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だから日経平均は「史上初の4万2000円台」に…海外投資家が「日本株ブーム」に熱狂する理由

プレジデントオンライン / 2024年7月16日 9時15分

4万2224円02銭で取引を終えた日経平均株価を示すモニター=2024年7月11日午後、東京都中央区 - 写真提供=共同通信社

■欧州勢に加え、米国や中国の投資家も集中

6月下旬以降、日本株は堅調な展開が続いている。7月11日の引け値ベースで日経平均株価は4万2224円02銭、東証株価指数(TOPIX)は2929.17ポイントに上昇し、終値で過去最高値を更新した。東証プライム市場の時価総額は、はじめて1000兆円を上回った。

日本株上昇を牽引したのは、海外投資家の積極的な買いとみられる。今年の年初以降、特に目立つのは欧州の大手投資家の買いといわれている。ここへきて、主な買いの主体がやや変化しているようだ。欧州勢に加え北米、中国などアジアの投資家も日本株に買いを入れている。

海外のファンドマネージャーと話をすると、彼らの間ではやや長い目でわが国経済への成長期待が盛り上がりつつあることがわかる。省力化の機会や先端の半導体などの分野で、設備投資が増加していることも成長期待を支えた。東京証券取引所が上場企業に収益性の向上に取り組むよう要請したことも、投資家の注目材料の一つだ。

■日本株はもう“高コスパ”とはいえない

ただ、今後の日本株の動向についてはやや気になるポイントがある。7月第1週の終了時点で、日本株の割安感はほとんどなくなっている。米国や中国経済の先行きを考えると、国内企業の業績拡大は考えづらい。いずれ日本株の上値は抑えられ、どこかで調整局面入りする可能性は高そうだ。

最も重要なファクターは、わが国の企業が成長過程を続けることができるか否かだ。それができれば、長い目で見てまだ上値余地はあるだろう。

2024年の年初、3万3000円台だった日経平均株価は、3月中旬にかけて上昇した。その後、相場は調整した。4月中旬に3万7000円台まで日経平均株価は下げた。6月の半ばごろまで、おおむね3万8000円台を挟んでもみ合った。

株式市場の展開の転換点になったのは、海外投資家による日本株買いだ。東証プライム市場の委託取引において、海外投資家は約68%のシェアを持つ。6月に入って以降、日本株を買った海外の投資主体は、年初から3月までと異なる。

日本証券取引所の『海外投資家地域別株券売買状況』によると、年初から5月まで、欧州勢は日本株を買った。欧州勢が日本株を買った背景には、ユーロ圏経済の先行き不透明感の高まりがあったとみられる。

■「日本株買い」に向け各国が動き出している

欧州経済を概括すると、南欧諸国は米国からの観光客の増加などでそれなりに安定している。一方、ウクライナ紛争によるエネルギー資源などの不足、中国経済の停滞によりドイツやフランスなど欧州の主要な国の景気は厳しい。6月の欧州議会選挙でEUの政策方針に懐疑的な極左・極右の政党が議席を伸ばしたことはそれを示唆した。欧州の主要な投資家にとって、円安もあり日本株は割安に映っただろう。

一方、4月、米国など北米勢は日本株を売りに回った。5月はアジア勢が日本株の保有を減らした。3月に日本株が上昇し、その時点での最高値を付けた。米国ではAI業界の成長期待も高まり、一部銘柄の割高感も強まった。相場の調整を警戒して米国やアジアの主要投資家は日本株の持ち高を減らし、利益を一部確定しただろう。

6月に入って以降、米国やアジアの投資家は日本株を買い戻したようだ。米国では、主要国の株式市場の資金配分比率で、日本株の割合を相対的に高く設定するファンドマネージャーもいる。日本株に強気になる中国の個人投資家が増えているとの報道もあった。シンガポールでは、政府系投資ファンドが日本株投資チームの陣容を拡大しているという。

■海外勢が期待する日本経済の「成長要素」とは

海外の投資家が日本株を買う要因の一つは、長い目でわが国経済の成長が期待できるからだろう。足許の日本経済は、全体として緩やかに持ち直しつつある。強弱感はあるが民間企業の設備投資は加速している。

半導体工場やデータセンターの建設は増えている。製造業と非製造業の両分野で省人化関連の投資も伸びている。業種別に、自動車および部品、工作機械、石油化学、運輸、情報通信、インバウンド需要の増加で飲食・宿泊など広範囲に設備投資の増加が予想される。それは、中長期的なわが国経済の成長期待を高めるだろう。

相場を牽引する業種にも変化が出始めた。年初から3月上旬までは、主に半導体の製造装置などAI革命から業績拡大が期待できる銘柄が選好された。6月18日、エヌビディアの時価総額はマイクロソフトを抜いて世界トップになった。そのあたりから、エヌビディアの投資判断を引き下げるアナリストが出始めた。自社株を売る米IT先端企業の創業経営者もいる。

■熊本のTSMC、北海道のラピダスにも追い風

GPU以外の半導体分野で成長の期待は高まっている。メモリーチップの分野ではデータの転送速度が速い広帯域幅メモリー(HBM)の需要増加期待が高まった。海外の株式市場では韓国のSKハイニックス、米マイクロン・テクノロジーが買われた。DRAMの需要回復期待も高まった。

それは、熊本県で第3工場の建設を検討しているTSMC、北海道で工場を建設しているラピダスに追い風となるだろう。国内での半導体生産の増加は、電子部品や半導体関連素材メーカー、発電やインフラ関連の事業を運営する重電メーカー等の業績期待を高める。

業態の転換や政策保有株の売却などによって、資本の効率性を高めようとするわが国の企業も増えた。プロの人材や経営者を登用して、AIなど先端分野での競争力を高めようとする企業もある。そうした変化に着目し、日本経済の成長期待は高まったと考える海外の投資家は増えただろう。

半導体製造用装置
写真=iStock.com/PhonlamaiPhoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PhonlamaiPhoto

■今後の日経平均株価の行方は荒れ模様?

7月5日の取引終了時点で、日経平均株価に採用された銘柄の平均PER(株価収益率、予想ベース)は17.28倍に上昇した。世界の主要株式市場の長期的なトレンドとして、PERは14~17倍が適正な水準といわれている。米国株(ナスダック100インデックスで約30倍、S&P500指数で約23倍)ほどではないが、日本株は割安と言えない水準に上昇した。

割安感が乏しいことを踏まえると、当面、日本株の上値は重くなることが予想される。今すぐではないだろうが、金融引き締めの効果などにより米国の景気が緩やかに減速する恐れもある。

不動産バブル崩壊で中国経済の停滞懸念は高まった。世界経済を支えた米国経済の成長率が低下すれば、世界経済全体で成長率は下振れるだろう。ここから先、わが国の幅広い業種で業績が拡大するとは考えづらい。

そうした警戒感が高まると、日本株を買った海外の投資家は一部の持ち高を縮小することになるだろう。それに伴い、日本株が調整するリスクはある。11月の米大統領選挙という不確定な要素もある。米欧の金融政策や政治動向で、相場調整リスクが上昇することも考えられる。6月中旬以降の上げ方がやや急ピッチであったため、上げ下げともに相応の値幅も出やすくなるかもしれない。

■海外勢の期待に日本企業は応えられるか

中長期的な展開を予想すると、日本経済の成長期待がどうなるかが重要だ。設備投資を積み増したり、在来の分野から先端分野に経営資源(ヒト、モノ、カネ)を再配分したりして業態の転換に取り組む企業は増えるだろう。日銀の金融政策の正常化観測の高まりを背景に、金融機関の業績期待の上昇も考えられる。

成長を期待できる企業が増えることは、内外の主要投資家にとって日本株投資の裾野の拡大を意味する。長い目で見て国内の企業の成長期待が高まるのであれば、海外投資家の買いから日本株上昇の可能性はある。

AI分野の成長期待の高まり、2024年問題などをきっかけとする人手不足問題の深刻化などに個々の企業がどう対応し、成長戦略を立案・実行するか、その重要性は一段と高まっている。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
多摩大学特別招聘教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。

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(多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫)

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