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東京都知事選挙を素材として考える「ニセ情報」の見抜き方

プレジデントオンライン / 2024年7月5日 9時15分

早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。最新の著作は『情報強者のイロハ 差をつける、情報の集め方&使い方』(徳間書店)。 - 撮影=的野弘路

元大阪市長・大阪府知事で弁護士の橋下徹さんであれば、ビジネスパーソンの「お悩み」にどう応えるか。連載「橋下徹のビジネスリーダー問題解決ゼミナール」。今回のお題は「『ニセ情報』の見抜き方」です──。

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2024年7月19日号)の掲載記事を再編集したものです。

■Question

大混乱の選挙戦からビジネスパーソンが学ぶべきポイントは?

2024年7月7日に東京都知事選挙が予定されています。野党の大物議員が立候補を表明するなど世間が騒がしくなってきましたが、こうした大型選挙では虚実さまざまな大量の情報が飛び交い、惑わされることもしばしばです。このような状況から、ビジネスパーソンが学ぶべきポイントは何でしょうか。

■Answer

出所はどこか? 信頼度を「5段階」で評価せよ

やはり大型選挙になればなるほど、各陣営や支持者たちが、あることないことをネットに流すのが昨今の選挙戦術の柱になっています。何を言うか、あるいは何を言わないか……。都知事選挙ではすでに情報戦は始まっています。各種報道も言いたい放題。ネット空間でもこれからさまざまな予想・憶測が飛び交うはずです。

21人が立候補した2016年の都知事選。
21人が立候補した2016年の都知事選。今回はそれを大幅に上回る立候補者が見込まれる。

読者の皆さんは、これを機会に「情報強者」になる道を考えてみてはどうでしょう。実はこうした選挙は、都民としての一票を持っていなくても、情報の見抜き方を鍛えるうえでは格好のお手本になるからです。

というのも、いくらネット情報といえども、民間企業や一般人に関しては飛び交う情報もさほどひどいものにはなりません。「噂を流す人」も「範囲」も「流すネタ」もそう多くはない。下手に相手の信用を損なえば、名誉棄損で訴えられるリスクがあるからです。

ところが選挙となると、「表現の自由」が優先されます。政治家は一般人とは異なり公を代表する公人です。その公人に関する情報発信は、本人の名誉より尊重されると考えられているので、政治家はよほどのことがない限り何を言われても、基本的に耐えるしかありません。

そんな政治家同士が競う選挙となれば、凄まじい情報合戦に発展します。日本に限らずアメリカなど世界中の大型選挙でも情報は大氾濫します。

だから中国やロシアなどは、言論の自由を極端に狭め、厳しい情報統制を敷くんです。彼らにとっては個人の「表現の自由」より、社会の「統制」のほうがよほど大事だからです。

僕はもちろん「表現の自由」が尊重される社会こそ望ましいと思っています。でも、その場合は個々人がしっかり「情報の取捨選択」をできる力を身に付ける必要があります。

大量のフェイクニュースが飛び交う昨今、「正しい情報」だけを選び取り、「フェイク」には一切触れないようにするのは不可能です。「フェイク」を含めた玉石混交の情報に触れつつ、そこからなるべく正しい情報、得るべき知識をつかみ取るしかありません。

そこでお勧めなのが「情報の信頼度」を見分けるテクニックです。僕が実際に活用している「情報のランク分け(5段階評価)」をご紹介しましょう。

まず、信用すべき「信頼度5」は、内閣府発表や各省庁発表、国連やOECD発表など、あらゆる報道の元ネタとなるデータベースや公的発表です。各専門家が厳密なデータを交え、かつ幾重にもチェックが入っている情報は、憶測や噂が入り込む余地がほとんどありません。

「信頼度4」は全国紙など新聞が取材し、裏を取った情報です。特に1〜3面あたりに載る「情報」は信頼に足ります。ただ、新聞でもコラムや論説、社説は別ですよ。これらは書き手の意見や推察が込められているからです。

「信頼度3」はテレビの報道番組、「信頼度2」は書籍・雑誌・大手メディア以外のネットニュースやメルマガ。

「信頼度1」は人々の噂話やネット情報。これはほとんど信じるに値しません。興味を引く情報があれば、必ず「信頼度5」か「4」にアクセスして、裏を取ってください。

さて、これらを確認したうえで改めて東京都知事選の現段階を眺めてみると、信用に値する情報はほとんど何も出ていないことがわかるはずです。

これを書いている6月10日現在、信頼度5や4や3の情報で明らかになっているのは「立憲民主党の蓮舫さんが都知事選に出馬する」ことと、「小池百合子都知事が出馬するかは不明」の2点くらい。つまり皆さんが接しているその他のネット情報は、ほぼすべて根拠なき噂や意見だということです。

小池知事に関しては、相も変わらず学歴詐称問題が付きまといますが、あれも僕に言わせれば「信頼度1」か「2」でしかない。信頼度5や4や3の情報によって「カイロ大学を卒業していない事実」が現在確認できているわけではないのです。逆に信頼度4や3の情報によれば、カイロ大学はすでに小池さん卒業の事実を声明発表しています。卒業していない疑惑情報は「信頼度2」の週刊誌や書籍からしか出されていません。

蓮舫さんについても、かつての台湾と日本の二重国籍問題が蒸し返されるかもしれませんが、いずれにせよ東京都知事選では本質的な問題ではありません。一番大切なのは、「どんな都政にしたいか」のビジョンの部分です。

その意味では蓮舫さんが前面に打ち出す「反自民・非小池都政」のスローガンも本質的ではありません。いま国民の怒りの標的となっている自民党と小池さんを結びつけたほうが有権者の嫌悪感を引き出せると考えたのでしょうが、そもそも都政と国政は別物です。

■ただの娯楽か、信頼できる情報か

情報社会で一番大切なのは「自分軸」を持つことです。「自分は何を求めて情報の海を泳ぐのか」の意識をしっかり持たなくてはなりません。都知事選なら「どんな東京都で暮らしたいのか」がセンターピンで、それを知るには立候補者の公約、都政ビジョンを見るしかありません。そのほかの諸々の情報はあくまでも従たるもの。

ところが、公約を読むのは退屈だから、どうしても周辺のネット情報に関心を持つ人が多くなります。「信頼度5」や「4」の情報は得てして退屈です。逆に言えば、面白い情報やワクワクする報道は、「信頼度1」か「2」であり、場合によってはテレビの「信頼度3」の番組でも疑ったほうがいいでしょう。

デジタル社会において、僕らの脳は“面白ホルモン”分泌にハックされています。目の前に流れるドキドキ・ハラハラ・ドロドロな情報に脳を奪われ、指先一本で次々にクリックしていく。でも、そこに僕らが本当に求めるべき真の「情報」はありません。あるのはただの娯楽であり、クリックするたびにチャリンと儲かるデジタル事業者のほくそえみだけです。

言うまでもありませんが、「選挙」は明日の僕らの生活に直結します。ネット情報によれば、週刊誌情報によればというのではなく、しっかりと公約を吟味したうえで投票する候補者を選んでいくべきでしょう。

その公約にしても、候補者がいい加減なことを言うことも多いので、できれば信頼度5のデータや、退屈に思われるかもしれない信頼度4の新聞記事によって、事実確認をしながら判断したいものです。

まあ政治家を選ぶ際の一番のポイントは公約以上に、口だけでない「実行力」なんですが、これも信頼度5や4や3の情報から、候補者がこれまで何をやってきたかをしっかりと見ていただきたいと思います。公約で理想を掲げるだけなら簡単ですからね。

遠からず、衆議院総選挙も行われるはずです。どうか周辺の取るに足らない信頼度1や2の“情報”に踊らされることなく、「この国はどうあるべきか」「この候補者や政党は実行力があるのか」というセンターピンの情報を信頼度5や4や3のところから取得し、判断をしてください。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。北野高校時代はラグビー部に所属し、3年生のとき全国大会(花園)に出場。『実行力』『異端のすすめ』『交渉力』『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』など著書多数。最新の著作は『折れない心 人間関係に悩まない生き方』(PHP新書)。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 構成=三浦愛美 撮影=的野弘路 写真=時事通信フォト)

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