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「1本1万円のネギ」に「8個入り11万円のシイタケ」…超高級野菜の"お取り寄せ"が売り切れ続出するワケ

プレジデントオンライン / 2024年7月25日 10時15分

「お取り寄せ」グルメが一般化(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/koumaru

インターネットの普及で、超高級野菜の「お取り寄せ」に人気が集まっている。野菜ソムリエの梅田みどりさんは「贈答用の中には、なんと『1本1万円のねぎ』もある」という――。

※本稿は、梅田みどり『野菜ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■「お取り寄せ」グルメが一般化

インターネットが普及し、全国各地の特選品を手軽に注文できるようになりました。

特定の地域でしか手に入らない食品や特産品、グルメ品を注文して自宅に配送してもらう「お取り寄せ」もずいぶん一般化してきました。

最近、お取り寄せの商品を扱うサイトの中でも、野菜専門のサイトが増えてきています。これによって、日本全国の様々な地域の野菜を簡単に味わえるようになりました。

特に「新鮮な野菜の詰め合わせ」は人気商品として、ここ数年でその数を大きく増やしています。そこで、野菜のお取り寄せの人気の理由について見ていきましょう。

■新鮮で採れたての風味を楽しむことができる

・品質と鮮度

新鮮な野菜は、その味わいや栄養価の高さが魅力です。市場やスーパーで購入するよりも、新鮮で採れたての風味を楽しむことができるのは、産地直送ならではです。

・地域特有の品種

各地域にはその地でしか味わえない特有の野菜品種があります。野菜の詰め合わせは、普段は手に入らない珍しい野菜や伝統野菜を試すことができます。

・安心・安全への信頼

生産者から直接送られる野菜は、生産背景や栽培方法がわかりやすく、消費者は安心して購入できます。特に、有機栽培や減農薬栽培など、特定の栽培方法にこだわった野菜の需要が高まっています。

■健康的なギフトとして喜ばれる

・野菜の季節感

その季節に旬を迎える野菜の詰め合わせは、食卓に季節の変わり目を感じさせ、その時期ならではの味わいを提供します。

・贈答用としての利用

新鮮な野菜の詰め合わせは、見た目にも鮮やかで健康的なギフトとして喜ばれます。特別な日の贈り物や、健康を気遣う方へのプレゼントとして選ばれるケースもあります。

・料理の楽しみ

健康志向への高まりから、自宅で様々な料理に挑戦したいというニーズが増えています。

そうした傾向の中で、新鮮な野菜の詰め合わせは日々の食生活に新鮮さと楽しみをもたらしてくれます。

■インターネットを通じて簡単に購入できる

このような特徴を持つ「新鮮な野菜の詰め合わせ」は、インターネットを通じて簡単に購入できます。

パソコンでネットショッピングをする人
写真=iStock.com/west
インターネットを通じて簡単に購入できる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/west

地域限定の野菜セットは、遠く離れた地域のおいしい野菜や珍しい品種を試す楽しみがあり、新しい味覚の発見につながります。

また、食育の面からも、季節ごとに旬を迎える野菜の重要性や地域ごとの野菜の違いに気づき、健康的な食品の選び方を身に付ける機会にもなります。

これらの野菜セットが人気を集める理由は、日々の食生活に新鮮さとバリエーションを加えるだけでなく、地域の農家を支援し、環境に優しい選択をすることが現代の消費者にとって重要な価値だからです。

■ねぎには厳しい規格がある

ねぎは日本の食卓で欠かせない身近な野菜の1つです。

生では、そのシャキシャキした食感と独特の香りや辛みが魅力ですが、火を通すと甘みが増し、とろりとした柔らかな食感が楽しめます。

ねぎには大きく分けて、「葉ねぎ(青ねぎ)」「中間種」「白ねぎ」の3種類があり、なかでも白ねぎは、その太さや長さの個体差が大きいのが特徴です。贈答品としても選ばれることの多い品種です。

市場に出荷されるねぎは、厳しい規格によって分類されます。例えば、夏ねぎは白い部分が長さ27cm以上、春ねぎや秋冬ねぎは30cm以上が求められます。

太さに関しても、Sサイズは直径1.3cm未満、Mサイズは直径1.5cm未満、Lサイズは直径2cm未満、2Lサイズは直径2.5cm未満と、細かく決められています。

市場に流通するサイズは2Lサイズまでで、それ以上の3L~5Lサイズのねぎは規格外とされ、見た目や味わいに関わらず、出荷することができません。

■「300万本の中からたった数本」の「1本1万円のねぎ」

そこで最近、特別な品質の規格外野菜を高級な贈答品として販売するアイデアが注目されています。

例えば、「ねぎびとカンパニー」が作る、糖度20度以上の特大「寅ちゃんねぎ」は、300万本の中から数本だけしか選ばれず、1本1万円で売られる贈答品として話題になっています。

長ねぎ
写真=iStock.com/AndyVernum1
「300万本の中からたった数本」の「1本1万円のねぎ」(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/AndyVernum1

このねぎは明らかに違う見た目で、どっしりとした太さで柔らかいのが特徴です。

サイズによって2種類の商品があります。

・モナリザ……4L~5Lサイズ1本1万円
・真の葱……3L~4Lサイズ8本1万円

■あっという間に売り切れてしまう

また、江戸時代に徳川幕府や大名への献上品とされていた下仁田ねぎも、贈答品として人気があります。その独特の甘みと柔らかな食感は、鍋物に使うと絶品です。

その中でも丈が短く太い白根が特徴の特選品も贈答品として人気の商品です。

・特選下仁田葱「殿様」……2Lサイズ約20本1万円

これらの高級ねぎは、期間限定で売り出され、あっという間に売り切れてしまうほど人気です。

テーブルに並べたねぎ
写真=iStock.com/alder7
あっという間に売り切れてしまう(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/alder7

ねぎが1万円と言うと驚きますが、これは単なる野菜ではなく、特別な価値を持つ贈り物として見られているようです。

■1本の重さが600g近くある

ほかにも、贈答品として選ばれるねぎには、縁起が良いという理由で人気の商品があります。

・ひたち紅っこ 赤ネギと長ネギの食べ比べセット……5キロ2500円

茨城県特産の赤ねぎは、生産者が少なく希少価値が高いねぎです。アントシアニンを多く含み、抗酸化活性や総ポリフェノール含量が白ねぎよりも多いのが特徴です。柔らかく甘みがあり、加熱すると甘みが増します。

・千寿葱(金品極太)……8本~10本5300円

ねぎ農家6代目の金次郎さんが育てる、土の力が違うと評される極上の長ねぎです。1本の重さが600g近くあり、市販のねぎと比べて格段に太く重いのが特徴です。特に年明け以降に収穫された物は糖度と旨みがさらに増します。

■「太さ2.5cm以上、糖度20度以上」の最高級品

・富来葱極(とみくねぎきわみ)……8本~10本入り5400円

100本に1本の割合で取れる、太さ2.5cm以上糖度20度以上の最高級の富来ネギです。

有機100%の魚ぼかし肥料や酵素発酵菌、国東の高級牡蠣殻を使用した有機栽培で作られています。

このようなねぎは、独特の特性や栽培方法によって、贈答品としての魅力が高まっています。縁起を重んじる日本人にとって、特に選ばれる理由になります。

また、期間限定品や数量限定品など希少価値の高い商品は、珍しい食体験を提供するために選ばれ、受け取った方に喜ばれることは間違いありません。

これは、様々な食べ物を楽しむ文化や、地元の名産に関心が高まっていることを示しています。今まで知らなかった新しい野菜を試すことが、新たな価値を生んでいることがうかがえます。

■干し椎茸の高級ギフトとして愛される「どんこ」

野菜とは少し違いますが、きのこ類も野菜として分類されることがあり、長くギフト品として楽しまれています。

例えば干し椎茸は、その独特の旨味と栄養価の高さで、日本の食文化において長く高級ギフトとして重宝されてきました。

干し椎茸
写真=iStock.com/karimitsu
干し椎茸は高級ギフトとして重宝されてきた(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/karimitsu

乾燥により椎茸の旨味と栄養が凝縮され、家庭の食卓に欠かせない存在になっています。

徳島県、北海道、岩手県などが椎茸の主要な生産地であり、大分県は干し椎茸生産の中心地として知られています。

なかでも「どんこ」という品種は、その肉厚で濃厚な味わいが特徴で、干し椎茸の高級ギフトとして長く愛されています。

■「1箱8個入りが11万円」で落札された高級椎茸

一方、最近では椎茸に関する研究開発が進み、特に生の椎茸が高級ギフト市場で注目を集めています。

この新しい動きは、生の椎茸に新たな視点を加え、椎茸をより一層魅力的なものにしています。特に次の2つの椎茸が高級ギフトとして注目されています。

・のとてまり

石川県の珠洲市、輪島市、穴水町、能登町だけで生産されています。直径8cm以上、肉厚3cm以上、巻き込み1cm以上の基準があり、認証基準を満たす商品は45%しかありません。石川県だけで流通する希少な椎茸です。

通常価格は1個4000円を超え、500gで2万3000円と高価格の品種です。

2024年1月の地震では、多くの椎茸が全滅しました。しかし、穴水(あなみず)高校の「のとてまり」の栽培プロジェクトで、地震後に復旧し収穫した「のとてまり」は金沢市中央卸売市場で競りに掛けられ、1箱8個入りが11万円という高値で落札されました。

■旨味成分が通常の約2倍

・天恵菇(てんけいこ)

徳島県で開発された椎茸の新品種で、全国で栽培している農家は20件のみです。直径7cm以上で肉厚、アワビのような食感で、旨味成分のグアニル酸が通常の椎茸品種と比べて約2倍含まれています。

アワビの酒蒸し
写真=iStock.com/bonchan
アワビのような食感(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/bonchan

2015年にはグッドデザイン賞を受賞し、同じくFOODEX JAPANでは、「美食女子コンテスト」で最高賞グランプリという高い評価を受けています。

また、ドイツで開催された世界最大の食の見本市「アヌーガメッセ」に2回連続で出展し、欧州や米国(ニューヨーク)のレストランでも人気を博しています。

価格は1個あたり1000円から3000円で販売され、3個セットで1万円という高級贈答品としての位置づけがあります。

■「アワビのような噛み応え」

この2つの椎茸に共通するのは、その驚くべき食感とうま味です。

「アワビのような噛み応え」と表現されるように、弾むような歯ごたえと濃厚な味わいは一般的な椎茸とは別物です。

特に蒸し焼きにするとうま味が凝縮され、ジューシーでコリコリとした食感は、もしかしたらアワビよりおいしいかもしれません。

一口食べれば忘れられないほどの深い味わいは、まさに特別な体験を提供してくれます。

この高級椎茸は、その肉厚さと大きさを活かして様々な料理に使用できます。特に、厚切りにしてステーキやホイル焼きにすると、そのおいしさをより一層感じられます。

実際に、伝統的な日本料理や創作料理を提供する飲食店では、幅広いメニューに使われているようです。調理法によっては、柔らかく繊細で口溶けの良い食感にもなり、その使いやすさが高級食材として選ばれる理由の1つとなっています。

■弘法大師が唐からもたらした

日本で椎茸が一般に広く食されるようになったのは9世紀頃とされ、弘法大師が唐から帰国した後、干し椎茸の食習慣をもたらしたと言われています。

初めは上流階級に愛された椎茸ですが、栽培技術の発展した江戸時代には庶民の間にも普及しました。

明治時代には、椎茸は松茸よりもはるかに高価で、価格差は10倍近くになっていたと記録されています。

梅田みどり『野菜ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)
梅田みどり『野菜ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

しかし、戦後の燃料革命がアカマツ林の状態を変え、松茸の生育環境に悪影響を及ぼしました。

人工栽培が難しい松茸は希少価値が高まって価格が上昇した一方で、椎茸は栽培技術の進歩により生産量が増加し、価格は逆転しました。

その後も、食の多様化や中国からの干し椎茸の輸入増によって、かつての高級食材としての地位は影を潜めることとなりました。

そんな椎茸は、新しい品種の開発によってその価値が再評価されています。近い将来、松茸との価格関係が逆転し、最高級のきのことしての地位を獲得する日も近いかもしれません。

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梅田 みどり(うめだ・みどり)
野菜研究家・野菜ソムリエ
フードサロンやさいのひ代表。地元の金融機関に就職後、結婚・出産を経て、料理研究家としての仕事がスタート。季節の野菜中心の料理レシピを料理教室やYouTubeチャンネルで公開している。野菜の専門家として、伝統野菜をはじめとする地元農産物の保存や普及に力を注ぎ、野菜の健康効果や食習慣の重要性を発信している。著書に『今日は野菜の日・春夏秋冬』『おうちで本格パン焼けました』(ワニブックス)『こねずに混ぜるだけ やさしいパンづくり』(ナツメ社)がある。

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(野菜研究家・野菜ソムリエ 梅田 みどり)

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