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「報連相を徹底する」は絶対にやってはいけない…物流エコノミストが警鐘「情報共有」における大誤解

プレジデントオンライン / 2024年7月6日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/andrei_r

仕事の報連相はどこまで徹底するべきか。物流エコノミストの鈴木邦成さんは「日本に来た外国人に聞くと、『そもそも報連相など存在しない』という国も多い。躍進著しいアパレル企業のワークマンでも報連相は行われていないという。百歩譲って、報連相を令和風にアップデートするためには、その手間や負担、タイパの悪化などを考えて、必要最低限の情報の共有のみで十分である」という――。

※本稿は、鈴木邦成『はかどる技術』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

■多くの議事録は基本的には書きっぱなし

会議といえば欠かせないのが「議事録」。なければ会議で何が決まったかわからなくなるため、取締役会、教授会などの重要会議では不可欠になります。

しかし、この議事録というのがなかなかのクセモノで、とくに些末な会議まで議事録や議事メモを残すのはいかがなものかと、私は考えています。

なぜなら、議事録の作成には主観的な部分も多くなるからです。

たとえば、ある出席者にとっては、「確かに意見として出たがどうでもいい話」が「重要な案件として提案があった」かのように書かれる可能性もあります。

その場はそれで通っても、後々揉(も)めるリスクも出てくると、議事録作成の担当者も大きな負担を背負うことになります。

では、それほどまでに議事録が大切かというと、何度も見返される議事録は数えるほどでしょう。多くの議事録は基本的には書きっぱなしとなります。

だとしたら、部署ごとの週会議などは録音で十分でしょう。録音データをパソコンに保存しておけばいいわけです。

オンライン会議ならば録画機能もあるので録画で十分です。必要に応じて文字起こしソフトを使えばいいのです。

■紙とペンのままではデジタル化の波に乗り遅れる

また、資料の作成はデジタル化されていても、「資料は紙で配布する」「確認のためにプリントアウトして紙で確認する」では、何のためのデジタル化なのかわかりません。

デジタル化の波に乗り遅れないためにも、紙媒体ではなく、デジタル媒体での確認を意識しておく必要があります。私自身、紙媒体での資料作成や保存は、以前はともかく現在はまったく行わなくなりました。そのため、今はプリンターも自宅にはありません。

もっとも、タイピングが苦手で、レポートの作成に途方もない時間がかかる人もなかにはいるでしょう。最初からパソコンをうまく使えるわけではなく、ある程度、スムーズにパソコンで提出物をつくれるようになるには誰でも時間がかかります。

そこでパソコンがどうしても苦手、あるいは「紙で資料をつくったほうが頭に入る」という人には手書き資料をスマホで撮り、画像として保存することを勧めています。

私の個人的な感覚では、慣れもあるでしょうが、「手書きで1時間かかる資料は、パソコンならば10分でできる」といったところです。

テンプレートやコピペの活用、手書きでは絶対必要な清書の手間などがなくなるため、効率が上がるのは当然のことなのです。いつまでも紙とペンで作成しようとするのでは、能力も常識も疑われることになりますよ。

電卓を横に置いて鉛筆で数字を書く人
写真=iStock.com/Natalia Shabasheva
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Natalia Shabasheva

■不要な情報共有が滞りを誘発

会議の資料を読むだけの報告はなくそうとしても、なかなかなくなるものではありません。それは多くの日本人が「報告は必ずしなければならない」と思い込んでいることも関係しています。

実際、会議に限らず「上司への報告は常に必要」というのが日本社会。したがって、一般的には報連相は細かいほど評価されることになります。

ただし、それが大きな負担に感じる人は少なくないでしょう。

「会議が長くて非効率、そのうえ上司への報告事項がやたらに多い」というのでは、何のためにどんな仕事をしているのか、わからなくなります。

「部下には毎週、パワーポイントで報告書を書かせることにしている」という話はよく耳にしますが、書かされる部下の負担は相当なものになるでしょう。しかも書かせた上司はその報告書をきちんと読んで有効に活用しているのかどうかも疑問が残ります。

日本に来た外国人に聞くと、「そもそも報連相など存在しない」という国も多いようです。実際、グーグルやアマゾンのようなIT系の先進企業で報連相があるなんて聞いたこともありません。躍進著しいアパレル企業のワークマンでも報連相は行われていないといいます。

■なんでも情報共有すればよいわけではない

では、百歩譲って、報連相を令和風にアップデートするためには、どうしたらよいのでしょうか。

そもそも報連相とは「情報共有」という考え方の延長にあるのだと思います。

現代物流の基本的な考え方のベースにもなっている「サプライチェーンマネジメント」(SCM)では、「情報共有を行って、必要なモノを必要なときに必要なだけ供給する」ことを重視しています。

この部分だけを切り取ると、「サプライチェーンの情報共有も会社の報連相も同じだ」ということになりますが、サプライチェーンで共有されるべき情報というのは「在庫情報」などの滞りの解消に必要な情報だけです。枝葉末節な情報は共有することで、逆にマイナスになることもあります。

同じように、報連相でも業務に必要な情報だけを共有する必要があります。

「直接、業務に関係ありませんが、シェアしておいたほうがよい情報なのでお知らせします」といった言い方をする意識高い系の人もいます。けれども、そうした余分な情報共有には何の意味もなく、「雑音を入れているだけ」なのです。

鈴木邦成『はかどる技術』(フォレスト出版)
鈴木邦成『はかどる技術』(フォレスト出版)

しかも、そうしてムリやりシェアさせられた情報は無視するわけにもいきません。忘れないようにしたり、気に留めておいたりすることで、大きな負担に感じることにもなります。

「取引先の課長が金魚を飼っている」といった業務と関係のない情報を共有する必要はないのです。それを業務日誌に書く必要もないし、細かく上司に説明する必要もありません。

報連相についても、その手間や負担、タイパの悪化などを考えて、必要最低限の情報の共有のみで十分なのです。

ましてや報連相を強いるのは論外です。「必要な情報を必要なときに必要なだけ共有する」ことで滞りの発生を未然に防ぐ。ここがポイントなのです。

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鈴木 邦成(すずき・くにのり)
物流エコノミスト、日本大学教授
一般社団法人日本ロジスティクスシステム学会理事、電気通信大学非常勤講師(経済学)。専門は物流およびロジスティクス工学。物流改善などの著書、論文多数。普段から学生やビジネスパーソンから専門分野に関する相談を受ける一方で、就職、転職、資格試験の勉強方法、職場での時間管理や人づきあいなど、幅広い悩みについても意見を求められるという。そうしたやりとりのなかで、物流・ロジスティクス工学の知見を、「仕事や人生の滞りをなくす」という視点から悩みに当てはめることで、思いがけない解決策を導けることに気づく。主な著書に『トコトンやさしい物流の本』『入門 物流(倉庫)作業の標準化』『トコトンやさしいSCMの本』(いずれも日刊工業新聞社)、『シン・物流革命』(中村康久氏との共著、幻冬舎)、『物流DXネットワーク』(中村康久氏との共著、NTT出版)などがある。

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(物流エコノミスト、日本大学教授 鈴木 邦成)

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