「まさかの大逆転の可能性」に永田町が騒然…都知事選「後半の情勢調査」で急浮上した"現職の本当の敵"
プレジデントオンライン / 2024年7月3日 17時15分
■都知事選の「構図」が変わってきた
7月7日に投開票される東京都知事選では、各候補が支持を広げるために舌戦を繰り広げている。
これまでは、現職の小池百合子氏と前参院議員で民進党代表などを歴任した蓮舫氏による戦いが軸になると見られていたが、選挙戦の中で戦いの構図が変わってきている。
その背景には、国民の既存政党に対する不信感が大きく影響していると見られる。
「前安芸高田市長の石丸伸二氏が予想以上に支持を伸ばしてきている。これまでの情勢調査では現職の小池氏がトップで次点に蓮舫氏、大きく引き離して石丸氏と続いていたが、2位と3位が入れ替わる可能性も出てきている」
永田町関係者は予想外の事態に驚きをもって話した。
都知事選の情勢をめぐっては、6月24日に寄稿した「『予想外の結果』になる可能性が高まった…都知事選『最新の情勢調査』で見えてきた"勝敗を分ける要素"」で、自民党が告示前に実施した調査では小池氏が40%台、蓮舫氏が30%台の支持を集めた一方で、石丸氏は10%未満にとどまったと詳報したが、事態は大きく変わってきている。
マスコミ各社が実施した最新の情勢調査によると、石丸氏が支持を伸ばす一方で、小池氏と蓮舫氏はともに支持を落としており、2位の蓮舫氏と3位の石丸氏の差が縮まってきているのだ。
■「3位に転落する可能性もあるのではないか」
共同通信社は6月29日~30日に調査を実施し、小池氏が一歩リード、蓮舫氏が続き、石丸氏が激しく追い上げる展開となっている、と報じている。また、読売新聞社が28日~30日に実施した調査によると、無党派層では石丸氏の支持が蓮舫氏を「やや上回った」という。
そうした中、永田町では「蓮舫氏が3位に転落する可能性もあるのではないか」と囁かれており、蓮舫陣営は引き締めを図っている。
なぜ石丸氏の支持が選挙戦の中で伸びてきているのか。
その理由のひとつには小池氏や蓮舫氏とは異なる選挙戦略が功を奏したことがある。
石丸陣営は1日10カ所以上で街頭演説をする日も設けるなど、かなり過密なスケジュールを組んでいる。
もともと石丸氏は安芸高田市長のころに市議会やマスコミに対する歯に衣着せぬ発言が注目され、ネットを中心に知名度を高めたが、一方で広島県の自治体の首長という立ち位置から東京都政との繋がりはあまりなかった。
そこで、ネット人気を実際の都民の投票行動に繋げるべく、一人でも多くの都民に顔を見せて接触するという戦略をとっており、その中で支持を伸ばしていると言えるだろう。
回数が多くなる分、1回1回の演説は小池氏や蓮舫氏に比べると短めだが、「銀行で経済アナリストとして活動し、その後、市長として理論を実践した。経済を知る都知事として、東京を経済都市として盛り立てていく」(石丸氏)と自身の経歴を引き合いに支持を呼び掛けることで、聴衆の関心を引いている。
■なぜ街頭演説の数が圧倒的に少ないのか
一方で小池氏は街頭演説の数を少なくし、あえて離島や郊外で演説をするなど控えめな行動をとっている。
初の街頭演説は6月22日に八丈島で行い、23日には奥多摩町や青梅市でマイクを握った。29日には北千住駅前、30日には蒲田駅前、そして7月2日には秋葉原駅前に立ったが、他の候補に比べると演説の数が圧倒的に少ないと言えるだろう。
もちろん現職の都知事であるため公務との関係も考慮しなければならないが、それだけではないと永田町関係者は言う。
「演説の回数が少なく、しかも離島や郊外を回ったのは、各地の支持を固める狙いももちろんあると見られるが、それ以上に蓮舫氏との対決が盛り上がることを懸念したと考えられる。選挙戦が盛り上がれば盛り上がるほど、挑戦者である蓮舫氏が際立ってしまい、その中で逆転を許す恐れもあるからだ。都心で舌戦を繰り広げる蓮舫氏をかわすことによって、『小池vs.蓮舫』という構図を目立たせないようにしている」
選挙戦は一般的に、盛り上がらないほど現職にとって有利となり、また、固定の支持層や組織票を持っている候補にとって勝ちやすい状況となる。
小池氏は自民党や公明党の自主支援を受ける中、あえて選挙運動を控える戦略をとっていると言えるのだ。
■「保守vs.リベラル」とは別次元の対決軸
対する蓮舫氏は渋谷や池袋、新宿など主要な駅前を中心に街頭演説を繰り返すほか、LGBT団体の街宣に参加するなど、従来型のスタンダードな選挙戦を繰り広げている。
「小池さんは光に光を当てるのは得意です。でも東京で広がる格差。光と影。だったら私は影に光を当てて、その影がなくなるまで光を当て続ける都知事になりたい」と聴衆に訴えかけて小池氏との違いを強調。
6月29日には明治神宮外苑の再開発について都民投票を実施することを追加公約として掲げるなど、争点作りにも取り組んでいるが、保守層への波及にはまだ課題が残ると言える。
このように三者三様の選挙戦が繰り広げられる中、石丸氏が小池氏や蓮舫氏から支持を奪う形で勢力を伸ばしていることが伺える。
ただ、石丸氏が支持を伸ばしている理由はそれだけではないだろう。
そこには「保守vs.リベラル」という旧来型の政治対立とは別次元の、既存政党への忌避感が、石丸氏を押し上げているという様子も見てとれるのだ。
■れいわ新選組と参政党の共通点
前回寄稿した中で分析した自民党の情勢調査では、石丸氏にはれいわ新選組と参政党の支持層のそれぞれ約2割から支持が流れていることを紹介した。
両党は「保守vs.リベラル」という従来の対決軸では対極にあることから、石丸氏への支持はこうした軸で推し量ることはできない。
一方で、両党に共通しているのは新興の国政政党であることだ。
こうしたことから、石丸氏には「現状を変えてくれる」という、新興政党に抱く期待感と似たような面で支持が集まっていると考えることができる。
これは「既存政党vs.新興勢力」という新たな対決軸と捉えることができるかもしれない。
そのように考えると、小池氏は自民党を中心に、蓮舫氏は民主党を中心に長らく活動し、要職を務めてきた政治家だ。
どちらも既存政党の代表のような存在で、そこに忌避感を抱くような人たちの票が、ごっそりと石丸氏に動いているという風にも考えられる。
実は似たような現象は4月28日に投開票された衆院東京15区補選でも起きていた。
東京15区補選では立憲民主党が擁立した酒井菜摘氏が最多得票となり初当選を果たしたが、一方で二番手には無所属の元参院議員、須藤元気氏が続いた。
ほかにも日本維新の会の金澤結衣氏や、小池百合子氏が擁立して自民の一部が応援に入った乙武洋匡氏が出馬していたが、それらを抑えて次点につけたのである。
■「既存政党への失望」で新たな構図が生まれた
須藤氏は山本太郎氏と仲が深い関係で、れいわ新選組から一定の票が流れたが、NHKの出口調査によると、自民や立憲の支持層からも票の流入が確認できており、ここでも「保守vs.リベラル」という対決軸によらない支持を集めたことが伺える。
また、新興勢力への期待感という点では、この選挙で日本保守党の飯山陽氏が4位となったことも特筆に値するだろう。
そうすると、今回の東京都知事選でも、東京15区補選における須藤氏のように、石丸氏が終盤にかけて一気に票を伸ばすことも考えられる。
それは、裏金問題などに起因する既存政党への失望の裏返しという風にも捉えることができるだろう。
このような票の動きは東京15区補選や都知事選にとどまらず、今後行われる衆院選などの国政選挙でも出てくる可能性がある。
これまでも、れいわ新選組やNHK党、参政党などの新興政党が躍進し、議席を獲得してきたが、その動きがこれまで以上に進んでいくかもしれない。
「保守vs.リベラル」という従来型の対決軸が通用しなくなり、「既存政党vs.新興勢力」という構図で思わぬ候補が一気に躍進する。
既存政党はそうした事態も踏まえた選挙戦略の見直しが求められるだろう。
国民の今の政治に対する不満が、どのような形で票となって表れるのか。
都知事選の結果は、今後の選挙のあり方を大きく左右するものになるかもしれない。
----------
ジャーナリスト
1992年生まれ。2015年に東京大学を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡で事件記者をした後、政治部で官邸や国会、政党や省庁などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動。YouTubeチャンネル「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしてニュースに関する配信もしている。取材過程に参加してもらうオンラインサロンのような新しい報道を実践している。
----------
(ジャーナリスト 宮原 健太)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
石丸伸二氏の「かみ合わない質問」「パワハラ気質」は狙い通り…マスコミを敵視する石丸氏がテレビ出演する理由
プレジデントオンライン / 2024年7月17日 7時15分
-
「石丸伸二氏のズラし戦略」にまんまと引っかかった…「蓮舫氏の惨敗」で露呈した立憲民主党の限界
プレジデントオンライン / 2024年7月12日 17時15分
-
社説:首都の審判 見えた深刻な政党不信
京都新聞 / 2024年7月10日 16時0分
-
〈石丸氏急進〉「小池知事を逆転する区もある」蓮舫氏は「ロケット団みたい」な「R」Tシャツ好評も3位陥落のピンチ! 支持拡大にあの元総理経験者がひと肌脱ぐ⁉
集英社オンライン / 2024年7月5日 18時18分
-
「予想外の結果」になる可能性が高まった…都知事選「最新の情勢調査」で見えてきた"勝敗を分ける要素"
プレジデントオンライン / 2024年6月24日 16時15分
ランキング
-
1立民・野田氏、代表選出馬に慎重=「保守系」望ましい
時事通信 / 2024年7月22日 16時19分
-
2東海道新幹線の復旧遅れ 「衝突した保守車両、破損ひどく」
毎日新聞 / 2024年7月22日 20時54分
-
3「妨害するつもりはなかった」“ひょっこり”運転の男 初公判で起訴内容を否認
チバテレ+プラス / 2024年7月22日 18時15分
-
4【東海道新幹線】JR東海「きょう中の運転再開は厳しい」 一部列車を除き“終日運転取り止め”を発表 名古屋~浜松で運転見合わせ続く
CBCテレビ / 2024年7月22日 20時30分
-
5「どうにか帰りたい」夏休みを直撃、酷暑も追い打ち 新幹線運転見合わせで新大阪駅大混乱
産経ニュース / 2024年7月22日 15時18分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください