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「数百万円の初期投資はすぐ回収可能」民泊ビジネスの驚きの試算…インバウンド特需で「売上月50万・利益20万」

プレジデントオンライン / 2024年7月31日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Actogram

■「民泊市場は今後も右肩上がりが続く」

政府が掲げる2030年の訪日外国人の目標は旅行者数6000万人、消費額15兆円、現在の2倍以上の市場規模を想定している。観光立国へ舵を切るこれからの日本で、会社員でも取り組める副業として注目されているのが民泊だ。

今回話を聞いた、大阪・東京・地方で民泊を運営する3人はいずれも、「民泊市場は今後も右肩上がりが続く」と強気の見解だ。訪日外国人数が倍増するとしても巨大資本が手がけるホテルが滞在先として選ばれそうだが、個人の民泊に勝機はあるのか? 東京を中心に750件の民泊物件の清掃を受託し、自らも40室の民泊物件を運営する民泊清掃R社長に尋ねた。

「ホテルの客室は2人で泊まる前提でつくられており、3世代合同の家族旅行やグループ旅行のような団体客は部屋が増え、その分宿泊費もかさみます。一方、民泊なら10人での宿泊も可能なので宿泊費が節約できます。同じリビングでお酒を飲みながら映画を見るなど全員での団欒が可能ですし、ホテルにはないキッチンも使えます。ホテルが取りこめない需要を満たす物件ならホテルと競合しません」

さらに将来の供給過剰に対する見解も付け加える。「会社員では太刀打ちできない資金力と情報力を有するホテルグループが今もホテルを続々と建設している事実は、むしろ今後もインバウンド市場が安泰である証拠だといえます。場所選びと物件選びさえ間違えなければ、今後も負けない状況が続くでしょう」

■いい物件を押さえるには民泊代行業者に頼るべき

宿泊客の受け皿が求められる状況が民泊参入の好機をつくる一方、参入希望者の増加により物件探しの難易度は上がっている。大阪の民泊サポート会社「IDEAL」代表の伊藤大輔氏が言う。

「民泊はいかに良い物件を押さえるかで勝負のほとんどが決まります。旅行者がキャリーケースを引いて移動できる距離を考慮すると、駅から徒歩10分圏内の立地が望ましい。さらにベッドがたくさん設置できる広い物件が理想となり、一棟貸しができる戸建てがベストです。しかし、そういった好条件の物件が今はなかなか出てこない。市場がかなり成熟している東京は当然ながら、私たちが民泊を運営する大阪も良い物件に出合うのが難しくなっていると感じます」

日本に訪れる外国人は過去10年で最高値を更新
図版作成=大橋昭一

そこで、民泊初心者はまず物件情報の流れを理解する必要があると伊藤氏は付け加える。

「民泊の物件情報は、最初に民泊専門の不動産仲介会社に集まります。次にその仲介会社が抱える上顧客に紹介されます。そして最後に一見客に流れていきます。そのため、個人がいきなり街の不動産屋に行って、『民泊物件を探しています』と言っても、簡単に良い物件は見つかりません。それこそ名刺を配って顔を覚えてもらうなど、仕入れ業者が日々やっているような足で稼ぐ覚悟がないと難しいでしょう。会社員の副業でそこまで労力を割ける人は少ないので、まずは民泊代行業者に物件探しを依頼して、最初の物件を持つことが先決です。1軒オープンさせたことが実績となり次につながります」

物件探しの難しさについてR社長も指摘する。

「東京や大阪といった都心の場合、民泊の物件は転貸が基本となるのですが、民泊可能な物件の需要が増えたことで、もともと一般賃貸のみ募集していたオーナーが家賃を上乗せして民泊可能物件にするケースが増えています。一般賃貸で賃料20万円の物件が、民泊可能となると賃料26万円になるなど、相場の家賃で貸すオーナーがいないのです。いわば足元を見られている状況ですが、都内で最大10人宿泊できる戸建てを借りることができれば、月の売り上げ100万円も狙えます。そう考えると家賃の差額を考慮しても、利益が出れば必要経費と割り切ることもできます」

また、地方に目を向けると、物件探しの難しさには都市部と異なる事情があるようだ。別荘民泊を19軒運営する別荘民泊プロデューサーの羽田徹氏が明かす。

「地方の方たちは自分の物件を不動産ポータルサイトに掲載することに対して極端に抵抗があります。先祖代々の土地建物を手放すことに後ろめたさを抱いたり、すぐに親族や近隣で噂になったりするからです。そのため、物件情報は地場の有力な不動産屋に水面化で集まっている。そういった業者を見つけてコネクションを構築する必要があります」

■365日の営業が可能な「特区民泊」を狙っていく

盛り上がりを見せる民泊市場だが、特に大阪の過熱には「特区民泊」も関係している。

「民泊新法(住宅宿泊事業法)では1年間で最大180日しか営業が認められていませんが、国家戦略特別区域(特区)では、宿泊施設の不足を補うため年間365日の営業が認められており、大阪では大阪市、八尾市、寝屋川市が該当します。当然、民泊新法より特区民泊のほうが高い収益が期待できます。ただし、特区民泊では最低宿泊日数が2泊3日〜とする一方、民泊新法は1泊2日〜といった違いもあります」(伊藤氏)

特区民泊と民泊新法の主な違い
図版作成=大橋昭一

首都圏では大田区のほか、千葉県千葉市も特区民泊に指定されている。「羽田空港に近い大田区の民泊が盛り上がりを見せる一方、千葉市は成田空港と都心を結ぶ動線上にないため客付けは弱い印象です」(R社長)

これから民泊を始めるのであれば、物件のエリアが民泊新法なのか、特区民泊なのかによって期待収益が大きく変わる点は覚えておきたい。では実際に民泊を始めるにあたり、どれくらいの初期投資が必要なのか。伊藤氏がシミュレーションを提示する。

「すべて自分でやれば初期費用200万円程度で開業も可能ですが、膨大な手間と時間が必要です。会社員が副業で始めるのであれば代行業者の手を借りるのが無難です。最大10名が泊まれる広さを想定し、物件探し、リフォーム、消防設備、許可申請を業者に依頼する場合、初期費用の目安は400万円程度。売り上げは開業エリアや、繁忙期か閑散期かによっても変動するのであくまで一例ですが、1泊1万〜3万円の宿泊費で、稼働率は平均すると7割程度です。1カ月の売り上げが50万円だとすれば、そこから家賃10万円、運営委託費10万円、清掃費用5万円、光熱費、通信費、消耗品といった経費を支払うと約20万円が手元に残るイメージです。自主管理より手残りは減りますが、運営を委託するからこそ、忙しい会社員や、東京在住の方でも大阪での民泊経営が可能となります」

民泊はどのくらい儲かるのか?
図版作成=大橋昭一

■民泊ならではの「外国人にウケる物件づくり」

民泊で売り上げを伸ばすためには、立地に加えて物件の差別化も重要となってくる。

「外国人にウケる物件づくりとして最近『葛飾北斎の浮世絵がプリントされた和柄の壁紙』を施工する機会が増えています。導入すると予約サイトに掲載する写真が非常に映えるので集客が向上するようです。予算に余りがあるのなら家具やカーテンに力を入れるよりも壁紙を刷新したほうが、コスパが高い。ちょっとしたインテリアは100円ショップで揃えることも可能ですが、全体的な雰囲気がチープになってしまうので、避けたほうがいいでしょう」(R社長)

地方の民泊は物件の自由度が高く、独自の強みをつくれるのが魅力だ。

「買い手が付かずに放置されていた元機織り工場をリノベーションし、30畳のリビングが特徴の民泊をオープンしたところ、一般住宅にはない非日常空間が人気を呼んでいます。私が運営している民泊ではほかにも庭でヤギを飼っている物件もあります」(羽田氏)

■初心者が陥りがちな民泊の笑えない失敗とは

民泊を運営するうえで避けられない問題がトラブル対応だ。その点、運営を委託するメリットは大きい。

「民泊に寄せられる苦情では騒音関係が多いです。近隣からクレームが入ったり、警察を呼ばれたりすることもあります。その場合、緊急対応で現場に駆けつけ、近隣への謝罪、ゲストへの注意、事情聴取への対応を行わなければいけません。会社員がトラブル対応をするのは現実的ではないので、『駆けつけ対応』を謳う運営代行業者に一任するしかないでしょう。ほかには鍵のトラブルも多いです。鍵の紛失は清掃や次のチェックインに影響が出ます。ゲストが道に迷ったときはリアルタイムで対応できないと、クレームにつながります」(R社長)

そもそも、特区民泊では苦情の受け付けに24時間対応が義務付けられている。

「弊社には電話対応部署がありますが、会社員が自主管理するとなると、旅行や出張にも行けないので、現実的ではないでしょう」(伊藤氏)

上手くいけば約2年で初期費用の回収も可能となる民泊だが、なかには開業に至らず挫折するケースもあるという。初心者が陥りやすい罠について教えてもらった。

「不動産屋の言う『民泊可能』を鵜呑みにしてはいけません。よくよく話を聞くと単に大家がOKと言っているだけで、行政の許可が下りるとは限らない場合があります。物件契約前に自分で保健所と消防署に事前確認するか、民泊専門の仲介会社を頼るべき。最終判断は自己責任となります」(R社長)

もっとも注意を払っておきたいのが、設置が義務付けられている消防設備だ。「事前の確認を怠ると、リフォーム完了後に消防設備の設置費用が予想より高額だと気づくことがあります。通常なら30万円で済む工事が、建物の構造によっては100万〜200万円かかることも。結局、多額な初期費用を払うもオープンできずに撤退する方もいます」(伊藤氏)

物件の差別化が図りやすい地方では、内装やコンセプトは業者に頼るのではなく自分で決めたほうがいい。

「すべて業者に丸投げしてしまうと、ありふれた『金太郎飴物件』をつくられてしまい、ライバル物件の中に埋もれてしまいます」(羽田氏)

民泊で負けないための10個のチェックポイント
図版作成=大橋昭一

次項からは東京・大阪・地方それぞれのより詳細な民泊市況を3人の識者に解説してもらう。

(後編へ続く)

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月19日号)の一部を再編集したものです。

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伊藤 大輔 (いとう・だいすけ)
合同会社「IDEAL」代表
大阪で、民泊の物件探しから運営までワンストップの開業サポートを提供している合同会社「IDEAL」代表。民泊やシェアハウスを150室運営。airbnb公式のエアビーサポーター。

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民泊清掃R社長(みんぱくせいそうあーるしゃちょう)
民泊清掃会社マスタークリーニング代表
YouTubeチャンネル「民泊清掃R社長」では、民泊運営だけでなく民泊清掃にまつわる話題も配信している。

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羽田 徹(はだ・とおる)
別荘民泊プロデューサー、Villa Repro代表
空き家再生で地域創生をコンセプトに別荘民泊を田舎で19軒運営。airbnb公式のエアビーサポーター。

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(合同会社「IDEAL」代表 伊藤 大輔 、民泊清掃会社マスタークリーニング代表 民泊清掃R社長、別荘民泊プロデューサー、Villa Repro代表 羽田 徹 文=栗林 篤)

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