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繊細な人ほど「完璧主義の罠」にハマっている…精神科医が指摘「実力があるのに仕事で行き詰まる人」の共通点

プレジデントオンライン / 2024年7月10日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tuaindeed

仕事を上手にこなすには、どうすればいいのか。精神科医の西脇俊二さんは「繊細な人ほど、完璧主義にこだわる傾向がある。最初から100点を目指すのではなく、小さな成功体験を積み重ねていくことが大切だ」という――。

※本稿は、西脇俊二『繊細な人をラクにする「悩み時間」の減らし方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■成功しやすい人、成功しにくい人はどこが違うのか

突然ですが、あなたは自分を「成功しやすい人」だと思いますか? それとも「成功しにくい人」だと感じていますか? 本稿では、成功しやすい人の意外な正体について紹介します。

まずは成功に至る前段階の行動についてですが、「やるべきことがきない」という自責の念に駆られる人がいると思います。この「やるべきことができない」とき、とくにHSPといわれる繊細なの人の心の中では、そのタスクが実際より大きく見える、という錯覚が起こっています。

本人も「本当は錯覚だ」と、薄々わかってはいるのです。わかっているからこそ、「大した用事じゃないのに……」という自責が上乗せされてしまうのです。そんなとき、「本当は大仕事じゃないんだから、頑張れ」と自分を奮い立たせても、あまり意味はありません。

考えるだけでため息が出るような事柄については、大きく見えるものを、小さく、細かく分けるのが近道です。大きく「見える」だけでなく、本当に大きい仕事でも同じです。これが、頑張らずに実行する方法、「スモールステップ」です。

■仕事や課題を小分けにして考える

高い場所まで「5歩で上れ」と言われたら、一つひとつの段差が高すぎて、イヤですよね。しかし、50段に分ければラクですし、100段なら、もっと簡単です。低い1段を楽々上ると勢いがついて、2段目はもっと上りやすくなります。

「仕事をする」をいきなり目指さず、「まずパソコンを開く」だけ。
「ごはんを作る」ではなく、「まずは冷蔵庫を開ける」だけ。
「起床する」ではなく、「まず布団の中で座る」だけ……。

それだけでも大仕事だと感じるなら、さらに小分けを。

起きる前に座るのではなく、「寝返りを打つ」→「横向きになる」→「膝を曲げる」→「そのままゴロンとうつ伏せになる」なら、どうでしょう? 次のステップで「座る」に到達できる気がしませんか?

しんどいことほど、段差を低くしましょう。

「しんどいと感じる自分」を責める時間は全部省略して、自分に合った高さのステップを設定してみてください。段を細かく、低く、イヤでも上れるサイズにしてしまえば、必ず上れます。

■繊細な人ほど、完璧主義にとらわれている

スモールステップには、やるべきことがやりやすくなる効果のほかに、もう一つ、大きなメリットがあります。1段上るごとに、小さな成功体験が積める、というメリットです。

一つひとつが簡単に達成できて、そのたびに「できた!」と思える。これは、HSPの方々があんまり味わってこなかった感覚です。

というのは、HSPと言われるような「繊細な人」は、成功を感じづらい傾向があります。その裏側には、「完璧主義」という心のクセがあります。

繊細な人は、なぜ完璧主義に傾くのでしょうか。それは敏感であるがゆえに、あらゆる情報が大きなボリュームで飛び込んでくるからです。

ほかの人なら、ボリュームが適度に絞られて、「これはどうでもいい」「そもそも、頭に入ってすらこない」といった自動的な取捨選択がされているものを、敏感な人は、「どの部分が重要?」「どこを押さえておけばOK?」と一つずつ判断します。

結果、「あれもこれも全部やらなくては」と感じたり、重要でない部分が少しうまくできなかっただけで気にしたり、ということが起こります。そこで、完璧主義の解除を行いましょう。

■最初から100点満点を目指さないほうがいい

スモールステップで各タスクの「量」を小さくしながら、各タスクの「質」、つまり合格点を下げるのです。今、あなたが自分に設定している合格点が100点なら、50点でよしとしましょう。

100点の解答用紙
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

一気に半分になりますが、元が高すぎるので、これくらい大胆に下げるのがおすすめです。

ちなみに「50点主義」は、「期待しない」の一環でもあります。完璧主義とは、自分に期待している証(あかし)でもあるからです。

連載の第1回で「自分に期待しない」の話をしたとき、もしかすると皆さんは、こう感じたかもしれません。「そんなに向上心のないことでいいの?」「努力しなくていいの?」と。でも、そうではないのです。自分に期待しないのは、余計な一喜一憂に振り回されないための方策です。

目的はあくまで、思ったよりうまくいかなかったときに無駄に凹んだり、悩んだりする時間をなくすこと。そうしておいて、今できることをする、1段ずつ階段を上る、という姿勢を持ちましょう。

なお、実際に50点の出来栄えになったとき、「やっぱりヒドイな」「ここも、ここもできていない」と、ダメな点を数え上げるのもいい効果を生みません。元の目標が高すぎたのです。足りない50の部分ではなく、できている50の部分に着目しましょう。

「50点だから目標達成。合格!」。そのうえで、できる部分を確認して、足りない部分はまたスモールステップで上っていけばいいのです。

■成功者は、なぜ成功できたのか

成功体験、と言えば……世の中の、いわゆる「成功者」は、なぜ成功するのだと思
いますか?

10年ほど前、その要因を探る大規模研究が米国で行われました。ハーバード大学の卒業生を対象に、20年にわたってその後の人生を追跡し、社会的成功を収めた人と、そうでない人の分かれ目を調査。実家の経済力、IQ、専攻分野などなど、さまざまな比較軸で調べたものの、いずれも、決定的な要因ではないことがわかりました。

では何が決め手だったかというと、なんと「頑張り」だったそうです。「成功したのは、成功するまであきらめなかったから」――少し拍子抜けするような話ですが、それが最終結論でした。

国内でも、似た実験があります。東大を卒業した人のグループと、それ以外の大学を出た人のグループで、「どれだけ長く息を止めていられるか」を競ったところ、東大卒の人々のほうが明らかに長かったそうです。ここでも、東大に合格して卒業するという成果と、「頑張れるか否か」は深く関わっていることがうかがえます。

だから、繊細な人もとにかく頑張れ……という話ではありません。

私が紹介したいのは「頑張らなくても結果を出せる方法」です。

■「スモールステップ」が成功への近道になる

成功の決め手が頑張りなら、その「頑張れる力」はどこから生まれるのか、そこが重要です。成功するまで頑張れる人の共通点は何かというと、それは、「成功体験があること」です。禅問答のようになってきましたが、要は、こういうことです。

もともと、成功を感じやすい人は……

→ 成功を感じやすいため、必然的に成功体験が多くなる
→ チャレンジを恐れなくなる
→ 失敗しても、いちいちダメージを受けない
→ 成功するまで何度でもチャレンジする
→ 成功する

つまり、スモールステップで「できた!」を多く味わい、「50点主義」でさらに成功を感じやすくすれば、いずれは大きなチャレンジも怖くなくなり、大きな成功もできる可能性が高くなるのです。

ジーンズと赤いスニーカーを履いて階段を上る男
写真=iStock.com/electravk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/electravk

逆に言うと、「100点じゃなかった」「またできなかった」とガッカリしてばかりいると、今の気分が後ろ向きになるだけでなく、未来の可能性まで狭まるということです。

完璧主義の自覚がある人は、自分に厳しくするよりも、ハードルを下げたほうが効率的にレベルアップできるというスタイルを、ぜひ試してみてほしいです。

■「無駄な悩み時間」を減らせば、幸せが増える

ここまで読んで、「成功」という言葉に違和感を覚える方もいるかもしれません。

「私は貪欲なタイプではないし、ガツガツ成功を目指すのは興味ないかな」
「エリートになりたいわけでも、億万長者になりたいわけでもない」

野望を抱き、叶えて贅沢な生活を送る、などの「典型的な成功者像」に、繊細な人は、どこかしら縁遠さを感じることがあるようです。

しかし成功とは、そうした世間的なイメージに限ったことではまったくありません。

究極的に言えば、その人が幸福を感じて生きているなら、どんな人生であれ、また人がどう思おうと、成功です。

そこで重要となるのが、「自分が何に幸福を感じるか」というポイントです。

皆さんは、「私が求めるものはこれです」と言えますか?

この点を明確にしていない人は、意外に多くいます。

それは、「無駄な悩み時間」を増やす一因となります。たとえば、もともとキャリア志向でもないのに、大学の同級生が出世したらなんとなく劣等感に駆られて悩んだり。その無駄を防ぐためにも、自分の幸せ実感ポイントを明確にしましょう。

■幸せを実感するためには…

ここでは第2回で紹介した「3タイプ分け」が役に立ちます。今度は他者のためではなく、自分がどれに当てはまるか、を考えます。パーソナリティ重視、パフォーマンス重視、ブランド重視、それぞれが求める成功の形は、大きく違います。

パーソナリティ重視の人にとっての成功は、自分の人格を高めることです。誠実さ、高潔さ、温かさ、深みといったものを備え、結果として、他者との間に信頼関係を築き、理解し合える人たちとの交わりを持つことを求めます。

パフォーマンス重視の人は、実績や財産など、形ある成果を手に入れることを望みます。また、人との関わりにおいては「切磋琢磨」を求めます。好敵手と競い合い、互いを高め合っていくことに、やりがいと喜びを感じます。

西脇俊二『繊細な人をラクにする「悩み時間」の減らし方』(KADOKAWA)
西脇俊二『繊細な人をラクにする「悩み時間」の減らし方』(KADOKAWA)

ブランド重視の人は、地位や権威などのきらびやかなものに惹かれますが、それは「自分が自由に動ける」「イニシアチブを取って行動する」という目的があるからです。

あなたは、どんな幸せを、成功を望みますか? ぜひ考えてみてください。

意外に俗っぽい本音やイヤな一面を発見しても、「恥ずかしい」などと思う必要は一切ありません。自分に対しても、良い・悪いのジャッジを下すのは禁物です。望みを見つけて正直に向き合ったら、あとは期待せずに淡々と進んでいくのみです。

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西脇 俊二(にしわき・しゅんじ)
精神科医
弘前大学医学部卒業。2009年よりハタイクリニック院長。2008年より金沢大学 薬学部 非常勤講師、2010年よりEuropean University Viadrina非常勤講師も務める。自身もアスペルガーであり、その苦労を乗り越えた経験を生かした著作も多い。テレビ出演のほか、ドラマ『僕の歩く道』『相棒』『グッド・ドクター』、映画『ATARU』等の医療監修でも活躍。

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(精神科医 西脇 俊二)

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