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「開放感あふれるリビングのある家」は絶対に後悔する…建築士が断言する「おすすめできない間取り」のワケ

プレジデントオンライン / 2024年7月11日 10時15分

「開放感あふれるリビング」にしたせいで何十年も後悔(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/show999

家の間取りの「落とし穴」は、どんなものがあるのか。YouTubeチャンネル「YouTube不動産」を運営する一級建築士の印南和行さんの書籍『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)よりお届けする――。

■「開放感あふれるリビング」にしたせいで何十年も後悔

開放感あふれる広いリビングは家を建てる人のあこがれではないでしょうか。たしかにリビングはその家の「おしゃれ度」を決定づけるようなところがあります。

しかし、そのような考えだけで吹き抜けや必要以上に広いリビングにすると、何十年も後悔しながら暮らすことになってしまうのです。

開放感のあるおしゃれなリビングといえば「吹き抜け」。

いままさに検討中であれば、これからお話しするデメリットをすべて受け入れられるかどうか考えてみてください。

■吹き抜けのリビングは1サイズ上の空調が必要

吹き抜けのデメリットとして、室内が十分に冷えない(暖まらない)ことがあげられます。

天井が2階まで突き抜けているぶん、室温調整をする空間が広くなることを考えれば当然です。快適に暮らすには、高気密・高断熱の住宅をのぞいて、パワフルで機能性の高い冷暖房設備が必要になるでしょう。

冷房は、吹き抜けの広さや日当たり、窓の数にもよりますが、吹き抜けにした場合、実際の広さよりも1サイズ程度上のものを設置するようになります。

この「サイズ」とは単に記されている帖数のことではなく、エアコンの冷房能力(kW)のことです。

■1日10時間の使用で最大180円ほどの差

たとえばあるメーカーのエアコンについて、冷房時の電気代をサイズ別で見てみると、目安の広さが14帖と20帖では1日10時間の使用で最大180円ほどの差が出ます。

1カ月使うと20帖のほうが5000円以上高くなるということです。

エアコンのリモコンを操作する手
写真=iStock.com/years
1日10時間の使用で最大180円ほどの差(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/years

暖房は、暖かい空気が天井のほうへ上昇するため、吹き抜けのリビングだと足元が冷えてしまいます。

暖房設備を考える場合、サイズが大きいものを選んでも2階が暑くなるばかりなので、サーキュレーター機能つきのエアコンや床暖房などの足元が暖まるものを取り入れる必要があります。

吹き抜けのリビングにする場合、冷暖房設備費や光熱費が高くなることは覚悟しなければならないでしょう。対策としては建物の断熱性を高めること、断熱性の低い大きな窓を設置しないことです。

■「Low-E複層ガラス」がおすすめ

天井裏や壁、床下などの断熱材を高性能のものにしたり、窓を断熱性の高いものにしたり、ぱっと見ではわからない部分にとことんこだわることで、吹き抜けがあっても外気の暑さを遮断し、快適な室温を保ちやすくなります。

窓には「Low-E複層ガラス(複層ガラスの内側に金属膜をコーティングしたガラス)」がおすすめです。

このように、光熱費に関するデメリットは、住宅の性能を上げることで解決できます。初期費用は高くなりますが、快適な暮らしを手に入れるためには、断熱性を高めるための費用はケチってはいけない部分といえるでしょう。

■吹き抜けのリビングは音が反響する

もう一点、吹き抜けのリビングには重要なデメリットがあります。

次の間取りは、16帖のリビングの一部を吹き抜けにして、2階の洋室からLDKを見下ろせるおしゃれなデザインです。2階には寝室と子ども部屋が2つあります。

【図表1】吹き抜けのある間取り図(立体)
出所=『プロ建築士が絶対しない家の建て方』

吹き抜けのリビングでは音が反響するため、1階では聴こえづらく、2階にはかなり響くといった現象が起こります。

また、音だけでなく、ニオイまで2階に広がってしまうのです。

■トイレの水を流す音が響く

リビングでテレビを見る際、音が2階のほうへ抜けていくので、正面にいると聴こえづらいことに驚きます。引っ越し前はテレビの音量が20だったものが引っ越し後には40以上になってしまったというご家庭もあります。

音量を上げても反響して言葉がはっきりと聴き取れない一方、2階で勉強している子どもが「うるさい!」というので、字幕機能を使ってテレビを見ていますと話してくれた人もいました。

これでは食後に夫婦でお笑い番組を見て大笑いするなんてことはできなくなってしまいます。

これらは、高気密・高断熱の現代の住宅ならではの悩みといえるでしょう。

外の騒音は聞こえにくく、室内からの音漏れも少ないのですが、一方で家の中では音が響きやすくなっています。話し声のほか、トイレの水を流す音、調理中の音が響くこともあります。

■ドアや壁、窓に防音性をもたせる

この悩みを解決するには、各居室のドアや壁、吹き抜けに接する窓に防音性をもたせるといいでしょう。

ドアには開き戸と引き戸がありますが、引き戸はすき間ができやすいので、寝室や子ども部屋は開き戸にしたほうがよいと思われます。

防音ドアが設置できればなおよしです。

【図表2】吹き抜けのある間取り図(平面)
出所=『プロ建築士が絶対しない家の建て方』

■「広いLDK」は本当に必要か?

LDKはできる限り広くしたいと考える人も多く「LDKは24帖以上にしたい!」といった要望も多くあります。

ここで一度立ち止まって、つぎのことを自分に問いかけてみてください。

「キッチンのタイプは?」
「ダイニングテーブルのサイズは?」
「リビングの配置は?」

たとえば、「4人家族、対面キッチンで、ダイニングテーブルは150cm×90cm、リビングには2人掛けのソファーとテレビを置きます」などと考えます。

これを長方形の図面にしてみると、16帖でも十分ゆとりのあるLDKだとわかるでしょう。

つまり、必要なサイズより8帖も多めに考えていたわけです。

「広くするぶんには問題はない」と思われるかもしれません。

もちろん、はっきりした必要性があるなら別ですが、「広々としたリビングが夢だった」という漠然とした考えであれば、再検討したほうがよいでしょう。

部屋を広くすると開放感は得られますが、暮らしはじめてからさまざまなリスクやデメリットを感じることもあるからです。

■部屋が広いとデメリットを感じる

・光熱費が高くなる

部屋が広くなると窓の数や面積も多くなりますが、暑さ、寒さは窓から入ってきます。空調を入れても室内が適温になるまで時間がかかりますし、快適な温度を保つためにはパワーが必要になります。

・掃除が大変

部屋が広いと掃除の手間が増えます。広い分、インテリアや壁、天井にたまるホコリも目立つでしょう。

・無駄な空間ができる

リビングとダイニングの間に無駄な空間ができる可能性があります。その空間を「ゆとり」と感じられればよいのですが、ほかの空間を削ってLDKを広くしていた場合、メリットを感じられないかもしれません。

■LDKは「見た目より使い勝手重視」

帖数だけ考えるのではなく、「このような使い方をしたいから、これくらいの広さがほしい」と、用途から必要な広さを考えることが大切です。

年に数回しか来客がないのに5人用のソファーセットを購入して広いリビングに置くのはナンセンスです。

「リビングがいつも荷物置き場になっています」という場合、リビングは少し狭くしても、収納を増やしたほうが、リビングがすっきり片づいていいかもしれません。

「実はダイニングテーブルをまったく使っていません」というご家庭も多かったりします。

印南和行『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)
印南和行『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)

新しい家に引っ越しをしたからといって、これまでの生活習慣が変わるわけではありません。

スペースがムダになるくらいなら、リビングにソファとテーブルを置いて、ダイニングスペースを省略してもよいでしょう。

「テレビやインターネットで見るおしゃれなLDKはこんな感じだから、わが家もあんな空間にしたい」というあいまいな希望ではなく、現在の家族のライフスタイルにそった間取りを考えるようにしましょう。

特に家族が集まることが多いLDKは、見た目よりも使い勝手を重視することが大切です。

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印南 和行(いんなみ・かずゆき)
一級建築士
株式会社南勝代表、一級建築士、住宅専門チャンネル「YouTube不動産」運営者、全国不動産売却安心取引協会理事長、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)。1972年、東京都生まれ。建築の専門学校を卒業後、建設会社で現場監督経験を積み、2011年に株式会社南勝を設立。これまでに1000件以上の住宅のインスペクション(建物診断)を行うほか、不動産会社向けのコンサルティングを手がける。「後悔のない家づくりをしてほしい」という思いから、2020年9月に立ち上げた住宅専門チャンネル「YouTube不動産」が「わかりやすくて参考になる」と大好評で、チャンネル登録者数10万人を超える(2024年7月1日現在)。著書に『プロが教える 資産価値を上げる住まいのメンテナンス』(週刊住宅新聞社)がある。

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(一級建築士 印南 和行)

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