なぜ超一流は天才的なアイデアが次々出てくるのか…その思考様式をインストールする"たった1つ"の方法
プレジデントオンライン / 2024年7月17日 15時15分
※本稿は、松浪宏二『超一流の凡人力』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■常に本質が見えているから、感性で即断即決できる
天才は、基本的に「即断即決」で物事を決めていきます。
それができるのは感性で動いているからだと私は分析しています。
ビジネスシーンでは、何かアクションを起こす際に周囲の納得が得られるように論理的に語ることを評価される傾向にあります。
会議の場で「理由はないけど、絶対にこっちの案がいいと思います」と言われるより「過去5年のデータを解析したところ、このような結果になったためです」と言われたほうが、判断がしやすいので無理もないでしょう。
しかし、天才は「自分がいいと思うかどうか」で動きます。だからこそ即断即決ができるのです。感性とは、感覚的・直感的に物事を感じ取り、自分の内側から出てくるアイデアのこと。
しかし、これを「なんとなくの直感、思いつき」と捉えてしまうのは避けたいところです。
本書で“天才”と表現をしているのは、決して自由に思いつきで動いている人ではありません。しっかりと実績を残している人を指しています。そしてそんな天才たちは、根本的に自らの内側から「やりたいこと」が湧き出ているように見受けられます。
多くの人が「論理的に考えないと」と、周辺情報にとらわれている間も、元々の「やりたいこと」がはっきりしているので、常に本質が見えているのです。
そして、そこに至るまでには私たちの見えないところで、目にも留まらぬ速さで、思考を繰り返しているはずです。
■「バルミューダ」が市場調査を絶対にしない理由
周りには「思いつきですぐ決める」というように映ることがありますが、それは一部分しか見ていない、いわばただの凡人の意見。
目に見える天才の言動の背景には、その何十倍、何百倍もの思考が常に動いていて、それが感性を養うことにつながっているのだと思います。
超一流の凡人を目指すのなら、まずは天才が「やりたい」と言ったことに対し「きっと、この先に何かが見えているに違いない」と信じ、ぜひ最後までやりとげてみてください。振り返ると「こんな山を登ってきたのか」と感動できる瞬間が、必ず訪れます。
少し余談になりますが、成熟市場と言われている家電業界において目覚ましい成長を遂げた「バルミューダ」は、市場調査をしないことをモットーにしているそうです。
通常、商品開発をする際には入念に市場を分析した上でヒットしそうな製品を予測します。
ところが、バルミューダは「自分たちが世に出したいもの」を中心に考えているといいます。
まさに、論理よりも感性で動いて結果を出している良い例だと思います。
そもそも、人間は理性よりも感情で動く生きものです。「論理的に考えなければ」と思えば思うほど、つまらない慣例をなぞる、通り一遍のアイデアしか出てきません。
これでは凡人の思考を抜け出せないまま。天才は、感性で動く。常識はさておき、自分がやりたいことに真剣に取り組むのです。
その姿は、まさにアーティストのようでもあります。
■ニュース番組は毎日録画で倍速、YouTubeは新幹線の移動中に
私はあるときから「役職も何もいりません。私は社長“付《ヅケ》”ですから」と、可能な限り社長の近くにいるようになりました。天才がどんな情報に触れ、どんなことを考え、どう解釈し、未来を描くのか。それを深く知りたいと思ったからです。
天才は常にインプットをしています。
![地下でスマートフォンを使用する若い男](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/2/1200wm/img_72cd0159f9dcfb7979611043b6432a62395179.jpg)
例えば、「ニュース番組は毎日録画をして倍速で見ている」とさらりと話し「YouTubeにハマっていて、新幹線の移動中はよく観ている」といろいろな人に楽しそうに伝えます。
さらに「最近、縦読みのスマホ用マンガが伸びているらしいね」など、普段の会話の中で頻繁にトレンドに注目した発言が出てきます。
また、気になった本があればすぐにメモを取り、秘書に「この本を買っておいてほしい」と頼んでいる姿もよく見ます。何にでも好奇心を持って先入観なく飛び込めるところは、天才性を感じさせる一つの側面です。
メモを取るのは本についてだけではありません。寝ていても、新幹線の中でも、音楽を聴いているときでも、どんなときでもアイデアが浮かんだら、LINEにメモを残しています。
そして、関連する情報がないかを調べてつながりを見つけたら、すぐに社内で共有してくれます。実際にそれがベースとなって動き出したプロジェクトがいくつもあります。
■特別なことをしている感覚が本人にはまるでない
政治経済のニュースはもちろん、ドラマやアニメなどのエンタメ情報にも詳しく、世の中のトレンドを敏感にキャッチしているのも天才の特徴です。
どんなときでも知的好奇心を満たすために貪欲な姿勢には、本当に驚かされます。きっと、社内の誰よりも世の中のトレンドに触れているのではないかとさえ思います。
しかし、天才本人は「勉強をしている」とはまったく思っていません。
これらすべては、日常の中の一コマにしか過ぎず、特別なことをしている感覚が本人にはまるでないのです。だから「寝る間を惜しんで勉強をしている」なんて気持ちは一ミリもありません。
ただ、自分が気になること・やりたいことを貪欲に楽しんでいるだけなのだと思います。きっと「勉強家ですね」なんて声をかけたら、きょとんとされるでしょう。
それは、天才の多くが根っからの「マーケター体質」だからなのかもしれません。
⻆谷も「自分は社長業よりもマーケティングが好きなんだ」とよく言っています。つまり、読書もニュースもエンタメも、すべては勉強ではなく、アイデアの源泉として楽しんで体に吸収しているのです。
以前、⻆谷のポケットからDiorのリップが出てきたことがありました。今や男性もメイクをする時代ではあるものの、本人はメイクに興味はありません。一体なぜだろうと思っていると「若い子に人気と聞くから、どんなものか知りたくて買ってみたんだ」と言うのです。
私は思わず感嘆の声を上げてしまいました。
たしかに、Diorはかつて富裕層の間で人気のハイブランドでした。しかし、ここ数年で一気に20代前半の女性客から圧倒的な支持を得ています。
おそらくその理由を知りたくて、ただ調べるだけではなく自らも体験してみようと思ったのでしょう。
■天才が見ている世界の輪郭を捉えるために
多くの人はそこまで行動できないのではないでしょうか。「おじさんがDiorを買いに行くなんて……」と、無駄な羞恥心が邪魔をして、気にはなっても行動にはなかなか移せない。でも、天才はそれができる。
![松浪宏二『超一流の凡人力』(クロスメディア・パブリッシング)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/6/1200wm/img_7640349cc6e8bd4c8a5c1ab1f76a48f5169925.jpg)
何よりも自分の知識欲を満たしたいからです。
このように、天才は発想力と行動力が違います。私たちはまずその「行動」を見て驚き、その後「なんでそんなことをしたのか?」と聞いて出てくる答えの「発想」に、さらに驚くのです。
それを「突拍子もないアイデアが出てくるなあ。すごいなあ」という浅い理解に留めるのではなく「なぜこんなことを思いつくのだろう。それは何につながっているんだろう」と考え、自分に問い続けてみてください。
そうすると、天才が見ている世界の輪郭が少しずつはっきりしてくるはずです。
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株式会社わかさ生活 執行役員専務
大阪府箕面市出身。高校卒業後、一部上場の金融会社に入社。優秀な営業成績をおさめ24歳で営業・管理部門の管理職に抜擢される。2010年、株式会社わかさ生活に入社。社長の⻆谷建耀知という創業経営者であり“天才”と出逢い、仕事観が大きく変わる。以降、自らを「社長付け」と名乗り、可能な限り共に行動し、前例がなくとも求められれば素直にがむしゃらに取り組むことで社長の伴走者として活躍。2023年より同社で執行役員専務を務める。
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(株式会社わかさ生活 執行役員専務 松浪 宏二)
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