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「あの人に嫉妬している」と思ったら、自分を褒めていい…韓国のロングセラー本が「嫉妬は人間の本質」と説くワケ

プレジデントオンライン / 2024年7月23日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Martin Barraud

嫉妬心とどう付き合うべきか。韓国の人気エッセイスト、イ・ダヘ氏は「嫉妬心が生まれるのは、理想の自分と現実の自分にギャップがあるときだ。人をうらやましく思う気持ちは成長のための原動力になる」という――。

※本稿は、イ・ダヘ『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■人は嫉妬心から逃れることはできない

健全な心とはどういうものを言うのでしょう。ただ太陽の日差しだけで影もなく、荒波も起こさないことでしょうか。でも、永遠に浮かんでいる太陽など存在しないし、日が差しているのに影をつくらない方法なんて聞いたことがありません。嫉妬について私が思うことも同じです。

欲しいものがたくさんあるとき、私たちの視野は狭くなるものです。国語辞書では「嫉妬」をこう定義しています。「ほかの人がうまくいったり、自分より優れていると感じる人に対してあからさまに羨ましく思い、妬むこと」。ここにはポジティブに解釈する余地は一切ありません。

「あからさまに」他人を妬む人の顔を見たことがありますか。顔のつくりとは関係なく、心のどこかから暗い気持ちがどうすることもできずに漏れ出てくるような人相になってしまうこと。他人の不幸を喜ぶ顔、心配しているふりをしながら内心喜んでいる顔。おそらくそれがごく普通の嫉妬の顔でしょう。

■他人だからこそ挑戦に発破をかけられる

私自身もそんなふうにはなりたくありません。でも、「嫉妬」というのは愛する対象が(自分ではない)別の人を好きだとわかったときに湧き起こる感情でもあり、私にとってこの感情は、他人の顔をした一番理想的な自分と現実の自分がぶつかるときに起こる「情動」ともいえると思います。

私の場合、嫉妬する対象は好きな人たちだけです。自分にない長所を持った人のそばにいたいと思うこと。でも、私の嫉妬が辞書の定義と異なるところは、ほかの人がうまくいったりすると、とても嬉しくなること。

冗談半分で、私の周りにいる人たちはみんな成功する、とよく口にするのですが、友人たちが手に入れたいチャンスを逃さないよう、積極的に背中を押すのも私です。

不思議なことに、転職や(新しい)勉強といった「いい」チャンスは、一見すると「馴染みのない」チャレンジだからこそ、一人称で見る限りは躊躇したくなってしまうもの。でも、三人称で見てみると、「今すぐやったほうがいいよ!」となる場合があります。

私自身もそうです。友人が一人称で悩んでいるとき、私は三人称で発破をかけます。そういう決定はいつもいい結果につながることが多いです。

あっ、このあたりで一言お断りしておきたいことがあります。同じ「チャレンジ!」と叫ぶ場合でも、仕事と恋愛ではまた話が違ってきます。仕事にまつわるチャレンジならば失敗したように見えるときすら、その失敗から学べるものがありますが、恋愛に関しては必ずしも同じように言えるかどうかはわかりません。恋愛ほど、三人称の視点によるアドバイスが役に立たないものもないですから。

■嫌いな人にも自分より優れた部分はある

嫉妬の対象が周りに多いというのは、私の長年の自慢でもあります。私よりもはるかに優秀な人たちがたくさん周りにいます。今もそうです。人間はとても複雑にできているので、一つをとって評価するのは難しいし、個人的には嫌いな人にだって、自分より優れた部分というのはあるものです。

他人に対して一番羨ましく思うのは、社交性かもしれません。MBTI〔Myers–Briggs Type Indicator(マイヤーズ=ブリッグス・タイプ指標)は、個人がどう世界を認識し、物事への決定を下すかについての心理学的な選好を示すことを目的とした自己申告型のアンケートで、検者は、外向型・内向型、感覚型・直観型、思考型・感情型、判断型・認知型の4つの二分法を掛け合わせた16の性格類型を示す〕式に言うならば、I(内向型)ではなくE(外交型)タイプの人たち。

■「社交的になろうと努力する人」と「社交的な人」は全く違う

子どものころから私はごく少数の友人たちを除いては、深く付き合うタイプではありませんでした。人付き合いのあるほうが新しい企画を思いついたりしやすいものですが、自分と同じタイプの人たちといると居心地がいいあまり、知らない人たちと付き合って新たな関係を築いていくというのはあまり気にかけてこなかった気がします。

例外があるとすれば20代のころでしょうか。会社員になってからは仕事帰りに飲み会に参加したり、当時は親しいとか親しくないとかあまり気にせず付き合おうと努力したりしていました。でも、社交的になろうと努力する人と、社交的な人とはそもそもまったく違うんだとも思うようになりました。10年前に会った複数の人たちのこともきちんと覚えている人、名前をちゃんと記憶している人になりたいと思っていました。

シャンパンで乾杯
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

でも、人の名前も顔もなかなか覚えられない私には、誰かに挨拶されるとそのたびに絶望的な気持ちになって、なんとか頭の中をひっくり返して思い出そうと必死になっていたものです。

■人脈をつくれる人は人脈づくりをしている自覚がない

先日、教育番組の収録があって、4年ほど前に一緒にお茶をした方に、あの日のことを覚えているかと声をかけられてとまどってしまいました。話を聞いてやっとそのときのことを思い出せたのですが、思い出すのに時間がかかりすぎたせいで、再会してすぐに楽しく思い出を語り合うことはできませんでした。

1、2時間コーヒーを飲みつつ話しただけで思い出とは呼べないかもしれませんが、それでも一緒に座って時間を過ごした。そういう記憶をたぐり寄せられるような時間的なゆとりがあればいいのですが、会社にお邪魔してエレベーターで「あ、イ・ダヘさん、お久しぶりです!」と声をかけられても一瞬混乱したまますれ違って終わってしまうのです。

ネットワーキングの上手な人を見ていると、そもそもネットワーキングをしているという自覚がないようです。こういう人を私は永遠に羨ましく思うでしょう。ただ好きで誰かに会っているだけなのに、結果的にとてもいい関係やチャンスにつながるというようなところを。

「紹介してあげようか」ともよく言われて、お願いしたり遠慮したりしますが、社交的な友人はとても羨ましい存在で、彼らの長所を喜んで受け入れるので、できれば見習いたいとも思っています。

■苦手なことを避けるべきではないと思っているが…

社交の達人たちといるときは、こういうふうになります。一緒に食事に行った。誰かが来て挨拶をし、私も紹介されて、いつのまにかメンバーが増えている。問題は、私がこういうときつっけんどんになってしまうので、私のことをよく知っている人ほど、見知らぬ人との同席を避けてくれるという点です(それがいいのかどうかは謎として残るでしょう。私は年齢を重ねるにつれて、自分が苦手とするほうに人生を寄せていくべきだと思っているからです。歳月とともに安住してしまいやすいですし、冒険のチャンスも減るので、セーフティネットの外にいるためには、もっと積極的に努力すべきだと言い聞かせています。気持ちはそういうふうに持っているという意味で、実際の私はもっと安全地帯にいようとしているのです)。

■他人の人生には外から見えない悩みがある

人の人生は、三人称の立場から眺めているときにはわからない局面で満ちています。いくら長年一緒にやってきた同僚でも、その人が仕事で経験してきた困難は私にはわからないし、ときに私がその人の「困難」の根源だったりもしかねません。

親しい友人も同様です。お互いに日常の細かい内容をやりとりしていても、改めて話そうと決心する前までは、本当の悩みがなんなのかわからないまま長い時間が過ぎていたりするものです。だから他人の人生についてとなったら、その人が言葉では表現していない、外からは見えないさまざまな悩みがあるのだろうと思えば、嫉妬で苦しむことも避けられるのではないでしょうか。

私は、自分が進めない道を力強く進んでいく人たちを羨望のまなざしで眺めています。同時に、彼らが語らない苦しみを私が知らないという理由で過小評価したりもしません。

自分が嫉妬している相手に追いつこうと努力することが成長につながる場合もあります。私は、仕事のときはスピード重視ですが、速度に神経を使わずに完成度を高める努力をする人を尊敬しています。なかでも、クリエイティブな仕事をしている人たちのしつこさというのは、大きな長所でしょう。適当なところでやめて楽をしようという気持ちを抑制できる資質のことです。

こうしなければ、ああしたほうがいいというアドバイスがこの世にはあふれていますが、他人に向いている方法が自分にもぴったりとは限りません。他人のやり方は参考にはなるものの、自分で試行錯誤を経るまでは、その答えはわからないものだからです。

■理想の自分と現実の自分のギャップが嫉妬になる

他人をありのまま認め、自分をありのまま受け入れ、嫉妬は傷つかない程度にし、自分自身も成長できる。嫉妬する心は(意識的であれ、無意識であれ)人と比べるときに起こるもので、比べなければ今日の自分は昨日の自分よりも成長できません。でも嫉妬心にとらわれていると、他人の長所をありのまま受け入れられずひねくれた人になってしまいかねません。この二つの間で、バランスをとりながら努力していくしかないのではないでしょうか。

私が他人に嫉妬する部分は、自分がこうありたいと思う理想的な自分と現実の私の間に存在するギャップだと思っています。社交性とともに、私にないのが無謀さです。

無謀さは、結果を考えないでいいという否定的な意味で解釈される場合もありますが、ときには結果のいかんにかかわらず、思い切って飛び込まないと飛躍できないものです。石橋を叩きすぎていては、疲れてしまいかねません。

誰でも「信頼のジャンプ」が必要な時期があります。自分を信じてくれる誰かを信じて、目をぎゅっとつぶって大きな一歩を踏み出す瞬間のこと。道は見えなかったのに、どこから見ても虚空だったのに、足を踏み出した瞬間、その下に堅固な橋ができている(もちろん虚空の場合もあり)。虚空ばかり見ていると、歩んできた道を振り返ったり、その場所をぐるぐる回ったりするしかありません。

今までの自分を信じ、手を差し出してくれた人を信じ、ときには身近な人の反対も押し切って挑戦するということが私にはほとんどありません。無謀なほどの勇気がないのか、無謀になれるほどの情熱がないのか、私にとってはいつも課題になっている気がします。だから、チャレンジする人を応援したくなる。自分にはできなくても、応援する気持ちに偽りはありません。

■「あり得たかもしれない自分」にモヤモヤする

以前、とても条件のよさそうなオファーを断ったことがあります(一度ではなく数回)。10年ほど前に自分が断ったチャンスをつかんで、現在もそのポジションで働いている人に会いました。イベント会場の片隅で、その人が名刺を渡しながら挨拶してくれたのですが、私もその人もかつて同じポジションでオファーを受けたことを覚えていました。

そこで、その人に嫉妬心が湧いたかというと、そうとも言えるし、そうじゃないとも言えます。そのポジションはその人のほうが向いていると(当時も今も)思いました。その人はその場所でベストを尽くしていたのだし、私も自分の場所で一生懸命やってきた。今の私が、心に何かモヤモヤがあるのならそれは私自身の問題であって、自分の置かれた場所でベストを尽くしている他人のせいではありません。

■「こうありたい」と嫉妬することが努力につながる

嫉妬は、安全地帯にとどまってあがいている私を刺激してくれます。だから、必ずしも友人や同僚のように身近な人ではなく、個人的に知り合いでもなんでもない有名人だとしても、嫉妬心でもって見つめるときはあります。おもしろい小説を読んだとき、私は嫉妬を感じます。ストーリーを紡ぎ出し、誰かの心を動かす才能が羨ましい。

イ・ダヘ『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』(かんき出版)
イ・ダヘ『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』(かんき出版)

絶妙なタイミングで投資できる人が羨ましい。時間であれ、お金であれ、大胆に投資できる人は、慎重に考えた結果なのでしょうが、無謀にも思えるほどの大胆さがあるものです。モノが少なくて清潔なスペースに身を置くと、私は羨ましくなります。

ミニマリストを目指しているのにマキシマリストと化している自分は、必要なモノだけですっきりとした空間をつくりだせる人を尊敬しています。このリストはいくらでも続きます。体系的に仕事ができる人、計画をきちんと実行できる人、規則的な生活習慣がある人、コンスタントに運動を続けている人。

私が「こうありたい」という資質を持っている人たちを羨ましく思い、憧れ、尊敬し、私自身も磨いていこうと努力する。努力しても気がつけばまた元の位置に戻っていたりしますが、トライして努力する過程で少しずつ変化もしているはずです。

明日の自分に今日の自分が会ったら、羨ましく思うような人であってほしい。健康的な生活習慣があり、落ち着いて仕事をしていて、新しい関係にも挑戦する積極的な人であってほしい。まだ完成されていない未来の私のための燃料に名前をつけるとしたら、それは私の場合「嫉妬」です。

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イ・ダヘ 作家、映画雑誌記者
著述と公演を生業とする。CGVシネライブラリー「イ・ダヘのブッククラブ」、ポッドキャスト「イ・ダヘの21世紀シネフィックス」、ネイバーオーディオクリップ「イ・スジョン、イ・ダヘの犯罪映画プロファイル」のパーソナリティを務めた。現在KBSラジオ「イ・ダヘの映画館、チョン・ヨウルの図書館」を担当。著書に『明日のための私の仕事』『旅の言葉』『朝食:朝食中に思ったこと』『とにかく、スリラー』など多数(すべて未邦訳)。

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(作家、映画雑誌記者 イ・ダヘ)

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