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日本株も米国株もまだまだ天井ではない…パックン&エミンが今年後半に勧める新NISA「日・米・新興国」分散投資

プレジデントオンライン / 2024年7月5日 17時15分

お笑い芸人のパックンさん(右)とエコノミストのエミン・ユルマズさん。 - 撮影=遠藤素子

新NISAがスタートして半年余りが過ぎた。世界経済の先行きが不透明な中で株価は変動が大きい状態が続いている。2024年後半以降の資産運用をどうすればいいか。お笑い芸人のパックンことパトリック・ハーランさんとエコノミストのエミン・ユルマズさんに、資産の守り方、増やし方を語ってもらった――。

■日本が弱いいまこそ、世界経済にオーナーとして参加すべき

――新NISAで投資を始めた人も多いようですが、円安の原因にもなっているようですね。

【エミン】そう。今年に入ってからの円安の原因の一つには、新NISAの外株買いによる円売りがあります。これまでの実績でいうと、1カ月で1兆円ぐらいのドル買い・円売り要因になっています。はっきり言ってこれは失敗としか言えない。

【パックン】新NISAのこと?

【エミン】そう。新NISAの対象を日本株に限定しなければドル買いが起きるのは明らか。毎月、自動的に起きますから。ただ、いったん円安が止まると、日本の皆さんも「そこまでアメリカ株を買わなくてもいい」「日本株でもいい」となるかもしれない。

【パックン】新NISAで毎月ドル買いが起きているけれど、いつかは売却して円に戻すわけでしょ。そのときには円買いに戻りますよ。いまは始まったばかりだから、円の流出になっているけれど、いつかは戻ってくる。

僕は日本国民が海外の株式を買って円安になったとしても、稼いだお金で住宅を購入したり、老後資金に使ったりして幸福な人生を実現するための資金にするのは大賛成ですよ。日本のみなさんが、日本経済が弱いときにこそ、海外、世界経済にオーナーとして参加すべきじゃないかなと思うんですよ。

【エミン】それはそれでいいと思うけど。

【パックン】為替からすると、タイミングはまずかったかもしれないですね。

【エミン】ほとんどが積み立てだから、そう簡単には売らないと思う。

【パックン】でも、いつかは売るでしょ。死ぬ前には。それでいいと思うんです僕は。長期的に考えると。

【エミン】そのときには一気に円高になる? (笑)

【パックン】いやいや、売却のタイミングは、人それぞれですよ。少しずつ戻ってくると思う。だから、30年後には安定しているんじゃないかな。

■AIが真価を発揮するのはこれから。株価も期待できる。

――最近の新聞報道では、「米国株は天井」との意見も多くなっています。このままアメリカ株へ投資しても大丈夫でしょうか。

【エミン】積み立て投資ならドルコスト平均法でやっているわけだから、下がっても関係ないですよ。

【パックン】下がれば、その分、多く買えるということね。

【エミン】そう。アメリカの個別株を買っている人は、タイミングを計ったほうがいいと思うけど、積み立ての人は関係ないと思うよ。

【パックン】僕はいまがバブルだと思っていないですね。エヌビディアなどはすごく元気ですけど、AIブームもまだ始まったばかりでしょ。これからAIの恩恵が、1次セクターだけじゃなく、2次セクター、3次セクターにも降りてきてどんどん効率が良くなって、コスパが良くなる。AIの技術を使って効率化しながら販売価格を維持できれば、利益率が上がるはずです。そうなれば、5年後、10年後には株価が絶対に上がっているはずです。いまは革命が起きたばかりです。

■日本の割安銘柄はまだまだ外国人が買ってくる

――外国人の日本株買いが増えているといわれていますが、今後も増えますか。

【エミン】そうですね。日本にはまだ割安な銘柄がけっこうありますから、増えると思いますよ。日本への直接投資も増えているし、日本企業の利益率も上がっているから、今後さらに海外からお金が入ってくることは十分に考えられます。

それに日本もインフレになっているでしょ。インフレの時期にはリスク資産の価格は必ず上がるので、株価は上がるはずです。

「日本にはまだまだ割安な銘柄が多いから、外国人の買いは増えると思う」とエミンさん。
撮影=遠藤素子
「日本にはまだまだ割安な銘柄が多いから、外国人の買いは増えると思う」とエミンさん。 - 撮影=遠藤素子

――エミンさんは日経平均株価が長期的に30万円になるとおっしゃっていますが、それは変わりないですか。

【エミン】まったく変わりませんね。

――パックンさんは日経平均株価についてはいかがでしょう。

【パックン】30万円はしばらく先でしょうね。来世紀に見ることができるかもれませんけど。ただ、アナリストの意見を聞くと「日本の株はまだバリューがいい」といいます。つまり、アンダーバリュー(*)されているから、買い得だとの見方が多いのです。バークシャーハサウェイのバフェットも売ってはいないようですし(笑)。

だから日本株が上がる余地がまだまだあると思います。ただ、バランスを取ってほしいと思いますね。読者のみなさんの多くは日本企業で働いているから、日本に対するリスク・エクスポージャー(特定のリスクにさらされる比率)は十分に高いと思います。世界の株も持って分散してほしいと思いますよ。

*企業の本質的価値よりも株価が低く評価されている状態。

■インドやベトナムへの投資は有望か

――その意味では投資先としてインドやベトナムが注目されはじめています。

【エミン】インドにしてもベトナムにしても、いまのところ日本では個別株は手軽に買えませんから、ETFを資産の一部に置いておくのは悪くないと思いますよ。ただ、資本市場としての健全性や成長度合いではどちらも未熟ですし、とくにベトナムは、MSCIではまだフロンティア市場(*)に分類されています。エマージング市場でもないのです。来年か再来年にはエマージングになるかもしれませんが、そのときには資金が一気に入ってくると思います。だから、資産の何%かをベトナムのETFでポートフォリオの中に入れておくはありだと思います。ただ、集中させるのは危険です。

*新興国の中でも国の規模が小さく、株式市場が未成熟で流動性が低い国のこと。

■新興国が成長すればコカ・コーラが儲かる

――パックンさんは新興国には投資していますか。

【パックン】昔から新興国ファンドはもっています。一時期はやったBRICsファンドも持っています。ということはロシアにも投資している(苦笑)。ただ、期待していたほどの長期成長率を見せてないのも事実です。僕の経験上では。

なぜかと考えると、新興国が成長するときには、結局、アメリカの大手企業が入っていきます。大手企業の市場開発力は半端ないでしょ。日本でも自販機はコカ・コーラ社の製品が半分ぐらいを占めている。日本の企業もおいしい炭酸飲料をつくっていますが、アメリカの大手企業はすごい。

「新興国が経済成長するとアメリカの企業が儲かることも多い」とパックンさん。
撮影=遠藤素子
「新興国が経済成長するとアメリカの企業が儲かることも多い」とパックンさん。 - 撮影=遠藤素子

【エミン】でも、コカ・コーラのほうがおいしいでしょ(笑)。僕はコカ・コーラのマシンじゃないと買わない。コーラ以外でも僕が好きなのは紅茶花伝とか、すべてコカ・コーラ社の製品だから。

【パックン】わかるよ。僕もモンスターエナジーを飲んでいるし(笑)。だから消費者としても、自国のものにこだわらずアメリカのものを選んでしまう可能性が大きい。そういう人は全世界にいると思うんですよ。

新興国の企業がGAFAMのように株価が何万倍にもなるような成長はなかなか難しいですよ。どこかで国際企業の壁にぶつかります。だから僕は、途上国のリートを持っています。いくらアメリカの企業が強くても、地元の不動産価格は上がるはずだと考えていますから。

いずれにしてもエミンさんがおっしゃった通り、全財産を新興国に賭けるのは危険です。僕はポートフォリオの数%程度にしています。

■中国はデフレと低成長に悩むことになる

――中国はどうでしょうか、回復するでしょうか。

【エミン】いや、難しいでしょうね。最近になって住宅の刺激策を出していますが、回復するほどの規模ではありません。

中国で売れ残っている住宅のトータル資産規模は4兆ドル近いと言われています。それに対して、最近出した対策は400億ドル規模程度です。4兆ドルに対して400億ドルというのは1%程度にしかなりません。本当に焼け石に水です。

中国は少しずつ不良債権の処理をしていく中で、さらにアメリカとの覇権争い、対立が起きるでしょう。それを考えると、日本と同じでデフレと低成長に悩まされる。そういう時代に突入したと思う。もちろん個別セクターでは復活するところもあるかもしれないけど、国全体、マクロ経済的に見た場合には、中国は目先、相当に厳しいと思っています。

■パックンが香港のファンドを売った理由とは

――パックンさんは中国には投資はしていますか。

【パックン】僕はずっと香港のファンドを持っていました。ただ昨年、損益通算のため売りました。なぜならすごく下がっていたから(笑)。でも、損益通算にはすごく役に立ちましたよ。

いまエミンさんがおっしゃった通り、中国は日米との貿易摩擦が続くし、ロシアに加担しているという理由で、中国の金融に対する制裁も発表されました。中国の政府だけでなく、企業に対する制裁まで行われると厳しいですね。しかも労働人口が減っていきます。中国政府がいつ企業に手を出すかわからないリスクがあるのもこの数年でわかりました。

僕もすごく下がったところで売っているから、中国の状況が悪いことは実感しています。ただ、お買い得感のある企業、株価よりも企業価値が高い銘柄はたくさんあると思います。それを探すのはいいかもしれないけど、その際にはインドやベトナムに投資するときよりリスクを意識しながら、余裕資金で遊ぶ程度のお金で投資するのがいいかなと思います。

【エミン】まあ、そのリスクを取る意味があるのか。ほかに買えるものがたくさんからね。

【パックン】その通り。

【エミン】中国がすべて悪いわけではなく、いい分野や企業はけっこうあると思うけど、カントリーリスクを背負ってまで投資をする意味があるか、それほど中国株や中国の資本市場に魅力があるかを考えると、それはない。

いまは中国から人も資金も逃げている。中国人が買わないものを私たちがあえて買う必要はないでしょう。アメリカ株や日本株に買えるものが山ほどありますから。

【パックン】そうですよ。すごく割安な銘柄はあるけれどリスクがあるから「本当に冒険したい人はどうぞ」という感じですね。エミンさんがおっしゃる通り、ほかにも選択肢はたくさんあるわけですから、お勧めしないですね。

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パトリック・ハーラン(ぱとりっく・はーらん)
お笑い芸人
芸名パックン。1970年、米・コロラド州出身。93年、ハーバード大学比較宗教学部卒業。同年来日。福井県で英語教師を務めた後、97年、吉田眞と「パックンマックン」を結成。著書に『逆境力』(SB新書)など。

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エミン・ユルマズ(えみん・ゆるまず)
エコノミスト
トルコ・イスタンブール出身。2004年に東京大学工学部を卒業。2006年に同大学新領域創成科学研究科修士課程を修了し、生命科学修士を取得。2006年野村證券に入社。2016年から2024年まで複眼経済塾の取締役・塾頭を務めた。2024年にレディーバードキャピタルを設立。著書に『夢をお金で諦めたくないと思ったら 一生使える投資脳のつくり方』(扶桑社)、『世界インフレ時代の経済指標』(かんき出版)、『大インフレ時代! 日本株が強い』(ビジネス社)、『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)『米中新冷戦のはざまで日本経済は必ず浮上する 令和時代に日経平均は30万円になる!』(かや書房)などがある。

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(お笑い芸人 パトリック・ハーラン、エコノミスト エミン・ユルマズ スタイリング=末次秀彦(パックン)衣装協力=perky room STYLIA(エミン) 構成=向山 勇)

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