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クリアまでを「YouTubeの実況動画」でみてからゲームを買う…14歳以下「α世代」の信じられない消費行動

プレジデントオンライン / 2024年7月16日 10時15分

出所=『新消費をつくるα世代』(日経BP)

2024年時点で14歳以下の「α世代」はどんな行動特性を持っているのか。インテージ生活者研究センターの小林春佳さんは「α世代の情報源はYouTubeが一般的になっている。お買い物に関するインタビューで『実際に購入したものは、どのように知ったか』を聞くと、YouTubeの実況動画を見た、と答える人がほとんどだった」という――。

※本稿は、小々馬敦『新消費をつくるα世代』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■「YouTubeの実況動画」で欲しくなる

21年12月と22年4月に、α世代の日々の購買に関する情報接触と消費の実態把握を目的として、α世代の男女14人にオンラインインタビューを行いました。

α世代の情報源は、友人との会話が第一、そして第二の情報源として出てくるのはYouTubeでした。インタビューで「ほしいと思った物があるとき、それについてどうやって調べるか」を聞くと、特に気になったおもちゃやゲームの詳細は、YouTubeの実況動画をみる、と答える人がほとんどでした。

また、YouTubeの利用が日常となったことで、家庭で利用制限が必要なものは「テレビ(動画配信サービスを含む)」「ゲーム」に加え「YouTube」の3つに増えているご家庭もありました。家庭では、使用時間の制限に加えて、コンテンツ制限も行います。年齢に応じた動画のみを視聴可能に設定したり、時には保護者が動画をチェックして保護者自身が制限したりします。

制限の理由には、「勉強や習い事がおろそかになるから」ばかりでなく、際限なく新しいコンテンツが出現し続ける“おすすめ/リコメンド機能”を要因とした「時間制限が効かず、長時間視聴による視力低下」や「親が確認できないコンテンツが増え、子どもの行動を把握しきれなくなる」といった回答もあり、新たな心配事が増えている状況です。

一方で、Z世代の第一の情報源はInstagramです。そしてZ世代も第二の情報源としてYouTubeを挙げる人が多く、動画メディアが購買にも影響を与え得る主要メディアであることが分かります。X(旧Twitter)を情報収集目的で使用しているというZ世代の声も多く聞かれました。

■5400人の「利用デバイス」「コンテンツ視聴時間」を調査

利用するデバイスやコンテンツによって、得られる情報は異なります。α世代は幼少期から複数デバイスを利用できる環境にいることで、自身の興味関心に応じた情報の取捨選択や時間の使い方を、より能動的に考えて成長してきたのではないかと考えられます。私たちは、利用デバイスとコンテンツの特徴からα世代をタイプ分けし、さらなる理解を試みました。

21年1~2月に、全国の10~40歳(α世代・Z世代・ミレニアル世代)5400人を対象として、インターネット調査を行いました。「普段利用するデバイス」と「コンテンツ視聴時間」を聞き、結果からクラスター分析を実施し、4つのタイプに区分しました。それぞれのタイプについて、消費への意識として自分で買うものを自由に選択できるときの基準や学校生活への意識(普段の学校生活に関する質問や将来の希望などを含む)、勉強時間、家族との関係性など、ライフスタイルや保護者の子育てタイプを比較分析し、4つのタイプのα世代のプロフィルを作成しました。

デバイスやコンテンツとの関係はライフスタイルや情報との接点を物語っているものなので、それらが価値観などに直接的に影響を与えているとは言い切れませんが、情報経路に応じたα世代へのコミュニケーション方法を考えるうえで、役に立つ情報だと思います。

■α世代の「4つの消費クラスター」

クラスター1:テレビ番組好きっ子

全体の27%を占め、テレビ番組・録画番組の視聴時間が長いα世代です。勉強の楽しさや面白さ、自身の進路などの学校に関する意識は、クラスター間で有意差がある項目全てにおいて、最もポジティブでした。消費意識は、新商品よりも今使っている物を買う継続購入意向が高いです。海外の学校への進学意向が最も低く、保守的な性格を有していると考えられます。また、このクラスターの保護者は過度な教育指導をせず、子どもを自由にのびのびと成長させる方針が強いです。

クラスター2:テレビで動画っ子

全体の29%を占め、無料・有料ともにテレビで動画を視聴する時間が長いα世代です。使用可能なデバイス数は4クラスターの中で最も多いです。学校に関する意識はネガティブで、特に運動会など行事への参加意欲や学校に毎日通学したい気持ちが低い傾向があります。消費意識は、今使っている物を継続して買う意向が低い傾向が見られ、新商品への興味が高いと推察できます。海外の学校への進学意向が最も高く、チャレンジ精神旺盛な性格を有していると考えられます。このクラスターの保護者も、過度な教育指導をせず、子どもを自由にのびのびと成長させる方針が強いです。

クラスター3:ゲーム好きっ子

全体の12%を占め、ゲーム全般と無料・有料ともにタブレットで動画を視聴する時間が長いα世代です。学校に関する意識はネガティブで、特に授業や話し合いへの積極的な関与を好まず、授業の楽しさも感じられていないようです。加えて、学習に関する価値観を聞くと、問題を解く面白さを他クラスターに比べて感じていないことから、型にはめた学習方法を好まないと推察できます。他クラスターに比べて衝動買いする傾向が見られ、また、毎日の生活を充実させて楽しむことに力を入れたいという意識が高かったです。以上のことから、型にはまらない今を全力で楽しむ楽観的な性格を有していると考えられます。このクラスターの保護者は、様々な指導方法を試行錯誤して試す傾向が強いです。

クラスター4:将来投資っ子

全体の32%を占め、テレビ番組・動画・ゲームのいずれも視聴時間が短いα世代です。使用可能デバイス数も4クラスターの中で最も少なかったです。学校に関する意識はポジティブで、学力の高い学校を卒業することを他のクラスターよりも大切だと感じています。衝動買いをしないように意識しているなど、今よりも将来を重視する堅実な性格を有していると考えられます。保護者は、課題が終わるまで細かく教育指導する、教育熱心な傾向が強いです。

【図表2】α世代の4つの消費クラスター
出所=『新消費をつくるα世代』(日経BP)

■「好きなものに関係するもの」を選ぶ割合が最も高い

続いて、α世代の消費観について見ていきます。調査ではまず、自分で自由に選んで買い物をするときの基準について聞きました。

【図表3】買い物の基準
出所=『新消費をつくるα世代』(日経BP)

α世代は「好きなものに関係するもの」を選ぶ割合が最も高く、推し消費をうかがわせる結果でした。次いで「ほしかったが今まで買えなかったもの」「周りで人気になっているもの」の割合が高く、周囲とのコミュニケーションからほしいもの・ことに出合っている傾向が読み取れます。一方Z世代の買い物の基準は、「生活に必要なもの」が最も高く、次いで「好きなものに関係するもの」で選ぶ傾向が強いようです。「動画サイトやSNSを見てほしくなったもの」を買う傾向は、α世代よりも若干強いようです。

また、α世代が好きな物とどのように出合い、実際に買い物をしているのかを知るために、インタビュー調査を行いました。調査では、やや特別な消費(計画購買)を誘発するため、各世代の1カ月の平均小遣い金額よりも少し高めの金額を調査費用として提供し、指定した期間で買い物をしてもらいました。後日オンラインインタビューでその買い物に関する内容を聞きました。

■お気に入りやリコメンドの機能を使いこなしている

α世代は、友人との会話やYouTubeの実況動画などからほしい商品に度々出合います。しかし、大抵の商品は普段のお小遣いで買える金額ではないため、親からスマートフォンやタブレットを借りて、Amazonや楽天などのショッピングサイトから商品を探してとりあえずお気に入り登録しておきます。誕生日やテストの点数が良かったときなど、買ってもらえそうなタイミングになったらお気に入り登録しておいた商品を親に見せ、今度は親と一緒に公式ホームページやレビューサイトを確認し、最終的に購入してもらうという流れでした。ほしい物はショッピングサイトで簡単に探すことができることを理解しています。

中には、親がクレジットカードを登録しているためワンクリックで購入できる設定と知っており、金額を考慮することなく購入を進めてしまうα世代もいました。また、特筆すべきは、レコメンド機能を自然に駆使していることです。たとえほしいおもちゃの正確な商品名が分からなくとも、キーワードを打ち込んで似た商品をたどっていけば、類似品としてほしい商品がレコメンドされる可能性があることを感覚的に理解できていました。

親に教えられなくとも、小学校低学年のころから検索機能を使い始め、スマートフォンを操作してショッピングサイトにアクセスし、お気に入りやリコメンドなどの機能を軽々と使いこなしているのがα世代です。改めて、この世代のデジタル機器やサービスへの適応力の高さに驚かされます。

【図表4】消費行動の世代間比較
出所=『新消費をつくるα世代』(日経BP)

■Amazonで「恐竜」と検索し、自分でワンクリック購入

いくつか特徴的な購買行動をしていたα世代を紹介します。

ケース1:ショッピングサイトの「保存」を巧みに使う小学4年生の女の子

数カ月前にイヤリングがほしくなり母親に相談。母親はピアスしか持っていないため借りられないことが分かったので、母親のスマートフォンを借りて、楽天でイヤリングを検索しました。ほしいと思ったイヤリングをお気に入りに登録保存したものの、母親からは「買うのはちょっと待っていなさい」と言われたため、そのままお気に入りに保存しておき、買ってもらえる機会を狙っていました。今回の調査で、お気に入り登録を母親に改めて見せ、購入してもらいました。

ケース2:スマホで検索・購入まで完結する小学2年生の男の子

家族所有しているタブレットで、普段から有料動画アプリなどを自分の意志で使うことができます。今回の調査が決まり、Amazonで「恐竜」と検索し、モササウルスのフィギュアを発見。商品の詳細説明欄でサイズを見てから、自分の定規でフィギュアの大きさを確認し、ワンクリックで買える設定になっていたので自分で購入まで行いました。保護者には購入した後に報告しました。

■ゲーム実況動画は、ネタバレではなく「前準備」

また、α世代の情報源としてYouTubeが一般的になっていることにより、買い物の仕方にも変化が起きています。

ケース3:YouTubeを見てクリア方法まで確認した上で、ゲームを購入する小学4年生の男の子
小々馬敦『新消費をつくるα世代』(日経BP)
小々馬敦『新消費をつくるα世代』(日経BP)

YouTubeで流れるコマーシャルや店のおもちゃコーナー、YouTubeのゲーム実況で新作のゲームを知りました。その後YouTubeのゲーム実況でクリアまでの全過程を視聴し、だいたいのクリア方法が分かった上で、このゲームが面白いことを十分に理解したため購入しました。ネタバレという意識ではなく、最後まで面白いことが分かっているため安心して楽しめるようです。インタビューしたときには、だいたい全部をクリアしていて、「期待していた通りに面白かった」と話していました。

YouTubeでクリアまでを確認することに「ネタバレ」という意識はなく、楽しむための“前準備”のような位置付けのようです。事前に確認することで楽しさが低下することはなく、「やっぱり最後まで楽しかった」と感じているようです。まるで事前にゲームをクリアしていく様子をシミュレーションして、ゲームを分析しながらプレーすることを楽しんでいるようです。

【図表5】特徴的な購買行動をしていたα世代
出所=『新消費をつくるα世代』(日経BP)

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小々馬 敦(こごま・あつし)
産業能率大学経営学部 教授
ブランドエンジニアリング代表取締役。産業能率大学大学院総合マネジメント研究科教授。グローバルアドエージェンシーにて、FMCGブランドのマーケティング戦略支援を経てブランドコンサルティングの業界に転籍。インターブランドジャパンを経て、プロフェットの日本法人代表、マッキャングループのフューチャーブランドの代表取締役社長を歴任。近年は「日経広告研究所報」「日経クロストレンド」などに寄稿多数。

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小林 春佳(こばやし・はるか)
インテージ生活者研究センター 主任研究員
生体計測をメインとするマーケティングリサーチャー、コンサルタントを経て、2019年インテージ入社。新規事業開発やマーケティングの潮流課題の探索業務に従事。

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(産業能率大学経営学部 教授 小々馬 敦、インテージ生活者研究センター 主任研究員 小林 春佳)

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