面接時に「君は秘書なんか向いているかもね」…履歴書は一切見ず人間の本質を見抜く"超一流の観察力の正体"
プレジデントオンライン / 2024年7月18日 15時15分
※本稿は、松浪宏二『超一流の凡人力』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■なぜ「スピードが命」で行動できるのか
思い立ったら、即行動。
何度も会議を重ねて走り出しが遅れるくらいなら、完成形でなくともまずは迅速な第一歩を踏み出すことをモットーにする。これも天才ならではです。
とにかく「できることから始めたらいいじゃないか」と考えている。だから、時間のロスがありません。
「計画的に進めないと失敗したときにどうするのか」という声が聞こえてきそうですが、即断即決の天才は「失敗しそうだから今回は撤退しよう」と決めるのも、非常にスピーディーです。
そのため、重症になる前にリカバリーができるので大きな事故につながることはゼロに近い。
もし何らかのアクシデントが起きたときに「撤退するか、このまま進めるか」を会議で決めていたら、その間に事態はさらに悪い方向に行ってしまうかもしれないでしょうから、天才のスピード感が、いかに重要かがわかります。
なぜそこまでスピードを意識するのかと言えば、「機会損失」を何より恐れているからです。「何かをしたい」と思ったその瞬間に動かなければ、チャンスを逃すということを、肌で知っているからです。
2023年9月、世界的に有名な歌手ジャスティン・ビーバーが、弊社の公式キャラクターのぬいぐるみを購入してくださったことをきっかけに、「わかさ生活」は大きな注目を集めました。
特に、ありがたくもそれまで購買層ではなかった若い世代にも存在を知っていただけるようになりました。この機会を逃すわけにはいきません。
その出来事から間もなく、東京の表参道に、ブルブルくんグッズがメインのポップアップストアを開くことを決めました。
場所は駅のすぐ近くで、なかなかの賃料です。しかし、天才には目先の金額ではなく、さらにその先の、ポップアップストアによって広がる可能性が見えていたのでしょう。交渉の末、12月の一カ月限定で場所を貸してもらえることになりました。
■平等な「時間」の上手な使い方を知っている
この話を聞いたとき、私は心から「これぞ天才の発想だ」と感銘を受けたものです。
12月といえばクリスマスシーズンで、いつもよりもさらに表参道が賑わう時期。こんなに良い条件に恵まれたのも、スピーディーな判断があったからに違いありません。
こうして、9月にわかさ生活が話題になってから約三カ月後の12月15日、ポップアップストアがオープンしたのです。
単に弊社製品を販売するのではなく、キャラクターグッズを始め、クレーンゲームやカプセルトイを設置して、子どもから大人まで幅広い年齢の方が楽しめる空間には、期待通り「初めてわかさ生活を知った」という方がたくさん訪れてくれました。
「ジャスティン・ビーバーとおそろいのぬいぐるみ」として、SNSに写真をアップしてくれる人も多数見られました。
もしここで「賃料をもっと安くする交渉をしましょう」とか「表参道以外にもあたってみましょう」「前期の売上に対してここに予算を投じるのはちょっと冒険しすぎでは……」なんて会議に会議を重ねていたら、この効果は得られなかったはずです。
すると、ポップアップストアをオープンさせるという経験はおろか、今後得られたはずの知名度や利益も手に入れられなかったかもしれません。
お金や名誉は挽回できる機会があっても、時間だけは何をどうやったって取り戻せません。
「やらなければならない」と思った瞬間に行動に移さなければ、大きなデメリットにつながることを、天才は肌で感じているのです。誰しもに与えられた平等な「時間」を、上手に使えるか否か。これも、天才と凡人を分けるものだと思います。
■本当にそうなのか、別の見方はないのか
常識を疑う。
この思考は、天才に共通するものではないかと思います。
弊社で開発したプロテインを社員に知ってもらうために何ができるかと話し合っていたときのこと。一人の幹部社員は「プロテインの効果や効能について、勉強会を開くのはどうか」と提案しました。
すると、⻆谷は「もっと面白い取り組みがあるはずだよ」と言います。
しかし幹部社員は「面白い取り組み……」と頭を抱えたきり、良い提案が浮かびません。そんな様子を見て、⻆谷はニコニコと楽しそうに笑いながら、「例えば、プロテインを使ってホットケーキを作る大会を全社員でやってみるのはどうだろう。商品を実際に試してみて体験しないことには、良さはわからないはずだから」と、言ったのです。
恥ずかしながら、私も「勉強会」くらいしか思いつきませんでした。商品を知ってもらうには学んでもらうことが第一だという常識が、頭の中から消えていなかったのです。
また、日本人は空気を読むのが上手だと言われますが、それゆえに大勢の意見に流されがちです。
本当にそうなのか? 別の見方はないのか?
そんな視点を持って常に物事に向き合えるのも、天才ならではの生き方。だからこそ、常識を超えた発想が出てくるのでしょう。
■自分の中でのごく当たり前を貫いているだけ
また、この発想に驚いたもう一つの理由に、自然と全社員を楽しいことに巻き込み、自分事として受け止められるようにしている点があります。
「新商品について勉強会をやるから全員参加してください」と言われたところで、喜ぶ社員はごくわずかでしょう。
いえ、ゼロと言ってもいいかもしれません。強制参加をしなければいけないような雰囲気が出ているだけで、気乗りしなくなる人もいるはずです。
しかし「新商品を使ったホットケーキ大会を開催します」と言われたらどうでしょうか。「なんだそれ? 面白そう」「料理は得意だから腕の見せ所だ!」など、途端にワクワクし、どんなホットケーキを作ったら良いのかを考えるために、おのずと新商品のことを知ろうとするのではないでしょうか。
このように、常識にとらわれないアイデアをいくつも生み出しながら、ごく自然に周りを巻き込めるのも、天才ならではだと私は考えています。
こうした提案を「突拍子もない」とか「ユニーク」などと表現する人もいますが、天才は、自分の中でのごく当たり前を貫いているだけ。常に考え続けているだけなのです。
だから、常識も流行のように驚くべき速さで入れ替わります。天才に伴走する凡人になるためには、常識にとらわれている暇なんてないのです。
■履歴書には目を通さず、適材適所の人事をする
面接時、私は志望動機や経歴についてさほど聞かれませんでした。それどころか、履歴書に目を通している様子すらなかったように思います。
後でわかったことですが、それは私だったからというわけではなく、誰に対しても同じようにしていました。
履歴書を渡されてもすぐに横に避け、相手との対話を楽しみます。何も知らない人からしたら履歴書を見てもらえない=興味を持ってもらえないと受け取ってしまうかもしれませんが、天才は対話によって、その人の本質を見抜こうとしています。
だから、どれだけ履歴書に志望動機や特技などが書かれていても、関係がないのです。
それがどんな技なのか、私はいまだに言語化ができずにいるのですが、例えば会話の中で何度も使っている言葉や、目の動きなどをじっくりと観察している姿をよく見ます。
すると「この人は、大丈夫ですと言っているときほど不安そうだ」とか「『でも』という言葉をたくさん使っているから、自分の判断に自信がないんだろう」といったことが、次第に読み取れるようになるのでしょう。
そして、それなら……と、その人に合った仕事に挑戦させてみる。こうして、弊社の社員たちはチャレンジの機会に恵まれ、日々さまざまな業務にあたっています。
なかには「まさか自分がこんな仕事をしているなんて」と言う人もいるでしょうが、それが、驚くほどに適材適所なのです。
■天才が「秘書に向いている」と言った理由
振り返ると、私は面接時にこのようなことを言われました。
「君を採用するかどうかは僕が決めることではないんだけど、もし採用されたら秘書なんか向いているかもね。縁があったら、よろしくね」
秘書なんて、自分の人生とは無関係の仕事だと思っていたので、ポカンとしてしまったことを覚えています。
結局、最初はマーケティング部のマネージャーとして採用されたわけですが、それからすぐに⻆谷にくっついて回るようになり、今に至ります。
なぜあのとき私に「秘書に向いている」と言ったのか、実はまだ聞いたことがありません。でも、私の何らかのクセを見抜いて、そう言ってくれたのは確かです。
履歴書に書いてある通りの人なんてほとんどいないことを、天才は知っているのです。
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株式会社わかさ生活 執行役員専務
大阪府箕面市出身。高校卒業後、一部上場の金融会社に入社。優秀な営業成績をおさめ24歳で営業・管理部門の管理職に抜擢される。2010年、株式会社わかさ生活に入社。社長の⻆谷建耀知という創業経営者であり“天才”と出逢い、仕事観が大きく変わる。以降、自らを「社長付け」と名乗り、可能な限り共に行動し、前例がなくとも求められれば素直にがむしゃらに取り組むことで社長の伴走者として活躍。2023年より同社で執行役員専務を務める。
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(株式会社わかさ生活 執行役員専務 松浪 宏二)
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