「相手より先に言う」だけで左脳が活性化する…朝から仕事が捗る「おはようございます」のスゴい効果
プレジデントオンライン / 2024年7月10日 8時15分
※本稿は、岩崎一郎『30日で人生がうまくいきだす脳の習慣』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■脳はネガティブになりやすいようにできている
もともと脳はネガティブな情報を受け取りやすい、ネガティブなことに意識が向きやすい傾向があります。
ネガティブな情報ばかり受け取っているとだんだん気持ちが落ち、脳にブレーキがかかって、脳がうまく機能できなくなります。
そこで注目してほしいのが、こめかみの辺りにある左脳の「ブローカ言語野」です。言葉を発するときに使われる領域です。
ブローカ言語野の辺りが活性化してくると、ネガティブな情報、ポジティブな情報、両方共に意識が向けやすいということがわかってきています。
ポジティブな情報も受け取りやすくなるので、ネガティブな情報に意識がいっても、そこまで気持ちが落ちずに、脳のアクセルも働きます。その結果、脳全体をうまく活用できるようになるという効果があります。
ブローカ言語野を活性化するには、あいさつが効果的です。
僕自身、もともと無口・口下手な人でした。
人に声を掛けられてもすぐに声が出なかったり、もごもごしたりして、声を掛けてくれた人はその間に通り過ぎてしまったり……そんなことをやっていました。
そういうときに、まず僕が始めたのは「元気にあいさつをする」ということでした。
■「おはようございます」でブローカ言語野が活性化する
どうしてあいさつがブローカ言語野を活性化するのでしょうか。
ブローカ言語野を活性化するには、いままで会話がないところから突然パッと何か言葉を発するというとき非常に活性化することがわかっています。
それが、まさにあいさつですよね。
あいさつは、その前に会話があるわけではなくて、誰かに会ったときに最初に「おはようございます」「こんにちは」と声を掛けます。いままで会話がなかったところから突然パッと言葉を立ち上げるので、ブローカ言語野が使われるのです。
また、「ありがとう」というのも、じつはブローカ言語野を鍛えるのにとてもいいと気づきました。
あいさつと同じように、何も会話がないところから突然パッと立ち上げるのにいいですよね。
「ありがとう」と言うと相手の人も喜んでくれます。
たとえば、コンビニで買い物をしたときに、店員さんに「ありがとうございました」と声を掛けると、丁寧な対応になるだけではありません。同時に、ブローカ言語野を鍛えられるのです。
あいさつをする、「ありがとう」をたくさん言う、これを普段から心掛けていきましょう。
■素直なリーダーがいると組織の風通しがよくなる
素直さというのは、想像以上に周りの人に影響を与えます。
たとえば中国の研究ですが、リーダーの素直さが高まると、チームのメンバーに対する思いやりや、利他的な行動が多くなり、チームの生産性にも影響を与えることがわかってきています。
リーダーの素直さが、チームの「心理的安全性」に直結するからです。心理的安全性とは、会社のような組織内で、自分の考えや意見を誰に対しても遠慮せずに言えるような状態です。
2016年にアメリカのGoogleが、高いパフォーマンスを発揮できるチームの共通点ということで、そのうちのひとつに心理的安全性をあげています。それがまさに「リーダーの素直さ」からくることがわかってきました。リーダーの素直さが、メンバーの人たちにも、波及するのです。
素直さは、本来誰でも心の奥底に秘めているはずです。
しかし、年齢を重ねるにつれて、心理的に傷つくことが多いせいか、表に出にくくなります。
では、どうやって素直さを表に出やすくするかということですが、「Awe(オウ)体験」をすると、素直さが表に出てくることがわかっています。
■自然豊かな場所で気持ちが解放される仕組み
大自然や大宇宙の広大さ、悠久さ、素晴らしさに心が震えて、「人間は、なんてちっぽけなんだろう」と感じるのがAwe体験です。
そのときに、心のうちに秘められた素直さが現れてきます。
皆さんも、雄大な山や海、森林、はたまた満天の星空を見ることで、そんな感覚に陥ったこともあるのではないでしょうか?
![美しい秋の峡谷高千穂峡谷の眺め](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/1200wm/img_2dcc3f1b3cc755172ccb76321e5572dd705862.jpg)
Awe体験をすると、脳が活性化し、他者のためになることをしようという気持ちが生まれます。
さらに、Awe体験は体にもいい影響があります。
体の慢性的な炎症が抑えられます。炎症の指標になる血中タンパク質(たとえば、インターロイキン6)の濃度が下がるため、血液検査からわかるのです。
慢性的な炎症が抑えられると、寿命を延ばすことがわかっています。
リーダーの素直さが高まると、チーム全体で一緒にAwe体験をしやすくなります。
それが、チームの心理的安全性を育んでいくのです。
僕自身も、脳磨きを続けてもっと素直な心が出せるようになりたいと思います。
ぜひ、皆さんも、普段から素直さを意識してみてください。
■坐禅をすると遺伝子に変化が起こる?
坐禅(ざぜん)をしたことがありますか?
背筋を伸ばして座り、自分と向き合う精神統一法ですね。
仏教の修行からきていますので、難しいとか、宗教的という印象があるかもしれません。
ちなみに、坐禅や瞑想から宗教的な要素を除いた「心」や「脳」のトレーニングがマインドフルネスといわれています。欧米などでは、医療機関でも治療の一環として使われることがあります。
坐禅には、多くのメリットがあることが脳科学研究で検証されています。
坐禅を続けていくことで、心が穏やかになる、大変なことがあっても動じなくなるという研究があります。
さらに、最近わかってきた非常に驚く研究があります。坐禅をすることで、遺伝子に変化が起こるというのです。
DNAというのは皆さんご存じでしょう。遺伝子の構造、配列を決めているものです。
DNAにヒストンというタンパク質がつき、立体的な構造を作っています。それがコンパクトにまとまったものが染色体といわれるもので、一つひとつの細胞の中につまっているわけです。
■体の免疫力を上げる遺伝子にも影響
人間というのはたくさんの細胞をもっています。脳も脳細胞からできています。その遺伝子や染色体構造に、坐禅を続けていると変化が起こることがわかってきたのです。
この変化はいくつかありますが、わかってきているのがDNAのメチル化です。
少し専門的になりますが、DNAにはATGC(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)という4つの塩基があって、それがつながって長い紐状(ひもじょう)になっています。その中のCに当たるシトシンがメチル化されて科学的な変化を起こします。
その科学的な変化が染色体の大きな構造を変えて、ある特定の遺伝子を発現しやすくする、もしくは発現できなくする。坐禅を続けることで、そんな変化が起こるのです。
たとえば、いくつかわかってきていることの中で、体の免疫力を上げる遺伝子などに変化が起こるということがあります。
![岩崎一郎『30日で人生がうまくいきだす脳の習慣』(サンマーク出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/6/1200wm/img_36c765abe0c8fb1e55bdece7e20fddde191732.jpg)
このように、坐禅を続けるというのは、単に気持ちが落ち着くとか、何となくの曖昧(あいまい)なものではないのです。
実際に体の遺伝子に変化が起こって、坐禅をする前の自分と違う状態になるのです。
それが脳にいろいろな変化を起こし、世界の捉え方が変わってくる。非常に不思議な感じもしますが、実際に科学的に検証されてきたことです。
坐禅の方法は、さまざまありますが、僕たちがやっている「脳磨きマインドフルネス」もご参考にしていただくといいでしょう。
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脳科学者・医学博士
京都大学卒。京都大学大学院修士課程修了後、アメリカ・ウィスコンシン大学大学院で医学博士号(Ph.D.)取得。旧通産省の主任研究官、アメリカ・ノースウェスタン大学医学部脳神経科学研究所の准教授を歴任。帰国後、脳科学を活用して高いパフォーマンスを発揮できる組織づくりの企業研修を提供する会社「国際コミュニケーション・トレーニン」を創業。現在までに200社以上で企業研修を行う。著書に、『何をやっても続かないのは、脳がダメな自分を記憶しているからだ』『なぜ稲盛和夫の経営哲学は、人を動かすのか?』(クロスメディア・パブリッシング)、『科学的に幸せになれる脳磨き』(サンマーク出版)などがある。
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(脳科学者・医学博士 岩崎 一郎)
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