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あなたの労働価値は年3%ずつ下がっていく…転職で「給料が上がる人」と「下がる人」の決定的違い

プレジデントオンライン / 2024年6月24日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/dane_mark

自分の「労働価値」は一体いくらなのか。ゲームデザイナー・作家の芝村裕吏さんは「スマホ1台で計算することができる」という。著書『関数電卓がすごい』(ハヤカワ新書)より、「転職計算」という思考法と実践法を紹介する――。

■スマホを横にすれば、人生が変わる

お手持ちのスマートフォンの電卓アプリを開いて、横に倒してみてください。関数電卓になるのを知っていましたか?

iPhoneシリーズの電卓アプリを横画面にすると
出所=『関数電卓がすごい』p.13

関数電卓とは文字通りに関数を扱うことができる電卓です。普通の電卓では面倒くさい計算を簡単にやってくれるために大変便利な道具で、日本以外ではかなり普及しています。

私の場合ですと、関数電卓がないと仕事になりません。ゲームデザイン業も作家業も、個人事業主としても、関数電卓がないとたちまちのうちに窮地に陥ってしまうでしょう。

実際、関数電卓は生活のあらゆる場面で役立ち、これの使い方を知っているのと知らないのとでは人生が大きく変わると思っています。この記事では「転職計算」を例にとってみます。

■あなたの「労働価値」を知る計算式

一般に労働者が収入を大きく増やす方法は転職で、少し増やすなら兼職です。

問題は自分の労働価値がどれくらいあって、それを必要とする場所にうまく行けるか、になります。

戦後の日本人は一般に自分の労働価値を考えようともしません。このため、かなり低く買い叩かれている現状があります。日本という国を悪くしている理由のひとつですので、ぜひとも自分の労働価値を考えたり計算したりするようにしてほしいものです。

この計算式ですが、基本的には非常に簡単です。

自分の労働価値=今の自分の給料

これだけです。電卓もいりません。支給総額25万円の人は月25万円の労働価値というわけです。

問題はこれが高いか低いかで、市場に自分が出たとき、高ければ給料が上がりやすくなり、低ければ給料が下がりやすくなります。

■年齢を重ねると、価値は下がっていく

転職して給料を上げられるかどうかを運次第と言う人もいますが、これはあまり正しくはありません。全然間違っているわけではないですよ。何も考えずに突き進めばそれは確かに運次第です。でもまあ、普通に生きるなら運を天に任せるのは人間がやるだけやったあとのほうがいいでしょう。

また自分のことを他人任せにするのもおすすめできません。転職業者やコンサルタントを使うにしても、一旦自分で計算したほうがいいでしょう。なぜなら、騙されることが多いためです。

騙すという表現が悪ければ、転職業者にお金を出しているのは求人企業であって、彼らは安くていい人材がほしいわけですから、求職者を買い叩くのはある意味使命、仕事に忠実な結果です。あなたが求職者であるのなら、この事実は無視してはいけません。

まず大切なこと。通常、異業種に移る場合は年齢が足かせになります。年齢はあなたの価値を下げるわけです。また同業種でも40歳を境に労働価値が下がります。

この事実を受け入れられずフリーランスになる方もたくさんいらっしゃいます。それはそれで間違ってはいないんですが、安易にフリーランスになると稼げるお金が単純に減ります。手取りが多少増えたにせよ、退職金やボーナス、社会保障費などを考えると、本当にフリーランスが得かどうかはぜひ計算していただきたいと思っています。

■何もしない場合の低下率=年3%が基本

ということで、計算の方法です。

一般に自分の労働価値は何もしないと年3%ずつ低下します。新しいスキルを身につけていない、手の抜き方ばかり覚えている、社内政治能力ばかり高めている年があったりすると、これになります。

労働価値=今の自分の給料-労働価値の低下率3%(勤続年数)

(勤続年数)は指数ですね。同じ掛け算が連続する場合に使います。0.97×0.97×0.97……というのを指数で表現するとスマートになります。0.97³ですね。ちなみに元の数字を底(ベース)といいます。

関数電卓の場合は【yx】のボタンがあるものを使いましょう(違う表現もありうるので説明書を見てくださいね)。

関数電卓のボタン
写真=iStock.com/RapidEye
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RapidEye

■転職しても給料が下がってしまうカラクリ

たとえば6年間、なんにもしていなかった場合は、0.976で0.832になります。元の83%まで価値が下がっているわけですね。転職市場の多くがこの計算式に類似した価値計算をしています。下落率を4%としているところも結構あります。年齢が一定以上になると下落率を3%から4%に引き上げるところもあります。ですので、このあたりは色々と試算して遊ぶことが重要です。

多くの転職の現場で聞く、転職しても給料が下がるところしかないしなあ……というのは、多くの日本企業では人の評価がきちんとできておらず、入ってから当たりか外れかわかるという問題があるためです。このため求職時は一番低く見積もっているのが常態化しています。人の評価がきちんとできないので下請けに頼る、という図式にもなっています。

これで入社後に当たりだったら給料改定、となればいいのですが、通常そんなことはないわけです。ですから、転職を渋った結果、企業から足元を見られて昇給が緩やかになるというケースが頻発します。

このあたりをどうにかしようと政府がリスキリングなどの施策をやっている、というわけですね。

■自然下落に抗うためのスキルを獲得する

政府の施策を見ればわかる通り、労働価値を高める特効薬は自分のスキル(技能)です。資格が必要な仕事などでは、求人内容から必要なスキルが目に見えてわかるわけです。この資格は年間給与にするといくらになるのか、といった数字は、求人情報を見れば割とすぐにわかります。

資格試験や実績による間接的なスキル評価で自分の労働価値を高めていき、できれば自然下落分の3%を超えて市場価値を高めていけば、理論上は転職で給料が上がっていきます。

去年の自分と比べて価値を3%引き上げるようなもの、スキルはなにか。こういうことを考えながら仕事をすることは、個人の意識づけとしては大変に有用です。なんにも考えてない人が多いなか、そういう視点を持っている、というだけで大きな差になっていくわけです。

■複利もあっという間に計算できる

さて、この価値向上も指数で計算できます。3%なら1.03xですね。10年間仕事をしているなら1.0310で、1.344倍になります。何もしないで83%の価値になったケースと比べれば差は明らか、というものです。労働者の商品は自分なのですから、価値を高めて高く売りつけなければなりません。

yxは金利計算にもよく使われて、複利計算の基礎になります。

金利5%の預金(ドル建てならありえてしまう数字です)で12年の場合は1.0512=1.796倍になります。

利子のグラフに合わせて積み上げられた硬貨の上に更に硬貨を重ねる男性
写真=iStock.com/Jinda Noipho
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jinda Noipho

指数計算は関数電卓でもよく使う機能ですので、押しやすい位置に配置してある関数電卓は実用性が高いということができます。普通の電卓で同じことをやろうとすると何度もキーを叩くことになるので、このあたりからが関数電卓のありがたみを感じる部分になります。

1.05と入力した後で【yx】を押し、次に12を入れて【=】を押します。それで計算できます。

■「社会に出たら数学は使わない」はウソ

数学にせよ計算にせよ、人の生活に密接に紐づいています。

これはよく言われる言葉なのですが、実体験ではそう言われてもピンとこない方も多いと思います。

なぜかというと、商売になるからです。

この世の商売の7割は、数学を嫌がる人に対して数学を提供するものだからです。

こう書くと、そんなに数学って世の中にあるっけな……と思う人もいると思いますが、あるんです。

あまりもったいぶらずに書きますと、数学も計算も数字を扱うものです。そんなこと知ってるよと思われるかもしれませんが、その数字こそが世界中に溢れているのです。あなたの給料は数字で表現されていますし、時間も数字です。テレビの視聴率もスマホのギガも、料理に使う分量も、お役所の予算配分、みなさんの税金、みんな数字です。

これを使うのが数学であるとすれば、私の7割という説明はそこまで過大な見積もりではないことがわかっていただけるのではないかと思います。

だからこそ、数学にせよ計算にせよ、人の生活に密接に紐づいている、という言葉になるわけですね。

■「数学は嫌い」のままではもったいない

でもなあ、と思われた方も多いと思います。もう一歩進んだ方の反論を聞くと、だいたい以下のようになります。

「でもですね。この世の商売の7割は数学を嫌がる人に対して数学を提供するものなんだったら、金さえ出せばどうにかなるんじゃないですか」

あるいは、

「でもですね。この世の商売の7割は数学を嫌がる人に対して数学を提供するものであるなら、それだけ数学が面倒くさいものだってことになるわけでしょ? 面倒くさいのは嫌いなんですけど」

このような反論が必ず出ます。品のよい方だと心に思うだけで、その後数学教室とかにいらっしゃらなくなります。

それで、この反論の反論になるのが本書のテーマである関数電卓だったりします。

芝村裕吏『関数電卓がすごい』(ハヤカワ新書)
芝村裕吏『関数電卓がすごい』(ハヤカワ新書)

「金さえ出せばどうにかなるんでしょう?」「その通り。でも節約できそうなら節約するのが賢い生き方だと思いますよ」

または、

「面倒くさいのは嫌いなんですけど」「はい、ところがこの道具(関数電卓)を使うと簡単に計算できます」

というわけです。

なにがなんでも絶対嫌い、あるいはやらないというよりは、簡単な概念だけでも理解して、あとは必要に応じて計算する。面倒くささをわかったうえで外注する。そういう生活のほうがいいと思います。

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芝村 裕吏(しばむら・ゆうり)
ゲームデザイナー、作家
熊本県出身。米国の大学で数学を学ぶ。陸上自衛隊を経て、アルファ・システム入社。『高機動幻想 ガンパレード・マーチ』が高い評価を得る。のちベックを経てフリーに。『マージナル・オペレーション』で本格的に作家活動を開始。その他の代表作に『刀剣乱舞』などがある。ネット上でも不定期に『電網適応アイドレス』などのゲームを開催し、プレイヤーから多くのクリエイターを輩出している。撮影=JUMPEITAINAKA

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(ゲームデザイナー、作家 芝村 裕吏)

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