1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「こんな生活を続けていたら40歳くらいで死んじゃう」過酷な研修医時代に心療内科医が見つけた"究極の休息法"

プレジデントオンライン / 2024年7月21日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

現代人は忙しい。多くの人が仕事や育児、介護に追われている。心療内科医の海原純子さんは「良いパフォーマンスをするためには、休息時間は必須だ。給料から貯金分を天引きするのと同じように、リラックスのための時間をあらかじめ確保しておくといい」という――。

※本稿は、海原純子『幸福力 幸せを生み出す方法』(潮出版社)の一部を再編集したものです。

■「こんな生活を続けていたら、40歳くらいで死んじゃうな」

私がさまざまなリラックス法を試すようになったのは、大学病院に勤めていた20代のころです。多忙を極める医局での毎日は、「休息するな」というのが基本。研修医時代は、3日連続で医局に泊まり込むことも珍しくありませんでした。「こんな生活を続けていたら、40歳ぐらいで死んじゃうな」と感じていたので、少しでも時間があると、マッサージやエステに行って体を手入れしていました。そんなわけで、リラックス法については、もともと関心が高かったのです。

そうやっていろいろな方法を探求するうちに、「香り」の効果に関心をいだくようになりました。医療分野で使われている「メディカル・アロマテラピー」を勉強しようと思い立ち、フランスに行ったのは、30年ほど前のことです。アロマテラピーとは植物から抽出(ちゅうしゅつ)した精油(せいゆ)を使う芳香(ほうこう)療法で、なかでもフランスのメディカル・アロマテラピーは、医師の処方箋(しょほうせん)にもとづいた本格的なものです。それだけに効果も絶大で、疲れたときに精油の香りを嗅(か)ぐと、驚くほど元気になります。

■目を見張るほどの「香り」の効果

なぜ、香りにはこれほどの効果があるのでしょうか。それは、鼻の粘膜にある嗅(きゅう)細胞が、自律神経系のコントロールセンターである大脳辺縁系に直接働きかけるからです。嗅細胞は神経細胞ですから、香りを嗅ぐと、その刺激によってすぐに副交感神経が作動し、心と体を癒してくれるのです。鼻から入った香りの刺激は、瞬時に大脳辺縁系に達してしまうので、その効果は目を見張るものがあります。どんなに頭が固いオジサマでも、上質の香りを嗅ぐと一瞬で表情が変わるのがわかります。

私は疲れているときは、パリの薬局で買ったラベンダーの精油をハンドバッグのなかに忍ばせています。ここで注意したいのは、天然の精油を使うこと。人工的に合成された香りは化学物質の塊(かたまり)なので、お勧めできません。アロマテラピー・ショップに行って、天然もしくは無農薬栽培の植物を使ったものかどうかを、しっかり確認しましょう。「天然の植物を水蒸気蒸留(じょうりゅう)したものはありますか」と聞きながら探すとよいでしょう。

気に入った精油を見つけたら、ティッシュに一滴たらし、香りを楽しみましょう。これもフランスのメディカル・アロマテラピーの先生から聞いた方法です。わざわざアロマポットを買ってきて焚(た)かなくちゃと思わなくて大丈夫。ただし、お風呂に入れるのはお勧めできません。精油は湯のなかで油膜(ゆまく)を作り、高濃度のままプカプカと浮かびます。その状態で肌についてしまうと、刺激が強すぎるので注意が必要です。

■「自分の体のことをよく理解する」のが大切

ここまで、私が実践しているリラックス法をご紹介してきました。しかし、どんな方法も、ただ漫然と試しているだけでは、効果は上がりません。効果的にリラックスするためには、ちょっとしたコツが必要です。

その一つが、「自分の体のことをよく理解する」ことです。

私も若いころは風邪ばかりひいていましたが、当時と比べると、年々、元気になっているような気がします。年齢相応の体力の衰えはあるにしても、自分の体の強みと弱みがだんだんとわかってきたからでしょう。「自分は何をすると疲れるのか」をよく理解して、弱点を補強していくことが大切だと思います。

たとえば、私は「今日は泳いだほうが絶対にいい」と思えば、どんなに仕事が忙しくても、なか抜けしてプールに出かけます。5分でメイクを落とし、10分間泳いだ後、5分で髪を乾(かわ)かし、メイクに20分かける。近所にプールがあれば、所要時間はわずか1時間で済みます。こうしてリフレッシュした後、再び仕事に戻るのです。

とはいえ、誰もがプールに行くべきだと言っているのではありません。私がプールに通うのは、家でじっとしているより、体を動かしたほうがリラックスできるからです。自分はどうすればリラックスできるのか。まずはそれを知ったうえで、自分自身に合った方法を見つけることが大切です。

屋内プール
写真=iStock.com/miljko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miljko

■「時間を天引き」してリラックスする

もう一つのポイントは、「リラックスのための時間を積極的に作ること」です。

多くの人は、1日のなかで「余った時間」をリラックスのために使おうとします。仕事や家事、子育てや介護など、必要なことを全部やり終えてからでないと、リラックスのための時間はもてないと思い込んでいるのです。

しかし、これでは、よほど暇な人でないかぎり、自分のための時間などもてるはずもありません。そこでお勧めしたいのが、「時間を天引きする」ことです。自分のなかでルールを決め、給料から貯金分を天引きするのと同じように、リラックスのために使う時間をあらかじめ確保しておくわけです。

「夜10時からの1時間はストレッチに充(あ)てよう」「週1回はプールで泳ごう」「1日10分ストレッチしよう」という具合に、「ここだけは自分の時間」と決め、すべてのことから解放される時間を作りましょう。そのためには、日単位・月単位・年単位で、リラックスのための時間をあらかじめプランニングしておくことが大切です。

とはいうものの、なかには、リラックスのための時間を作ることに罪悪感を覚える人もいます。「老親をデイサービスに預けて、自分だけ旅行に出かけるなんて、とてもできない」という人もいるでしょう。

■介護や子育てにも「休息時間」は必須

なぜ、私たちは休息をとることに罪悪感をもつのでしょうか。それは、「休息=怠慢(たいまん)」という思い込みに縛られているからです。そのことで、過去に人から非難されたことがあるのかもしれないし、こんなことをしたら人から非難されるかもしれない、と勝手に思い込んで、自分自身を縛っているのかもしれません。

海原純子『幸福力 幸せを生み出す方法』(潮出版社)
海原純子『幸福力 幸せを生み出す方法』(潮出版社)

もちろん、休むのも休まないのも、個人の選択です。ただし、一つだけ言えることは、どんな役割であろうと、休息をとらなければ、パフォーマンスを上げられないということです。もしアスリートが、毎日40キロ以上走っていたら、いずれは体を壊して走れなくなってしまうでしょう。仕事や介護、子育ても同じで、良いパフォーマンスをするためには、疲労回復のための休息時間が必要です。

休息をとらずに、毎日深夜まで働き続ければ、過労とストレスで病気になってしまうでしょう。それどころか、過度のストレスで心を病み、子どもや親を虐待(ぎゃくたい)してしまうケースもあります。今、流行のお掃除ロボットだって、充電しなければピクリとも働かない。機械でさえそうなのですから、人間にも充電時間は必要なのです。

■休息は家族や周囲のためでもある

もし、あなたが親の介護をしているのであれば、介護保険にある「デイサービス」や「訪問介護サービス」などを積極的に利用しましょう。また、あなたが子育て中ならば、自分でなくてもできることは、どんどん人の手を借りましょう。ミルクを飲ませることぐらいなら、家族や友人などに手伝ってもらうこともできるはずです。人に頼めることは頼み、1日のうち1時間でもいいので育児から解放される時間を作ってみてはどうでしょうか。

休息をとることは、自分のためであると同時に、家族や周囲のためでもあります。だからこそ、知恵を絞って時間を作ることが大切です。ただし、「どれくらいの休息が必要か」は個人差がありますから、他人のことは気にせず、自分の体と相談しながら、決めていくしかありません。自分なりの休息ルールを決め、そのことをまわりにも理解してもらう。そうやって、自らのライフスタイルを自分の責任において作っていくことが大切だと思います。

----------

海原 純子(うみはら・じゅんこ)
医学博士
心療内科医/昭和女子大学客員教授/ジャズシンガー。日本ストレス学会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。ハーバード大学客員研究員、日本医科大学特任教授を経て現職。心療内科医として多くの人と向き合い、心と体の不調の診療やストレス対策などのアドバイスを行ってきた。

----------

(医学博士 海原 純子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください