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「いきなりそれはムリ」初心者の腰が引けても…日本株より"約100年で301倍"米国株を推す投資プロの納得の理由

プレジデントオンライン / 2024年7月17日 6時15分

■投資信託を買って寝ている間に儲けよう

今はネット証券のおかげで、国内株を買うのと同じような感覚で海外株を購入できます。始めるには、海外株を扱っている国内の証券会社で口座を開設すればOK。手数料が高めでも窓口で相談しながら購入を進めたいときは、総合証券会社へ。また手数料を節約し、自分の考えで売り買いしたいときは、口座開設から購入までがオンラインで完結するネット証券が便利です。

ここでは3つの購入方法を紹介します。まずリスクが小さく初心者におすすめなのが、海外株の投資信託を購入する方法です。投資信託とは、さまざまな株や債券などをひとつのパッケージにした金融商品のこと。購入したあとは専門家が運用をしてくれるので、投資家が寝ている時間に手持ちの資金が働いてくれるという図式です。NISA、積立NISAに対応した銘柄も多いのでその枠内で購入すれば、本来利益にかかる2割もの税金が非課税となります。

海外株をパッケージした投資信託では、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに登録されている約500銘柄の株価指数と連動する、S&P500が知られています。そのひとつ「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、マイクロソフトやアップル、アマゾン、エヌビディアなど、米国の有名企業が上位銘柄に並ぶ投資信託。配当金などを加算したここ3年の上昇率が80%を超えたことでも、人気の投資信託のひとつとなっています。

ちなみに国内の株価指数TOPIXに連動した「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」の上位企業に並ぶのはトヨタ自動車、ソニーグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループなどですが、ここ3年の上昇率は五十数%と米国株に劣ります。

投資信託にはさまざまな種類があり、同じ国の株式を集めたものでは、S&P500のほか、インドの株式指標と連動する「iFreeNEXT インド株インデックス」など、日本にいながらにして世界の株を投資信託という形で購入できるようになっています。

2つめの買い方は、ETF(上場投資信託)です。簡単に言うと「取引所でトレードできる投資信託」のこと。一般的な投資信託は1日1回だけ計算される「基準価額」で売買することが原則です。一方、ETFは個別銘柄と同じように取引所に上場されているので、いつでも売り買いが可能。また信託報酬という手数料を一般的な投資信託より低く抑えられるのも魅力です。

残念なのは東京証券取引所に上場しているETFは約200銘柄と少ないこと。それでも投資信託で投資デビューした人が、今度は自身で投資信託の値動きをチェックしてみたいと思ったら、ETFもひとつの手です。

さらに少しだけハイリターンを狙える銘柄に挑戦したいとき、おすすめなのがテクノロジー関連の企業のウエートが高いNASDAQ100のETFです。米国NASDAQ市場に上場している銘柄のうち、100銘柄の平均株価に連動する投資信託のETFとなっています。NASDAQはイノベーションに投資するという意味でおもしろい投資先ですが、値動きは激しい。

そして最後の買い方が、個別銘柄で海外株を買う方法です。ただし問題は、何を買うか。アメリカのNo.1ファンドマネージャーといわれたピーター・リンチが昔から、「自分が消費者としていいと思った企業の株を買うのが一番いい」と言っていますが、これには私も同感です。そこで紹介したいのが、初心者でも比較的組み立てやすいコア・サテライト運用という方法です。

コア部分には、S&P500のような株価指数に連動し、市場全体の動きに追随する投資信託やETFを置いて、市場並みのリターンを得ます。一方、その周りに「攻め」の銘柄を5〜6つ置き、ハイリスク・ハイリターンの投資にチャレンジするのです。

おすすめの構成は、コアにS&P500や、長期的に増配を行っている銘柄で市場の動きに連動して、年に4回の配当金も受ける「守り」を配置。サテライトには、例えば今ならAI関連の元気のいい株を持ってくるのもいいですね。攻めと守りの両輪で、夢のある投資が可能になると思います。

■金利の引き下げなどで3年間2桁成長が期待

海外株のなかでも、投資すべき代表選手と言えるのが、米国株です。前出の米国S&P500の推移(ドル建て)を見ても、1928年から現在までの100年足らずの間に、米国株は約301倍もの伸びを見せています。加えて米国では人口も継続的に増加している。つまり経済大国の安定感をもちながら、新興国のような成長力を同時に続けているのが米国なのです。

S&P500の1928年からの推移【ドル建て】

株価も同じです。どれだけ成長した企業でも成長が止まることはなく、米国の株価はいつまでも上がり続けることが期待できます。米国ではもう成長の余地がないと思えるような有名企業でも、実はまだまだ成長の伸びしろがあり、短期間で株価が爆発する可能性を秘めています。だからこそ消費者としての自分がいいと思った企業に投資しても、勝算は必ずあるのです。

ちょうど今の米国は、金利の上昇が上げ止まり、次はいつ金利が下がるんだろうとマーケット参加者が気にしてるところ。かたや日本は逆で、これから金利を上げていこうという局面を迎えています。どちらの国の株価指数が上がりやすいかというと、やはり金利が下がる国だと思います。

私は米国の企業業績は、ここ3年間は、2桁成長すると考えています。コロナ禍でまず業績が落ち込み、その後大きくリバウンド。再び業績が落ち込みましたが、経済がノーマル化し始めて金利も下がってくる局面で、業績が大きく成長するのではないでしょうか。

その根拠には、日本と違う米国企業の体質があります。米国の企業は常にコストカットを意識して、暴落しても、何とかして株価を戻そうという意識が非常に強い。例えば米国では、2020年8月のコロナの真っ只中に、大規模なリストラがあちこちの企業で行われました。日本でも派遣雇い止めなどが問題になりましたが、もしもあの規模のリストラを日本でやったら大問題になることは間違いありません。

■自社株を持つ経営者が株価を上げるべく努力

米国の企業は歴史的にもそうやって利益を増やし、損益を最小限に抑えてきました。というのも米国の企業の主人公は、株主だからです。株主のためにリストラをして、株主のために損益を抑える。そうした姿勢が、業績にも反映されていると思います。

もうひとつ、米国では株主の監視の目が、非常に厳しい。そのため不祥事が発生しにくいことはよく言われます。また「業績アップ=株価アップ」という法則も、よく耳にすること。その理由は、経営者と株主の利害の一致にあります。米国企業の多くは、経営陣の報酬の一部として自社株を受け取る場合が少なくありません。彼らの自社株保有残高の割合は、日本の約3倍にも上ると言われています。つまり自社株を保有する経営陣が真摯に仕事に向き合い、業績が上がると株価も上昇、自身の資産も増えていくという好循環。反対に業績不振に陥れば、資産は減少する。だから彼らはよく働くのです。

一方日本ではどうでしょう。自社株を保有する経営者らは少なく、株価の変化にも無頓着になりがちです。そのため株主を無視した経営になってしまう場合も。上場企業で事件や不祥事が起きても、一度上場すればよっぽどのことがない限り、日本では上場廃止はされません。これも米国の企業の不祥事に比べて、日本のそれが目立つことと無縁ではないでしょう。

ほかにも米国株の魅力と言えるポイントは多数あります。駆け足で紹介すると、まず資源があること。それから、食料自給率が高いので自給自足もできてしまうこと。さらに防衛費が世界でダントツであることも大きいことです。そして何より、米国にはイノベーションがあることが大きな強みになっています。

2023年 世界で最もイノベーティブな企業トップ50

イノベーティブな企業トップ50のリストで見ると、アップル、テスラ、アマゾン、アルファベット、マイクロソフトなど、上位の50社のうちおよそ半分が米国の企業です。時価総額でもトップクラスの企業ばかりですから、それは株価も上がるはずです。

そうです。アメリカの企業はお金があるのです。国や国内企業から資金を得ることは「対内直接投資」と呼ばれ、最近も台湾の半導体企業TSMCが熊本に工場を完成させた際、海外からの大規模な投資が起きたというニュースが駆け巡りました。が、実は昨年1年間の日本への投資額は3.3兆円、一方米国の対内直接投資額は、なんと約54兆円と日本の16倍に上るそうです。

日米企業 研究開発費(R&D)比較

米国の株式は、世界の株式の時価総額の44%をしめ、世界中の投資家に取引されています。米国株は暴落が起こっても、真っ先に立ち直ることがよくあります。例えば米国株式市場はコロナ禍による世界的不況の影響を受けて株価を大きく下げたものの、どこの国よりも早く値を戻して史上最高値を更新しているのです。

■プロが気になる米国株三大銘柄とは?

米国株のなかで、私が気になる銘柄を、いくつか紹介しておきましょう。

①テスラ(TSLA)

EV業界は冬の真っ只中で株価が低迷するなか、テスラはAI企業としての展開を進めています。将来的に自動運転を可能にする同社のFSD技術は日々進化し、実際に完全自動運転のテスラ車が米国の道を走るのも時間の問題でしょう。利益率の高い自動運転ソフトのサブスクモデル販売で収益増が期待できます。また、8月に発表される予定のロボタクシーと呼ぶ自動運転タクシー事業、人型ロボット「オプティマス」の将来性にも期待できます。

②ボーイング(BA)

今後世界では中間層が増え、旅行者数は増加する見込みです。大型航空機を生産できるのはボーイングとエアバスだけ。ボーイングは737MAX機の事故や、コロナ禍で旅行者が消え航空会社からの注文も止まり、業績は赤字となりました。それがやっと25年には黒字化する見込みで、20年に止めた配当金の復配も来年期待されます。

③ジュミア・テクノロジーズ(JMIA)

ナイジェリアやエジプト、南アフリカといったアフリカ大陸でeコマースを行っている最大手。「新しいアフリカのアマゾン」と米国市場に上場しています。アフリカという13億人が暮らす未知のエリアでのeコマースという挑戦で非常にリスクが高い一方、中間層が増えているアフリカで、長期的に大変なポテンシャルを秘めた企業とも考えています。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月19日号)の一部を再編集したものです。

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岡元 兵八郎(おかもと・へいはちろう)
マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー
上智大学を卒業後、ソロモン・ブラザーズ証券(現シティグループ証券)入社。東京、ニューヨーク本社勤務を含め26年間同社にて一貫して外国株式のマーケティング、外国株式関連商品業務に携わり、外国株式部の上級管理職として機関投資家相手の外国株式ビジネスの拡大に努める。新しい海外株式市場への投資への啓蒙活動を精力的に行い、日本の機関投資家が世界54カ国の株式市場へ投資を行うサポートを行ってきた。その後4年半はSMBC日興証券株式会社で、エクイティ部、投資情報部にて米国株式市場・企業情報の情報収集、分析、顧客向け資料作成業務の責任者として、個人投資家向けに米国株式投資の啓蒙活動を行うなどし米国株式仲介事業の拡大に貢献。北米滞在10年、世界80カ国を訪問、33カ国を超える北南米、アジア、欧州、アフリカの証券取引所、証券会社、上場企業のマネージメントへの訪問を行うなど、グローバルな金融サービス部門において確かな実績を築く。2019年10月より現職。主な著書に、『日本人が知らない海外投資の儲け方』(ダイヤモンド社)、『資産を増やす米国株投資入門』(ビジネス社)がある。

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(マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー 岡元 兵八郎 構成=福光 恵)

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