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知っていたらもっと早く仕事を変えたのに…65歳以上も働き続けることで減額されてしまう「年金の落とし穴」

プレジデントオンライン / 2024年7月5日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/minokuniya

60歳の定年後も再雇用で働き続けることの盲点は何か。キャリアコンサルタントの大桃綾子さんは「『在職老齢年金』の減額に注意しながら、働きすぎずにうまく仕事を続けるコツがある」という――。

■働きながらもらうとカットされる年金

60歳の定年後も、そのまま会社に残って働き続けながら、年金の受給期間を繰り下げる――そうすることで、将来の年金を大幅に増やせるというメリットもありますが、デメリットもあります。

それは年金をもらいながら働くと「在職老齢年金」が適用されて、年金がカットされる可能性があるということです。前回の続編として、今回はデメリットにも注目してみましょう。

在職老齢年金とは、60歳以降に厚生年金に加入しながら受ける年金のこと。

賃金(標準報酬月額+標準賞与額÷12)と年金額の合計が、50万円を超えた場合、超えた金額の半分が年金額より減額(支給停止)されます。ただし老齢基礎年金は全額支給されます。70歳以降も同じ扱いですが、保険料負担はありません。

しかしながら、公的年金の受給額は、保険料納付期間が長く、現役時代の収入が多いほど増えるため、将来の年金額を増やすなら、なるべく長く働き続けたほうがいいのです。また公的年金の受給を、65歳より前にもらう「繰り上げ受給」だと、年金が1カ月あたり0.4%減額されますが、66歳より後にもらう「繰り下げ受給」にすると、1カ月あたり0.7%の増額になります。“働く×繰り下げ受給”が、将来の年金アップにつながることを考えると、私は50万円の壁を気にせず、大いに働くことをおすすめします。

■繰り下げ受給の3つの注意点

ただし、繰り下げ受給には注意点もあります。注意点は次の3つ。

1.「加給年金」が受けとれない

「加給年金」とは、一定の要件を満たす人が65歳になったときに、65歳未満の配偶者や一定年齢以下の子どもが生計維持状態にあると、老齢厚生年金に加算されるもの。ただし加給年金が受け取れるのは、配偶者が65歳になるまでなので、繰り下げ待機中に配偶者が65歳になってしまうと、一切支給されません。この場合、厚生年金は繰り下げせずに、基礎年金だけ繰り下げれば、加給年金は消滅しません。

2.「特別支給の老齢厚生年金」繰り下げ対象外

「特別支給の老齢厚生年金」とは、かつて年金支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたときに経過措置として設けられた制度。60~64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金は、繰り下げの対象外ですので、必ず受給申請しておきましょう。

3.「在職老齢年金」の減額分は対象外

「在職老齢年金」で減額された年金は、繰り下げ増額の対象外になるので、本来繰り下げることでもらえる年金額よりも少なくなります。とはいえ、この制度で年金が減額されることを気にするよりも、働いたほうが将来的な年金は増えると考えられます。

■思いきり働くなら独立起業を

在職老齢年金を気にせず、のびのび働きたい人は、厚生年金に加入しない自営業やフリーランスという働き方を選んではいかがでしょうか。

報酬や年金をいくらもらっても、カットされることはありません。しかも独立起業すれば、家賃や光熱費、自己投資代を経費で落とせるというメリットもあります。

当社が運営するセカンドキャリア塾の塾生の方でも、定年後に独立起業し、「75歳まで頑張るぞ」と“積極的繰り下げ”をされる方もいらっしゃいます。

現在、61歳で社会保険労務士として独立された男性もその一人。その方が塾に見えたのは55歳のとき。ある大手保険会社の部長職でしたが、「再雇用されるよりは思いっきり働いて稼ぎたい」と役職定年後に猛勉強して、社会保険労務士の資格を取り、定年後に独立されました。何が何でも年金の受給期間は、75歳まで伸ばすと頑張っています。

その方に話を聞いてみると、新しい仕事をすることは、「とにかくワクワクする」と。クライアントと一緒に工場や店舗など現場を見に行って、ああだこうだと議論するのが本当に楽しいそうです。体を動かして働くと、お金も稼げるし、健康にもなるし、働き続けることがいちばんとおっしゃっていますね。

シニアビジネスマン
写真=iStock.com/ArLawKa AungTun
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ArLawKa AungTun

■定年後の資格取得のおすすめはコレ

好きなことをやっていると、皆さん元気です。そう、定年後に資格を取るなら、ぜひ自分の好きなことや向いているものを選んでほしいですね。定年後に資格を取られる方のなかには、周りの人の「やってよかった」という声に流されて、自分に向いているかどうかも考えず、やみくもに資格を取る方もいらっしゃいます。でも、これはNG。取ったあとに、実はそんなに興味がなかったという人もいて、それならそのお金を別のところに回したほうがいいのでは、と思ってしまいました。

また資格を取るなら、信頼できるものを取ったほうがよいでしょう。まず国家資格であること。認定資格はいろいろありますが、継続が難しく急にクローズするものもありますので、歴史がある、卒業生がいる、内容がしっかりしている……、その中身をきちんと精査することはマストです。

おすすめの資格は、IT系や介護系、マネー系です。シニアは情報弱者だと思われていますので、攻めていくなら、IT系の資格をぜひ取っていただきたいですね。介護福祉士などの介護系やファイナンシャル・プランナーといったマネー系は、ご自身の人生においてもとても役立ちます。

特に介護系は、自分の親御さんの介護で助けてもらったなど原体験をもとに、残りの人生で恩返しをしたいという気持ちで取られる方も多いです。もともと介護業界は人手不足で、特にマネジメント経験のある人が少ないので、マネジメント経験のある会社員の方がそういう資格を取ると、「ぜひ施設長になってください」と現場からはひっぱりだこになるという話もよく聞きます。自分に向いていると思うなら、チャレンジする価値は非常に高いと思います。

■共働き夫婦なら選択肢は増える

夫婦共働きの場合、夫が資格を取る間、妻は会社に残って働き続けるというパターンもあります。介護福祉士の資格を取った塾生の方もそうです。定年を迎えてから勉強を始められて、資格を取るのに2年かかりましたが、旦那さんが勉強に専念する間は、奥さんが働かれていたそうです。「2年間だけ許してよ」と。

あるいは夫婦で独立するパターンもあります。ある知り合いの共働き夫婦の話です。ご主人は定年後も会社に残っていましたが、奥様は定年前にスパッと離職し独立された。ご主人は、そんな奥様に感化されて独立し、共同経営者になられたのです。

シニアカップル
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokouu

当塾の塾生の方も、悩みの深さは男女共通ですが、女性のほうが会社を辞めて独立したり、地方に移住したり、とにかく決めるのも動くのも速い。決断力がありますね。ただし奥様が、収入が少なかったり専業主婦である場合は、遺族年金額はきちんと把握し、ご主人が亡くなったあとの年金生活を、きちんとシミュレーションしたほうがいいでしょう。

いずれも夫婦それぞれがやりたいことをやりながら、どうやって安心して、心配なく暮らしていくかということが大事。それをベースに、お金の設計をしていくことが肝心です。

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大桃 綾子(おおもも・あやこ)
キャリアコンサルタント
1981年、新潟県生まれ。東京外国語大学(中国語)卒業、慶應義塾大学大学院社会学研究科修了。三井化学にて人事・事業企画に約10年従事。丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスを経て、起業。Dialogue for Everyone 代表取締役。

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(キャリアコンサルタント 大桃 綾子 構成=池田純子)

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