「早朝や週末に勉強時間を確保」はやめたほうがいい…日常生活に「滞り」が生じ大損必至のNG時間術
プレジデントオンライン / 2024年7月1日 15時15分
※本稿は、鈴木邦成『はかどる技術』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■なぜ毎日が忙しく過ごすだけで終わってしまうのか
ビジネスシーンを中心とした日常生活の場合、滞るとどんな影響が出てくるのでしょうか。
30代の女性Aさんを例にとって見ていきましょう。
都内に勤務しているAさんは毎朝5時に起きて、メールをチェックしたり、X(旧ツイッター)でその日の新しいトピックを見たりしながら、リポスト(リツイート)しています。
TOEICの勉強も少ししているので、朝は英語を聞きながらリスニング問題を解くときもあります。
朝の身支度には30分程度みて、7時には家を出るようにしています。
通勤時間は1時間ほどですが、通勤途中は好きな音楽を聴くことにしています。出社すると、すぐに会議があったり、電話がかかってきたり、午前中はかなり慌ただしい感じです。
昼食をとって午後ようやく少し余裕が出てきますが、夕方頃に急ぎの用や翌日の準備などが出てきて、結局、少し残業をしてから帰ることになってしまいます。
帰りもラッシュ時にぶつかることも多く、電車のなかで何か作業をこなすというのも難しいように思えます。結局、毎日、忙しく過ごすだけで終わってしまうのです。
「朝活がよいというのでがんばってみたけど、なかなか成果が上がらない」という嘆きも出てきました。
■時間が確保出来ず、やる気だけが空回りしている
30代後半の男性Bさんの場合、審査をパスするために資格の勉強をしていますが、思うように進みません。
Bさんの会社では課長に昇進する条件として、仕事に関係のある国家資格を取らなければなりません。そのため、社労士を目指しているのですが、勉強時間が十分に確保できないでいました。
毎朝、通勤の際、電車のなかで基本項目に目を通しています。金曜日には気分転換と情報交換を兼ねて、会社の仲間などとの飲み会に参加していますが、土日のどちらかはじっくりと勉強することにしています。
しかし、思うように勉強の効率は上がりません。通勤電車では前日の疲れなども残っているのか、ついつい眠ってしまったり、満員電車のなかで勉強どころではなくなってしまうこともあります。
![地下鉄の車の中で眠る女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/d/1200wm/img_6d194e8c9fb0076d76111c5127c8463b169979.jpg)
好きなお酒はどうしても外せないので、唯一、息抜きのできる金曜日に飲みには行くものの、土日のどちらかは子どもと遊んだり、ゴルフなどの接待に出かけたりすることも少なくないので、週末は期待値が高いほどには充実しません。
できれば週末も朝の勉強のゴールデンタイムを活用したいと思ってはいるものの、朝の時間はなかなか確保できません。
2人とも、頭のなかでは朝活を充実させたり、週末の時間を有効活用したりして、効率的な時間管理を目指しています。しかし、理論に実行力がついていきません。結局、やる気だけが空回りしている状態なのです。
■時間管理全体のバランスが悪いと計画は進まない
では、Aさん、Bさんの時間の管理はどの点に問題があるのでしょうか。
2人に共通しているのは「どちらも特定の時間帯への期待値が高すぎる」ということです。
Aさんの場合は朝の時間帯、Bさんの場合は週末にそれぞれ過度の期待を寄せています。そのため朝や週末にイレギュラーな予定が入ると、スケジュール通りに予定が進まなくなってしまうのです。
AさんもBさんも朝活をするとか週末に勉強やゴルフをするなど、その部分ごとの計画、すなわち物流でいうところの「部分最適」が間違っているわけではありません。
しかし、時間管理全体のバランスが悪いため、こちらも物流でいうところの「全体最適」が実現されていないことがネックとなって、計画が進まないのです。
物流でいうところの「部分最適」はできていても、「全体最適」が実現されていないという状態なのです。
部分最適と全体最適については、後ほどあらためて説明しますが、滞りをなくすには全体最適が必要になります。
「その部分だけが最適化される」という部分最適の状態だと、どうしても滞りが発生してしまいます。
したがって、日常生活を滞りなく進めるにはまずは、「特定の曜日や時間帯に過度な期待を抱かない」ことが重要になってくるのです。
■学生たちの悩みの多くは滞りが原因
本論に入る前に、自己紹介も兼ねて、時間管理に関わる私の話をいくつかお伝えしたいと思います。
私の専門は「物流・ロジスティクス」になりますが、大学では研究室を運営していることから、学生の相談に乗ることも少なくありません。
また、物流関連の企業などと共同研究をしたり、勉強会を開催したり、懇親会などに参加することも多いので、自然と社会人と知り合う機会も増えることになります。
そうした学生や社会人が私を頼ってアドバイスを求めてきたり、私のほうからある種の義務感や責任感を感じたりして、「……したらどうかな」というかたちで相談に乗るようになりました。
ただし、私は物流の専門家なので、学生のためにもゼミのOBや社会人の方のためにもなるのではないかと考えて、物流の視点からの例えを入れながらのアドバイスをしてきました。
すると、自分でも「意外だったが確かにその通りなんだな」と思ったことがありました。それは「物流の視点からのアドバイスは、人の悩みの滞りをなくす共通点が多い」ということです。
実際、学生・社会人を問わず、悩みのほとんどは「滞りをなくす」という視点から物流のセオリーを当てはめていくと、解決できることがわかったのです。
![全体を最適化させないと滞りが生まれる](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/c/1200wm/img_dc2444879187acc5116d5c8b1acc63a1159152.jpg)
■全体最適を実現するキモとなるのが「滞り」
学生や社会人の悩みにはさまざまなものがありますが、真面目で向上心のある方の悩みは得てして、「どうすれば自分の時間を確保しつつ、キャリアプランを充実させてキャリアアップをはかっていけるか」ということに行き着くように思えます。
もちろん、その悩みの背景に、各自のバックグラウンドが深く関わってきます。
たとえば、学生の場合、「就活と大学の勉強を両立させるにはどうすればよいだろうか」「大学の勉強と並行させて、資格試験に合格するためにはどんな工夫をすればよいか」といった内容がかなりのウエイトを占めています。
そうした学生の多くはちょっとした「制約条件」(つまずき)に振り回されて、先の言葉でいえば全体最適ができなくなっているのです。
したがって、私としては、「どのようにすれば全体最適に導けるか」という視点で相談に乗ることにしています。わかりやすくいえば、全体最適を実現するキモとなるのが「滞り」をなくすということになるわけです。
■学業もアルバイトも常にやることが多い現代の学生
学生の場合、社会人と比べて、自由な時間を多く確保できます。とはいえ、昔の学生と違い、今の学生にはやることがたくさんあります。
とくに理工系の授業では発表や実験レポートの提出などがあるし、講義形式の授業でも毎回のように課題が出ます。しかも、授業後にアルバイトをしたり、ダブルスクールに通ったりといった学生も少なくありません。
それゆえ、意識の高い学生の悩みのほとんどは効率的な時間の使い方やアルバイト、就職活動ということになり、その滞りをいかに解消していくかということになります。
もっといえば、学業との両立という観点からのアルバイトに関する悩みは、時間の使い方以外に人間関係が複雑だったり、業務上のトラブルに直面したりするケースも少なくありません。
そこでいつも私が感じるのは、学生の悩みの多くは、試験期間の直前など大学生にとっての繁忙期とアルバイトの繁忙期がある程度重なってしまうことです。
その結果、「定期試験とアルバイトが重なってしまったのですが、どうしましょうか」といった悩みが出てくることになるのです。
■滞りをなくすために優先順位を明らかにする
実際、12月中旬以降の年末年始は、アパレルなどの小売店舗ならばバーゲンセール、居酒屋などの飲食業ならば忘年会や新年会と、それぞれ繁忙期、かき入れ時。アルバイトにもフル稼働してもらいたい状況です。
そのため、「ムリをしてもなんとか出てきてくれよ」と店長や責任者に懇願されると、人のよい学生ならばOKしてしまいます。
そこで、私は物流におけるピーク対応の考え方を取り入れて、その場の雰囲気に流されずに、学業とアルバイトの2つのピークの波動をずらしていくことで乗り切る方法をアドバイスするようにしています。
![鈴木邦成『はかどる技術』(フォレスト出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/b/1200wm/img_8b0f7e24d9194610bc6ba5afa8f19048133656.jpg)
もちろん学生の場合、学業優先となるわけですから、年末年始のアルバイトのピークは「協力できるのは年末だけで、年始は休ませてほしい」「年始のみだが、加えて試験期間は休ませてほしい」といった方針を一緒に考えることにしています。
アルバイトのピークが学業のピークと重なるような業種ならば、アルバイトを始める段階であらかじめ「試験期間中とその前後は休ませてほしい」ということを繰り返し伝えておく必要があります。
それだけですべてがうまくいくわけではありませんが、「自分にとって優先すべきタスクは何で、そのためにはそれ以外のタスクのピークにいかに対応していくか」ということを考えることで、解決策が見えてくるのです。
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物流エコノミスト、日本大学教授
一般社団法人日本ロジスティクスシステム学会理事、電気通信大学非常勤講師(経済学)。専門は物流およびロジスティクス工学。物流改善などの著書、論文多数。普段から学生やビジネスパーソンから専門分野に関する相談を受ける一方で、就職、転職、資格試験の勉強方法、職場での時間管理や人づきあいなど、幅広い悩みについても意見を求められるという。そうしたやりとりのなかで、物流・ロジスティクス工学の知見を、「仕事や人生の滞りをなくす」という視点から悩みに当てはめることで、思いがけない解決策を導けることに気づく。主な著書に『トコトンやさしい物流の本』『入門 物流(倉庫)作業の標準化』『トコトンやさしいSCMの本』(いずれも日刊工業新聞社)、『シン・物流革命』(中村康久氏との共著、幻冬舎)、『物流DXネットワーク』(中村康久氏との共著、NTT出版)などがある。
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(物流エコノミスト、日本大学教授 鈴木 邦成)
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