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「本当のお金持ち」は"定期預金"に見向きもしない…お金が貯まらない人に共通する「夏のボーナス」の使い道

プレジデントオンライン / 2024年7月19日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hanafujikan

お金を貯めるにはどうすればいいのか。消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんは「『少しでもお金を増やしたい』と考える人がハマりやすい落とし穴がたくさんある。お得感のある『数字の錯覚』に注意してほしい」という――。

■定期預金の「キャンペーン金利」に潜む罠

多くの人が夏のボーナスを手にしただろう。定額減税の実施もあり、手元にまとまったお金が入るのはうれしいものだ。

しかし、ボーナスの使い道についてのアンケートを見ると、たいていトップに来るのは「貯蓄」という回答。ボーナス=まとまったお金は、貯蓄にとって大事な原資だからだ。

銀行もこの時期に合わせて、特別金利を打ち出してくる。特にマイナス金利解除となった今年は、これまで以上に強気な数字が並ぶ。

おなじみのネット銀行では、ソニー銀行とSBI新生銀行がともに1年物円定期で0.35%、楽天銀行が1年物0.25%、auじぶん銀行に至っては1年物0.4%と、かなり攻めた数字だ。

貯蓄ではお金は増えないという声もあるだろうが、それでも安全・安心重視の人にとっては、心惹かれる金利に違いない(金利は税引き前。預け入れ金額の条件あり。SBI新生銀行は9月2日まで、ソニー銀行は8月31日まで、その他は7月31日までの期間)。

しかし、こうした高め金利定期には注意が必要だ。「少しでも増やしたい」気持ちが逆効果になってしまうこともあるからだ。

■なぜ1年物が多いのか

定期とは、文字通り「期間が定まっている」もの。ボーナス時のキャンペーン定期預金は、期間1年が多い。

1年たつと解約されて普通預金に払い出しされるか、通常金利の定期預金として継続されることになる。高めの金利を打ち出す銀行は、おかげで一定数の新規預金を獲得できるわけだ。

また、こうしたキャンペーンを打つネット銀行やネット支店はアドレスの登録が必須なので、特別金利目当てに新規で口座を開いてもらえば、その後いくらでもセールスをかけられる。お目当ては儲けが大きい外貨建ての定期預金や投資信託で、これらを買ってもらいたいのが本音だ。

たとえば外貨預金に0.3%どころではない金利をつけて、キャンペーン定期預金の期間が終わった客を呼び込む。うまく行けば手数料を稼ぐことができる。ちょっと高めの年利0.3%は、その呼び水というわけだ。

■金利はキリがいい数字だが、受け取る利息はキリが悪い

いや大丈夫、そのような手には乗らないという預金者も油断は禁物だ。金利はキリのいい数字でも、あくまで税引き前のもの。ついた利息からは20.315%の税金が引かれることになる。

これは、誰が見てもキリが悪い数字だ。例えば100万円を年0.4%の1年物定期に預けた場合の、税引き後利息は3187円。0.3%なら2390円ほど。端数が出ないはずがない。

しかし、大概のネット銀行はコンビニATMでの引き出しとなり、その場合1000円未満の硬貨は扱えない。残りの187円、390円はそのまま口座に残るか、硬貨を扱う大手銀行にある自分名義の口座に振り込むしかない。せっかく得た利息なのに、我が手にするには手間がかかるのだ。

キャンペーン金利のためにと口座を開いても、もしその後使う予定がないなら、引き出せない小銭がいつまでも残っていることになり、口座も預金もムダでしかない。

おまけに、昨今は一定期間稼働しない口座に手数料をかける銀行も増えてきており、せっかくの利息が手数料に消えてしまった――なんて、笑い話ではすまない事態になりそうだ。

銀行の通帳
写真=iStock.com/utah778
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/utah778

■元本が少ない人ほど高金利に手を出しがち

預金でお金を増やしたいなら、金利より大事なのは元本の大きさだ。

例えば預け入れる資金が10万円だったとする。1年定期の金利が年0.3%だと、利息は239円。0.5%でも398円だ。50万円預けた場合では、0.3%で1195円、0.5%で1992円になる。結局、ものを言うのは元本なのだ。貯蓄のセオリーに、100万円に達するまではいちいち金利を気にするなというのがある。それより、せっせと元本を増やす方がいい。

しかし、手持ち資金の少ない人ほど早く結果を出したくて、高い金利に飛びつくもの。虎の子の10万円を、金利がよさそうだからと夏と冬とのボーナス時期に違う銀行に預けたりして元本を分散させていては、かえって増えてはいかないのだが……。

ポイ活好きの人が気にする「ポイント還元率」にも同じ錯覚が潜んでいる。10%還元、20%還元という数字は華々しく見えるが、これも母数次第。1万円使った人の20%還元は2000円だが、1000円使った人では200円しかない。

同じ還元率でも、得られる結果はずいぶん違う。%の前につく数字は平等に見えるが、還元された金額は平等ではない。たくさんお金を使って消費しなければ、たくさんの恩恵にはあずかれないのだ。それが本当に得なのか損なのか、はたしてどっちだろう?

■お得感のある「数字の錯覚」にご用心

世の中には、我々の判断を惑わせるような数字のマジックが溢れている。

例えばダイエット器具の宣伝文句に「3人に1人が効果があったと回答」とあれば、これは痩せられそうだと感じるかもしれない。

しかし、「3人に2人は効果を感じなかったと回答」だとすればどうか。受ける印象が真逆になる。同じことを裏返しに言うだけで、これだけ人の印象は変わってしまう。

このように、伝えたい数字だけを強調したり、表現に使う数字次第で印象を左右する手法を「フレーミング効果」と呼ぶ。おなじみ「1日たったコーヒー1杯分」という表現がまさに代表だ。コーヒー1杯分が300円だとすれば、月に直せば×30日で9000円になる。月額9000円を「コーヒー代」のフレームに入れ直すことで、安さを強調するというわけだ。

どうしてもハイブランドのバッグが欲しい女性が「価格は100万円だけど、これから30年間使うとすれば、1日当たり91円だから問題ない、逆にリーズナブルだ」と妄想するコミックを見たが、まさにこの発想。身近な友人がそう言ったなら、いやちょっと待てよ、都合がよすぎると止めたくなるはずだ。

そんな都合のいい数字が、我々の周囲にあふれている。サブスク料金、習い事の月謝、スポーツジムの利用料など、月割や日割りにすることで支払う額を小さく見せられる。これだけでは年間いくら支払うのかはわからない。

買い物をした紙袋を持つ女性
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

■「払うお金は掛け算、使うお金は割り算を」

金融商品にもそういう例はある。金融リテラシーが高い人なら、リボ払いがいかに危ういかも知っているだろう。毎月の支払いは数千円だけと表示され、結局いくら返さなくてはいけないのかを見えにくくする。

生命保険や医療保険の支払いも、たいがいが月額で示される。それだけで決めず、せめて12をかけて年間の支払額を把握しておくべきだろう。

その逆が、先ほどの預金金利だ。年率で表現されるため、「年利3%」と大きな数字が書いてあり、ずいぶん高いじゃないかとよく見ると、その金利が適用されるのはわずか1カ月だったりする。その金利を12等分してみれば、0.25%となり、びっくりするような金利でないことはすぐにわかるのだが。

世の中にあふれるフレーミングに惑わされないために、「1日○円」「月額○円」とあったら、必ず年間でいくら払うかの計算をしよう。実際に自分はいくら払うのかを認識しなくては、その商品やサービスが適正価格なのか、それとも高いのか、お買い得なのかの判断ができないからだ。

コストを頭に叩き込むには、「払うお金は掛け算、使うお金は割り算を」と覚えておきたい。毎月支払うお金は必ず12カ月を掛け算し、年間かかる金額を確認しておく。食費や小遣いのように月予算を決めているお金は、日額か週額で割り算してみれば、使えるお金のイメージが湧きやすい。

払う時には小さな数字だけ、使う時には大きな数字だけという都合のいい方を見ていると、思った以上にお金を使ってしまうことになりかねない。

■おにぎりセールなら「10%引き」より「100円均一」が正解

「セブン‐イレブン」生みの親である鈴木敏文さんも、消費者に安さを伝えるには商品によって表現の仕方を変えたほうがいいと、その著書の中で語っている。

例えばおにぎりのような低価格の商品の場合、「10%引き」ではピンとこない。それより「100円均一」の方がお客に刺さると言うのだ(鈴木敏文の『実践! 行動経済学』より)。

逆に、万円単位の価格が高めの商品だと、1000円引きと言われるよりも「10%引き」の方がお得に感じる。これも前述した「フレーミング効果」の一種だ。

他にもこんな例がある。「消費税値引きセール」と「10%値引きセール」、どっちが買いたくなるだろう。値引き率は同じ10%のはずなのに、消費税を取りませんよと聞けば、「これはトクだ、ぜひ買っておかなくては」と心が動くのではないか。どんな表現を使えば、その気がなくてもつい財布を開いてしまうか、小売り側は常に考えている。

セールをする店
写真=iStock.com/Cebas
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Cebas

■節約好きを惑わせる「ポイント還元」の落とし穴

また、表現を変えることで成功している身近なものがある。おなじみ「ポイント」だ。

節約好きならポイント還元を見逃すことはできない。ネットショップでもリアルの店舗でも、クレジットカードでも決済アプリでも、どこでもポイント還元があたりまえ。キャンペーン期間に利用するともれなく100ポイントがプレゼントと聞けば飛びつくだろうし、期限切れが迫っているポイントが50ポイントありますと通知が来れば、絶対に使わなくてはと慌てる。

しかし、この100ポイントや50ポイント、そんなにすごい数字だろうか? ポイントを円に直してみれば、1ポイント=1円なら100円と50円であり、急に頭が冷えるのではないか。これぞまさに「フレーミング」を変えたことによる錯覚だ。

大きな数字は消費者を惑わす。お金を確実に育てるためにも、その数字の意味、条件、そして本質を、正しく見抜くことは欠かせない。

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松崎 のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト
『レタスクラブ』『ESSE』など生活情報誌の編集者として20年以上、節約・マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析してきた経験から、「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。著書に『定年後でもちゃっかり増えるお金術』『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない 』(以上、講談社)ほか。

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(消費経済ジャーナリスト 松崎 のり子)

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