自動車・電力・海運は買い控えがいい…円安・金利上昇で「今後も上がる&今こそ仕込み時」な最強の日本株18選
プレジデントオンライン / 2024年7月30日 6時15分
■日本株投資へのチャンス到来(武者氏)
日本経済は今まさに、本格的な回復の入り口に立っています。円安もインフレも、日本復活の明るいシグナルであり、株価の押し上げ要因です。
根拠となる背景は、米中対立による、アメリカの中国依存からの脱却という、サプライチェーン再構築と、日本株がフェアバリュー(適正価格)から過剰な割安状態にあるということです。
円安が経済成長の原動力となる流れが形成され、経済成長と株価の異常な割安という2つの追い風が吹く日本株。国内外の大口投資家は日本株の保有を意識せざるをえず、大量の資金流入も見込まれます。劇的な上昇相場と豊かな投資チャンスが目前に迫っています。
円安とインフレによる好景気を前提に、特に投資すべき業種は、「半導体・ハイテク製造業」「資産価格上昇の恩恵を受けるアセットプレー」「インフレに強いセクター」「AI分野のグローバルプレイヤー」の4つです。
■半導体関連株が特に狙い目(武者氏)
アメリカのサプライチェーン再構築により、中国や韓国、台湾に代わり、基礎的技術の圧倒的集積を持つ日本が、世界のハイテク生産拠点となります。
そして、半導体・ハイテク製造業が日本経済復活の柱となるでしょう。グローバルニッチトップを数多く擁する日本は、世界のハイテク産業を支える必要不可欠な要素の宝庫なので、半導体とその素材、装置産業は著しく潤います。半導体製造装置メーカーであれば東京エレクトロン(8035)、素材であれば信越化学工業(4063)などが例として挙げられます。また、半導体を使用するハイテク機器や、設備投資も盛り上がるでしょう。省電力対応や専用の空調が必要なデータセンターが増えれば、関連の設備工事や空調関係の産業にも需要が広がります。半導体・ハイテク製造業を起点とする経済波及効果で、素材、製品、設備に関わる幅広いセクターが狙い目となります。
別の視点ではアセットを保有する金融、不動産業界もおすすめです。日本は株だけではなく不動産も含めたあらゆる資産が割安ですので、資産価格の適正化が進めば銘柄も評価されやすくなるでしょう。特にREIT(不動産投資信託)は、金利上昇のあおりを受け低迷中の今こそ買い場。将来的には不動産価格と賃料上昇により、銀行やREITも価格回復が期待できます。
インフレによる物価上昇の恩恵を受けるセクターには、インバウンド需要が好調の百貨店やホテル業界などが挙げられます。注目株は、外国人富裕層向けの外商員を増やすなど、訪日観光客を長期の固定客にする取り組みが目立つ三越伊勢丹。一過性の海外需要ではなく継続的な売り上げ拡大に成功すれば、今後の業績が期待できます。また、食品業界も意外な売り上げの伸びを見せています。インフレにより消費者は値上げを受け入れつつあり、価格転嫁に成功していることが窺われ、投資妙味があります。
最後に挙げたいのが、AI革命の担い手となりうるグローバルプレイヤーです。AIの発展は、GAFAMを中心とするプラットフォーマーの時代から、AI活用による多様なソリューションが求められる時代へと新たな可能性を拓きつつあります。IT産業の転換期に飛躍が見込まれるAI関連企業を投資候補におさえておくべきです。
なお、NISAで買う場合では、注目すべきは大型株より中小型優良株。今までの上昇相場で出遅れ感がある小型株は、海外投資家の見直し買いが予想され、大型株よりも値上がり幅を期待できます。また、優れたファンドマネジャーが運営する中小型株投資信託を選択肢に入れることもおすすめです。
■日本株の未来は明るい(武者氏)
上昇相場ですが、上昇期待が織り込み済みの株や、円安による利益減少見込みの株は今、買い控えるべきです。
直近で好調だった鉄鋼はその一例。中国の安価な鉄鋼輸出が世界的な市況を押し下げ、業績の足枷になると予想されます。自動車も様子見したいセクターです。ハイブリッド車の再評価でトヨタが人気を集めましたが、やがてEVシフトと再び向き合うと予想されます。海運もコンテナバブルの恩恵は株価に織り込まれたと見られ、相対的な出遅れ感と割安感で買われていた電力や医薬品なども、今後はグロースへと資金が移り、上昇一服と見ています。
また、輸入依存の産業も円安の逆風により低迷が続きそうです。特に紙・パルプは輸入コスト、エネルギーコスト上昇によるコスト高と、デジタル化による紙媒体の需要減の二重苦で、苦戦を強いられるでしょう。
ただし、一時的下落トレンドの企業があっても、好景気と日本復活は既定路線。多くの日本企業は、不況を生き延びた過程で無駄を削ぎ落とし固定費を抑えており、今後は需要拡大と売上増で、採算はよくなります。短期的に落ち込むセクターはあっても、長期的に見れば日本株全体で上昇が期待できることを強調しておきます。(武者)
■投資への環境が整った(和島氏)
“円安”は、悪いことばかりではありません。そのよい例が、日本に製造業が帰ってきたこと。日本の半導体輸出産業は、空前の活況に沸いています。
「日経平均株価」も、最高値を更新しましたが、「株価はもっと上がる」と、私は予想しています。言い換えれば、株投資のチャンスなのです。政府の「新NISA」立ち上げや、東京証券取引所が「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ解消」を上場企業に促したことも、投資への後押しになっています。
この経営環境から、特に追い風となっているのは、金融業界です。銀行は、公定歩合よりも先に貸出金利が上がるので、「利ザヤ」を稼げるようになります。株価上昇で証券業界だけでなく、保険会社も運用益が急増しています。不動産会社の多くも、コロナ禍の終息による空室率低下と賃料アップで業績が上向いています。そうした回復基調のセクターの株は、狙い目と言えます。
■銘柄の見極めは収益性や成長力(和島氏)
半導体産業が活況を呈していると言いましたが、半導体製造装置メーカーも大いに潤っています。例えば、話題の「AI半導体」のウエハー切削加工機で高シェアを占めるディスコ(6146)は、絶好調です。その半面、向かい風を受けているのは、原材料を輸入に依存する業種。原油価格の影響を受けやすい化学業界、生産拠点が海外に集中している生活用品のSPA(製造小売業)には、円安で苦境に喘いでいる企業が少なくありません。
とはいえ、「株は、業種の好不況で選ぶべきではない。個別企業の収益性や成長力で見極めるべき」というのが、私の持論です。
例えば、化学業界では、三井化学(4183)やレゾナック・ホールディングス(旧昭和電工)(4004)のように、半導体材料に絞り込み、持ち直している企業もあります。「オールドビジネス」と見られる百貨店、鉄鋼メーカーでも現在、生き残っている企業は、厳しい淘汰の波にも耐えた、強靭な経営体質を備えていると言えるでしょう。特殊要因ですが、日本電信電話(9432)の株は、「1対25の株式分割」によって、約30%値下がりしました。IT関連のインフラ銘柄なので、中長期的には値上がりも期待できます。そのように、企業の個別事情を評価して、株の売買を判断する必要があります。
日本市場は縮小していますが、グローバルに事業展開し、各国の市場に適合した経営戦略で、成長を続ける日本企業も少なくありません。例えば、ユニ・チャーム(8113)は、アジアなどの新興国では、汎用の生理用品の販路を広げている一方、日本ではシニア市場の拡大に対応、「大人の紙おむつ」を投入しています。今や世界最大級の空調機器メーカーになったダイキン工業(6367)は、「インバータエアコン」の米国市場を開拓しました。
リンナイ(5947)も、タンク式給湯器が中心だった米国で、「瞬間湯沸かし器」を普及させました。ユニ・チャームは、インド事業にも成功し、現在はアフリカ市場の攻略に力を注いでいます。日立建機も、インフラの建設ラッシュに沸くインドに進出し、成果を上げています。
もっと言えば、グローバル展開しなくても、成長していればいいのです。富士フイルムホールディングス(4901)のようにデジタルカメラ、医療機器や化粧品といった具合に、ニーズに合わせてビジネスモデルを巧みに変え、生き残る企業もあります。
『会社四季報』などで業績や株価のチャートを過去3年間以上チェックし、成長している企業であれば、「株も今後、値上がりする」と見ていいでしょう。
■危ない企業を見極めるには(和島氏)
反対に、「売上高や利益が減っている」「赤字が続いている」「借入金が増えている」といった危険な兆候があれば、その企業の株は買うべきではありません。日本経済が回復しつつある現在においても、業績の好転が見られない企業は、今後の成長には期待できないでしょう。加えて、金利がある世界になった今、金利上昇が致命傷となって、借入金の支払利息が払えなくなり、倒産するといったリスクがあります。
また、株高の今、ベンチャーが多い「東証グロース市場」で、割安な成長株を探す人もいます。しかし、何年もグロース市場に止まっている企業の場合、「ボロ株」かもしれないので、注意しましょう。「成長していない企業」だからです。
ほかにも、PBRが買うべき銘柄かどうかの指標になります。東証プライムで8割以上の企業がPBR1倍割れを解消している中で、いまだに解消できていない企業は、収益力が乏しいことを示しています。
今は「トピックスコア30」の銘柄を買っておけば、「はずれがない」といった株式市況ですが、それでは妙味がありません。上場企業の中身をよく分析し、「勝ち組企業」を見つけ、ぜひ「お宝株」をゲットしてください。(和島)
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月19日号)の一部を再編集したものです。
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投資ストラテジスト、武者リサーチ代表
大和証券入社後、企業調査アナリスト、繊維、建設、不動産、自動車、電機・エレクトロニクスを担当。大和総研アメリカでチーフアナリスト、大和総研企業調査第二部長を経て、1997年ドイツ証券入社、調査部長兼チーフストラテジスト、2005年副会長に就任。09年、武者リサーチを設立。著書に『日本株の歴史的大相場が始まった!』(ワック)ほか多数。
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経済ジャーナリスト
みずほ証券、株式新聞社(現ウエルスアドバイザー)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。20年6月に独立。企業トップへの取材は1000社以上。近著に『1万円からはじめる 勝ち組銘柄投資』(かんき出版)。レギュラー出演番組にラジオNIKKEI「マーケットプレス」、東京MX「東京マーケットワイド」、日経CNBC「朝エクスプレス」など。雑誌への寄稿も多数。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。
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(投資ストラテジスト、武者リサーチ代表 武者 陵司、経済ジャーナリスト 和島 英樹 構成=野澤正毅、水嶋洋大 撮影=宇佐美雅浩(武者氏))
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