「休日は何をしているんですか?」にバカ正直に答えてはいけない…センスのいい人が自然とやっている返し方
プレジデントオンライン / 2024年7月7日 8時15分
※本稿は、齋藤孝『「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■「天気の話」を舐めてはいけない
雑談では「天気の話」もおろそかにはできないものです。
なぜなら、天気の話も、相手の反応や相性をはかる「試金石」みたいなものだからです。
別に、お互い天気のことをそれほど話したいと思っているわけではないけれども、話題としては一番当たり障りのないもので、雑談のうちにすら入らないかもしれません。
それでも「暑いですね」「はい、暑いですよね」と、なんてことのない話を数秒することで、「機嫌がよさそうだな」「今日は急いでいるな」「ちょっとニコッとしてくれた。少し話せるかな」などと、お互いの状態や気分、相性のようなものまで感じ取ることができるのです。
天気の話題は、コミュニケーションの入口であり、相手に「お邪魔してもいいですか」とたずねる、ノックのような役目を持っています。それさえも交わすのが難しい相手とは、距離を置いてもいいかもしれませんね。
初対面の人と話すのが苦手という人は、「話が苦手」なのではなく、「最初のきっかけがうまくつかめない」というだけの話です。
雑談のネタを用意しておいて、はじまりの会話をうまく転がすことができれば、あとはスムーズに回りはじめます。
相手が振ってきたネタは否定しないようにしましょう。
■「休みの日は何してる?」への気の利いた返し
「いいですね」
「面白いですね」
「どんなところが好きですか?」
「こういうのもありますよね」
などと、同調して話を広げていってください。
「私も、私も」と同調し合いながら話を盛り上げることは、誰でもできて、簡単に場が盛り上がります。
よくある会話の例として「休みの日は何してる?」というフレーズがあります。
そのとき、「いや、特に何も……」と答えたり、ちょっと探りを入れられているようで嫌な感じがしたりする人もいるようです。
しかし、質問しているほうは、ただコミュニケーションをとりたくて聞いているだけで、あなたのプライベートを知ろうとしているわけではありません。すぐに思いつく話題だから、あまり意味を考えずに何気なく聞いてしまっていることが大半でしょう。
それに対して「何してたかな……」と真剣に答えようとしたりすると、「こんな話をしても面白くないかも」「こんな話をしてどう思うだろう」と考えて疲れてしまいます。
ここでの正解は、「自分が話したいことを話す」です。
「今ハマっていること」だったり、「海外旅行をしたいと思って、外国のことを調べていました」というように、そのとき自分がやりたいと思っていることがあれば、それを話すのがよいと思います。
■内容ではなく「糸口」を提示すればOK
繰り返しますが、相手はあなたの休日について知りたいのではなく、あなたと一緒にいる時間を楽しいものにしたいと思って質問しているのです。そのために、会話を続けるための糸口をつくろうとしているのです。
ですから、「ここが糸口です」ということを伝えれば問題ないのです。
(会話の例)
〔×〕
A 休みの日は何をしているの?
B 特に……掃除とか。
【実況中継】
本当の話をしてもそこで話が止まってしまう可能性がある!
〔○〕
A 休みの日は何をしているの?
B この間の休日は仕事で行けなかったけれど、最近はソロキャンプが好きでよく行くんだ。
【実況中継】
この言い方だとウソにならなくて気がラク
〔△〕
A 休みの日は何をしているの?
B 特に……掃除とか。あなたは?
【実況中継】
せめて、相手にボールをわたそう
「最近どう?」「趣味は何ですか?」と質問してくる人も「休みの日には何をしているの?」という質問と同じく、話の糸口を求めているだけであることがほとんどです。
相手は、近況報告をきっかけとして、あなたと何か話したいというだけなのです。そしてその場に沈黙が続くのを避けたいのです。
ですから「最近、高カカオチョコレートにハマってて」「この間散歩で、3駅先の公園まで行ってしまいました」など、話の糸口となる話題を提供しましょう。
![日没時にオフィスで何気なく話すビジネスマン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/b/1200wm/img_2b7d9e897b437dbf1b5165b03f2771c4337463.jpg)
■本当のことでも「何もしませんでした」は絶対にダメ
このとき面白い話をする必要はありません。すべらない話ができるのは、それでお金が取れる、プロの人たちだからです。
そうでない私たちは、話題の提供ができればいいのです。それで相手との話題が広がればよし。
話題の提供をする気がなくなったら、そこで終了です。
会話というと、話をする側のほうにスポットライトが当たりがちですが、実は返し方も重要です。
以前、クライフというオランダの有名なサッカー選手が「チームにはリーダーとそれ以外の人がいるのではなく、ボールを持ったら、その人がリーダーだ」と言っていました。会話も同じで、ボールを持った人がリーダーになるのです。
最近の話を聞かれて、「何もなかった」と答えている人。
それはまずありえません。
週末のニュース番組でよくある「この1週間をまとめました」というコーナーをイメージしながら、先週の出来事を掘り出してみましょう。
特別な出来事でなくても、「毎朝、卵かけご飯とシーチキンを食べていました」という程度のことでもいいのです。相手が興味を示せば十分。やってみると、だんだんと慣れてきて、いろんなネタが出てくると思います。
「最近どう?」と聞かれて「やることがなくて、ホント何もしませんでした」と言うのは、相手を拒否しているのと同じです。絶対に言わないようにしましょう。
■雑談に困ったら「週の出来事」を手帳に書く
近況報告などの「ネタ」づくりにおすすめなのは、手帳を活用することです。
1週間単位で、見開きの片側に書き込むページがあるものがおすすめです。そこに、その日に見たものの感想や、やったこと、行った場所などを書き込んでおきます。すると、「あ、この週はこれがあったな」「ここに行ってあれを見たな」と、その週の出来事を一目で見返すことができます。
私の場合は、テレビ番組の感想を書いたりもします。テレビをあまり見ないなら、動画や音楽などの感想を書き込んでもよいでしょう。
こうやって書き込んでいくと、空欄がだんだんぎっしりと埋まっていくようになります。近況報告のネタは、そこから探せばよいわけです。
学生にも、「面白い話でなくてもいいから、何か人に話せる小さい話題を書き込んでみよう」と呼びかけて、1週間のネタ帳をつくる練習をしてもらいます。すると、「面白い話」とまではいかなくても、自分の生活の中に話せる話題が結構あるものだ、と気づくでしょう。
●近況報告を「5・7・5」で
私の授業では、「5・7・5」で近況報告をしてもらっています。
「私にも、ついに彼氏が、できました」
「高熱で、病院に行ったら、インフルエンザ」
「推し活で、ライブに行って、盛り上がる」
などなど。
厳密に「5・7・5」でなくてもかまいません。
でも、「5・7・5」を目標にして話すと、手短にちょっとした話題をつくることができます。
■食べ歩き、SF小説…キーワードを20個書いてみる
●ワーク:関心発見マップ
自分の関心があることを、次のようなマップに20個書いてみましょう。
![【図表1】関心発見マップ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/e/1200wm/img_8e719c2afc522c0b48b64a3e1d4c9e12154427.jpg)
誰かに話題を振ろうとしても、そもそも自分がどんなジャンルの話に強いのかがわからないこともあります。書いておくと、それを意識するので、より情報も集まり、話せることが増えていきます。
このワークを大学の授業でやったとき、20個すべて麻雀用語を入れてきた人がいました。
これはこれで面白いですが、麻雀を知らない人とは話せませんね。
もし誰かと一緒にできるなら、書いたリストをお互いに見せて、その中から相手と共通のものがあるかどうかを探し、見つかったら、それについて会話をしてみましょう。
接点が見つかると、初めての相手でも話せることがわかります。
■相手の話に「知りません」は「暴力」である
会話の中で何となく聞いたことがある話題が出たときに「間違ったことを言ってはいけない」と思って「知りません」と返してしまうことはないでしょうか。相手に気をつかいすぎたり、自信がなかったりするとき、ついやってしまいがちです。
ですが、コミュニケーションの視点でいうと、これは決してやってはいけないことです。もはや「暴力」と言い換えてもいいかもしれません。
なぜなら「あなたとのコミュニケーションを断ち切りたいです」という意思表示だと受け止められるからです。
「知らないからそう言ったのに、何でそれが悪いんだ」と思われるかもしれません。でも、相手とうまくコミュニケーションをとっていこうとするなら、なんでも真っ正直に返せばよいというものではありません。
たとえば、知らなくても「あ、名前は聞いたことがあります」と返してくれれば、相手は「そうそう、その○○なんだけど……」と会話が続けられます。
でも、「知りません」と言われると、あとが続かない。
せめて「もしかしたら聞いたことがあるかもしれません」と言えば、相手は内容を説明してくれるでしょう。
返し方としては、ほかにも、
「もしかしたら○○ということですか」
「聞いたことはあるけれど、やったことはないんです」
など、いくらでもありますよね。
■知らない話題を振られたときのスマートな対応は
知らない話題を振られたら、そんなときこそ、スマホの出番です。「それはどんなものですか? ちょっと調べてみますね」とスマホを取り出すのです。
たとえば、あまり詳しくない野球の話題を振られたとしたら、
「野球ってそんなに面白いんですか」
「どちらのファンなんですか?」
「好きな選手はいますか?」
![齋藤孝『「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる』(サンマーク出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/0/1200wm/img_105eadd14ccfb6e6c95b1959a741cf50184996.jpg)
などと聞いて、「ちょっとスマホで見てみますね」と、その選手について検索してみます。
そして、
「へえ、こんなことが得意な選手なんですね」
「こんな記録を出しているんですね」
と自分で情報を得ながら話をつなぐことができます。
相手も自分に合わせてくれたと感じ、悪い気はしないでしょう。
コミュニケーションが苦手そうな相手で、それ以外にネタがない、というときも、活用しやすい方法です。
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明治大学文学部教授
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー作家、文化人として多くのメディアに登場。著書に『孤独を生きる』(PHP新書)、『50歳からの孤独入門』(朝日新書)、『孤独のチカラ』(新潮文庫)、『友だちってひつようなの?』(PHP研究所)、『友だちって何だろう?』(誠文堂新光社)、『リア王症候群にならない 脱!不機嫌オヤジ』(徳間書店)等がある。著書発行部数は1000万部を超える。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導を務める。
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(明治大学文学部教授 齋藤 孝)
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