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「何でもやります」と「あれもこれもできます」で評価正反対…転職面接や初対面挨拶で一発で嫌われる「自己PR」

プレジデントオンライン / 2024年7月25日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Patrick Chu

■広報はしていてもPRができていない

私は広報・PRで17年の経験があり、現在はPRエージェンシーの経営者として企業の広報・PRを請け負っています。広報とPRは同じと認識されている方が多いのですが、私の中では明確な区別があります。

広報とは読んで字のごとく、広く報じる。企業が発信する情報を、より多くの人に知ってもらう活動です。一方、PRとはPublic Relationsの略で、企業が世間(外部の個人や企業)と良好な関係性を築いていくための活動です。

私は日頃、広報はしているけれどPRができていない企業が多くある、と感じています。あなたの会社はどうでしょうか。伝えたいことを伝えてはいるものの、それによって信頼関係が構築できたり、おつきあいが深まり、広がるまでには至っていないと感じることはないでしょうか?

PRが真価を発揮するには自社や自社の商品についての理解はもちろんのこと、相手に対する理解や配慮、伝え方のスキルが必要です。またそのスキルは職場の内外を問わず、あらゆる個人のコミュニケーションにも応用できると思っています。

そこで今回は、私がPRのプロとして心掛けていることや、メディアの人に対してどんなアプローチをしているかを具体的にお話ししつつ、他者/他社と良好につながるコツについて考えてみたいと思います。

まず、PRにおける私のスタンスから説明しましょう。私は企業から「会社やサービスをPRしてほしい」という依頼を受けて動きます。具体的にはメディアの人にアプローチして、その媒体(TV番組や新聞・雑誌、YouTubeなど)で映像や記事として取り上げてもらうのです。

広告宣伝であれば枠(放送時間や紙面)を買い取って自由に報じればいいのですが、PRではそういうわけにはいきません。情報を取り上げるか否か、どう扱うかの決定権や編集権は先方にあるからです。

私の役割は、それを見た視聴者や読者が依頼主のサービスに好印象を抱いてくれるような取り上げ方をしてもらうことです。そのためのテクニックはいろいろあるのですが、最も基本的で大切なことは「自分を知り、相手を知ること」です。

自分(PRする企業やそのサービス)の魅力を伝えてもらおうというのに、自分がその魅力について知らなければ、お話にならないでしょう。それは勝手な思い込みや独りよがりではなく、競合や消費者のニーズも踏まえた理解でなくてはいけません。

また、相手(番組や媒体またはクリエイター)のことを知りもせずに「おたくの土俵を使わせてください」とお願いするのは失礼ですし、相手も受け入れてくれません。過去の放送回やバックナンバーを取り寄せて、可能な限り目を通します。

自分と相手を知り「誰にお願いすれば効果的なのか」がわかれば、売り込み先が絞れます。アプローチする数が多いほど、成果が上がるわけではありません。ピンポイントに「この番組で取り上げてもらいたい」「この媒体に掲載してほしい」と思う相手に届いて、興味を持ってもらうことが成果につながります。

また、相手を深く知れば「どういう提案をすれば採用してもらいやすいか」の戦略を立てることができます。PRしたい相手はメディアの人ではなく、その向こう側にいる視聴者や読者です。「この番組を見ている視聴者なら、こういう切り口で取り上げてもらえるのではないか」という目途がつけられるわけです。

ただし、取り上げるか否かやどのような取り上げ方をするかは、相手次第です。メディアの人にとってみれば、こちらのPRをしてあげる義理はありません。そして、その媒体の視聴者や読者の興味やニーズを一番よく理解しているのは、ディレクターであり編集者なのです。

餅は餅屋です。その道のプロを信頼し、彼らの「視聴者や読者に有益な情報を届けたい」「楽しんでもらいたい」という思いに寄り添って、扱い方は委ねること。協力できる部分は可能な限り協力し、いい番組や紙面を作ってもらいましょう。

繰り返しになりますが、PRの目的は企業と消費者(あるいは世間)と良好な関係性を構築することにありますので、露出が直接的な宣伝になっていなくてもいいのです。

【図表】PRはメディアを通じた信頼関係構築がカギ

■自分本位のアピールは迷惑でしかない

ではこのPRのスキルを、例えば営業担当者が応用する方法を考えてみましょう。

営業の仕事は取引先に自社の商品やサービスの魅力を伝え、契約してもらうことです。まずは商品やサービスについて、何を聞かれても即答できるだけの知識を備えていなければいけません。競合の強みや弱みも把握し、どういう売り込み方ができるのかを考えます。

次に、誰に売り込むかを考えます。手当たり次第に電話をかけたりDMをバラまいて「わが社の製品はこんなに素晴らしいのです」と宣伝するのは、PRとは違います。それが売り上げUPに効果的な場合もあるでしょうが、PRで優先すべきは長期的かつ継続的な関係性の構築です。

どんな相手なら興味を持ってもらえるか。相手のニーズを探り、それに適った提案ができるように戦略を練ります。自分本位のアピールは、相手には迷惑でしかありません。営業がしつこかったら自分がどう思うか、想像すればわかるでしょう。

営業担当者がPRのスキルを使うなら、売ることだけを考えるのではなく、相手がいい仕事をするために何を欲しているか、自分の立場で力になれることがないかを一生懸命に考えて「できることがあれば協力させてください」というスタンスでアプローチすべきです。

その結果、そのときには契約に至らないかもしれません。でも、それは失敗ではありません。関係性が生まれ深まったことを成果として、次につなげていくことを考えましょう。

アプローチした相手がどういう人物でどのようなやり取りがあり、今後どのようなニーズがありそうかといった情報は、部署や社内で共有しましょう。今後関係が積み重なるほど、あなたや仲間のアプローチが相手に刺さる確度は高まっていきます。

■PRしないことがPRになることも

PRのスキルは仕事を離れても活用できます。PRしたいのが商品やサービスではなく、あなた自身である場合です。例えば、今後の転職や再就職を見据えて、人脈を広げていきたいケースで考えてみましょう。

何から手をつけたらいいかわからない人は、Facebookから始めるといいでしょう。「それならずっと前からやってるよ」という人も多いでしょうが、自分をPRする目的で使ってはいないと思います。

友人や知人に向けての近況報告なら、映える写真を載せるのもいいでしょう。自己主張なら政治に対する憤懣やるかたない思いを吐露するのもいいでしょう。ですがPRを目的とするなら「その投稿が自分の好印象につながるのか」「見た人が自分についてどう思うか」を常に意識してほしいのです。

100人に「いいね!」を押してもらうのが、良いPRではありません。あなたが興味のある業種や企業、そこへつながる可能性のある数人に届けることを考えます。「自分はこういう仕事に挑戦してみたい」「そのためにこんな試みをやっている」といった内容を、しつこくならない程度にアピールします。

個人的なアカウントであれば、相手も仕事モードでは見ていないでしょうから、肩肘張らない話題も織り交ぜつつ、相手が思わずコメントしてしまうような投稿ができれば大成功。私は「この人に届けたい」と見込んだ人からコメントがきたら、すぐさま「見てくれたんですね。ありがとうございます」とDMを送り、次へつなげるようにしています。

転職や再就職では、時に「PRしないことがPRになる」ケースもあります。自分を売り込みたい気持ちが強すぎて、経歴を主張しすぎてしまうと「ここまで実績のある人に任せるほどの仕事はない」「こんな大組織にいた人が、今さらウチのやり方に合わせるのは難しいだろう」と敬遠されてしまうからです。

特にシニアの再就職では、これまでの肩書や経歴はいったん全部リセットし「何でもやります!」という心構えのほうが歓迎されやすいとも聞きます。専門職としての転職ではPRになる内容が、再就職では逆効果になる可能性があることは、覚えておいたほうがいいでしょう。

これは趣味のサークルやボランティアなど、ビジネス以外のコミュニティに入っていくときにも言えることです。自己紹介を求められる場面で、これまで仕事一筋にやってきた人はどうしても仕事絡みのアピールをしてしまいがちです。

ですが、町内会の集まりで「私は○○商事の元部長で、現役の頃は数百人の部下を束ねて数々の巨大プロジェクトを指揮してきました」などと話しても、尊敬されるどころか嫌われてしまうのがオチでしょう。相手のニーズや興味のありかが探れていないことが引き起こす悲劇です。

とはいえ、初めて参加する会合でニーズや興味のありかがわからないまま、自分のことを話さなければならないのも大変かもしれません。そんな場合はとりあえず当たり障りのない自己紹介をしておいて、早々に質問する側にまわりましょう。

「日頃どんな活動をされていますか」
「これまでどんな実績がありますか」
「ぜひ私にも教えてください!」

自分に関心を寄せてもらって、嫌な気分になる人はいません。いきなりインパクトを与えようとせず控えめに仲間に加わり、相手にいろんな角度から質問を投げつつどんなニーズがあるかを探り、自分が求められる役割を見つけていけばいいのです。

最初からアピール全開で「あれもこれもできます」とハードルを上げて期待はずれと思われるより、あとから「○○さんにはこんな一面もあったんですね」と驚かれるほうが、PRとしての効果は大です。

PRとは、自分が狙った相手に知ってもらいたい情報を届け、活用してもらうためのスキルです。どうすれば効果的に、より魅力的に伝わるか。あなたの思いと工夫次第でどんどん上達していけます。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月19日号)の一部を再編集したものです。

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千田 絵美(せんだ・えみ)
フロントステージ代表取締役
2006年より、広報・PR業務を担当。16年に独立し、現職。PR戦略や企画立案、プレスリリース作成など「企業の外部広報室」的な役割を担う。著書に『メディアの人とスマートにつながる 広報・PRのアプローチ攻略術』。

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(フロントステージ代表取締役 千田 絵美 構成=渡辺一朗)

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