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「老いた政治家に何ができるか」古希超えの小池百合子は習近平・プーチンと"タメ"…高齢者統治の可能性と限界

プレジデントオンライン / 2024年7月6日 10時15分

7日が投票日の東京都知事選が注目を集めている。統計データ分析家の本川裕さんは「バイデン大統領81歳、トランプ氏78歳に比べると若いが、小池百合子さんは71歳で、習近平やプーチンと同い年。蓮舫さんは56歳。日本と米国は世界の中でも40歳以下の若い政治家がもっとも少ない国です」という――。

■選挙、選挙、選挙!

7月7日は東京都知事選の投票日であるが、2024年は世界的な選挙イヤーとなっている。すでに1月には台湾総統選、3月にはロシア大統領選、4~6月にはインド総選挙、6月には欧州議会選挙が行われた。直近では、フランスで6月30日国民議会(下院)選挙の第1回投票が行われ、7月7日には決戦投票が行われる。英国では7月4日に総選挙が行われた。さらに11月には米国大統領選、日本も来年までには総選挙が行われるが、その前に自民党総裁選あるいは議会解散の可能性も捨てきれない。

そこで今回は、各国の国政選挙をめぐる話題として、政治家の高齢化問題、および各国の選挙で争点となる可能性の高い国民の懸念事項の実態についてのデータを紹介しよう。

■有権者は若いのに不思議と高齢の政治家が多い米国

今年11月のアメリカ大統領選挙で再選を目指すバイデン大統領と、返り咲きをねらうトランプ前大統領による初めてのテレビ討論会がジョージア州アトランタで6月27日夜(日本時間の6月28日午前)に行われ、その様子が全世界で報じられた。

内容はというと論戦に大した意味はなく、もっぱらバイデン大統領の高齢による衰えが注目を集めた。バイデン大統領は81歳、片やトランプ候補も78歳であり、まぎれもなく世界のリーダー国であり、地球規模の影響力をもつ米国のトップがこんなお爺さんでよいのかというため息が全世界を覆った。

最近、芸能界のネット上の話題は、かつて若くてきれいだった女優や女性歌手が、70歳を超えてもなお美しいというものがやけに目立つようになっているが、いくら社会全体が高齢者によっておおわれるようになったからといって、政治の世界まで高齢者の話題ばかりでは明るい将来を感じとるのが難しくなっていると言わざるを得ない。

そこで政治家の年齢について調べてみよう。

まず、具体的に世界の主な政治家の年齢をグラフで見てみよう。図表1は主要国首脳と主要な選挙候補の年齢を棒グラフにしたものである。

確かにバイデン米国大統領は81歳と図抜けて高齢である。若い方はと言えば、政権トップの座があやしい英国の保守党スナク首相、そして政権の起死回生をねらって行った総選挙が狙い通りに行かない可能性が高いフランスのマクロン大統領、この2人は、それぞれ、44歳、46歳であるのが目立っている。

英仏の選挙後の政治状況次第では、若い政治家に政権を任せると冒険主義的な解散に打って出て自滅を招くことが多いのでやはり年寄り政治家の方がましだという意見になるかもしれない。

高齢政治家に着目すると、米国大統領選の対立候補であるトランプ前大統領も78歳、米国とするどく対立するプーチンロシア大統領は71歳、世界の政治や経済でますます巨大な覇権を取ろうとする中国の習主席も同じ71歳と今や70歳以上の政治家は珍しくもない。

日本では大きな話題となっている東京都知事選挙の主力候補者である小池百合子知事も同じ71歳、そして誕生日が近いのでプーチン大統領や習主席よりも早く7月15日には72歳をむかえる。

日本の岸田文雄首相やドイツのショルツ首相はともに66歳とこれら政治家と比べると若いが、それでも統計上は65歳以上なので高齢者である。

■米国と日本は世界の中でも若い政治家がもっとも少ない国

このように世界の主要政治家が高齢なのは、たまたまの例外的な事態なのであろうか。それとも政治家が全体として高齢化しているからなのであろうか。

【図表】有権者が若ければ政治家も若い:米国は例外

この点を確かめるため、図表2には、各国の国会議員の若年比率のランキングを掲げた。以下では政治家の若さが国会議員の若さで示されているものとみなすこととする。

OECD諸国の中で40歳以下の若い政治家が最も多いのはメキシコの39.3%であり、最も少ないのはポルトガルの3.7%である。両国には10倍もの開きがある。OECD平均は22.8%である。

バイデン大統領の米国は6.7%であり、日本の6.0%とどっこいどっこいの低さである。米国と日本は世界の中でも若い政治家がもっとも少ない国である点が印象的である。

政治家を選ぶ有権者の年齢の若さについても図にオレンジの点グラフで示した。有権者の若さと政治家の若さとを比べると、おおまかに言えば、有権者が若ければ、政治家も若いという傾向は認められる。典型的なのは日本だ。有権者の若年比率が25.3%と世界一低く、政治家の若年比率も6.0%と世界第2位の低さである。

もっとも、政治家の若年比率の低い国々は、有権者の若年比率の低さとは、それほどリンクしていない傾向も認められる。トルコ、イスラエル、米国では、有権者はけっこう若いのに若い政治家は少ないのである。

バイデン米国大統領が高齢である要因の1つは、米国では有権者は若いのに政治家は高齢である傾向があるからと言ってもよかろう。米国においては、日本と同様、政治の世界で発言権を獲得するには年齢を重ねキャリアを積む必要があるのであろう。

■コロナとウクライナで右往左往してきた世界

図表3には、政治家と首脳との年齢相関を掲げた。ドイツ、韓国はやや例外であるが、おおむね政治家と各国首脳とには年齢の相関が認められ、米国は双方が高齢である点で目立っている。やはりバイデン大統領は例外ではないのである。逆に、フランス、英国は政治家が若いので首脳も若い。

【図表】若手政治家の少ない国は国の首脳も高齢

次に、各国の国政選挙の背景として重要な世界の主な懸念事項の推移について概観してみよう。

パリに本社を構える世界的なマーケティング・リサーチ会社であるイプソス(Ipsos)社は「世界が懸念していること」(What Worries the World)調査を10年以上、毎月、30カ国近くの2万人超(各国1000又は500人)を対象に実施している。

図表4には、その世界平均の結果を月次推移グラフで示した。

【図表】コロナとインフレの時代が去り、貧困、暴力、政財界腐敗がふたたび政治課題として浮上

世界平均で2019年まで「失業」「貧困・格差」「犯罪・暴力」「政財界腐敗」(=汚職・Financial/political corruption)の4大懸念事項が世界の人々の意識にのぼっていた。

ところが、2020年からは、折から大流行がはじまった新型コロナへの懸念とそれにともなう失業の懸念が世界中で1位、2位に浮上した。

その後、新型コロナのインパクトが弱まりつつあった2022年にはロシアのウクライナ軍事侵攻がはじまり、それにともなってエネルギーや穀物価格の上昇を通じ、インフレの懸念が大きく高まり、突出した懸念事項となった。

2024年の現在では、インフレの懸念もやや収まりつつあり、再び、新型コロナ以前の4大懸念事項の時代に戻って来ている。

コロナの猛威とロシアのウクライナ侵攻に伴うインフレーションで右往左往してきた世界各国だが、ここのところ、この2つの脅威は去りつつあり、コロナ以前からの「貧困・格差」「犯罪・暴力」「政財界腐敗」「気候変動」といった現代社会の宿痾に再度正面から立ち向かう必要が生じていると言えよう。

■貧困・格差や政界腐敗に揺れる日本

そのため、各国の政治対立の背景として、世界共通の脅威というより、各国固有の課題が浮上してくる。そこで、各国の国民が脅威と感じている課題の差異について、以下で概観してみよう。

【図表】日本はインフレ、犯罪・暴力の懸念より、貧困・格差、政界腐敗への懸念が目立つ

各国別に毎月のデータは得られないので、毎年1回のデータの推移を追った。図表5には日本の推移を米国や韓国と比較した。

日本の推移は、次の図表6との比較も含めて、新型コロナへの懸念の起伏が他国より大きい点、また2022年以降のインフレへの懸念が他国ほど高くなく、1位になったことがない点が目立っている。前者については高齢化率が世界一である点が背景にあり、後者については実際のところインフレ率が他国ほどでないからである。

日本は2024年に政財界腐敗への懸念が23年の13%から31%へと急増しているが、23年末以来政治問題化している自民党派閥の資金パーティー裏金疑惑のためと考えられる。これが次期総選挙で自民党が大敗する予想の根拠となっており、そのため、解散や総裁選を含む政治日程の手詰まり状態がもたらされている。

米国は、インフレへの懸念が大きい点と犯罪・暴力への懸念がこのところ2位で他国より大きくなっている点が目立っている。インフレ懸念がなかなか収まらないので、政策金利を低金利へと転じられず、日米の金利差が大きい状況が続き、円安も収まらない背景となっている。

韓国では、なお社会経済構造になお未熟なところを残しているためか、失業への懸念が新型コロナ以前から高く、また、政財界腐敗(汚職)への懸念が傾向的に高い点などが目立っている。

■欧州で懸念される、犯罪・暴力への懸念

図表6には参考までにヨーロッパ主要3カ国の同様の懸念事項推移を掲げた。

【図表】気候変動への懸念が大きなヨーロッパ諸国

前図の日本、米国、韓国と比較すると、気候変動への懸念が相対的に大きく、欧州の特徴といえる。

フランスでは、犯罪・暴力への懸念が高まりつつある。英国では、以前より、犯罪・暴力への懸念が大きかった。こうした側面への対処を他国以上に政府は迫られていると言えよう。

ドイツでは、良識派の国民が多いせいか、貧国・格差や気候変動への懸念が以前より高いレベルにある点、経済の基調が好調であることを反映してか、インフレや失業への懸念はフランスや英国と比較して一貫して低レベルである点などが目立っている。貧困・格差の背景となっている移民問題や安全保障上のロシアへの対処が政治課題として大きく取り上げられるのも故なしとしない。

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本川 裕(ほんかわ・ゆたか)
統計探偵/統計データ分析家
東京大学農学部卒。国民経済研究協会研究部長、常務理事を経て現在、アルファ社会科学主席研究員。暮らしから国際問題まで幅広いデータ満載のサイト「社会実情データ図録」を運営しながらネット連載や書籍を執筆。近著は『なぜ、男子は突然、草食化したのか』(日本経済新聞出版社)。

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(統計探偵/統計データ分析家 本川 裕)

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