「1日のピーク」がやってくる時間帯とは…2割の仕事量で全仕事量の8割をカバーする驚きの方法
プレジデントオンライン / 2024年7月4日 15時15分
※本稿は、鈴木邦成『はかどる技術』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■昼のタスクの効率アップを考え、朝や夜を予備の時間と捉える
忙しい人は「日中は忙しいから、早起きしてSNSをやろう」「夜なら時間があるから帰宅後の時間を活用しよう」などと考えがちです。しかし、そんなことが可能なのでしょうか。
私もかつては朝や夜の時間の有効活用を考えてスケジューリングを行っていました。
けれども朝活は短期間ならともかく、長期間、続けることは容易ではありませんでした。普通の人は2、3カ月が限度なのではないでしょうか。
夜の場合もほとんど同じです。決まった曜日の夜に、何か習慣的なことを始めようと思っても、急な残業やイベント、友人知人からの誘いなどもあるでしょうから、なかなか計画通りに行かなくなるはずです。
そうなると当然、期待値が高いだけに失望感も大きくなります。
1回限りならばともかく、習慣として早起きを実践するのは、よほどの意志力が求められます。帰宅後もほろ酔い加減だったり、疲れていたりしては仕事どころではないのです。
こうした状況下では、ヘタに多大な期待を朝や夜に抱かないのが正解です。
昼のタスクの効率アップを考え、朝や夜を予備の時間、物流業務の理論となるロジスティクス工学でいうところのバッファー(余白)としてとらえるのです。
■その日の2割の仕事量が全仕事量の8割をカバー
もう少し加えると、ロジスティクス工学では「パレートの法則」がよく活用されます。
パレートの法則とは「成果の8割はその構成要素の2割で成り立っている」という経験則のことをいいます(働きバチのうち、本当に働いているのは全体の2割に過ぎないといわれるのもこのルールです)。
そしてこのルールを毎日のスケジュールとタスクの関係に当てはめると、「その日の2割の仕事量が全仕事量の8割をカバーする」ということになります。
つまり8時間(480分)労働ならば、96分(480分×20%)程度働けば、理論上、ほとんどその日のタスクは終わったようなものになるのです。
したがって、パレートの法則を根拠とすれば2時間程度、午後に効率的にタスクをこなせば、わざわざ朝や夜に時間を割く必要はなくなるわけです。
![バッファーを組み込んだ昼重視型のスケジュール策定(一例)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/b/1200wm/img_2b79ddec8c4e5a3d3855341e3a4348ce340411.jpg)
図表1は昼重視型の時間管理の一例です。実際、朝や夜にやろうとしているタスクは密度が低いことも多く、日中に高密度で集中的に取り組めば、時間をかけずに終わることも多いのです。
■仕事で本当にムダな時間は「指示待ち時間」
ただし、日本社会で意外と多いのは「指示待ち」「仕事待ち」「確認待ち」などの“待ち時間”です。
たとえば、「午後に仕事を終えても、夕方から会議があるので、それまでの時間は待機する」とか「早朝ミーティングのあと、昼から商談に出かけるから、それまでは他の業務をこなしながら待っていてほしい」といった感じです。
こうした待ち時間の解消をはかることも大切ですが、仕事の密度としては濃いわけではありません。したがって、待ち時間の有効活用をはかれば、朝や夜に別枠でタスクを入れなくても時間をつくり出せるのです。
「でも、それなら急に入った仕事ややり残しの仕事はどうすればいいのか」と、あなたは思うかもしれません。
確かにルーティンだけでなく、急な仕事が入ることで予定が狂うことはよくあります。そこでそのときに活用するのがバッファーである朝と夜なのです。
仕事前の朝や仕事後の夜に資格試験の勉強や副業などを日課としたり、それを習慣化しようとしても、なかなかうまくいきません。朝や夜の時間帯の活用方法は習慣的なタスクではなく、イベント的、突発的なタスクへの対応なのです。
もっといえば、どうしても習慣的にやるようなタスクを入れる場合、ある程度、期間を区切って、「この期間には集中的に決まったタスクを入れるようにしよう」というようにプロジェクト形式でこなすべきなのです。
「来週の社内会議の資料をつくるのに、今週いっぱいは早起きする」とか「来月の資格試験対策のために当面、早起きする」といったかたちで、目的だけでなく期間も明らかにしておくのです。
■日本のビジネスランチは非効率
「日中の時間をうまく使うとしたら、ビジネスランチなんか、積極的に行うといいのですか?」という質問を受けることがあります。
しかし「ビジネスランチはどうも非効率」というのが私の結論です。
ビジネスランチは欧米では当たり前のように行われています。しかし、日本の場合、その効果は意外と低いのではないかと私は思っています。
たとえば、フランスやスペインなどのラテン系の国の場合、ランチタイムが2時間くらいあることはザラです。ただし、ランチタイムのあとにはシエスタという昼寝の時間も設けられています。朝からしっかり働く代わりに昼休みは長いのです。
また、米国でもビジネスランチは頻繁に行われています。しかし、これは夜の時間は家族とゆっくり過ごしたりするためです。あるいはビジネスの人脈づくりに欠かせないパーティに顔を出したりすることもあるでしょう。
国土の広い米国では移動が飛行機になることも多く、午後から飛行機を使って出張に行くこともあるはずです。
すなわちビジネスランチが活用されるのは、夜は夜で会食とは違う形態のビジネスコンタクトがあるからなのです。
■「今日は仕事をした」という認知バイアスが発生
こうした国々に対し、日本の場合はビジネスランチに加えて、夜は夜で居酒屋やレストランで接待というケースが少なくありません。
しかもほとんどの場合、ビジネスランチは夜の接待の代わりに行われています。
![鈴木邦成『はかどる技術』(フォレスト出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/b/1200wm/img_8b0f7e24d9194610bc6ba5afa8f19048133656.jpg)
「今日の夜は別の接待が入っているから、ランチでも一緒にいかがですか」というのが日本式だと思います。
そのうえ、平日ならば長い時間をとることはできません。誰もが似たような時間帯に同じような場所で慌ただしくランチをするので商談どころではないでしょう。したがって、きわめて効率の悪いビジネスコンタクトになります。
さらにタチが悪いのは、ビジネスランチで「今日は仕事をした」という認知バイアスが発生。不必要な達成感が出来上がってしまうことです。そうなると、もはや夜に接待やビジネス会食をするのは苦痛になってくるはずです。
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物流エコノミスト、日本大学教授
一般社団法人日本ロジスティクスシステム学会理事、電気通信大学非常勤講師(経済学)。専門は物流およびロジスティクス工学。物流改善などの著書、論文多数。普段から学生やビジネスパーソンから専門分野に関する相談を受ける一方で、就職、転職、資格試験の勉強方法、職場での時間管理や人づきあいなど、幅広い悩みについても意見を求められるという。そうしたやりとりのなかで、物流・ロジスティクス工学の知見を、「仕事や人生の滞りをなくす」という視点から悩みに当てはめることで、思いがけない解決策を導けることに気づく。主な著書に『トコトンやさしい物流の本』『入門 物流(倉庫)作業の標準化』『トコトンやさしいSCMの本』(いずれも日刊工業新聞社)、『シン・物流革命』(中村康久氏との共著、幻冬舎)、『物流DXネットワーク』(中村康久氏との共著、NTT出版)などがある。
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(物流エコノミスト、日本大学教授 鈴木 邦成)
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