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断食ダイエットはむしろ「ポッコリお腹」になる…「スラっとした中高年」になるための最強習慣4つ【2023編集部セレクション】

プレジデントオンライン / 2024年7月1日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chris Ryan

2023年下半期(7月~12月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2023年11月20日)
いつ見ても健康で若々しい人は、何に気を付けているのか。生命科学者で大阪大学大学院の吉森保教授は「最近の論文では、人間は生物学的に150歳まで生きられる可能性が指摘されている。長生きするためには、細胞の働きを活性化させる『オートファジー』を高めることが必要だ」という――。

※本稿は、吉森保、松崎恵理『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■薬は飲まないにこしたことはない

細胞の働きをよくするオートファジーと病気の関係がわかってきたことで、オートファジーを活性化させて病気を防ぐ薬の開発がこれから急ピッチで進むはずです。私(吉森)もその一助になればと日夜研究しています。

ただ、薬は一朝一夕にはできません。安全かどうかの見極めは非情に慎重です。

ですから、みなさんが考えるよりも実用化するまでに時間はかかります。10年、20年かかることも珍しくありません。

実験を重ねて、サルまでは実験で効果があっても、人間には効果がなかったというケースもよくあります。薬の開発は、言葉は悪いですが、博打(ばくち)の側面があります。

実用化にこぎ着けても副作用の問題がどの薬にもつきものです。特にオートファジーの効果が期待される病気は、感染症を除くとほとんどが慢性疾患です。

慢性疾患とは治療が長期に及ぶ病気です。薬も長い間にわたって飲み続けなければいけません。誰もがなるべくならば、そうした状況は避けたいはずです。

できることならば、薬は飲まないにこしたことはありません。薬を飲まないでオートファジーを高められたら最高です。

本稿では、副作用がなくオートファジーを上げられる方法を紹介します。全て明日からでも、読んだ直後からでも取り組めますので、是非参考にしてください。

■人間は寝ないと死ぬ

オートファジーを活性化するには、食事はもちろん、運動や睡眠などの生活習慣の改善も欠かせません。そして最近、特に注目されているのが睡眠との関係です。

寝る子は育つとはよくいいましたが、睡眠は大人にも欠かせません。

そもそも、人間は寝ないと死にます。なぜ睡眠が必要なのか、睡眠中に何が起こっているのかはよくわかっていませんが、寝ないと死にます。眠れなくなる病気(致死性家族性不眠症)もあります。急にある年代から眠れなくなって、死に至ります。

睡眠は脳の休息だと思われがちですが、休息ではありません。寝ている間も脳はすごく活動しています。何をしているかはまだよくわかっていませんが、起きている間と違う活動をしていることはわかっています。

生き物が寝るのは当たり前だとも思われがちですが、神経がない生き物は寝ません。

ですから、睡眠は神経と深い関係があるのは間違いありません。ただ単なる休息ではなさそうなので、睡眠はいまだに生命科学上の大きな謎です。

いずれにせよ、睡眠は病気や寿命と関係しています。睡眠をとるのはもちろん、睡眠の質が重要ではないかと最近の研究ではいわれています。そして、そのカギをオートファジーが握っている可能性があります。

■夜しっかり眠るとオートファジーが上がる

「睡眠はオートファジーの活性化と関係がある」と聞くと「良く寝るとオートファジーが上がる」と思われるかもしれません。ただ、そこまで単純な話ではありません。夜にしっかり眠ることが重要です。

生き物にはそれぞれ固有のサーカディアンリズム(日周期)があります。わかりやすくいうと体内時計です。

一定の時刻がくると自然に眠くなり、一定時間眠ると自然に目が覚めます。体内時計の実態はまだ完全には解明されていませんが、少しずつ明らかになっています。

例えば、人間は洞窟(どうくつ)に閉じ込められて真っ暗な状態にずっといても、25時間周期でしばらくは行動することがわかっています。周囲の明るさに関係なく行動します。

オートファジーと体内時計に関してはハエの実験があります。ハエの体内時計でちょうど寝ている時間に睡眠状態にあるとオートファジーが上がることがわかっています。ですから、注意すべきなのは体内時計の周期に合わせて寝ることです。昼寝しても、オートファジーが上がるわけではありません。

あくまでも動物実験ですが、サーカディアンリズムは多くの生き物に共通する特徴ですので、人間にも当てはまる可能性は非常に高いでしょう。

■運動はウォーキングなど有酸素運動がいい

寝ている間にオートファジーが起こるのは「人間には睡眠がなぜ必要か」とも関係しているかもしれません。サーカディアンリズムに従ってオートファジーが上がったり下がったりしていることは、オートファジーが睡眠の質を左右している可能性を示しています。もしかしたらオートファジーを上げることで睡眠の質をよくすることもできるかもしれません。

適度な運動がオートファジーを活性化させることもわかっています。

運動が体に良いのはみなさんも感覚としてわかるでしょう。体を動かさないよりは動かした方が良いのは間違いありません。オートファジーにはウォーキングなどの有酸素運動が有効です。これも動物実験で証明されています。

フィットネスクラブに行く人はトレッドミルと呼ばれる機械をご存じでしょう。有酸素運動用のトレーニングマシーンで、ベルトコンベヤーが動く上を人が走ったり、歩いたりします。

実験用トレッドミルでマウスを走らせたところ、筋肉のオートファジーの量が増え、糖尿病になりにくくなった報告があります。マウスの実験結果ですので、人間にどこまで効果があるかわかりませんが、人間と同じ哺乳類ですのでオートファジーが活性化する効果は見込めるはずです。

■過度な断食は「手足が細くてポッコリお腹」になる

食生活や睡眠、運動などによってオートファジーを高める習慣を早くから身につけていると健康寿命も延ばせると考えられます。

1、食事――一日三食、腹八分、寝る間際は食べない

何をどのように食べるべきかは、第2回記事〈「ペットボトルのお茶」は濃いものを選ぶ…オートファジーで細胞から若返る「最強の食事術」8つのコツ〉を参照してください。

まず、大前提として、カロリーを制限すればオートファジーの働きが活性化して健康寿命が延びます。カロリー制限の方法は問いません。一定期間の総カロリーを抑えればオートファジーは活性化します。

ただ、現実的に働き盛りだったり、育児や介護で忙しかったりする中高年の方々にとっては極端なカロリー制限は必要な栄養が不足するリスクもあります。「一日三食、腹八分」がよいでしょう。

食べなければオートファジーは活性化しますが、どのくらいの期間、食事を抜けば効果的かはわかりません。むしろ、極端な断食は筋肉を細くします。過度な断食を続けると、「手足が細くてお腹がポッコリ」のスタイルになる可能性が高いです。これでは本末転倒ですね。

お腹の脂肪
写真=iStock.com/towfiqu ahamed
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/towfiqu ahamed

■揚げものや肉の脂身はできるだけ避ける

もちろん、働いている人でしたら会食や飲み会で食べ過ぎてしまう時もあると思います。そういう時は一食抜いたり、軽めに食べたりすることで調整して問題ありません。また、夕食はなるべく早めに食べて、満腹状態で眠らないことを心掛けましょう。

食べることでオートファジーは一時的に下がります。睡眠時には上がりますので、オートファジーをより活性化させるためにも寝る間際に食べるのを控えた方がいいでしょう。

2、高脂肪食は食べない

脂っこいものを食べるとオートファジーの働きが悪くなり、脂肪肝になります。高脂肪食はオートファジーの観点からも控えましょう。

具体的にはフライや肉の脂身などの「油」です。オリーブ油にはオートファジーを活性化させる成分が含まれるものの、動物性、植物性を問わず油はオートファジーの働きを減らします。

ただ、油は体のエネルギーや細胞の材料にもなりますので、完全にカットするなど極端な方法はやめましょう。

3、睡眠――夜にしっかり寝る

睡眠はオートファジーを高めますが、重要なのは夜しっかり眠ることです。

オートファジーは睡眠時間というよりも、サーカディアンリズムに制御されます。睡眠や血圧、体温などは人が生まれながらにしてもっている体内時計のリズムによって変動します。昼寝ではなく、夜寝ることが重要になります。

■「ひたすら上げればいい」と考えるのは禁物

4、運動

適度な運動はオートファジーを活性化させるでしょう。中でもウォーキングなどの有酸素運動はより効果があります。

一日三食、よく眠る、発酵食品、適度な運動などなど。みなさん、気づかれたかと思いますが、オートファジーを高める生活に特別な方法はありません。むしろ、「昔から体に良い」と呼ばれてきた食事や生活がオートファジーにも効果があります。

オートファジーが広く知られるようになったのは最近であり、まだその働きは十分にわかっていませんが、私たちが昔から慣れ親しんできた暮らしが最も効果的なわけです。

『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)の冒頭でも説明していますが、食事や健康に関して極端な方法にはデメリットがあります。

ですから、オートファジーが体に良いからとオートファジーだけをひたすら上げればいいわけではありません。オートファジーは空腹時に上がりますが、これは生命の危機を感じて自らの栄養を分解するからです。

同じように放射線や紫外線を浴びた時や体温が急激に上下した時などにも上がります。つまり、ストレスを感じて生命の危険を察知すると上がる傾向にあります。だったら、ひたすらストレスを浴びればいいかというと、そうはなりませんよね。本来、そうしたストレスはないほうがいいわけです。

無理せずにほどほどにバランスよく。これが人生100年時代を生きるオートファジーとうまく付き合う上でもっとも重要な姿勢になるでしょう。

■「マックス150歳まで生きられる」論文も

人間は生き物の中でも最も「進化」した生物になりました。今のところ、他の生き物との生存競争に明らかに打ち勝っています。数の面ではバクテリアなど人間より多い生き物は少なくありませんが、地球で最も優勢な生き物になったのは否定できないはずです。

ただ、人間はその過程で選択した死と老化に、今、逆らおうとしています。多くの人は「長生きしたい! 長生きしたい!」と願い、「老けたくない!」と叫んでいます。アンチエイジング商品などは大人気です。

実際、寿命も延びています。厚生労働省のまとめによると、2022年の日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳です。いずれも前年を下回りましたが、依然として世界的には高水準にあります。

つい200年ほど前である江戸後期の、岐阜県のある山村の平均寿命を調べた調査では、男女いずれも30歳にも到達しませんでした。当時は乳幼児の死亡率が非常に高かったとはいえ、寿命の延びは目を見張るものがあります。

人間の体は生物学的には120歳くらいまで生きられるとの仮説があります。最近では、いや150歳までいけるという論文も出ました。

環境の改善や医学の進歩により、人間の寿命はこのマックスに向かって延びています。ただ、老化は起こります。

■寿命の10年前後から体が不自由になってくる

ところが、今、人間は科学の力を使って、老化を止めて、あわよくば不老不死になろうとしています。これをどのように捉(とら)えるかは、人類のこれからを考える上で非常に重要な問題です。

例えば、延命治療の問題があります。自然に逆らうのは良くないという考えは存在します。その究極は医療の拒否になります。

この問いに答えはありません。

私は個人的には不死になることは望みませんが、死を単に先延ばしにするだけではなく、生きている間、元気でいたいと思うのは間違っていないと思っています。

座って一緒に時間を過ごすシニア夫婦
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

老化の特徴は、死にやすくなることです。人間の場合は死ななくても老化すると「有病率」、つまり病気にかかっている割合が高くなります。病気が悪化すれば、寝たきりになって介護が必要になります。

例えば、日本の場合、厚生労働省は健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる健康寿命を算出しています。最新の2019年の統計では男性72.68歳、女性75.38歳です。

一方、2019年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳です。つまり、男女を問わず晩年の10年前後は不健康な生活を送っています。

■将来、がんや感染症を予防できるかもしれない

これをなんとかできないか、平均寿命に近づけられないかと考えるのが現代医学です。進化に逆らっているように映るかもしれませんが、私は、科学を使うようになったのも進化の結果だと考えています。

進化することで人間の脳が大きくなり、科学や技術を発展させられたのではないでしょうか。そのような知識も技術も手に入れてしまった以上、後戻りはできないのではないでしょうか。

吉森保、松崎恵理『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)
吉森保、松崎恵理『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)

例えば、21世紀の今、「傷口から細菌が入っても抗生物質を使わない」と言い張るのは現実的ではないはずです。

ですから、人間は進化で得た科学の力を良い方向に使うべきでしょう。

人間は外敵に命を捕食されるような危険はなくなりました。ただ、まだ病気には打ち勝てません。がんやアルツハイマー病、多くの感染症。これらの病気とどう向き合うかは21世紀の大きな課題ですが、その解となりうる可能性を秘めているのがオートファジーなのです。そして、それは皆さんの日々の心がけで高められるのです。

死ぬ瞬間まで、健康で自分らしくいたいと思いませんか?

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吉森 保(よしもり・たもつ)
生命科学者
専門は細胞生物学。医学博士。一般社団法人日本オートファジーコンソーシアム代表理事。大阪大学大学院生命機能研究科教授、医学系研究科教授。2017年大阪大学栄誉教授。2018~22年生命機能研究科研究科長。大阪大学理学部生物学科卒業後、同大学医学研究科博士課程中退、私大助手、ドイツ留学ののち、1996年オートファジー研究のパイオニア大隅良典氏(2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)が国立基礎生物学研究所にラボを立ち上げたときに助教授として参加。2019年紫綬褒章受章、他受賞多数。著書に『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』(日経BP)、『生命を守るしくみ オートファジー 老化、寿命、病気を左右する精巧なメカニズム』(講談社)他。

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(生命科学者 吉森 保、一般社団法人栄養検定協会代表理事 松崎 恵理)

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