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これができなくなったら危険サイン…まじめな部下を「燃え尽き症候群」で潰す上司の特徴

プレジデントオンライン / 2024年7月24日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jay Yuno

大量の仕事をこなしていて、疲れ果ててしまう人とそうでない人がいる。なぜなのか。韓国のエッセイスト、イ・ダヘさんは「私は燃え尽き症候群に陥ったとき、『自分が弱すぎるからだ』と考えた。だがそうではなく、無力感に襲われる環境が原因だった」という――。

※本稿は、イ・ダヘ『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■どうしても仕事を始められなかった

これを読んでいるあなたが、燃え尽き症候群(以下、燃え尽き)をまだ経験していないのなら、「自分は違う」と思っているかもしれません。燃え尽きについての記事や本、動画を見て、適当なラインを設定しておいてがんばることは可能だと思い込んでいるのでしょう。私もそうでした。

一日に17時間座って仕事ができたとき、あんなに集中して短期間に成果を出せたことを確かめられたとき、その後、思う存分眠って休息をとれば、疲れもとれたと「実感」できたとき、自分はやれるところまでやってみようと思ってがんばっていました。

私が思うに、問題は単純だったのです。

「できるのになんでやらないの?」

仕事を先延ばしにするようになってから、本格的に発生するようになりました。仕事を先延ばしにするのが問題というより、どうしても仕事を始められなかったのです。

先延ばしにしているつもりでいたのですが、実は、単なる不能状態でした。ここでは、私の経験から、燃え尽き予防の方法ではなく、燃え尽き初期段階に、それ以上悪化させないためのセルフケアの仕方についてお話しします。

■燃え尽き症候群になりやすいのは「情熱的な人」

〈症状編〉

燃え尽きは単純な疲労問題ではありません。いくらたくさん遊んでも、そのせいでお金も名誉も体力も失ってしまっても、それを燃え尽きとは呼びません。すべてを「最後まで使い切った」という条件は同じでも、なぜ仕事は燃え尽きにつながり、遊びはただの再充電になるのでしょうか? 一生懸命生きていれば疲れることだってあります。驚くことじゃありません。でも、燃え尽きは一時的な疲労感ではすまないのです。

『ただ少し大丈夫になりたいとき』(그냥 좀 괜찮아지고 싶을 때、未邦訳)を書いた精神健康医学科の専門医イ・ドゥヒョン先生に会ったときに、燃え尽き症候群についてもうかがいました。使い切り症候群、気絶症候群ともいわれる燃え尽き症候群は「情熱的な人がなりやすい」という言葉が印象的でした。

仕事が多い少ないの問題で説明する場合もありますが、仕事の量は問題の一部にすぎません。燃え尽きるときは無意識に成果の出ないやり方を選んでいて、(仕事を先延ばし)成果への評価も先延ばしになります。

いわゆる、成り上がりタイプの成功者たちを見ると、みなかなりの仕事量をかかえていて、「すぐに疲れる」私ですら罪悪感を感じるほどです。

「あんなに成功した人でも毎朝5時に起きてるの?」
「毎日読書してる?」
「じゃあ、私はあとどれだけやらないといけないんだろ?」

そういう人たちを身近で目の当たりにしていると、すべてが事実ではないにせよ、実態は知られている内容よりも、もっとすごい場合もあります。

「あの人は私よりワーカーホリックなのに、どうして不能状態にならないんだろう?」
「もしかしたら私が弱すぎる?」

ところが、こういう考えが燃え尽きを呼ぶ要因の一つなのだとわかりました。

■仕事がまったくできなくなって初めて深刻さを自覚する

燃え尽きはいつどうやって始まるのか正確にはわかりにくいもの。だから、途中で進行を止めるのも難しいのです。「仕事がまったくできない」段階に至ってはじめて問題の深刻さを自覚するからです。

多くの人はささいな先延ばしを繰り返すと罪悪感を感じます。そして怠け心を「克服」すべきだと考えます。燃え尽きにかかるほど仕事をしているならば、もう新入社員ではなくなってずいぶん経っているはずです。そうならば、人はもっと自分を追い詰めます。弱くなった心に活を入れなければと。これが間違った結論です。

次の話に進む前に強調したいのは、「診療は医師に、薬は薬剤師に」ということ。もし先延ばしにしたせいで恥をかくほどの状況におかれているのに、仕事が手につかず、仕事のことを考えるとかなり憂うつになって(仕事をしていないときは憂うつじゃない!)耐えられないくらいなら、精神科の専門医にカウンセリングを受けてみるのもいいでしょう。ここはその後に読んでいただいてもかまいません。

■コップの「最後の一滴」があふれるのはどんな瞬間か

〈原因編〉

燃え尽きる理由一つ目。燃え尽きは仕事の量と関連していますが、期待しただけの成果を手に入れられない状況とも関連しています。水を並々と注いでもあふれなかったコップがあふれ出した瞬間の「最後の一滴」というのは、タダ乗りしている人や運のいい人に見える他人が、いわゆる「追い越し車線」を越えて追い越していくときです。

羨ましく思いながらもっと自分もがんばらなくちゃと思うのではなく、そんなことしたって意味がないと無気力感に襲われるのです。いいタイミングでいい業界に入り、成長曲線を描きながら順調に働いてきた人は、過労はしても燃え尽きて苦労することはまれですが、それは成果が出ているから。だからもっとがんばろうとなる。

個人の力量とは無関係に、業界の状況がよくない場合は、いくらがんばっても成果がでません。だから補償もない。もともとまじめにやっていた人なだけに周りからの期待も大きい。だからもっとがんばらなくてはならないのですが、どうしても、なぜやらなくてはいけないのかわからない、と感じてしまいます。

プレゼンで困る社員
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PonyWang

■いくらがんばっても他者が認めてくれない無力感

物質的な補償はお金で、精神的な補償は他者から認められること、その二つがどちらも足りなくて専業主婦が燃え尽きになる場合もめずらしくありません。

いくらがんばってもわかってくれないという思い。でも、もうこれ以上どうすればいいのかわからないという、かすかな無力感が仕事を避けようという心理になって現れるのです。公益活動家でノクセク病院産婦人科科長のユン・ジョンウォン先生のインタビューを読むと、感銘を受けたとファンは増えても、一緒にやってみるという同僚は増えない状況にあるとき、燃え尽きが訪れるのだといいます。

また、成果に満足してもらえなかった上司のせいで燃え尽きにもなります。『バーンアウトキッズ』(Michael Schulte-Markwort著、未邦訳)という本は、幼いころから成果至上主義の人生をスタートさせた子どもたちが燃え尽きに苦しんでいるという内容です。

絶対に満足させられない上司の範疇に親も入ります。褒められた子どもは、親が望む成果にさらに敏感な傾向があるそうです。完璧に合わせられる可能性がないのならば? 勉強を避けるしか方法はありません。

■「なぜあの人ばかりが…」不公正感が引き金になる

二つ目、組織の公正さに不信を抱くとき。自分が未熟だと判断するときは、「ちゃんと」「がんばって」解決できますが、職場での業務成果の判断基準が偏っているとはっきり確信すると、嫌気がさしてくるものです。

無能な上司が順調に出世する理由は、いくら考えても役員たちとのゴルフのおかげにしか思えないなら?(類似品として学閥や縁故がある)。正当な手続きを経た問題提起が黙殺され、自分だけが被害を被るなら? 自分のアイディアが他人のものとして利用されたが、その過程を自分はまったく知らされないままだとしたら?

この段階で組織に怒りを覚え、積極的に月給泥棒になってやろうと計画するというハッピーエンド(?)も可能ではありますが、そういう人だったらもうとっくにそうやって暮らしているはずです。がんばったからこそ、組織内の不公正がいつも神経に触って疲れるのです。仕事するだけでも大変なのに、ほかの人たちはどうしているのか、いつまでも見守っているだけではこちらがもたないというもの。

結論的には、燃え尽きは個人の問題ではすまないということです。その人を取り巻く環境が相互適用した結果なのです。WHOでは2019年、燃え尽きについて疾病ではなく「職業に関連した症状」だと明記していますが、解決策としては、適切な補償やポジティブなフィードバック、仕事に対するプライド、加熱競争やゴシップを避けることなどについて言及しています。解決が容易でないことだけは明らかです。

■仕事は立ち止まっても大ごとにはならない

〈解決編〉

拙書『出勤途中の呪文』(출근길의 주문、未邦訳)では、「仕事は私じゃない」「生活人としての感覚を維持せよ」と書きましたが、それがこの燃え尽きの経験から得た貴重な教訓です。仕事を「立ち止まっ」ても、大ごとにはならないもの。辞めさえしなければ、どうにかして前に進んでいく。

でも、立ち止まることが怖くて、指一本動かせないようなときでも、プレッシャーしか残らない状況になるまで自責しながらもっとがんばろうとする。人間関係と仕事のある部分が完全に壊れてしまうまで。

■職場と仕事がすべてだと思ってはいけない

あなた自身が残っていなければ仕事はないのと同じです。自分を守るためには、あなたを支える健全な人間関係(いつ役立つかわからない人間関係ではなく)に時間とお金をかけましょう。

お願いごとがあるときばかり頼ってくる人は誰からも好かれません。職場がすべてだと思わずに、自分が長い間やりたいことはどういう性格をしているのか、どういう方向なのかを考えることもまた大いに役立ちます。方向が合っていれば、今スピードを出せなくても大丈夫。「結果的に」成功したように見える人たちのキャリアを見てみると、ぶれる時期もあれば、下降気味の時期もあった人が多いものです。

仕事がうまくいかないときは、健康や勉強に目を向けてみましょう。特に組織の人事問題が深刻なら、次の異動を待ったり、職場を移ったりする人もいるでしょう。

■仕事がうまくいかないときこそ休息を大事にする

耐えればいいのはわかっていても、その余力がないとしたら? 私はそういうときはいつも「最小限の生活」で回していくよう努力します。「モア」じゃなく「レス」で。仕事を減らして(当然だ)、SNSをやめて(他人の成果に影響を受けない)、遊ぶ代わりに休む(どこかにアップロードしなくてもいい、再充電ではなくただ心をまっさらにする時間を持つ)。

仕事がうまくいかないからといって、休息まで適当にすませてはいけません。燃え尽きを経験していない人たちは、計画をちゃんと立ててルーティンを決めて実践し、超過達成するときは超過達成をすればいいと考える。そうじゃないのです!

超過達成に味をしめると、その量を日常的なルーティンにとり入れるという愚を犯し、ある日、体が悲鳴をあげて、貯まったものをもっとがんばって片づけて、それが燃え尽きにつながるという悪循環を招きます。

仕事をするのと同じくらい休むことも重要です。燃え尽きは成果をきちんと出していた人が、一定レベルの成果を出してから、その後はいくらがんばっても現状維持しかできないときに起こるのです。

■どうしていいかわからない仕事を先延ばしにしたら危険サイン

〈こういうときは注意〉

仕事を先延ばしにする。自分自身であれ、周囲の人であれ、どうしていいかわからないときに仕事を先延ばしにする場合、始めようとする状態が繰り返される危険サインです。

イ・ダヘ『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』(かんき出版)
イ・ダヘ『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』(かんき出版)

もちろん、人間は仕事よりも遊んだり休息したりを好むものですから、だいたいにおいてはいつも、いつだって、オールウェイズ、仕事はしたくないものですが、燃え尽きとしての先延ばしは異なります。散漫な状態でせわしなく何かをしているにはいるけれども、重要なことには速度も出せないまま時間だけが流れます。

あちこちに体の不調が出る。他人から見たら仮病のように見えるかもしれませんが、ありとあらゆる痛みから憂うつな気持ちになり、風邪気味なのはもちろん、ちょこちょこぶつかったりケガをしたりすることも増えていきます。物忘れもひどくなってぼうっとした状態で一日を過ごす。不眠も含んだ睡眠障害、理由のわからない頭痛や消化不良が起こる。

■欲望のサイズを小さくして満足できる自分になる

燃え尽きで苦労して以来、私は自分をもっとケアするようになりました。ものすごく大切にしてあげることはできなくても、危ないサインが現れたら、例えば疑い深くなったり、ひどい先延ばしをするようになったり、物忘れ(財布を置いてきたり、何かを失くす)をするようになったり、睡眠障害などがその警告サインです。

だから、ほかの人たちの評価にとらわれなくていい、自ら満足できる私だけの時間に戻るために努力します。そこでミニマリズムが必要になってきます。欲望の大きさを減らすことで、もっと簡単に満足できる自分になれるからです。

このすべては、かなりの羞恥心を伴う燃え尽きを通じて手に入れた教訓でもあって、あなたがどうか本書を通じて私と同じ経験をしなくてすむようにと願っています。もう一度強調しますが、診療は医師に、薬は薬剤師に。

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イ・ダヘ 作家、映画雑誌記者
著述と公演を生業とする。CGVシネライブラリー「イ・ダヘのブッククラブ」、ポッドキャスト「イ・ダヘの21世紀シネフィックス」、ネイバーオーディオクリップ「イ・スジョン、イ・ダヘの犯罪映画プロファイル」のパーソナリティを務めた。現在KBSラジオ「イ・ダヘの映画館、チョン・ヨウルの図書館」を担当。著書に『明日のための私の仕事』『旅の言葉』『朝食:朝食中に思ったこと』『とにかく、スリラー』など多数(すべて未邦訳)。

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(作家、映画雑誌記者 イ・ダヘ)

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