「仕事でもっと成長したい」と言われて「ビジョンを持て」はダメ…"話が浅い"と思われる人に共通の話し方
プレジデントオンライン / 2024年7月4日 15時15分
※本稿は、さわらぎ寛子『言葉にする習慣 思いがまとまる・伝わる「言語化力」の身につけ方』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■「カフェと喫茶店は何が違うか」を使い分けられる効果
コミュニケーションがうまい人は、「言葉の使い方」が上手です。
それは単にたくさんの言葉を知っているのではなくて、似ている言葉をちゃんと使い分けているからです。
たとえば、目的と目標は何が違うのか。
カフェと喫茶店は何が違うのか。
思いと想いはどう使い分けるのか。
似ている言葉の違いに敏感になり、使い分けられるようになると、「そういうつもりで言ったんじゃない」「思ってもいなかった意味で取られた」ということが減ってきます。
また、相手の話を聞くときも、相手がその言葉をどういう意味で使っているかを確認しながら聞くことで、より深く話を理解できるようになります。
まずは、自分が普段よく使っている言葉をピックアップしてみましょう。
仕事でもプライベートでも会話でよく出てくる言葉、資料によく書く言葉などでOKです。
「自分はよく『ロジック』とか『ロジカル』って言葉を使う」
「何かを褒めるとき『センスがいい』ってよく言うなぁ」など、自分が使う言葉を少し振り返ってみてください。
■似ている言葉の違いに敏感になり、自分の意見に当てはめる
次に、その言葉の本来の意味を辞書で調べます。
お手元に辞書がある人は、その単語の意味を調べてみましょう。辞書がない人は、Googleなどで「○○ 意味」と調べてみてください。
ちなみに「ロジック」の意味を明鏡国語辞典で調べると「①論理。論法」「②論理学」とあります。
そこから、その単語と似ている言葉をピックアップしていきます。
パッと思いつくならそれでOKですし、思いつかないなら、「○○ 類語」で調べてみます。
「ロジック類語」で検索すると、理屈 論法 辻褄 筋道 などが出てきます。それぞれ少しずつ意味が違いますよね。
類語として出てきた言葉の意味をさらに調べて、自分がここで言いたかったのはどれに近いのかを考えてみましょう。
同じ言葉でも、文脈(そこまでの話の流れや、相手、立ち位置など)によって、意味が変わってきます。
たとえば、「今、この場合は」たくさんある類語の中でどの言葉に近いのかを考えてみると、自分が言いたかったことがより明確になります。
そして最後に、「類語の中でこれが一番近い」と決めたその言葉と、もともと使っていた言葉の違いを考えてみてください。
よく似た言葉の意味の違いが説明できるようになると、自分がもともと何を言いたかったのかが言葉にできるようになります。
■相手とのすれ違いをなくす声かけの種類
相手が使っているニュアンスと、こちらが受け取ったニュアンスが違う、ということはよくあり、それがコミュニケーションのズレを引き起こすことがあります。
たとえば、資料をまとめるように上司に指示され、「なる早で仕上げて」と言われた場面。自分は「今週中かなー」と解釈していたら、相手は「今日中」だと思っていた、なんてことはよくあると思います。
「今日中」の定義も曖昧で、上司は「自分が16時には外出するからそれまでに出せ」という意味だと勝手に決めていて、指示された側は「自分が帰る時間(残業も込みで20時)までに仕上げて、明日の朝に見てもらえればいいか」と思っていたりすることもあるでしょう。
相手がその言葉をどういう意味で、どういう背景があって、相手にどうしてほしくて、使っているかは、確認しないとわかりません。
会話の中で、「今おっしゃった、○○って、こういう意味だと受け取ったんですけどそれであっていますか?」と確認をする習慣をつけてみてください。
それは相手にとっては失礼なことではなくて、相手もざっくりとしか捉えられていなかったことを確認できるので、ありがたいことなのです。
(ただし、相手がものすごく急いでいるときに聞くとイラっとされるかもしれませんし、相手が気持ちよく話している間に、いちいち確認すると、話の腰が折れるので、確認するタイミングが重要です。相手のタイミングを読むことも、「観察」によって培われる力です)。
■ビジネスシーンでは「ポエム」ではなく「行動につながる言葉」を
「話が浅い」と思われてしまう人は、概念だけで上滑りの会話をしていることが多いです。
たとえば、「仕事でもっと成長したいんです」と後輩から相談されたとします。
そこで、「え? 成長なんて気にせず、自分らしくでいいんだよ」「成長するには、ビジョンを持つことだよ」など、フワッとした抽象的な返しをするとどうでしょう。
「なんかいいこと言ってそうだけど、結局何かわからない」「いい言葉かもしれないけど、何も行動につながらない」と思われてしまいます。
「仕事でもっと成長したい」と言われたら、「そう感じるのは、たとえばどういうとき?」とエピソードを聞いてみてください。
すると、「お客様に提案をするときに、あまりうまく伝わっていない気がする」と、具体的なシーンが出てきます。これによって、「それなら、どうするか」と行動に対するアドバイスができます。
文章を書くときも、なんだかよさそうなキレイなフレーズをただつなげていくだけでは、下手なポエムみたいになってしまいます。
ポエムを書くことが求められている場面ならいいですが、ビジネスシーンでは求められるのは、ポエムではありません。
ふんわりとしたキレイな言葉を並べるのではなく、自分や相手の行動が変わるような言葉を意識しましょう。
■「実際に何をするか」を言葉にする
たとえば、「共感される文章を書くコツ」として、「感情を込めて書きましょう、体重を乗せて書きましょう」と言われても、何をどうしていいかわかりません。
抽象的な言葉でふんわり伝えるのではなくて、実際に何をするかを伝えましょう。
「共感される文章を書くには、感情を表す直接表現(嬉しい、かなしいなど)を使わずに、嬉しかったシーンを具体的に書き出そう」と言われたら、実際にやることが明確なので、できたかできなかったかがはっきりします。
・仕事をもっとがんばろう
・自分を好きになろう
・気持ちを整えよう
こうした抽象的な言葉では、実際に何をしていいかわからないし、できたか/できていないかのチェックがつけられません。
ふんわりとした概念だけを書いていると、ふわふわとしたポエムのままです。
それだと、相手に伝わらないだけでなく、自分でも何をしたいか掴めません。
何がどういう状態になったら、そうなったと言えるのか。
それを言葉にしていきましょう。
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コピーライター/コトバワークス株式会社代表取締役
1978年京都府生まれ。関西大学社会学部卒。関西大学非常勤講師。現役コピーライターで、企業の広告制作のほか、企業研修も多く手がける。24年間コピーライターとして食品、美容、ホテル、学校、病院、製薬会社、電鉄など様々な業種の広告制作を手掛ける。書いたコピーは3万件以上。2010年「2時間でキャッチコピーが作れる」メソッドを独自で開発。現在は、オンラインとリアルな会場で長期講座を開催。自分メディアを使って集客したい、売上を上げたいと願う経営者や起業家から高い評価を得ている。著書に、『キャッチコピーの教科書』(すばる舎)、『今すぐ自分を売り出す1行を作れ』(大和書房)など。
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(コピーライター/コトバワークス株式会社代表取締役 さわらぎ 寛子)
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