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円の暴落どころか紙くず化が始まってもおかしくない…儲けるのではなく資産防衛のため持つべき株と金融商品

プレジデントオンライン / 2024年8月3日 7時15分

■米国株も大暴落リスク大、買うなら慎重に

株式はインフレに強い資産として知られています。物価が上がると、企業が販売する商品やサービスの価格も上がります。その分、企業は儲けやすくなります。企業の業績が良くなれば、それを反映して、株価が上昇しやすくなるのです。その意味で、株式はインフレに強いのです。今後のインフレに備えて、米国株を買うのは悪くないと思います。米国株はずいぶん上がってしまいましたが、まだ上昇する余地は残っていると考えられます。

ただし、どこかで日本のバブル崩壊時のような暴落が訪れる可能性が高いです。詳しくは後述しますが、今後もアメリカが量的引き締めを続けるであろうことを考えると、しばらくは上昇してもどこかで暴落するリスクがあるのです。上昇が終わる最後まで利益を得たいと考えるのであれば、自分の哲学に応じて、いつでも撤退できるようにしながら、こわごわと買ってください。日本のバブルが崩壊する前、多くの日本人は「日経平均は8万円まで行く」「いや、10万円だ」と言っていました。いまの米国株では、そうならない冷静さが重要です。

私自身は「頭と尻尾はくれてやれ」と考えています。これは有名な相場格言で、株価の動きを魚に見立てたものです。株価が底のときに買って、天井で売ることができれば、最も利益が大きくなります。魚も頭から尻尾まで1匹丸ごと食べることができれば理想的です。ところが実際にはうまくいきません。頭も尻尾もすべて食べようとすると、うまくいかないのです。「底値で買おう」「天井で売ろう」とは思わないのがいいということです。それに、私がいまドル資産をすすめているのは、資産防衛が目的です。儲けるためではありません。

■狙い目は下がれば上がる「債券ベアファンド」

また、インフレヘッジの手段として、私は債券ベアファンドのTMV(米国20年債ベアファンド)をすすめています。これはインフレ懸念で米国の長期金利が上昇したときに儲かる商品です。「ベア」とは「熊」のことです。熊は攻撃するときに、上から下に爪を振り下ろします。その動作から相場が下がることをイメージして、下落相場をベアマーケットと呼びます。

TMVは金利が上昇して債券価格が下がるときに上昇する商品ですが、3倍のレバレッジが効いている点には注意が必要です。レバレッジとは「てこの原理」を意味します。レバレッジ3倍とは、債券価格が1下がったときに、ファンドの価格が3上がるように設計されていることを意味します。反対に債券価格が1上昇したときには、ファンドは3下落することになります。値動きが非常に大きい商品なのです。

私自身は、TMVはまだ上がると考えています。現時点では米国長期金利が経済実態に比べてまだ低く、今後も上昇する可能性があるからです。

インフレ時の対策としては、不動産、株、絵画等がいいのですが、すでに値上がりして手を出しにくい状況です。ならば、インフレで長期金利が上がることで利益の出るTMVによってインフレヘッジをしようというのが私の考えです。

■歴史的な景気後退が再来してもおかしくない

さて、日本のバブルでは、資産効果で土地と株を持っている人がお金持ちになって、お金を使いました。いまのアメリカは日本のバブル期と似ています。何かいいニュースが出ると、すぐに株が上がります。不動産価格もまだ上がり続けています。アメリカ人は株をたくさん持っていますから、株価上昇によって資産が増えて、まだまだお金を使い続けるでしょう。ですから、不景気にはならず、多くの人が思っている以上に、アメリカのインフレは長く続くと考えています。

その結果、もしかすると、1979年の「サタデー・ナイト・スペシャル」と同じような状況に陥るのではないかと私は心配しています。当時FRB議長だったポール・ボルカー氏は、急速なインフレに対処するために、マネーサプライ(通貨の供給量)を引き締めようとしました。金利を引き上げたのです。当時、アメリカの政策金利であるFF金利(フェデラル・ファンド・レート)は11%程度で、消費者物価指数(CPI)は、前年同月比プラス12%程度でした。ところがボルカー氏の政策によって、アメリカの長期金利は20%まで、短期金利は24%まで上昇したのです。

金利が急上昇したことによって、アメリカの経済はリセッション(景気後退)入りしました。その結果、失業率は6%から10%超まで跳ね上がり、ボルカーショックとも呼ばれました。ボルカー氏の政策は、79年10月6日土曜日の夜に発表されたことから、「サタデー・ナイト・スペシャル」と呼ばれているのです。ボルカー氏は景気よりもインフレ退治を優先させたために、このような状況に陥りました。当時のインフレは、お金のばらまきすぎが原因でした。いまは、そのときよりも多くのお金をばらまいていますから、同じことが起きる可能性もゼロではないと懸念しているのです。このまま株価が上昇していけば、さらに確率が高まるので、長期債を買うのは躊躇してしまう状況です。

インフレになると現金の価値は下がりますが、長期債の値段はそれ以上に下がります。そもそも金利が上昇すると債券の値段は下がります。金利が上がると、新たに発行される債券の利率が上昇するため、過去に発行された利率の低い債券は、人気がなくなるからです。その影響は短期債よりも長期債のほうが大きく受けます。たとえば、金利が1%上昇したとき、値が大きく下がるのは、短期債よりも長期債です。長期債は満期までの期間が長いため、金利上昇の影響が長く続くからだと理解するといいでしょう。

円安になって為替差益が得られたとしても、米ドルでの元本に大きな損失が出ては意味がありません。長期債はいずれ損をする可能性があるのですから、避けたほうがいいと私は考えています。

■どうしても日本株なら輸出産業が狙い所

日本株はどうでしょうか。保険目的で米ドルを買って、「残りの円資産は日本株で持っていてもいいのか」と考える人もいるでしょう。Xデイが来れば、日本の株価も暴落すると思います。ただし、その後にインフレが加速すれば、株価も大幅に上昇するでしょう。

問題は、Xデイでその企業が破綻しないかです。倒産してしまえば株は紙くずです。その後に相場が回復しても戻ってはきません。過去には、誰もが破綻するとは思っていなかった、日本航空や東京電力が一度は実質的に破綻しました。大企業であっても安心はできません。もし日本株を保有するのであれば、Xデイを乗り切ることができるかを判断材料にしましょう。

一般論ですが、輸出産業は生き延びる可能性が高いでしょう。商品を海外に売って、外貨を得ることができるからです。輸入品と競合する商品をつくっている会社も有望です。たとえば国内農産物を生産している会社です。円が暴落すると、輸入品の値段は高騰します。同じ農産物を国内でつくっている会社は、生き延びる可能性が高いと思います。

ただし、輸入品と競合する分野でも、たとえば高級メロン等のぜいたく品をつくっている会社は危ないと思います。円が暴落すれば買う人は激減すると考えられるからです。

最大のポイントは、経営者の姿勢です。日本の財政状態をしっかり認識して、外貨建ての資産を購入したり、外国に進出しドル収入を得たり、外資系企業を買収するなど、Xデイに備えた対策を講じているかどうかです。Xデイで多くの会社が破綻すれば、生き残った会社の株価はハイパーインフレで急伸すると考えられます。

もしあなたがお金持ちになるために日本株を買っているとすれば、考え方を変える必要があるかもしれません。私は20年以上前から、「金持ちになりたかったら、強い国のリスク資産(株や土地)を買え」と主張してきました。私の著作を読んで、この考え方に賛同して米国株などを買った人は、これまでに資産を大きく増やしたと思います。ただ、私は「日本にXデイが来たら、米国株も相当な下押し」があると考えています。

アメリカは今後も強い国であり続けるでしょう。GAFAMの幹部を見てもわかりますが、アメリカには世界中から天才が集まってきます。お金持ちになりたいと考えるなら日本株よりも米国株だと思いますが、いまは儲けるときではありません。

【図表】日本株は大バクチ! おすすめ投資対象

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月19日号)の一部を再編集したものです。

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藤巻 健史(ふじまき・たけし)
フジマキ・ジャパン代表取締役
1950年東京生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。80年に行費留学にてMBAを取得(米ノースウエスタン大学大学院・ケロッグスクール)。85年米モルガン銀行入行。当時、東京市場唯一の外銀日本人支店長に就任。2000年に同行退行後。1999年より2012年まで一橋大学経済学部で、02年より09年まで早稲田大学大学院商学研究科で非常勤講師。日本金融学会所属。現在(株)フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。2013年から19年までは参議院議員を務めた。2020年11月、旭日中受賞受章。

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(フジマキ・ジャパン代表取締役 藤巻 健史 構成=向山 勇 図版作成=大橋 昭一)

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