敗経験ではないでしょうか。それにより、「自分はコミュニケーションが苦手だ」と決めつけている人が多いように思います。

けれど、コミュニケーション能力を身につけることは、教習所で車の運転技術を身につけることと変わらないとわたしは捉えています。教習所で一度も失敗しない人はいませんよね? うまく駐車できなかったとか、クランクコースで車体をこすってしまうといった失敗体験を重ねながら運転技術を身につけます。

コミュニケーション能力も同様で、すぐにはうまくなりません。わたしはよく「苦手」と「できない」は違うと伝えます。場数を踏んでコツをつかんでいけば、必ず向上させることができます。

【澤円】確かに、「苦手」と「できない」は違いますよね。水泳が苦手な人を「水泳障害」とはいわないのに、コミュニケーションが苦手な人についてはなぜか「コミュニケーション障害」を略して「コミュ障」なんていわれ方もします。でも、水泳を練習すればうまくなるように、コミュニケーションが苦手な人だって練習次第でうまくなるはずです。

■相手も自分も尊重する「アサーティブ・コミュニケーション」

【澤円】コミュニケーションというと、戸田さんは『アサーティブ・コミュニケーション』(日経BP)というご著書を出されています。耳慣れない人も少なくないと思いますが、「アサーティブ・コミュニケーション」とはなんでしょう?

【戸田久実】ひとことでいうと、「相手も自分も大切にした自己主張、自己表現」のことで、ベースにあるのは「相互尊重」です。

【澤円】つまり、相手のいうことに対してただ「イエス」というコミュニケーションではないということですよね?

【戸田久実】会社といった組織がきちんと成果を上げるためには、リーダーなど誰かひとりの意見がつねに正しいとされる状況は好ましくありません。ときには部下の意見が正しいということだってあるのですから、若手であっても自分の立場や経験、能力などを卑下することなく自分の考えをうまく伝えられることが大切なのです。

【澤円】その技術はトレーニングで身につけるのですか?

【戸田久実】ロールプレイングを繰り返すといったトレーニングを行います。そのなかで、自分ではうまくコミュニケーションができていると思っている人にも、フィードバックすることもあります。例えば、「さっきから相手のいうことを全部否定していませんか?」「語調が強過ぎますよ」といった具合です。

赤い目隠しをしたビジネスパーソンたちがさまよい歩いている
写真=iStock.com/AndreyPopov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

■「どうせ聞いてもらえない」という思い込みをなくす

【澤円】つまり、自分ではコミュニケーションが得意だと思っていても、無意識のうちに適切でないコミュニケーションをしている人もいるのですね。

【戸田久実】そういったケースとは別に、自分の無意識によってコミュニケーションに苦手意識を持っている人もたくさんいます。過去の失敗体験などから、「階層が上の人にこういうことはいっては駄目だ」「どうせ聞いてもらえない」「関係性が悪くなるかも」「反発されるかも」といった無意識の思い込みを持ってしまい、うまくコミュニケーションができないケースです。

【澤円】そういったケースではどう対処するのがいいのでしょう?

【戸田久実】無意識の思い込みですから、その思い込みに気づいてもらうことからはじめます。「過去の経験から『どうせ聞いてもらえない』と思ったことはないですか?」といった問いかけをするのです。そうして、「過去の経験がそう思わせているのかもしれませんが、相手が違えば相手の反応も違うかもしれません」「言い方を変えれば違う結果になるかもしれません」と、思い込みを手放してもらうのです。

■煙たがれる上司の下では生産性は上がらない

【戸田久実】あるいは、逆に成功体験が不適切なコミュニケーションの原因になっていることもあります。リーダーなどの立場にある人が、部下をやり込めて自分の思いどおりに動かすようなケースです。そのコミュニケーションは当人にとって成功体験ですから、「これが正しい」と同じようなコミュニケーションを続けることになります。そんなことでは、部下からは煙たがられて当然ですよね……。もちろん、それでは組織の生産性も上がっていきません。

【澤円】いずれにせよ、自分に対する客観視と地道なトレーニングを続けることが大切なのですね。

【戸田久実】澤さんが日本マイクロソフトに勤務されていたときはマネジメントする側だったと思いますが、組織におけるコミュニケーションについて意識していたことはありますか?

【澤円】僕がラッキーだったのは、日本マイクロソフトという会社がそもそもすごくフラットな組織だったことです。僕の肩書は業務執行役員というものでしたが、僕の下は1階層のみでした。僕の上が執行役でその上が日本法人の社長。だから、全体で4階層しかありませんでした。

しかもいわゆるジョブ型雇用が採用されていて、「あなたの仕事はこれです」ということ、それに伴う責任範囲も明確に示されていました。そうして任された自分の仕事については、誰もがある意味で社長です。あるクライアントの担当営業になったら、その仕事に関しては担当者が社長という感覚があるのです。

■「こうしたほうがいいんじゃないか?」はダメ

社長ですから、会社のリソースを使えます。日本法人の社長であろうとグローバルのCEOであろうと、その力が必要であれば誰もが使っていいのです。そういう状況において、当時の僕のようなマネージャーがよく使っていた言葉は、「How can I help you?」「わたしはどうやってあなたを助けることができますか?」です。

【戸田久実】上の立場から、「こうしたほうがいいんじゃないか?」「こうしろ」ではないのですね。

【澤円】そのとおりです。立場を問わずそれぞれが社長として「自分はどう考えるのか」と意識することが徹底されていて、その考えを尊重するためにマネージャーは「How can I help you?」という言葉をしょっちゅう投げかけるのです。助けることがマネージャーの仕事ですから、下の階層の社員たちも「こういうふうに助けて」といいやすかったはずです。これはとてもいいコミュニケーションのかたちだったと思っています。

■「繊細な相手」には本心を伝える

【澤円】気をつけたいのは、相手が繊細で傷つきやすいタイプの場合です。注意をしたりなにかを指摘したりする場面では「ネガティブに受け取られるのでは?」と難しさを感じることもありそうです。

【戸田久実】つい最近の研修で、ひとりのマネージャー層の人からまさにそういった相談を受けました。わたしがその人に伝えたのは、「素直に率直に向き合ってはどうか」ということでした。

「繊細で口数が少ない相手に対して、あなたはどのようにコミュニケーションを取りたいのですか?」とわたしが聞くと、それに対する回答は「無理なことは無理だ、できないことはできないといってほしいし、我慢をしてほしくない」というものでした。

だとしたら、「そうしてくれたほうが自分も楽なんだ」という言葉を添えて、やはりそのまま本心を伝えたほうがいいと思うのです。腫れ物に触るようなコミュニケーションを取ってばかりでは、相手との距離は永遠に縮まりません。

【澤円】確かに、先の思い込みの例にもいえますが、「ネガティブに受け取られるのでは?」といった勝手な想像をしたところで、それだって思い込みに過ぎないかもしれませんね。その思い込みに縛られて行動やコミュニケーションが取れないとなるとなにも解決しないのですから、素直さというものも大切なのかもしれません。

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戸田 久実(とだ・くみ)
アドット・コミュニケーション代表
日本アンガーマネジメント協会理事。立教大学文学部卒業後、服部セイコー(現 セイコーホールディングス株式会社)にて営業、その後音楽業界企業にて社長秘書を経て2008年にアドット・コミュニケーションを設立。研修講師として民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任する。著書に『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』など。

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澤 円(さわ・まどか)
圓窓 代表取締役
1969年生まれ。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報共有系コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任。2019年より現職。著書に、『外資系エリートのシンプルな伝え方』(KADOKAWA)、『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1 プレゼン術』(ダイヤモンド社)、伊藤羊一氏との共著『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)などがある。 Twitter:madoka510 Facebook:Madoka Sawa

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(アドット・コミュニケーション代表 戸田 久実、圓窓 代表取締役 澤 円 構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=清家茂樹)

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