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「これがある人はメンタル不調になりにくい」外資系産業医は知っている"ハードな職場でも元気な人"の共通点

プレジデントオンライン / 2024年8月1日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chinnapong

仕事が忙しくても元気な人は何が違うのか。外資系企業を中心に年間1000人以上の社員と面談を行う産業医の武神健之さんは「趣味がある人は、ない人よりもメンタル不調になりにくい。タフな仕事をしていても趣味を継続できる人はいる。趣味がない人は、1つでいいから新しいことにトライしてみてほしい」という――。

■週3回は筋トレのためジムへ→帰宅後即爆睡

こんにちは。産業医の武神です。私は10年以上の産業医面談経験で1万人以上の働く人たちと面談をしてきました。その経験から断言できるのは、趣味(好きなこと)がある人は、ない人よりもメンタル不調になりにくいということです。

今日は、タフで忙しい仕事をしていても趣味を継続できる人について、考えてみたいと思います。

私のクライエントで最もハードワークな人たちは、単に労働時間が長いだけではなく、人や数字、レイオフのプレッシャーも強い環境で働いています。以前、そこで10年以上活躍してきたAさんに、私は「どうやったらこの職場で10年も持つのか?」と聞いたことがありました。

Aさんは、あまり考えたことはないけれど、平日も週3回は趣味の筋トレのために必ずジムに行くようにしていると答えてくれました。さらに聞いてみると、Aさんの加入しているジムは24時に閉店のため、23時までには入店しないといけない。そのために22時半には必ず退社している。筋トレ中は仕事のことなんて一切考える余裕はない。筋トレ後は疲れ果てて帰宅後即爆睡とのことでした。コロナ後リモートワークが普及しても、疲れ過ぎているため夜に家からログインして仕事することはないとのことでした。

趣味の筋トレに対する情熱と、仕事の後でもジムに行こうと思える気力と体力。Aさんがタフで忙しい環境でも働き続けられるのは、そういう部分が大きいと感じました。

■「週末のドライブ」がちょうどいい気分転換に

違うパターンですが、趣味が仕事のモチベーションになっている人もいました。

別の会社でタフに忙しく働くBさんの趣味は宝塚鑑賞でした。1年間に120回公演をみるというBさんは、自分の趣味はお金がかかる。そのお金をしっかり稼ぐために仕事がある。どんなに忙しくても、ストレスを感じることがあっても、全ては自分の趣味のためだから仕事は続けられると、以前産業医面談で教えてくれました。

Bさん以外にも、趣味のオペラやダンス、乗馬やゴルフを続けるために、忙しくてハードな仕事でも、経済的理由をモチベーションの1つとしている人たちを私は知っています。

一方、AさんやBさんのように趣味に熱い情熱をかけていなくても、趣味が仕事の息抜きに上手に役立っている人もいました。

日本に来て2年目の外国人社員Cさんは、週末のドライブが趣味でいい気分転換になっていると産業医面談で教えてくれました。平日の気分転換はどうしているのか聞くと、平日はGoogleマップのストリートビューで、ドライブしたい道をチェックしバーチャルに走っている、毎晩やっているがあっという間に20~30分たってしまうと楽しそうに教えてくれました。

■子供の誕生で気分転換の時間が消えてしまった男性

趣味と仕事の関係は、趣味があるからタフで忙しい仕事でも頑張れる人、趣味のためにタフで忙しい仕事を頑張る人、趣味が息抜きや気分転換となり仕事を頑張れる人などいろいろあるようです。

反対に、メンタル不調で休職した人たちに趣味について聞いてみると、趣味はないとか、趣味を半年以上やっていないという返事が即返ってくることが多くあります。

Dさんは1年前にお子様が生まれた結婚3年目の男性でした。数年前、職場に特にストレスに感じるほどのものはない、結婚して子供も生まれ幸せなはずなのに、なぜか気分がすぐれない日が続くと、産業医面談に来られました。

いろいろ聞いてみると、子供が生まれてから趣味のトライアスロンの練習が全くできなくなり、その時間はすべて家事と育児に変わってしまったため、生活の中から気分転換がなくなってしまったことが不調の原因と思われました。Dさんは、奥様とよく相談し、お互いに月に1~2回は1人の自由時間を設けることにしました。その結果、半年後には元通り元気になりました。トライアスロン大会には参加しなくなったが、それぞれの種目を自分の時間に合わせてやることで、いい気分転換ができていると最後の面談では語ってくれました。

サイクリング
写真=iStock.com/Pavel1964
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pavel1964

■平日と休日で趣味を「使い分ける」人も

私は産業医として、多くの働く人たちと面談をする中で、タフで忙しい仕事をしていても、趣味を継続できている人たちには3つの共通点があることがわかってきました。

1つめは、継続してやりたくなる趣味があり、仕事だけでなくその趣味への情熱(気力)や体力を持っていることです。場合によっては、趣味を継続するための経済力もここに含まれていると思います。先ほどのAさん、Bさんに該当します。

2つめは、費やせる時間に合った趣味を持っていることです。多くの働く人にとって、仕事以外の時間は限られています。この限られた時間にできる趣味を持っていることも、趣味を継続できる大切な要因でしょう。

Cさんのように趣味は1つだが、費やせる時間によって楽しみ方が異なる人もいますし、他に休日のゴルフと平日の打ちっぱなしという趣味の人もこれに該当するでしょう。

また、複数の趣味を使い分けている人もいます。平日は帰宅後の時間に合わせてジムに行ったり走ったり、家で楽器やゲームで気分転換し、週末は日帰り登山やアウトドア(キャンプや釣り)、長めの休みがとれた時は旅行などをして過ごしている人はこの典型例だと思います。

■忙しいからこそ空き時間を効率的に使っている

3つめは、その趣味をやることができる、そして継続可能な環境を保(たも)てているかです。

これには、自分で整える環境、周囲からの理解という環境、そして経済的な環境などが含まれます。Dさんは典型的な例でしょうが、Aさんのジム通いを続けている点、Bさんの趣味継続のための経済力を保っている点もこれに該当すると思います。

趣味があるからこそ仕事を頑張れると言っても、趣味の時間を死守するために頑張れる、趣味のお金を稼ぐために頑張れる、費やせる時間に合わせて柔軟に趣味をかえるなど、その内容はさまざまです。

共通しているのは、このような人たちは、仕事で忙しく時間がないからこそ、空いている時間を効率よく使っています。

シーズン中は毎月どこかでトライアスロン大会に出ている人、普通の人が1泊する登山を日帰りでこなして翌日仕事している人、推し活の遠征に行くために新幹線の中でも仕事をする人、さまざまなエネルギッシュな趣味人を私は見てきました。

ハイキング
写真=iStock.com/taka4332
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

■共通点はタイムマネジメントが上手なこと

彼・彼女らのように忙しいのに趣味ができる人は、時間や仕事のマネジメントが上手な人と周囲からは見えるようです。実際、そのタイムマネジメントスキルやみなぎるエネルギー(気力体力)が仕事に生かされている人もいるでしょう。

しかし多くの場合当人には、時間を上手にマネジメントしているという意識は少なく、単に、仕事以外の好きなことに時間をさくために、無駄な時間を過ごしてはいないのだと思います。別の言い方をすれば、自分の時間を能動的に自分でコントロールしているのでしょう。コントロールできるからこそ仕事ができるのか、仕事ができるから時間を能動的に自分でコントロールできているのかは、鶏と卵の関係と同じで、両方あると思います。そして、自分の時間をコントロールしているから、周りからは無駄な時間がなくマネジメント上手と見えるのかもしれません。

忙しい中でも趣味を継続できているのは、エネルギー(気力体力)に溢(あふ)れ、マネジメント能力に長(た)けている人ばかりではありません。

週2回の趣味の日は絶対に残業はしない人、趣味のために夜の付き合いにNoと言える人、シーズンスポーツ(スキーやサーフィン)のために季節によって働き方を臨機応変に調整している人たちなど、普通の働く人でも、情熱を向けられる趣味があれば、趣味を仕事よりも優先しています。

■「帰宅後何もする気が起きない人」ほど趣味を探してほしい

もちろん、私は忙しいから趣味を犠牲にして働いている人たちもいることも知っています。では、忙しいからこそ、しんどくて帰宅後何もする気が起こらない人はどうすればいいのでしょうか。

そんな人はまずは、趣味を見つけてください。平日にできる趣味、週末の趣味、もっと長く休めるときの趣味など、自分が費やすことができる時間に合った趣味を見つけられるといいと思います。

趣味をしている間は仕事やプライベートのしがらみを忘れることができます。趣味の時間は気分転換になります。趣味をした後は気分がいいです。食事もおいしいですし、よく眠れます。趣味をすることにはメリットしかありません。だからこそ、自分の時間に合わせてできる趣味を見つけましょう。

リビングルーム
写真=iStock.com/SeventyFour
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SeventyFour

■まずは1つ、トライしてみてほしい

どのような趣味がいいですか? とよく聞かれます。あなたが楽しいと思え、継続できるならば、何でもいいと思います。

参考までにあげると、忙しかった平日は、食後に少し楽器を触る、瞑想やアロマ、ストレッチ(体操)。時間があれば、ジムやジョギング、サウナ、ネットでドラマ鑑賞。週末ならば、カフェ巡り、ドライブやハイキングなどを職場以外の友人といかがでしょうか。そして夏休みならば、旅行や縦走登山などはいかがでしょうか。以前の記事でもお話ししたように、たった1日の夏休みでもリフレッシュは可能です。

(参考:「たった1日でも高い抗うつ効果が期待できる」夏休みが取れたら真っ先にやるべき3つのこと)

趣味のことを考えるだけで、楽しくなってきませんか。ぜひ、夏の間に趣味探しをしてみてください。趣味を見つけられなくてもいいので、最低1つ何かトライしていただけると幸いです。

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武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、ムーディーズ、ソシエテジェネラル、フォルクスワーゲングループ、BMWグループ、エリクソンジャパン、テンプル大学日本校、アドビージャパン、テスラ、S&Pといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト

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(医師 武神 健之)

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