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年金暮らしの44%が「年金だけ」で生活…セカンドキャリアの専門家が「老後の心配をしすぎるな」というワケ

プレジデントオンライン / 2024年7月6日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

70歳を過ぎてからの収入減に備えて今からできる対策は何か。セカンドキャリア塾を主宰する大桃綾子さんは「年金を土台にお金の設計をするには3つのコツがある」という――。

■70歳以降に収入をアップさせる3つの方法

いくら頑張って働いても、70歳を過ぎると、どうしても収入が減ってしまいます。2019年のリクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査」によると、60代前半の平均収入は357万円、60代後半は256万円、70代前半は251万円。上位10%は稼いでいますが、一般的に年齢を重ねれば、着実に下がっていきます。

70歳以降の収入が減ったときに、どうお金と向き合うか。50代のうちから、ぜひ考えておきましょう。70歳以降に収入アップするには、次の3つの方法があります。

① 70歳以降も働く
② 投資をする
③ 家計を見直す

① 70歳以降も働く

年金をもらい始めるのは原則65歳ですが、75歳まで繰り下げることができます。1カ月繰り下げるごとに0.7%がプラスになり、1年で8.4%に。75歳まで繰り下げると、184%に増額されますから、これはぜひ頑張って働いて、年金を増やしてほしいですね。

② 投資をする

企業型DC(企業型確定拠出年金)やiDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)、新NISAなどを利用して、お金を積み立てる感覚で投資するのも収入を増やす方法の一つです。「50歳からでは、もう遅いのでは」と心配する方もいますが、70歳まであと20年もあります。今から始めても決して遅くはありません。投資に苦手意識のある人は、「あぶく銭を稼ぐようで、良くないことでは……」とネガティブなイメージを持っていますが、実際に我が塾生の方から、「確定拠出年金に預けてそのまま放置していたら、ちゃんと運用していた会社の同期が1.5倍に増やしていて驚いた」という話も聞きます。やはり早く始めるのに越したことはないでしょう。

とはいえ、投資は「なくなるリスクがある」ことを認識することは重要です。

特に新NISAは、投資が苦手な人はやらないほうがいいですし、いきなり限界枠まで入れるような「1000万円以上をつぎこむ」などの行為は絶対にやめたほうがよいでしょう。

何があるかわからない老後は、現金で持っておくことも大切です。トライするなら、少しずつ積み立てていく、あるいは損してもいいと思えるお金を使うこと。プラスが出ても非課税ですので、有利に投資できる制度です。

■年金で暮らせるライフスタイルにする

③ 家計を見直す

70歳以降、自分が働く、あるいはお金に働いてもらうという形で、積極的にお金を増やすことは重要ですが、もらえる年金で暮らしていくという考え方も大事です。

厚生労働省の2022(令和4)年「国民基礎調査」によると、44%の人が公的年金のみで暮らしています。ですから決して年金だけで暮らせないわけではありません。ちなみに厚生労働省が発表している令和4年度の公的年金のモデル給付額は、月額21万9593円です(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む)。

年金の何より素晴らしいところは、毎月定額で入ってくるところです。どんなに困っていても確実に入ってきます。年金で生きていくという前提で考えれば、その中でやりくりするはずなので、変に心配し過ぎないほうがいいというのが私の考えです。

砂時計とコインスタック
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

■不要なサブスク解約などでコストカット

とはいえ最初のうちは、生活に今かかっている金額と年金額に差があると思うので、それをだんだん縮めていく工夫が必要になるでしょう。そのためには、まず無駄を省くこと。

この年齢になると、住宅ローンを完済したり、子どもが独立したりしますが、この二つが終わると、必然的に必要額が下がっていきます。このときに住み替えを検討するなど、暮らしをダウンサイジングすることが大切です。

またスポーツジムや動画配信など、不要なサブスクを解約する、生命保険を見直す、大手キャリアのスマホを格安スマホに変えるなどして無駄を省いていきましょう。

何から手をつけていいかわからないというときは、夫婦でファイナンシャル・プランナーの方に相談するのもおすすめです。年金額や家計の支出入が“見える化”されて、スッキリするはずです。

■家計簿をつけて支出入を管理

同時に節税も考えましょう。

年金生活でおすすめなのは「ふるさと納税」です。

ふるさと納税とは、自分の故郷や応援したい自治体に寄付することで、寄付額の3割分の返礼品がもらえて、寄付金の2000円を超える部分については、住民税が控除される、所得税が還付されるといったしくみです。返礼品に食品をもらえば食費の足しになりますし、寄付控除も受けられるので、やらない手はありません。

夫婦共働きの場合、現役時代はそれぞれが生活口座に決まった金額を入金し、あとは「知らぬ存ぜぬ」というパターンが多いようですが、これから先は減っていく一方。夫婦それぞれが持っているお金は互いに知っておいたほうが、先々の安心感は大きいでしょう。どちらかが病気になったり、どちらかの親が倒れたり、いつ何があるかわかりませんから。

不安を解消するには、家計簿をつけるのもおすすめです。我が家の支出入を把握できると不安が解消されます。塾生の方には、「日々家計簿をつけるのが楽しみになった」という銀行員の方もいました。その人は真剣にお金と向き合うことで、「奥さんのことが心配だから、早めに遺言書をつくりたい」ともおっしゃっていました。日々のお金に向き合うことで、そこまで考えが広がっていくんですね。

代々木公園で微笑むシニア男性
写真=iStock.com/NicolasMcComber
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NicolasMcComber

■案ずるより働くが易し

とはいえ、70歳以降の年収激減に備えるにはやはり、年金受給を繰り下げて、75歳まで働くことを私は強くおすすめします。年利8.4%という“金融商品”は、なかなかありませんから。

そもそも年金をもらうときは、こちらから申請しなければもらえません。65歳で年金請求を行わなければ、自動的に繰り下げ受給になります。たとえ繰り下げていたとしてもやはり年金をもらいたくなったら、そのときすぐさま申請すればいいだけです。

「そうはいっても75歳まで働けるかどうか不安」という人も多いですが、塾生の方を見ていると、年齢が上がるほど、働きたい期間が延びていく傾向にあります。

たとえば60歳の方だと「働けて70歳ぐらいかな」という感じですが、65歳になると「いや、75歳までできるかな」、そして70歳まで働いている方は「もう死ぬまで働くぞ」という感じ。元気で働き続けていると、それが自信になっていくのです。

元気で長く働くコツは、とにかく「楽しく」働くこと。いやなことはしない。塾生の方もみなさん、自分のやりたいことを仕事にしていらっしゃるので、自分のペースで働いて、でもそれがなくなるのは寂しい、残念、それがモチベーションになって、「まだまだやるぞ!」という感じです。

定年後にお金のために働いている人はいません。定年後は「自分の幸せのために、いかに楽しく働いて、有意義にお金を使うか」。それが大切です。

つくづく「案ずるより働くが易し」なのです。

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大桃 綾子(おおもも・あやこ)
キャリアコンサルタント
1981年、新潟県生まれ。東京外国語大学(中国語)卒業、慶應義塾大学大学院社会学研究科修了。三井化学にて人事・事業企画に約10年従事。丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスを経て、起業。Dialogue for Everyone 代表取締役。

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(キャリアコンサルタント 大桃 綾子 構成=池田純子)

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