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「コンビニの募金箱」にお金を入れると健康になる…「情けは人のためならず」が科学的にも妥当である理由

プレジデントオンライン / 2024年7月15日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pinkomelet

幸せに長生きするには何が必要なのか。心理学者の内藤誼人さんは「他人のためにお金を使えば使うほど幸福度が高まることがわかっている。たとえばコンビニのレジ横の募金箱に小銭を入れるだけでも効果はある」という――。

※本稿は、内藤誼人『すぐに実践したくなる すごく使える社会心理学テクニック』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■人のためにお金を使うほど幸福感が高まる

私たちは、だれでも自分のことが一番かわいいものです。自分にお金を使うのはまったく惜しくはありませんが、他の人のためにはびた一文でも使いたくない、というのが人情ではないかと思われます。

けれども、本当は自分にではなく、他の人にお金を使うべきなのです。

なぜかというと、他の人にお金を使うと、自分がハッピーな気分になれるから。他の人に親切にすると、至福の気分を味わうことができるのです。こんなにうれしいことはありません。

カナダにあるブリティッシュ・コロンビア大学のララ・アクニンは、136か国のデータから、他の人のためにたくさんお金を使う人ほど、幸福感が高まることを明らかにしています。

文化が違っても、経済状況が違っても、他の人にお金を使うと幸せな気分になるという傾向は世界中の国で確認できました。

貧しい国では、日々の食料を得ることさえ困難です。

けれども、そういう貧しい国でさえ、自分にではなく、他の人のためにお金を使うと、幸福感は高くなるのです。この法則に、例外はありません。どの国の、どの国民も、人のために親切にすると幸せになれるのです。

■コンビニのレジ横の募金箱に小銭を入れるだけでいい

もうひとつ研究をご紹介します。

カナダにあるサイモン・フレーザー大学のキャサリン・ハンニバルは、50名の元犯罪者に、自分にではなく、他人のためにお金を使ったときのことを思い出してもらいました。すると、元犯罪者もポジティブな感情が高まったのです。

さらにハンニバルは、64名の非行少年と、777名の元犯罪者に、貧しい子どものためにお金を使ってもらったのですが、やはりポジティブな感情が高まることを確認しています。思いやりなどなさそうな犯罪者でも、他人にお金を使うのは気持ちがいいことなのでしょう。

「最近、あまり幸せな気分を感じることがない」という人は、ぜひ他の人のためにお金を使ってみてください。

お金の多寡は関係ありません。わずかなお金でもかまわないのです。

豪勢なディナーをおごってあげなくともよいのです。ごく普通の居酒屋で食事をし、ワリカンにするときにほんの少し多めに払うだけでもよいでしょう。

コンビニやスーパーには、レジの横に募金箱が置かれていることがありますよね。

そういう募金箱を見つけたら、1円でも10円でも入れましょう。ほんの少しでも困っている人の援助ができたということで、幸せな気分になれます。

「情けは人の為ならず」という言葉がありますが、まさしくその通りで、人に親切にすることは、自分自身が幸せを感じるための方法です。

ケチケチせず、どんどん他の人のためによいことをしてください。

■いつでもポジティブな人ほど長生きできる

他の人のためにお金を使うと、だれでも気持ちがよくなります。うれしさや高揚感、幸福感などのポジティブな感情が高まるのです。

恩恵はそれだけではありません。

なんとポジティブ感情は、長生きをすることにもつながるのです。

オランダにあるティルブルフ大学のペトラ・フーンは、1018名の慢性冠症候群(以前は安定冠動脈疾患と呼ばれていました)の外来患者を10年間追跡調査してみました。

この10年間の調査期間中に、369名(36%)が亡くなりました。

けれども10項目のポジティブ感情テストで、標準偏差が8.8点高くなるごとに、すべての死因リスクが16%ずつ減ることがわかりました。亡くなる人の多くは、ポジティブ感情テストであまり得点が高くない人たちだったのです。

普段から、陽気に明るく、ポジティブな気持ちで生活するようにすれば、それだけ長生きできるのです。

■器の大きな人間になることは自分のためでもある

もしポジティブ感情を高めて長生きしたいなら、とにかく他の人のためにお金を使ってください。そうすれば、なんだかうれしい気持ちになりますし、そういう感情を頻繁に抱くようにしていれば、長生きもできるのです。

自分のためにしか行動しない、というのは人間としてもちょっと小さいと思いませんか。他の人のためにできることはなんでもしてあげてください。そういう「器の大きな人間」になれれば、結局は自分のためにもなります。

自分のぶんのお茶を淹れるのなら、ついでに他の人のぶんも淹れてあげましょう。そういうことが自然にできるような人は、きっと会社でもどんどん出世していくと思うのですよね。

他の人のために何かをしてあげれば、ほぼ間違いなく、「ありがとう!」とお礼を言ってもらえます。感謝されるのはまことに気持ちのいいものです。何かをしてあげているのに、お礼も言わないような人はあまりいません。

親切な人になりましょう。困っている人を見かけたら、もう自動的に「親切スイッチ」が入ってしまうような人間になりましょう。

「憎まれっ子世にはばかる」ということわざはウソです。本当は、人当たりがよくて気持ちのいい人ほど、長生きもできるのです。

■タバコを1日15本以上吸うのと同じくらい孤独は健康に悪い

なんでも相談できる友だちがいることは、とてもよいことです。もし何か問題が起きても、友だちがいると思えば、そんなに怖くありません。いざとなれば自分を助けてくれるような友人をたくさんつくりましょう。

友だちがたくさんいることが、あるいは友だちがいないことが私たちの健康にどれくらい影響を与えるのかを調べた研究はたくさんありますが、米国ブリガム・ヤング大学のジュリアン・ホルト=ランスタッドは、そういう論文を148本も集めて、メタ分析という手法を使い、総合的な結論を導いてみました。

その結果、友だちがいないことは、タバコを1日に15本以上吸うのと同じくらいの死亡リスク因子であることがわかりました。友だちがいないことは相当に健康に悪い、といってよいでしょう。

タバコを吸っていない人でも、友だちがいないというだけで1日に15本以上もタバコを吸っているのと同程度のストレスを感じてしまうのです。ちょっと怖いですね。

タバコを吸う老人
写真=iStock.com/Juanmonino
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Juanmonino

■友だちをたくさんつくることが死亡リスクを下げる

またホルト=ランスタッドは、友だちがいないことは、アルコールの過剰摂取、運動不足、肥満、ひどい大気汚染のところに住むことよりも、より強力な死亡リスク因子であるという結論を導いています。

お酒の飲みすぎや、運動不足などよりも、友だちがいないことのほうが健康に深刻な悪影響を与えるというのです。

「都会は排気ガスがひどくて健康によくない気がする」
「太りすぎで階段を上るだけで息が切れる」

そういうことも健康には影響をしますが、それよりもさらに大きな影響を与えるのが、友だちがいないこと。

空気のおいしい田舎に移住しようとか、ダイエットをしようというのも意味がないわけではありません。健康的になれることはたしかです。けれども、さらによい方法は、とにかく友だちづくり。友だちをたくさんつくるほうが、死亡リスクを大きく減らすことができます。

「友だち付き合いなんて面倒くさいだけ」
「友だちなんていなくとも生きていける」
「すべての付き合いがわずらわしい」

最近では、そう思う人は多いと思います。

けれども、人間は1人では生きていけませんし、付き合いというのはたしかに面倒なこともいっぱいありますが、それ以上に私たちに喜びや幸福感を与えてくれます。

1人で活動するのも悪くありませんが、友だちと一緒にやると、もっと楽しいと感じるはずですよ。

人間関係を面倒くさがらずに、どんな人とでも積極的に付き合ってみてください。「意外に悪くないな」と感じるようになれればしめたものです。

■「持つべき友は医者と弁護士」だけではない

だれが言っていたのかは忘れてしまいましたが、持つべき友としては、医者や弁護士がよいようです。

お友だちに医者がいれば、病気になったときに相談できますし、何かのトラブルに巻き込まれても、弁護士の友だちがいれば助けてもらえるからです。安心した人生を送りたいのなら、友だちとして医者や弁護士はたしかによさそうですね。

この考え方は間違いではありません。

けれども、医者や弁護士に限らず、いろいろなタイプの人とお付き合いするのがよいと思います。

自分の会社の人とだけ付き合うのではなく、他業種の友だちや、趣味のサークルの友だちがいるなど、バラエティに富んだ友だちをつくりましょう。

■一人の親友に寄りかかりすぎると関係が崩壊する

米国ノースウェスタン大学のエレイン・チェンは、異なるニーズに応じて、異なる人間関係を持つことの重要性を指摘しています。

「仕事の愚痴を聞いてもらいたいときには、○○さん」
「楽しくお酒が飲みたいときは、○○さん」
「海外旅行に行くのなら、○○さん」

このようにバラエティに富んだ人間関係を持つようにしている人ほど、心理的に健康でいられるのだとチェンは述べています。

友だちが1人しかいないと、愚痴を言うときも、パーっと気分転換をしたいときにも、その人にしか頼ることができません。そのため、1人の友人にすべての負担がかかってしまいます。

すると友だちのほうも付き合いが大変だと思うようになり、関係が崩壊しやすくなるのです。

その点、異なるニーズに応じて人間関係を使い分けるようにすると、1人ひとりの友だちにかかる負担は分散され、付き合うのもそんなに大変だとは感じません。そのため、長い付き合いができるのです。

■広く浅い付き合いのほうがお互いに疲れない

友だちをつくるときには、できるだけいろいろな人と付き合いましょう。

内藤誼人『すぐに実践したくなる すごく使える社会心理学テクニック』(日本実業出版社)
内藤誼人『すぐに実践したくなる すごく使える社会心理学テクニック』(日本実業出版社)

自分の交友関係のネットワークには、医者、弁護士、マスコミ関係者、学校の先生、美容師、警備員、空手の先生など、幅広い人を求めるべきです。

自分とは違った仕事の人と付き合うのは、けっこう楽しいものです。「へえ、そんなことがあるのか!」とびっくりするような話を聞けたりもします。

いろいろな人と付き合うと、楽しさや興奮、うれしさや幸福感など、ポジティブな感情を得やすくなります。1人の友人としか付き合わないと、そういう感情は得られません。

機会があれば、積極的に友だちを増やしましょう。

友だちが増えれば増えるほど、異なるニーズに応じた付き合いができるようになります。友だちが増えると、どうしても「広く浅い」付き合いになってしまいますが、かえってそれくらいの付き合いのほうがお互いに疲れないものです。

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。

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(心理学者 内藤 誼人)

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