凡人は「お金を増やすだけの投資」に終始する…超一流の天才が違いを見せる"お金の驚きの使い方"
プレジデントオンライン / 2024年7月16日 15時15分
※本稿は、松浪宏二『超一流の凡人力』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■自分のためだけになるお金の使い方は「死に金」の一つ
お金への考え方も、天才と凡人では大きな違いがあります。
会社に最終利益が潤沢に残った年に「ベストな利益の使い道は何か」を幹部社員で話し合ったことがあります。私は金融業界で長年働いていたこともあり、また、資産運用は一般的な使い方であることから、「投資」を提案しました。会社のためにも、この機会に資産運用に力を入れるのは大切だと考えたからです。
しかし、会社としての判断は違いました。
「今よりお金が欲しいわけではない。生きたお金の使い方をしたほうが良い」ということになったのです。
金融や投資の世界では「生き金」「死に金」という言葉があります。「生き金」は新たな価値を生み出すものを指し、「死に金」は一時の欲望は満たしてくれるかもしれないが未来につながらない、一過性のものを指します。そして、金融業界から見たら投資に回すことは「生き金」で、ポジティブな意味合いを持つのです。
天才にとって、お金を増やすためだけの投資は「死に金」。そして、天才にとっての「生き金」は、お金そのものの価値ではなく、人のために使うお金のことを指します。
事実、創業社長として一代で会社を大きくしたにもかかわらず、自分だけの食事の際には私たちと同じようなリーズナブルな飲食店に行く社長の姿を、何度も目にしました。自分自身には、驚くほどお金をかけないのです。
自分のためだけになるお金の使い方は、特に意味がない「死に金」の一つだからでしょう。だから、資産を増やしたり守ったりするだけの運用には意味がないと考えているのです。
それよりも、「どう使えば周りの人が幸せになるのだろう。良いことが起こるのだろう。未来につながるのだろう」という観点を、常に大切にしているように思います。
ですから、投資すべてが「死に金」というわけではありません。「未来のため」や「人のため」の投資は「生き金」と考えます。
■「応援したい」対象には、一切お金を惜しまない
例えば、頑張っている人への投資は「生き金」です。
弊社では一定の評価制度を設け、その項目に基づいて毎月の総会で社員を表彰する制度があります。「特別賞」「エール賞」「過去最高更新賞」「改善賞」など、できるだけ多くの社員を表彰できるように項目を細分化し、皆がお互いに頑張りを認められる流れを作っています。
そして、給与にインセンティブをプラスして支払うことで、モチベーションにつなげているのです。なかでも「社長賞」は、社長自らが感謝を伝えたい人を選びます。
私自身、過去に三回受賞したことで、より一層「頼りにされているのだ」という気持ちが強まり、「もっと会社のために貢献しよう」と気を引き締めたものです。
また、未来への種まきとしての投資も「生き金」です。
例えば私たちは、視覚障害者のためのアプリを提供している企業に協賛しています。
この企業が成長したらリターンが返ってくるだろうなどという気持ちは一切なく、目が見えなくても不自由なく、どこにでも移動できる社会の実現を目指す考えに、純粋に心から共感しているからです。
![お金持ちに扮した少年](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/e/1200wm/img_6edd9244e7ec3dd2d5aaa0b8861dd998403488.jpg)
お金を増やすためではなく「目指す未来が自分たちと似ている」とか「応援したい」といった気持ちからくる投資には、このように一切惜しまないのも天才の特徴だと思います。
天才は、お金をただ持っているだけでは何も生み出さないことを知っています。だから、投資に回してお金を増やすことに力を入れるよりも、使うことで何かを生み出すことを重要視します。「せっかくだから大事に取っておかなければ」なんて考えないのです。
■天才の意見は「朝令暮改」
朝令暮改とは、命令や法令、方針などが一貫せずに、朝に言ったことが夕方には改められ、定まらないこと。
本来の「朝令暮改」は、一般的にはネガティブな意味合いを持っています。「社長は方針がころころと変わるから、そのたびに現場が振り回されて困ってしまう」という嘆きの声を聞いたことが、私もあります。
たしかに、朝に「この案件はAで進めてほしい」と指示をされた通りに動いていたのに、夕方になって「Bにしよう」と言われたら、困る人も多いでしょう。
しかしビジネスは生きもので、状況は刻一刻と変わります。真剣に考え続けていればいるほど、思考は進化していくものです。
社会情勢も何もかも、状況は目まぐるしく変転し、もはや誰にも予測できないことが日々起きています。時代や潮流に乗っているだけでは生き残れないと言っても過言ではありません。
つまり、朝令暮改にならないよう「一度決めた方針だから変えるわけにはいかない」と頑なに守り続ける姿勢よりも、臨機応変に、柔軟に対応し、行動できる姿勢のほうが求められているのではないでしょうか。
■仕組みのなかで戦うか、見えてないものを追い求めるか
私が15年勤めた金融会社は、良くも悪くもわかりやすい大企業であったため、会社としての仕組みができあがっていました。「決められたことを、決められた期間に、決められたやり方でやりきる」ことで成果が上がる土台とルールがあったのです。
私も、そのような仕組みの中で努力をし、20代で課長職を拝命し、約150人の部下のマネジメントなどを経験してきました。ゆえに、ルールがあることの大切さも深く理解しています。
しかし、今はそのような“大企業”が、時代の変化についていけずに業績を落としたり大きな課題にぶつかったりしている状況です。
もちろん、大企業の社長や取締役、役員の方々も優秀なビジネスマンであることに間違いありません。ある程度できあがった仕組みやルールの中でスピーディーに最大の成果を上げていることを、私もよく知っています。
ただ、「仕組みもルールもない、まったく新しいこと」に挑戦する際には、天才の感覚に敵うものはないと思っています。天才の感覚とは、極端な言い方になってしまいますが「私たちには見えていないものが見えている」という感覚です。
■天才の見ている景色を理解しようと考えられるか
約束されたことがない、何が起こるかわからない「新しいビジネス」の世界において、私たちに見えているのがせいぜい1km先だとしたら、天才は10km、100km先まで見えているのです。
いえ、「見えている」というよりは「常により遠くを見ようとしている」と言ったほうが正しいでしょうか。その結果、人より先に、一手、十手、百手先が予測でき、行動に移せるのだと考えています。
それなのに、ビジネスにおいて朝令暮改を良しとしない風潮がなかなかなくならないのは、なぜなのか。そこにはおそらく「ルールで動くことが前提なのに、そのルールを変えられた」という気持ちが、普通であれば条件反射的に生まれてしまうからでしょう。
![松浪宏二『超一流の凡人力』(クロスメディア・パブリッシング)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/6/1200wm/img_7640349cc6e8bd4c8a5c1ab1f76a48f5169925.jpg)
しかし、天才はそもそもビジネスで一定以上の成果を出している人です。そして、あなたは少なからず「超一流の凡人になりたい」「この人に認められて、成果を出したい」「この人についていき、同じ景色が見たい」「この人の役に立ち、共に喜びを分かち合いたい」と思っているはずです。
それであれば、一般的に「朝令暮改」と思われるようなシーンに遭遇したとしても「朝と言っていることが変わった。この数時間の間に、どんな情報に触れ、どんな思考を巡らせたのだろう」と、天才の見ている景色や感じていること、ロジックを理解しようと考え、動いていくことが大切なのではないでしょうか。
それが、天才の伴走者としてのあるべき姿であり、一流の凡人だと思うのです。
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株式会社わかさ生活 執行役員専務
大阪府箕面市出身。高校卒業後、一部上場の金融会社に入社。優秀な営業成績をおさめ24歳で営業・管理部門の管理職に抜擢される。2010年、株式会社わかさ生活に入社。社長の⻆谷建耀知という創業経営者であり“天才”と出逢い、仕事観が大きく変わる。以降、自らを「社長付け」と名乗り、可能な限り共に行動し、前例がなくとも求められれば素直にがむしゃらに取り組むことで社長の伴走者として活躍。2023年より同社で執行役員専務を務める。
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(株式会社わかさ生活 執行役員専務 松浪 宏二)
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