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なぜ日本の通勤電車は「地獄行き列車」みたいなのか…「会社から逃げたほうがいい人」を見分ける14の質問

プレジデントオンライン / 2024年7月4日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

転職を迷ったとき、何を決め手にすればいいか。デンソーを辞め、45歳でブルーベリー農園を開いた畔柳茂樹さんは「私の場合、20代の頃から14の質問を自分に投げかけていた。40代前半で答えがすべて『No』となり、会社を辞めることを決意した」という――。

※本稿は、畔柳茂樹『デンソーと農園経営から得た教訓 会社から逃げる勇気』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

■一様に暗い表情でスマホを眺めている

月曜日の朝、気持ちよく会社に行けますか?

こう聞かれて、すぐ「Yes」と答えられる人は、果たして何人いるだろうか。現在の私は、迷いなく「Yes」と答えられる1人だが、世間では本当に少数派に違いない。

なぜ少数派と言い切れるかというと、月曜日の朝の通勤電車に乗ってみればすぐわかる。まるで「地獄行きの列車」に乗り合わせてしまったかのような重苦しい雰囲気で、一様に暗い引きつった表情でスマホを眺めている。

電車を降りてからも、その表情は変わることなく、うつむきながら足早にオフィスビルに向かう。それは自らの意志で主体的に仕事に行くのではなく、否応なしに不思議な力によってオフィスビルに吸い込まれていくかのように見える。

私もかつては同じだった。今では通勤電車に乗ることはめったにない私だが、たまたま乗り合わせると辛くて苦しかったサラリーマン時代を思い出す。すぐにやらなければいけないこと、今週中に片づけなければならないこと、課題にどう対処するか、など電車に揺られながら仕事のことが次から次へと頭の中で堂々巡りする。吐き気を催すことも珍しくなく、陰鬱な気持ちで会社に向かっていた。

■「やりたいこと」を仕事にしているか

あの満員の通勤電車の中に日本の明るい未来は見えない。もし子どもや学生があの電車に乗り合わせたら、「早く大人になりたい」「早く仕事がしたい」と果たして思うだろうか。

なぜ、あそこまで息が詰まるような空気感なのか、理由は簡単だ。

それは、「好きなこと」「やりたいこと」を仕事にしていないからだ。今の私には「やらされ感」はまったくない。すべて自らやりたいと思うことを仕事にして取り組んでいる。曜日や時間に囚われることもない。時には土日も働くし、長時間労働もする一方で、早々に仕事を片付けてジム通いしたり、しばらく休んで海外旅行したりする。

月曜日だからといって特別な感覚はないが、正社員のスタッフ2名が土日休みで月曜から出社してくるので、程良い緊張感がある程度だ。いずれにせよサラリーマン時代と独立起業してからでは、雲泥の差があるが、ここまで激変したきっかけは何だったのか。

■脱サラ起業のきっかけになった14の問い

本書を手に取られている読者のみなさんは、「人生を変えたい」「新しい一歩を踏み出したい」「自分が変わりたい」という想いを抱いた成長意欲や向上心をお持ちの方だと思う。想いの強さは人それぞれでも、そういう気持ちがなければ、この本を読もうとは思わないはずだ。

私が会社を辞めるかどうか迷っているとき、もっと具体的な質問をいつも自分に投げかけ自問自答していた。その質問は次のようなものだ。

① 会社でやりたいこと、挑戦してみたいことがまだたくさんあるか?
② 会社の中での自分の明るい未来が描けるか?
③ 自分があこがれる理想の上司はいるか?
④ 自分は会社にとってかけがえのない存在か?
⑤ この先、昇給が期待できるか?
⑥ この先、昇進が期待できるか?
⑦ この先、キャリア、スキルアップが期待できるか?
⑧ 仕事、生活のためには、自由は制限されても仕方ないと思うか?
⑨ 自分の仕事が社会に貢献していると実感できるか?
⑩ 今の仕事が自分には天職(ライフワーク)だと思うか?
⑪ 月曜日の朝、気持ちよく起きて会社に行けるか?
⑫ 今の仕事は、もともと自分がやりたかった仕事か?
⑬ 今の自分は、なりたかった自分なのか?
⑭ 今の仕事、あるいは会社生活を通して、自己実現ができると思うか?

■20代の頃、「No」は3つくらいだった

この問いに対しての答えは、20代30代40代で答えは違う。

新入社員から間もない20代は、緊張感も半端なかったがヤル気に満ちていたと記憶している。会社も順調に業績を伸ばし、いつの間にか誇らしいほどに堂々たる超優良企業という地位を確固たるものにしていた。その会社の成長に合わせて自分も成長しているような気がして頼もしかった。当時はバブル全盛期で将来に不安を抱く人は今よりもはるかに少なかったという時代背景も大きかったはずだ。

だからこの14の問いに対して20代の頃の「No」は⑩⑪⑫くらいで、それ以外は「Yes」、当時はモチベーションが高かったことを伺わせる。

それがバブル崩壊で、閉塞感を肌で感じるようになった30代、そして管理職に昇進する40代。キャリアを積めば積むほど未来への期待は尻すぼみになり、昇給はしていくものの、責任の重圧から先のことを考えれば考えるほど不安な気持ちになった。この問いの答えが「Yes」から「No」に次々に変化していく。

■すべてが「No」になると「抜け殻」状態

最後まで「Yes」で残っていたのは、④の「自分は会社にとってかけがえのない存在」というところだ。自分の代わりは自分しかいないと自分に言い聞かせていたから、課長職に昇格できた。また⑭の「仕事や会社生活を通して、自己実現できるか」は実に重くて辛い質問だった。

心理学者のユングによれば、自己実現とは「自分の内なる能力を最大限発揮して、自分らしさを体現する」ことだ。今の私には自己実現など到底できるはずもないと感じていた。

そして管理職に昇進して数年後の40代前半で答えはすべて「No」となった。

すべてが「No」とはどういう状態なのか、想像してほしい。これは長期間にわたり、過度のストレスや不安により、心身ともに疲れ果て、エネルギーを失った「抜け殻」の状態だ。このまま放置すれば、うつ病など精神疾患を患う可能性が高く、すぐに何かを変えなければならない危機的な状況と言える。

部屋の隅に座っている人
写真=iStock.com/Ake Ngiamsanguan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ake Ngiamsanguan

■未来に希望を持てない人は実に多い

みなさんもこの問いに「Yes」か「No」で素直に答えてほしい。

「Yes」が半分以上あれば、モチベーションも高く、今の仕事に十分やりがいも感じられるから心配はない。「No」が半分以上になれば、何か転機が来ていると考えるべきだ。

「Yes」が3つ以下なら相当追い込まれた状態だから、事態を好転させるためにすぐに何か行動に移すべきときだ。そしてすべてが「No」に変わったら、もう時間の猶予はない、今すぐ行動を起こすべきだ。

私が会社を辞めるという決断をするまでに3年ほどの時間がかかった。自分の身の振り方は、あくまで個人の判断に委ねるが、10年ほど前からブルーベリー観光農園の起業セミナーを開催していて、気づいたことがある。

それはセミナー参加者を見ていると、世の中には私と同じようにサラリーマンとして行き詰まり、未来に希望の光が見出せなくなってしまった人が実に多いことだ。

■大企業の管理職から逃げ出して、今の私がある

特に前著『最強の農起業!』出版以来、このような悩めるサラリーマンの参加者が一気に増えた。中には、精神的にかなり追い込まれた状態の方、すでにうつ病を発症して休職中や休養中の方も散見され、私としても自分の経験を活かしてお役に立ちたいと思うようになった。

参加者は、ビジネスモデルに興味があるのはもちろんだが、私の脱サラ起業ストーリーに共感して参加してくれた人だ。だからなおさら何かサポートしてあげられないかと考えている。

ここでは、「会社を辞めたいけど、そんなの無理」と思っている方に向けてさまざまな視点からメッセージを送るのでぜひ聴いてほしい。会社を辞めることを無理に勧めるつもりはない。辞めた人がすべて上手くいっているわけではないし、会社に残ることも立派な決断だ。

ただわかってほしいのは、人生にはいろんな道があって選択可能だということ。起業、転職、家業継承、留学、資格や学位取得のための進学など実に様々な道が用意されている。「世界は本当にもっと広くて自由」だということをわかってほしい。

私の場合は、大企業の管理職から逃げ出したことが人生最大のターニングポイントになった。あそこで方向転換しなければ今の私はいない。このような本を執筆することもなかった。

■辞めたいけど、辞められない理由

「辞めたいけど、どうせ無理」と考えている人がそう思ってしまう理由は以下のようなものだ。

・会社に迷惑をかけたくない
・同僚がみんながんばっているのに自分だけ抜けられない
・脱落者のレッテルを貼られたくない
・デキない奴と思われたくない
・親に心配かける
・転職・起業もどうせ不安

いずれの理由も「他人のため」「他人の評価」という視点だ。これらの理由が何度となく頭の中を堂々巡りして抜け出せなくなり、考えるのが面倒になり、「どうせ無理」という気持ちになってしまう。

■自分自身より他人を優先する人は危ない

私もこのループに巻き込まれ、「辞めるなんて、どうせ考えたって無理に決まっている」と何度も自分に言い聞かせて無理やり自分を納得させていた。他人を優先して自分の心や体を後回しにしてしまうことが、長い間続くと人はどんどん追い込まれて、やがて危険な状態になる。

いくら何でも死ぬことまでは考えたことはないという人も多いと思うが、長期間ストレス状態が続くと過労死や過労自殺は、他人事ではなく誰にでも起こり得ることだと考えてほしい。

このような状態の中で難しいことだが、自分の命と人生を最優先に考えてほしい。私もこのまま仕事を続けたら、うつ病や精神疾患になることは容易に想像できた。

さすがに自殺までは考えなかったが、深夜まで仕事をして疲れ切った帰り路、電車を待つときに「今、飛び込んだら楽になるのになぁ」と思うことが何度となくあった。

家族のことを考えれば不安は尽きなかったが、最後の最後は「自分自身を守るため」に会社を辞める決断ができた。もう逃げるほかなかったというのが正しい表現かもしれない。

退職願
写真=iStock.com/hachiware
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hachiware

■長時間労働は視野を暗く狭くする

これは私自身の経験だが、追い込まれているときは、視野が極端に狭くなっている。ほかの道を選べるにもかかわらず、暗闇の中で狭くて細い道しか見えない、もうこの道を歩いて行くしかないと感じていた。

だが日本は民主主義国家だから1本の道しかないなんてことはあり得ない。自分の未来には、いくつもの道があって、選択して進んでいく、すなわち「未来は選べる」わけだ。長時間労働は、思考力を失い視野を暗く狭くする。そのため自分の歩んでいく道は、これしかないと思い込んでしまうという危険な状態だ。

過労で追いつめられて自殺した人の話は今でもよくニュースになる。以前は、「なぜ死ぬ前に会社を辞めないの?」「仕事よりも命の方が大事なのに」と率直にそう思いながらニュースを見ていたが、いざ自分がその状況に追い込まれると認識が一変した。過度のストレスを受け続けると、逃げるという選択肢が見えなくなるのだ。

■「お先真っ暗」と思っていたが…

私は、紆余曲折あって会社を辞めることになるが、会社側と退社することが正式に合意に達した瞬間に、今まで味わったことのない開放感を味わった。まるでマンガを見ているような光景が目の前に広がった。それは、次のようなものだ。

当時は自分の歩む道は、一本道で進めば進むほど道は狭くなっている。薄暗くて遠くを見たくても暗闇で見通すことができない。まさに「お先真っ暗」の状態で、未来に対してまったく希望の光は見えず、ただただ目の前の仕事を必死に片づけていくことしかない、自分が歩んでいく道はこれしかない、許されないのだ、という絶望的な状態に追い込まれていた。

畔柳茂樹『デンソーと農園経営から得た教訓 会社から逃げる勇気』(ワニブックス)
畔柳茂樹『デンソーと農園経営から得た教訓 会社から逃げる勇気』(ワニブックス)

それが、退社が正式に決まった瞬間、目の前の光景は激変した。目の前には薄暗い世界が広がっていたが、そこに明かりがさして先が見通せるようになった。そして今歩んでいる道の先を見てみると、今まで行けば行くほど道は狭くなっていたが、実は道はどんどん広くなって、さらに何本にも枝分かれしていることがわかった。

今の仕事を続けていくしかないという薄暗い一本道から、未来は明るく希望に満ちている、しかも選択肢はいくらでもある、「未来は選べる」という世界に一気にそして劇的に変わった。この目の前の世界が一変したことは、いまだによく覚えているし思い出す。あれ以来、悪い出来事が起きたとしても、未来は明るいし選択できるという思いが僕の中には常にある。

ここで伝えたいのは、あなたが思っている以上に「世界は本当に広くて自由」だということ。決して「これしかない」と考えないでほしい。勇気を出した人に世界はやさしい。

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畔柳 茂樹(くろやなぎ・しげき)
農業起業家
1962年、愛知県岡崎市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。自動車部品世界一のデンソーに入社後、40歳で事業企画課長に就任するが同期の出世頭から2年遅れの課長就任。ハードワークの目まぐるしい日々に心身ともに疲弊して長年の夢であった農業への転身を決意。2007年45歳で独立し、『ブルーベリーファームおかざき』を開設。今ではひと夏1万人が訪れる地域を代表する観光スポットとなる。また、年間でわずか60日余りの営業にもかかわらず、会社員時代を大きく超える年収を実現。2017年に処女作『最強の農起業!』(かんき出版刊)を発表。中国、タイでも発売されるなど大きな反響があった。この書籍の発売を機に、セミナー受講者は年200人を数え、全国約100カ所にブルーベリー観光農園が誕生。この経歴・活動がマスコミで注目され、取材・報道は200回を超え、海外メディア(タイ国営放送ほか)からも取材が来ている。

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(農業起業家 畔柳 茂樹)

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