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「みんなの意見は正しい」はウソである…ダメな会社がやめられない「残念な会議」のシンプルな共通点

プレジデントオンライン / 2024年7月20日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pondsaksit

ダメな会社にはどんな特徴があるのか。業務改革コンサルタントの相原秀哉さんは「会議を見ればわかる。重要なことを多数決で決める会社は結果を出せない。それどころか会議のための無駄な会議が増え、職場の雰囲気が悪くなる」という――。

■多数決をしてはいけない3つの理由

「決を採ります。賛成の方は挙手をお願いします」

このように会議で何らかの意思決定をするときに多数決を使うことはありませんか?

たとえば、新規エリアへの出店、フレックスタイム制の導入、営業支援システムのクラウドへの移行など、経営に大きく影響するような重要な意思決定について多数決で決めている会社は多いかと思います。

しかし、本当にそれでよいのでしょうか?

そもそもなぜ多数決で意思決定を行なっているのかを問うと、さまざまな回答が返ってきます。

たとえば、「以前から重要な意思決定については多数決で決めることになっているから」という回答。これはもはや「理由」ではなく「経緯」なので、そもそも論外でしょう。

このほかには「民主主義的に決めるのがよいと思うから」というビジネスの成果がうんぬんというよりも、政治信条のような回答。あるいは、「過半数の人が賛同するのであれば、それなりに正しそうだから(うまくいきそう)」という希望的観測による回答。さらには「多数決が手っ取り早いから」という意思決定のスピードに着目した回答もあります。

最後の回答のように、多数決は確かに「手っ取り早い」意思決定方法かもしれません。もし当該の意思決定における最優先事項がスピードにあって意思決定の質を問わない場合、つまりまったく重要でない事柄(たとえば、トイレットペーパーの色など)であれば多数決でもよいかもしれません。しかしながら、重要な意思決定の場合であれば、筆者は多数決をおすすめしません。

その理由は次の3つです。

①意思決定の質が下がる
②意思決定後に悪影響が出る
③業務の生産性が下がる

■理由 その1「意思決定の質が下がる」

まず1つ目の理由「意思決定の質が下がる」について解説します。これは、さらに次の3つの要因に分解できます。

・“多数派=正しい”ではない
・多数派に不利なことは否決される
・多数決を選んだ時点で思考停止する
【要因1】“多数派=正しい”ではない

意思決定を多数決に委ねるということは、「多数派の選択が少数派より正しい」とみなしていることと同義です。しかし、そもそも多数派の選択は少数派より正しいのでしょうか?

たとえば、政治の世界では、少なくとも民主主義の制度が浸透している国であれば、選挙における投票を通じて多数派の意見が反映されるようになっています。しかし、民主的であるかどうかと「多数派の選択が論理的・客観的に正しいかどうか」はまったく関係がないはずです(たとえば、世界史におけるガリレオの地動説のエピソードが良い例です)。

会議での意思決定において明確に採決しないにしても、「“何となくこっちのほうがいいよね”という雰囲気が漂っている」という空気感で物事が決まっていくことはよくあったりしますよね。これについても気をつけなければなりません。ですから、意思決定の際には、必ずしも「“多数派=正しい”ではない」ということを意識して臨みましょう。

■変化を嫌うベテラン社員に要注意

【要因2】多数派に不利なことは否決される

多数決を採用する以上は当然の帰結ですが、組織や会社全体の全体最適の実現を邪魔することになりかねません。もし、論理的に考えて会社の成長や顧客にとってプラスになるようなことであっても、意思決定に多数決を採用してしまうと、会議参加者の多数派にとってマイナスになるようなことは否決されてしまうのは必定です。

たとえば、会社全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することになったとします。そのための第一歩として、「まずは現場の声を聴こう」ということで営業所のペーパーレス化を推進するために、社員のAさんは大量の紙に埋もれて業務をしている営業所員を集めて次のように話しました。

「まずは手はじめに、営業所のペーパーレス化から取り組みたいと考えています。その前提として現場の皆さんの意思を尊重する必要があるので、ペーパーレス化の推進の是非について皆さんの決を採りたいと思います。では、ペーパーレス化に賛成の方は挙手をお願いします」

この進め方は明らかに悪手です。

なぜなら、このケースのような場合、特に年配のベテラン社員が多い場合には、「変化することへの抵抗感」から反対する人が多いからです。客観的に考えれば、ペーパーレス化によって現場の業務を効率化すれば、営業所員全員の業務は楽になるはずなのですが、ベテラン社員にとっては長年の経験で体に染みついたやり方を変えることは単なる面倒なことでしかありません。

不満を抱えた中年ビジネスマン
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

さらに考えを進めると、そもそも「会社全体にとってのプラスになるかどうか」という視点を過半数の営業所員が持ち合わせているでしょうか? 正直、あまり期待できませんよね。

このように、多数決で意思決定をすることによって、かえって部分最適に陥ってしまったり、反対に部分的にすらマイナスの結果をもたらしたりすることになりかねません。

■選んだ理由を説明できないといけない

【要因3】多数決を選んだ時点で思考停止する

そもそも意思決定とは複数あるオプションのうちどれか1つ、あるいは複数のオプションを選択することですが、本来は「なぜその選択肢を選ぶのか?」を突き詰めて考えたうえに答えを出すべきものです。

ところで、なぜ私たちは意思決定をしなければならないのでしょうか? それは、会社や組織のリソースが限られているからです。

積み上げられたブロックの中から「CHOICE」と書かれた木製ブロックを持つ手
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Seiya Tabuchi

もしヒト・モノ・カネといったリソースを無限に持っているのであれば、やりたいことはすべてやればいいだけの話です。しかし現実には、大小の差はあれど、会社や組織のリソースは限られています。ですから、どんな場面においても「何を取って」「何を捨てるのか」を決めなければなりません。つまり、貴重なリソースをどのように配分するのかを決める必要があるのです。そのために意思決定においては「これがベストな選択だ」と自信を持って言えるものを選ぶべきです。

それにもかかわらず多数決で決めようとするのは、その時点で考えるのを放棄してしまうのと同じことであり、「会社や組織の貴重なリソースをムダにしてしまってもかまわないのか」と疑われても仕方ありません。

■理由 その2「意思決定後に悪影響が出る」

続いて2つ目の理由、「意思決定後に悪影響が出る」について見ていきます。これも3つに分解して考えましょう。

・理由を客観的に説明できなくなる
・責任が分散する
・賛成派と反対派の対立を生む
【要因1】理由を客観的に説明できなくなる

1つ目の「理由を客観的に説明できなくなる」は、意思決定で多数決を採用すると、あとから意思決定の結果について「なぜ、このように判断したのですか?」と第三者から問われた際に「多数決で決めたからです」としか説明できなくなってしまうことです。しかしよく考えてみると、この回答は質問に対して完全に的外れであることがわかります。

たとえば、新しいシステムを導入する際に「システムAとシステムBのどちらを選択するのか?」という意思決定の会議において多数決でシステムBを選んだとします。その後、上層部から「なぜシステムAではなくシステムBを選択したのですか?」と聞かれて、「多数決で過半数の人が賛成したので導入を決定しました」と答えたらどうなるでしょうか? きっと激怒されるか、呆れられるのではないでしょうか。

【要因2】責任が分散する

多数決で意思決定を行なうと、もし意思決定の結果が振るわなかった場合の責任の所在が曖昧になってしまいます。多数派(賛成)だった人全員に責任があるのか、それとも少数派も含めて多数決に参加した人も含めた会議の参加者全員が責任者になるのか? このように曖昧になりやすく、また多数派の人の責任があるということにしても、複数の人に責任が分散されてしまいます。

責任が分散してしまうと、意思決定の結果がうまくいかなかったときに誰が率先して対応すべきか、説明責任を誰が果たすべきかがわからなくなってしまいます。結果が良ければ問題が表面化することはあまりないかもしれませんが、結果が悪ければあとからこのような問題が発生する恐れがあります。

■ネガティブな感情が解消されない

【要因3】賛成派と反対派の対立を生む

これは多数決によって会議の参加者が賛成派と反対派に分断され、会議後に対立構造が固定化してしまう危険性があるということです。

向かい合わせで立つ二人のビジネスマン
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

仮に、組織Aと組織Bがあったとします。意思決定の内容が組織Aに都合が良くて、組織Bに都合が悪いものだった場合、決を採ると当然、組織Aからの参加者は賛成し、組織Bからの参加者は反対票を投じます。

もし、組織Aの参加者のほうが多ければ可決されますし、反対に組織Bの参加者のほうが多ければ否決されます。

しかし、そうすると可決されても、組織Bの人は意思決定の結果に対して否定的な考えやネガティブな感情を会議後まで引きずることになります。ひどい場合は、多数決で無理やり意見を押し通した組織Aに対して敵意を抱いてもおかしくはありません。

そうすると、業務上の組織間の協力体制が揺らぐことになり、会社全体として見たときにも悪影響が生じてしまいます。

■理由 その3「業務の生産性が下がる」

最後に3つ目の「業務の生産性が下がる」を解説します。

これはさらに次の3つに分けることができます。

・根回しが発生する
・上司からの差し戻しが発生しやすくなる
・意思決定が誤った場合の検証ができなくなる

それぞれの場合を説明します。

■意思決定のためのコストが増大する

【要因1】根回しが発生する

「根回しが発生する」とは、いったいどういうことでしょうか?

自分や組織にとって大きな影響を及ぼす意思決定であればあるほど、そして自分たちにとって不利な決定がなされる可能性が高ければ高いほど、どうにかして有利な結果になるように誘導したいというインセンティブ(誘因)が働きます。

その意思決定が論理と客観的な情報によってなされるのであればよいのですが、多数決でなされることが事前にわかっていれば、意思決定で有利な結論を得るために、会議参加者への根回しを行なうインセンティブが発生します。つまり、事前に関係者に根回しをしておけば、会議の場では形式的な議論に続いて多数決で意思決定を行ない、想定通りの結論に至るように誘導することができてしまいます。

とはいえ、根回しには相応の時間と労力がかかるものです。

そもそも会議の中で決めれば1時間、あるいは2時間などといった短時間で結論を導けるところを、その時間に上乗せして数時間、あるいは数日間を根回しに費やすことになるかもしれません。

それはつまり、意思決定そのものにかかるコストを増大させていることにほかなりません。本来はもっと別の価値を生んでいたはずの時間を根回しに費やしてしまうことで、業務生産性の低下を招いてしまうのです。

暗いオフィスの中で疲れてぐったりしたビジネスマンたち
写真=iStock.com/YinYang
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/YinYang

■議論から逃げることはできない

【要因2】上司からの差し戻しが発生しやすくなる

業務生産性が下がる理由はほかにもあります。「上司からの差し戻しが発生しやすくなる」からです。これは先述したの「理由を客観的に説明できなくなる」という話と関連があります。

意思決定を多数決にゆだねることによって得た結論を上司に報告すれば、きっと「なぜ、その結論に至ったのか?」と聞かれるはずです。その際に「参加者の多数決で決めました」と報告したら、聡明な上司であれば「それは私の問いに答えていない。なぜ、その結論がほかの選択肢よりも優れているのかを論理的に説明してください。それができないのであれば、再度、議論して客観的に説明ができる結論を出しなさい」などと差し戻されてしまうのがオチでしょう。そうすると会議をやり直して、もう一度議論しなければならなくなってしまいます。

【要因3】意思決定が誤った場合の検証ができなくなる

最後の「意思決定が誤った場合の検証ができなくなる」について見てみましょう。

会社や組織で行なう意思決定は、一度しか行なわないということはありません。些末なものも含めれば日々、意思決定の連続ではないでしょうか。

そして、その意思決定の積み重ねがビジネスの成否に大きく影響します。ゆえに、意思決定の質を上げることが肝要です。意思決定の質を上げるためには、過去の意思決定の内容と結果について検証を行ない、改善していくのが有効です。

ところが意思決定を多数決で行なってしまうと、「なぜこのような結論に至ったのか?」という問いに対する答えが「多数決で決めました。以上」となってしまいます。

本来であれば「意思決定の際の論理に問題があったのか」、もしくは「集めた情報に過不足や鮮度などの問題があったのか」、はたまた「論理と情報の両方に問題があったのか」といった観点から検証を行ない、その反省を活かし、次回以降の意思決定の精度を向上させることができるはずなのです。

多数決を採用するということは、その機会をみすみす逃してしまうことにほかなりません。ゆえに、意思決定の質がいつまで経っても上がらず、その結果ムダな会議が増えてしまいます。

意思決定は多数決ではなく、しっかりと議論をしたうえで結論を導くことがいかに重要であるかを理解していただければ幸いです。

■多数決を採らずに意思決定する方法

おそらく一部の読者の方は多数決の弊害についてはわかったものの、多数決を採らずに最終的な意思決定をどのように行なうのか具体的なイメージが湧かないという方もいるかもしれません。

相原秀哉『結果を出す組織は、どんな会議をしているのか?』(フォレスト出版)
相原秀哉『結果を出す組織は、どんな会議をしているのか?』(フォレスト出版)

多数決を採らずに意思決定する際の言い回しはいろいろありますが一例として、議論を尽くして結論が出た時点で「では、これで決定ということでよろしいでしょうか?」と参加者に問いかけて、特に異論がなければ「こちらの案で決定します」と言い切ってしまう方法があります。

その際、プレゼンテーション資料をプロジェクターで投影していれば、決定した案に「○月○日 決定済」とその場で記載し、会議直後に参加者や関係者全員に送付しましょう。それによって会議での決定を既成事実として公に示すことができます。

真に重要な意思決定こそ、安易に多数決で決めずに精緻な論理と客観的な情報、それにシナリオの検討を踏まえて行ないましょう。それによって意思決定の質向上が見込めるのはもちろんのこと、意思決定者としての説明責任をしっかり果たすことにもつながります。

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相原 秀哉(あいはら・ひでや)
業務改革コンサルタント
株式会社ビジネスウォリアーズ 代表取締役。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法「Lean Six Sigma」を活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の最上位資格「Lean Master」に認定される。業界・業種を問わずホワイトカラーの業務改革コンサルティングに従事し、業務生産性向上やDX推進、DX認定取得などの案件を手がける。著書に『リモートワーク段取り仕事術』(明日香出版社)、『結果を出す組織は、どんな会議をしているのか?』(フォレスト出版)、共著書に『研究開発者のモチベーションの高め方と実践事例』『研究開発部門の新しい“働き方改革”の進め方』(ともに技術情報協会)がある。

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(業務改革コンサルタント 相原 秀哉)

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