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「野菜ジュースは体にいいのか」の最終結論…市販商品を買う際に必ず見るべき"パッケージの表記"

プレジデントオンライン / 2024年7月11日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/masa44

健康維持のために、野菜ジュースはどれだけ効果があるのか。野菜研究家の梅田みどりさんは「野菜の栄養素には、ビタミンCのように一旦加熱されると破壊され消滅してしまうものがある一方、加熱に強く破損されにくい栄養成分や、加熱によってさらに体内の吸収が良くなる栄養成分もある。大事なのは、市販の野菜ジュースを飲んで『これで今日の野菜ノルマは達成!』と安心せず、成分表示を確認しながら野菜摂取の補助として活用することだ」という――。

※本稿は、梅田みどり『野菜ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■野菜ジュースは飲めば健康になれるか、それとも嗜好品なのか

「最近、野菜ジュースを飲みましたか?」

こんな質問を、私の周りの友達や仕事仲間に投げかけてみました。

返ってきた答えは「コンビニで弁当と一緒に買った」「箱買いして毎日飲んでいる」「青汁のパウダーを飲み始めた」など、野菜ジュースを意識して飲んでいる人が結構いました。

さらに踏み込んで、何のために飲んでいるかを聞くと、「最近野菜不足だから」「健康にいいと思ったから」「野菜ジュースは体にいいから」といった、健康維持のために飲んでいる人が多いようでした。

こうした意見がある一方で、「糖分が多いから飲まない」「野菜ジュースは野菜の役割を果たさない」「美味しくない」といった、“飲むだけ無駄派”も同じくらいいました。

はたして野菜ジュースは、飲めば健康になれるのでしょうか。それとも、ただの嗜好品なのでしょうか。

日本の野菜ジュースと言えば、1970年代にカゴメから発売されたトマトジュースが始まりと言われています。トマトの絵が描かれた缶入りのトマトジュースが我が家にもありました。

しかし、独特の匂いやとろみ、不自然な塩分でとてもおいしいとは思えませんでした。栄養があるからと大人が飲んでいたのでしょうが、私の実家では畑で野菜をたくさん作っていたので、普通に野菜を食べればいいのにと子どもながらに感じていました。

その後、紙パック入りの飲料が広まるとともに、「野菜と果物のミックスジュース」が各メーカーから発売されました。当時、子育て中だった私は、子どもに与えるジュースには、明治の「やさいとりんご」やグリコの「幼児用野菜&フルーツ」をよく選んでいました。

「どうせジュースを飲むなら、栄養も一緒に摂らせたい」という母の思いとも重なり、非常に売れていたと記憶しています。その後も消費者に支持され続け、両者とも今もなお販売されているロングセラー商品となっています。

■1日分の野菜は本当に摂れるのか

厚生労働省の「野菜を食べようプロジェクト」では、2013年から新たなシーズンが始まり、「1日350g以上の野菜を食べましょう」という健康指針が全国に広まりました。

このプロジェクトでは、1日あたりの野菜摂取目標を緑黄色野菜120g、その他の野菜230g、合計で350gと定めていますが、これは量的な目標値だけで栄養面では具体的に示されていません。

しかも、野菜を摂ろうとする意識があるものの、実際に目標摂取量を毎日達成するのは難しいようで、ここ10年以上、日本人全体の平均摂取量は300gを切っています。

「1日分の野菜が摂れます」と表示した飲料が近年増えているのも、この野菜の目標達成が難しい消費者への訴求効果があるからだと考えられます。

野菜ジュースの背景に緑黄色野菜とフルーツ
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA

しばらくの間、野菜に果物を加えて飲みやすくした「野菜とフルーツのミックスジュース」が主流でしたが、2004年に伊藤園が発売した「1日分の野菜」が登場し話題を呼びました。まさに、1日に必要とされる350gの野菜を使用している、今までにない野菜100%飲料でした。

ただし、350g使用と言っても、実際に使用している野菜の量は540gで、その絞りかすを取り除いて350gにしています。しかも、砂糖、塩は無添加です。

搾りかすのほとんどは不溶性食物繊維で、水溶性食物繊維はジュースの中に若干残ります。ジュースのパッケージに表示されている「難消化性デキストリン」とは水溶性食物繊維のことです。

■成分表示を確認しながら野菜摂取の補助として活用する

野菜100%の飲料が浸透し始めると、各飲料メーカーからも野菜100%を主張する商品が次々と発売されていきます。最近では、トップバリューやセブンプレミアムを筆頭に、PB商品や地域性の高い野菜100%飲料も目立っています。

こうして開発競争が高まると、商品の質はどんどん良くなるものです。現代の野菜ジュース開発では、1日に必要な野菜の量(350g)だけを満たすのは当たり前で、さらなる付加価値を高めることにポイントが移ってきています。

例えば、「農薬含有量が心配な輸入野菜を使わない」「糖質を減らす」「製造は日本国内に限定する」など、安全で健康的な飲料として進化してきています。

市販の野菜ジュース製法のほとんどは、加熱濃縮された後に水を加えて還元したものです。野菜の栄養素には、一旦加熱されると破壊され消滅してしまうものがあり、その筆頭がビタミンCです。

一方、加熱に強く破損されにくい栄養成分や、加熱によってさらに体内の吸収が良くなる栄養成分もあります。「ジュースで1日分の野菜を摂ることができるか」という疑問に関しては、そうかも知れないし、そうでないかもしれないという、とてもファジーな答えしかできないのが現状です。

実際、野菜ジュースのパッケージには、十分な野菜の量も栄養も満たしていると記載されていても、「あくまで嗜好品として」飲むことが推奨されています。

人の体は個体差が大きく、必要な野菜の量や栄養は個人ごとに異なるので、効果は目に見えません。いち消費者の私たちにできるのは、市販の野菜ジュースを飲んで「これで今日の野菜ノルマは達成!」と安心せず、成分表示を確認しながら野菜摂取の補助として活用することが大事です。

■コロナ禍でプラスαの栄養摂取効果を期待して関心が集まる

2020年から始まったコロナ禍により、私たちの健康に対する不安が増大しました。ウイルスが侵入しないようにマスクや除菌など、緊張感のある毎日を過ごした方も多いと思います。

その一方、外出自粛などの影響で、運動不足解消のための自宅トレーニングやダイエットがブームになりました。オンラインのヨガや、YouTubeのフィットネス動画などが話題を呼んだのもこの頃からでした。

こうした健康意識の高まりから、野菜飲料にも関心が集まり、2020年以降の野菜飲料市場の売上は上昇しました。特に、家庭内での野菜ジュースの需要が高まり、大型サイズの消費が拡大したと言います。

これは、野菜不足から消費が増えたというより、食事にプラスαの栄養摂取効果を期待してのことでしょう。

コロナ禍は消費者の購入先にも変化を起こしました。特にECサイトからの購入が増えたため、野菜ジュースをまとめて箱買いしたり、各地域の産地直送のものを試す人が多くなりました。

また、購入者の層も広がったため、野菜ジュースに興味がなかった女性層にも、飲みやすさ重視の野菜と果汁がミックスされた飲料を中心に伸びました。

そして現在では、野菜飲料の売れ行きは落ち着いています。新商品の開発競争が激化し、他の健康補助食品の新商品も増えた結果、野菜ジュース市場は苦戦に転じたのです。

■ヘルシーで栄養価の高い「スムージー」の台頭

野菜ジュースと一口にいっても、缶やペットボトル、紙パック、瓶などに詰められて製品化されたものだけではありません。手作りの野菜ジュースは、飲みやすく栄養を逃さないために、機器の技術革新が進んでいます。

日本で始めての電動ミキサーが発売されたのは1950年頃です。食材の撹拌粉砕や、料理の下ごしらえに使う調理器具として発売されました。

その後、家庭で簡単にジュースを作ることができる機器として電動ジューサーが発売され、1970年代には一般家庭の普及率は60%を超えました。

その後、1980年代にアメリカのカルフォルニアから広まった「スムージー」が出現します。

キッチンでスムージーを飲む女性
写真=iStock.com/eclipse_images
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eclipse_images

スムージーは、果物や野菜、ヨーグルト、果汁などをミキサーで撹拌して作る、滑らかでクリーミーな飲み物です。人気モデルにも好んで飲まれる、ヘルシーで栄養価の高いドリンクとして世界中で人気になりました。

日本で広まったのは1990年代以降ですが、美容や健康に関心が高まり新しい飲食トレンドが登場する中で、スムージーも自然と受け入れられました。

特に2000年代初頭には、ファーストフードチェーンやカフェでもスムージーがメニューに加えられました。そこから、一般の人々にも広く知られるようになり、今ではすっかり日本の食事にも定着する飲み物となりました。

■この10年でコールドプレスジュースが人気になったワケ

そして、この10年で流行したのが、コールドプレスジュースです。

コールドプレスジュースは、従来のジューサーよりも低速で回転する機械を使用し、低温でゆっくりと果物や野菜を圧搾してジュースを抽出します。

この抽出方法によって熱が発生せず、栄養素や風味をより多く保持できるとされています。かなり高価な機械ですが、ヘルシーで栄養価が高い飲み物として注目されると、健康志向の高い人やフィットネス愛好者の間で人気となりました。

その後、コールドプレスジュース専門店やパッケージ商品としてコンビニなどでも広く販売されています。

この流行の裏には、人々が健康や美容に対する意識を高めたり、新しい飲み物の体験を楽しみたいという消費者のニーズが影響しています。

梅田みどり『野菜ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)
梅田みどり『野菜ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

野菜レストランを経営している知人も、このコールドプレスジュースの機械をいち早く購入し、栄養価の高い野菜ジュースを提供し始めています。実際にいただいてみると、野菜のクセがなく甘さもあってとてもおいしいジュースでした。

そんな知人の悩みは、残った搾りかすの利用法でした。「パンに混ぜ込んでみたり、ハンバーグに混ぜ込んだり色々試している」と試行錯誤している様子でしたが、ついに「数種の野菜(搾りかす)入りハンバーグ」としてメニューに加わったようです。

絞りかすは食物繊維の固まりなので、パンやケーキの生地に混ぜ込みやすく、野菜の色や食物繊維という付加価値が加わります。最近では、ジュース専門店とベーカリーの循環型経営をする会社も目立つようになりました。

■野菜以上の効果を求め、より健康的な飲み物へと進化

このように野菜飲料市場は、消費者の健康意識が高まるたびに成長を続けてきているのがわかります。消費者が求めるものは、野菜の量や栄養だけでなく、甘さ控えめや低カロリー志向など多方面に広がり、野菜本来の価値にも着目した商品が開発されています。

最近の紙パック野菜飲料には「野菜の粒入り」といった表記も見られ、野菜の食感や繊維感を売りにしたものがあります。さらに、オメガ3、食物繊維、プロバイオティクス細菌、酵素などの機能成分を追加したものも目立ちます。

このように、野菜ジュースは野菜そのものに近づきつつ、野菜以上の効果を求め、より健康的な飲み物へと進化しているのです。

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梅田 みどり(うめだ・みどり)
野菜研究家・野菜ソムリエ
フードサロンやさいのひ代表。地元の金融機関に就職後、結婚・出産を経て、料理研究家としての仕事がスタート。季節の野菜中心の料理レシピを料理教室やYouTubeチャンネルで公開している。野菜の専門家として、伝統野菜をはじめとする地元農産物の保存や普及に力を注ぎ、野菜の健康効果や食習慣の重要性を発信している。著書に『今日は野菜の日・春夏秋冬』『おうちで本格パン焼けました』(ワニブックス)『こねずに混ぜるだけ やさしいパンづくり』(ナツメ社)がある。

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(野菜研究家・野菜ソムリエ 梅田 みどり)

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