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1時間に1秒行うだけで視力が回復する…目が乾きすぎた現代人に眼科医が勧める"完全まばたき"のすごい効能

プレジデントオンライン / 2024年7月20日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/venuestock

疲労、肩こり、目の疲れ。夏の体調管理にまずすべきことは何か。眼科医の綾木雅彦さんは「病は目からやってくる。デスクワークやスマホを見る時間が長い人は、目の保湿機能が平均2割以上も低下している」という――。

■目のトラブルの多くは「涙不足」が原因

多くの人は、まばたきを意識することがさほどありません。

でも、人は1日に2万回、まぶたを閉じたり開いたり、つまり「まばたき」をしています。その理由は、とても単純。目は、閉じるたびにダメージから回復するからです。

試しに、上まぶたを完全におろし切って、下まぶたとしっかり1秒、くっつけてみてください。そして、目を開けてみましょう。いかがですか。目がすっきりして、手元、あるいは遠くがくっきり見えてきたのではないでしょうか。

目は、涙によって守られています。目を開けたままでいると乾燥してしまうので、それを防ぐために、私たちはまばたきをするのです。

人の涙は、「油層」「水層」「ムチン層」の3つの層から成り立っています

最も表面を覆う「油層」は、涙が蒸発するのを防ぐ役割があります。この油は「マイボーム腺」という、まぶたの際にある器官から分泌されます。

真ん中は、涙の約98%を占める「水層」。おもに水分ですが、たんぱく質や酸素、脂質なども含まれます。

3つめの「ムチン層」は粘り気のあるムチンからなっていて、涙が流れ落ちないよう、目の表面(角膜)に糊のように粘着しています。

以上、涙の3つの層が何らかの理由で均一でなくなり、目の表面からなめらかさが失われてデコボコになると、光が適正に目に入らず、散乱します。すると、目がかすんだり、見えにくくなったり、まぶしさを感じたりするのです。

■まばたきが減っている現代人

想像以上に涙液の分泌が大事なことが、おわかりいただけたかと思います。

この分泌かつ涙液を均一に目の中に広げる方法、それが、まばたきです。

十分に涙を生み、3層の成分をきちんと整えて眼内にゆき渡らせることは、まばたきにしかできないのです。

「人は1日に2万回、まばたきをしている」と先述しましたが、実は、現代人はまばたきの回数が減っています。すると、目は涙が不十分になって乾いてしまい、それによってさまざまな目のトラブルが生じてしまいます。

まばたきの回数が減っている主な原因は、「ストレス」と「スクリーン(デジタル画面)の凝視」。この2つといえるでしょう。

忙しく仕事に追われていたり、人間関係で頭を悩まされたりなど、ストレスがかかって緊張していると、自律神経のうちの交感神経が優位になります。

交感神経が優位になると目が開き、まばたきの回数が不十分になります。さらに、涙の分泌量も減ってしまいます。

また、パソコンやスマホなどの画面を凝視するなど、集中してものを見ていると、おのずとまばたきが減ります。

オフィスで長時間パソコンと向き合っていたり、スマホのゲームに夢中になったりしていると、目がパシパシと乾く感覚を覚えることがありませんか。それが「ドライアイ」です。では、ドライアイについて詳しく説明しましょう。

■ドライアイは現代病でもある

私は2015年から毎年、計1万2000人以上の患者さんの目の乾き具合を記録しています。

その結果、コロナ禍以降、涙の量は平均13%減少、目の保湿機能は平均23%低下していることがわかりました。

主な要因は、在宅勤務によるパソコン作業の増加や、スマホ時間の増加、環境の変化によるストレスだと考えられます。

仕事で疲れた目を抑えるビジネスマン
写真=iStock.com/Liubomyr Vorona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Liubomyr Vorona

さらに、マスク着用でも目が乾きやすくなっています。マスクの隙間から、息が“直接の風”となって目に当たるからです。

まばたきの回数が減り、涙が少ない状態が続くと目の表面がどんどん乾燥し、ドライアイになります。それによって涙の3つの層の状態が不安定になり、視力の低下も引き起こす。これが現代病ともいえる、ドライアイの正体です。

現代人の目は、乾きやすい状態にあるので、「意識的に目にうるおいを取り戻す=まばたきをする」必要があるのです。

要するにまばたきは、目に必要な涙を供給し、角膜の表面を自ら整えることができるセルフケアというわけです。

角膜が車のフロントガラスだとしたら、まぶたがワイパーで涙が洗浄液。まぶたをすることで、まぶたがワイパーのように目の表面をなぞって、涙を塗り広げてくれます。細かなごみもきれいに取り除き、適度なうるおいを与えて目の表面を整えてくれるため、「ものを見る力」も実際に高まります。

■まばたきは実用視力を改善する

「え? ホント?」と驚いた方もいるでしょう。

ほんとうです。まばたきで、「実用視力」を最大限に高めることができるのです。

視力には、「瞬間視力」と「実用視力」の2種類があります。

「瞬間視力」は私の造語です。眼科検診など「Cマーク」の切れ目を瞬間的に見分ける方法で計るのが瞬間視力。いわば、ものを見る能力の最大限の努力値です。

一方、より専門的な機械で60秒、継続的な検査で測るのが「実用視力」。瞬間視力よりも計測時間が長いため、その人が日常生活で感じている見え方により近い結果が得られます。

瞬間視力は、一時的になら簡単に上がります。

目を細めると、遠くが少し見えるはずです。それは「球面収差(きゅうめんしゅうさ)」、つまり視線の中心と周辺での光のばらつきが減るからで、目を細めて視野が狭まることで焦点が絞られ、見えやすくなる現象です。

しかし、それはその場しのぎでしかありませんし、いつも目を細めて生活するわけにもいかないでしょう。

重要なのは、「安定して、よりよく見る」ための視力、すなわち実用視力。まばたきは、その実用視力を守り、改善してくれるのです。

■あなたのまばたきは間違っている?

ところで「まばたきなら簡単。すぐできる」と思っていませんか? 

「しょっちゅうまばたきをしているけど、目が乾く」という人もいるかもしれません。

実は、すべてのまばたきのうち5回に1回が、まぶたが閉じきっていなかったり、速すぎたりして“不完全なまばたき”に終わっていると推計されています。

不完全なまばたきの割合が多いと、まばたきによる圧力を十分に受けることができず、涙の油分をつくるマイボーム腺がふさがって機能しなくなり、涙の質が低下することがわかっています。

また、まばたきが速すぎると涙は十分に出ず、眼内にそれが塗り広がりません。

そうです。まばたきは、まぶたの上げ下ろしの回数よりも、グイッと一度、まぶたをしっかり閉じきることが大切なのです。

そこで、ぜひ行っていただきたいのが「完全まばたき」です。

やり方は簡単で、上まぶたと下まぶたを、0.5〜1秒、しっかりくっつけるだけでOK。

両目を閉じた女性
写真=iStock.com/liza5450
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/liza5450

現代人のまばたきは、平均0.3秒といわれているので、いつもより少し長めに目を閉じる意識で、ぐいっと1回、まぶたをしっかり下ろしきるようにしましょう。

とはいえ1日に2万回ほどまばたきを、常に意識するというのは現実的ではありません。朝起きたときや昼休み、そして気がついたときにいつでも、この完全まばたきを行ってみてください。

私の患者さんに完全まばたきを1カ月ほどしてもらうと、「よく見えるようになった」と喜んでくださる人がたくさんいらっしゃいます。

■デスクワーカーは「極深まばたき」を

長時間デスクワークをしたり、ついついスマホの画面を見続けてしまう人に行っていただきたいのは、完全まばたきよりも長い時間、まぶたをしっかり下ろす「極深(ごくぶか)まばたき」です。

完全まばたきは、1回0.5〜1秒ですが、極深まばたきは2秒。1時間に1回を目安に毎日行いましょう。

極深まばたきは、とくに若い人におすすめです。

目の網膜が薄い年配の人より、網膜の厚い若い人のほうが目が疲れやすいからです。

一般的に、全身の筋肉は「若い人ほど筋力があり、疲れにくい」という傾向がありますが、目の網膜に関しては逆。若い人は網膜が厚くて感度がよく、目の透明度が高い分、光によるまぶしさから痛みや不快感が出やすい傾向があります。

よく、「歳を取って目が疲れやすくなった」といいますが、実は「若い人ほど目は疲れやすい」。ですから、よく目の疲れを感じる人は、まだまだ若い証拠です。私がしっかりと、保証します。

いかがですか。「たかが、まばたき」と侮るなかれ。

まばたきのおかげで1日2万回、目には自己回復のチャンスが訪れます。

今日から1回でも多く、上まぶたと下まぶたをきっちりつける「完全まばたき」をするよう心がけましょう。

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綾木 雅彦(あやき・まさひこ)
眼科専門医・慶應義塾大学医学部非常勤講師
1982年、慶應義塾大学医学部卒業。1994~1997年、ハーバード大学に留学(医学部研究フェロー)。昭和大学医学部眼科准教授、国立病院機構埼玉病院眼科医長、国際医療福祉大学三田病院眼科准教授などを歴任。慶應義塾大学眼科学教室の研究者として知見を深めながら後進の指導にあたるほか、日本抗加齢医学会評議員などの要職も数多く務める。「ブルーライト研究の第一人者」としても知られる。著書に『視力防衛生活』(サンマーク出版)など。

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(眼科専門医・慶應義塾大学医学部非常勤講師 綾木 雅彦 構成=鈴木裕子)

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